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行け!そのさきへ(バイク小説)コミュの【第2話】『オレはセカンドライダー(その1)』

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 9月。
 都内では一斉に夏休みが明け、学校が始まった。そしてあっという間に最初の週末を迎える。

 「あぁ…体イテェ……。」

 今日一日の授業がようやっとすべて終わった。
 机に突っ伏して新之助は呻き声にも似た声を発する。
 レースでクラッシュして1週間。あとになってあちこち痛み始めた。
 念のため医者にも行ったが、怪我らしい怪我がなかったのは幸いである。
 さし当たっては2週間ほどは打ち身や筋肉痛に悩まされることはあっても、次のレースに影響が出るようなこともなさそうだ。

 「よぉ、ツラそうだな、ソメ。」
 「あ? あぁ。カイか。」

 ガゴンッ!

 新之助のすぐ前の椅子を引っ張り出して座る。

 「相変わらず痛むのか?」
 「ああ、バッキバキだね。」
 「なんかそんな感じはする。」
 「なんだよ。見ててわかるもん?」
 「立ったり座ったりに『よっこいしょ』はないよなぁ…高校1年でさすがに。」
 「ぐぼぁ!」

 しみじみと言う啓二。思わず新之助は吹き出した。




【第2話:オレはセカンドライダー】



(1)

 「そ、そんな風に言ってる? オレ。」
 「ああ、無意識だろうが、しっかり言ってる。」
 「……くっそー……。」

 言ってからもう1度突っ伏した。

 「あ、そー言えばさ……。」
 「?」

 突っ伏したまま、何か気がついたか新之助は突然切り出す。

 「モトスポ買った?」
 「あー。買った。」
 「みして。」
 「はぁ?」

 思わず聞き返してしまうも、右手を差し出して『貸して貸して』と催促され、仕方なく啓二は自分の机に戻り、そして一冊の雑誌を持ってきた。

 「当たり前だけど、まだこないだのレースの記事はないからな?」
 「んなのぁわかってらよ。来週のミニチャンだろ、最速で載るとしたら。」

 差し出された雑誌を手に取ると、『よっこいしょ』と体を起こし、机の上に雑誌を開く。

 「なんか面白い記事あった?」
 「読む前に中身を訊くのかよ。」
 「面白い記事だけを読む。時間短縮のためご了承ください。」
 「………………。」

 『やれやれ』とため息を吐いて首を左右に振る。

 「センターカラーの後ろのほうで、こまちちゃんとはやてちゃんの特集みたいなの組んでるよ。」
 「おっ? そりゃあ見ねぇと。」

 啓二に聞いて、パラパラとページをめくって行く。
 そしてセンターカラーページの後半に、その双子の特集記事は現れた。

 「すげぇ、見開きじゃん。」

 マシンに跨ったはやてとこまちの姿が、かなり大きくカラー写真で掲載されている。
 この写真は…おそらく前回の調布・味の素サーキットでのレースのときに撮られたものだ。ふたりの背後に味の素サッカースタジアムが写っている。

 「なになに? 『今後期待のレーサー。東日本編。』…へぇ、こんな特集あったのか〜。『デビュー2年目にして入賞の常連となった、ミラクル美人姉妹。』だって。おお〜、すごいじゃんふたりとも。」

 こうして、自分の知り合いや近しい友人が雑誌に紹介されているのを読むのは面白い。
 確かに彼ら自身もバイク雑誌に取り上げられる機会が多くはなってきたが、他の人間について書かれているのを読むのもまた面白いものだ。

 「『レースに出始めたばかりのときに1度だけ、ものすごい速い女性ライダーと一緒のレースに出て、まるで相手にならなかった。私たちもあの人のようになりたいと思ったのが、ここまでレースにのめりこんだ理由。』だとさ。」
 「多分、卯月さんのことだな。」
 「ふたりともあの人の熱烈な信者だものな。」

 などと笑いつつ、文面に目を走らせる。
 しかし、いつの間にか彼の目はとある一点向かってしまう。

 「………………。」

 写真だ。
 見慣れた新幹線カラーのMSR−Miniに跨っているその少女は…こまち。
 吸い寄せられるように彼女に目が行ってしまう。
 それに気がついて、一度は目をそらすのだが気がつくと彼女の写真を見ている自分がいる。

 「どした?」
 「うわっ!?」

 さすがにそんな挙動不審に啓二も気づいたか、彼の顔を覗き込んだ。

 「な、なんでもねーよ!」

 あわててページをめくりごまかす新之助。しばし目をしばたたかせていた啓二だったが『ふーん?』と、わかったようなわからないような返事をした。

 「しかし、あのふたりは大注目。一方の俺らは旬が過ぎたみたいな雰囲……、おろ? 外人だ。」

 先ほどの次のページ。ここもカラーページだが、真っ白なマシーンの前で腕組みする外人選手の写真が彼の目に飛び込んできた。

 「北海道で無敵の速さを誇ってる中学生だとさ。」
 「中学生なん!? ……ホントだ。13歳って書いてある。神代 クリス? 日本人かよこいつ。」

 紹介欄を見て目を丸くする新之助。
 やがて…文面から目が離せなくなっていく。

 「『今シーズンからMOTO−MICROにデビュー。以降負けなしの4連勝でぶっちぎりのポイントリーダー。』……今年デビューで…もう優勝4回?」
 「2スト4スト、なに乗っても手がつけられないくらい速いんだと。4連勝とは書いてあるけど、SP12とOPENどっちでも全線全勝ですでに8勝上げてることになる。ついたあだ名は【ゴッド】。神…だそうだ。」
 「………………。」

 神と呼ばれる少年。
 遠く離れた土地にいるとはいえ、新之助たちと同じシリーズ戦に参戦して、いまだ負けなしと言う。
 北海道地区のレベルがどの程度のものかはわからない。だが、ただの参戦1年目のルーキーが楽に勝ち続けることが出来るほど、勝負の世界は甘くない。
 実力で勝ち続けていると考えるのが妥当だ。

 「負けなしの中学生かぁ…。こまちちゃんたちより更に年下で無敵ってのは気になるな……。」
 「下のほうに書いてあるけど、11月の全国大会。招待選手としてこっちに来るらしいぞ?」
 「!」

 ふと、新之助は顔を上げる。
 各地のシリーズ戦が終了後、各シリーズのチャンピオンをはじめとしたポイントランキング上位の選手が関東地方のサーキットに一堂に会しての頂上決戦が行われる。
 現状関東地区のポイントリーダーである啓二はすでに全国大会の出場はほぼ確実という位置にいる。
 意外なことに優勝経験こそないがポイントの取りこぼしがないこまちも全国大会出場権を得そうな雰囲気だ。
 新之助は微妙な位置。優勝経験こそあるものの、先週のリタイアが響いた。あと1回は表彰台に立たないと出場権を逃してしまう。
 そんな感じで出場権を得る全国大会に、第4戦終了時点ですでに招待選手として出走権を得てしまったスーパールーキー。

 まだ会ったこともないこの金髪の少年が、のちに新之助の人生に大きな影響を及ぼすことになるのだが……。
 本人はまだそんなことを知るよしもない。

■ つづく ■

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