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ハンス・ギュンシュ大尉の副官。コミュの血の様に紅い瞳に映るモノ

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…まだ、幼かったあの頃。自分と同じブルーグレーの瞳を湛えた“母”と呼ぶその存在は俺の手を握り締めていた。

首輪をつけられ、鎖で繋がれた同族達。

“力”を解放し叛乱する事を封じる為の首輪。

そして、同族を見て狂喜の笑みを浮かべる男。

そう。教授の血縁。俗に言う父というやつだ。傍らには、俺と同じような痩せぎすの体をした少年が満面の笑みを浮かべて立っている。

…ああ、そうだ。俺達は研究材料なのだと。

故郷は、人里離れた山奥の森の中。人間との接触を避け、俺達は力を解放する事を族長に禁じられ、ひっそりと暮らしていた。
それを解放する事は悪戯に人間達に興味を抱かせ、存在を露にしてしまうからだと母は言った。

否。そうではない。全てを鏖殺し、血の海に染め上げてしまうからだと俺の本能が告げている。

俺が同族の中でも最も優れた人狼の力を持っていると教授の父は目をつけていて、同族全てを集落から狩り出し、俺の“力”を解放させようとしているのが目に取れた。


そして。
俺は…力を解き放った。

我を取り戻した時には、人の形を留めていない無数の肉塊が転がっていた。血に染まっている俺の両手…。噎せ返るような血の匂い。だが俺の中から湧き上がる感情は恐怖でも絶望でも無かった。…歓喜だった。愉悦だった。
その時の俺は口元を歪め、大声で笑っていたと後に教授は話した。

だがその俺に、微かに意識を残していた母は血塗れの手で俺の頬に触れ、口元から血を流しながら掠れるような声で最期にこう告げた。
『…力を開放する事は容易いわ…。やがてこの世界は貴方を渇望し貴方もそれに身を投じるでしょう…。貴方は…一族の誇りよ。人間の中で暮らしてもその血を忘れないで…』
やがて母は多量の血を吐いてガクリ、と倒れた。冷たくなった母を俺は静かに見下ろした。
「おめでとう!コードネーム00:A+++。素晴らしき闘争(ダンス)に勝ち残った君はやはり見込んだ通りの兵器だよ」
「…」
俺は押し黙り、口をきくのを辞めた。冗談じゃない。俺が兵器だと?お前ら人間ごときに遊ばれて堪るか。コイツも引き裂いて肉塊にしてやろうか。
ふつふつと湧き上がる殺意に、ブルーグレーの眼が深紅に変化する。博士と呼ばれるそいつはニタリ、と笑い、襲いかかる俺を何か見えない壁で弾き飛ばした。
「…グルル…!」
「人狼の強靱な力も効かない特殊な力だ。トゥーレ協会が完成させられ無かった魔術、錬金術を我々は研究に研究を重ねてモノにした」
博士と呼ばれたそいつは、狙撃兵に麻酔銃で俺を眠らせた。いつもなら躱せるそれを…そいつはいとも容易く撃った。
同じ匂いがした。
…人狼。
だが…、朧気な眼で見たそいつは、造られた匂いがした。

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