映画愛好会コミュの【ネタバレ有り】『マルタのやさしい刺繍』[ 2008年10月18日公開 ]

●Introduction
スイスの小さな村に住む80歳のマルタは、9ヶ月前に夫に先立たれて以来鬱々とした日々を送り、自分も早く夫のもとへ行きたいと願うようになっていた。ある日、昔得意だった裁縫仕事を依頼され、眠っていた創作意欲に火がつくまでは。若い頃、マルタは手刺繍のランジェリーの店を開くことを夢見ていたのだ。早速、親友リジーの手を借りて開店準備を進めるが、村人はハレンチな下着の店に眉をひそめるのだった。

保守的で村中が皆知り合いというこぢんまりとしたコミュニティに、老未亡人が一大センセーションを巻き起こす。極めて牧歌的な風景の中で小さな革命が起こるのだ。舞台はチーズで有名なスイスのエメンタール地方。ヒロインが得意とする美しい手仕事は彼の地の伝統であり、また、夢を実現させ生きる喜びを見出す革新的なパワーにもなるのだ。他言語国家ゆえに大ヒット映画は生まれにくいとされるスイスで、ハリウッド大作を抑え2006年度の観客動員数 No.１を獲得した本作。88歳で映画初主演を果たしたシュテファニー・グラーザーを筆頭にベテラン女優たちを輝かせたのは、1972年生まれの新鋭女性監督ベティナ・オベルリ。
[ 2008年10月18日公開 ]

コメント(4)

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[1] mixiユーザー 11月02日 14:32

　スイスで、ハリウッド大作を抑え大ヒット映画となっただけに、なかなかの傑作でした。今月公開のドキュメンタリー『ヤング＠ハート』も合わせてみていただければ、老いることが決して希望がなくなってしまうことでなく、『夢への扉』を開く勇気があれば、人生の輝きは何度でもやってくるものであると、気持ちを前向きさせてくれる作品です。

　冒頭に出てくるマルタは、９ヶ月前に夫を亡くして、寝込んでばかりの精気がない状態でした。そんなマルタに、ひょんなことから裁縫上手が見込まれて、裁縫の仕事が舞い込みます。街へ必要な布の買い出しに出かけたとき、久しぶりに手に取るレース素材にマルタの目つきが変わってきます。決定的なのは、一緒に来ていた友達に付き合って、ランジェリーショップに入ったとき。
　次々その店の下着に駄目出しし、下着は、手縫いに限るのよと力説するとき、今まで寝たきりになっていたのが嘘のように、生き生きとした表情に変わっていったのでした。
　以後村にランジェリーシップを立ち上げるまで、生き生きとして開店準備に勤しむマルタの姿が描かれます。
　どんなに老いても、夢に向かって頑張っている時は、表情が違ってくるものですね。

　でも、しかし保守的な村では、マルタの夢はただ周りから冷笑され軽蔑されるだけ。特にマルタの息子は、村の牧師だったのです。彼は、強引に店を聖書読書会の会場に作り替えようとします。
　またマルタの仲間にも、息子が地域の政治リーダーで超保守。何かにつけて、マルタの店に圧力をかけてきます。おかげて、ただでさえ人口の少ない村にあるマルタの店は客足がピタリ途絶えます。

　もう止めようかと落ち込むマルタに仲間のフリーダから、インターネットショップを持ちかけられます。老婆たちの集団がインターネットショップでサクセスを掴むというストーリーが何とも奇想天外。しかも、インターネットにたどり着く複線もきちんと描かれているのです。
　ラストは、さんざん押さえつけられてきたマルタたちの大反撃があります。すっきり終わって痛快でした。

　本作では、女性のベティナ・オベルリ監督が、故郷のエメンタール地方に住む自身の祖母の生活からヒントを得て、心あたたまる力強い作品を見事に描いたものです。
　息子の牧師には、愛人がいたり、地域の政治リーダーは、郷土を愛すると言いながら自分の父親を施設に押し込もうとしたり、小さなコミュニティーが抱えがちな保守的道徳観に対して風刺も効いています。
　　映画初主演とはいえ、スイスの国民的人気を集める女優だけにシュテファニー・グラーザーのマルタ役はとても自然で、表情が豊かでした。

　また、エメンタール地方はスイスの山間の小さな村。とてもきれいなアルプスの風景と町並み。そして地元名物の焼き菓子や小物類が出てきて、ちょっとスイスに旅した気分も味わえました。

[3] mixiユーザー 05月11日 23:08

今日、偶然ＢＳでこの作品を観ました。

老女達が見せるチャーミングな表情、凛とした姿に見とれてしまいました