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「ゼロの五線譜」コミュの15歳、僕は此処に居る。

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(1)プロローグ



2002年、3月15日。














僕は死んだ。

コメント(3)

(2)1999年4月7日

この日は、春とは思えない位寒く、雪が降っていた。
僕は4月7日、中学校に入学した。
まだ着慣れていない制服は見慣れないものでもあって、つい最近まで私服で登校していた同級生が同じ格好をして歩いている姿を見て、少々戸惑いを感じているのは僕だけじゃないだろう。

僕のクラスは、1年3組だった。クラスの中で知っている人はたった3人。
僕はどちらかと言えば、人数の少ない学校からここへ来た。
…僕は学校が嫌いだった。
たいして役にも立たない様な授業。話の合わないクラスメイト。そして何より「先生」が嫌いだった。僕の小学校の先生はがさつな男の先生で、気分野で、頭に血がのぼるとすぐに手を出すような先生だった。
僕は比較的成績も良く、ただ少し運動が嫌いだという事以外にはたいして問題のない「優秀な」生徒だった。いや、「優秀な」生徒でなければいけなかったのだ。

少々話が脱線してしまった。話を戻そうと思う。

僕は2列目の席、前から2番目の席だった。
辺りを見回す。とりあえず、僕が進んで親しくしようと感じる人間はいない。

…チャイムが鳴った。教室の36人の顔はほとんど下を向き、黙っていた。

―再び話が変わることを承知してほしい。

僕は、体罰を受けていた。小学校6年生の頃だった。
先程話したと思うが、僕は「優秀な」生徒でいなければならなかった。それは、先生に殴られる理由を作らないようにするために。
僕はこの「中学校」を、僕を今までけなしてきた先生とそれをただ助けようともせず、見逃してきたクラスメート達に対する復讐の場とするつもりだ。

先生を見る。男だ。
背は165センチ前後。中肉中背で、メガネをかけていて、恐らく全国にあと数十人はいそうな、平凡な顔立ちをしている。

先生は辺りを見て、少し微笑んだ。そして、自己紹介を始めた。
「初めまして。僕の名前は室井勇人(むろい ゆうと)といいます。僕は8月22日生まれの33歳で…。」
長々と話が続いた。でも僕は、話の長い人はそんなに嫌いじゃない。1人で勝手にしゃべってくれてさえいれば、こっちは別に何もしなくてもいいからだ。

気がついたら、すでに先生の話は終わっていた。僕は半分も聞いていなかった。

「はい、ではこれから自己紹介をしてもらいます。では前の人から…。」
来た。僕の嫌いな「自己紹介」だ。僕は自分を主張することも、他人を知ることも全く興味が無いのだ。

「じゃ、はい次の人。」

僕の番。僕は静かに席を立った。辺りは少し騒がしかった。
「浅川行人(あさがわ ゆきひと)といいます。宜しくお願いします。」
最低限の言葉を言い、僕は席に着いた。先生は少し戸惑いながら口を開いた。
「あさがわ…ゆきひと君、か。そういえばキミは小学校では大変優秀だったと聞いたぞ。ここでも頑張ってくれよ。」
―今、言うなよ。
僕は心の中でそうつぶやいた。僕の直感で、この室井とかいう奴はきっと馬鹿なのだ。しゃべり好きの、何も考えないような―…。
そこまで考え、僕はふと気付いた。

「むろい…。」
その苗字を頭に入れようとした瞬間、僕は背筋の凍るような感覚を覚えた。

「先生!!!」
僕はつい大声を出してしまった。辺りがざわめく。間髪入れずに僕は続ける。
「先生!先生には兄弟っているんですか?」

「兄弟…?あぁ、弟が1人。弟も今、小学校の先生だ。名前は朗(あきら)と言うんだが…。」

―やっぱり。

「うわぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」
僕は思わず叫んでしまった。そして、教室から走って逃げた。
室井朗。むろいあきら。ムロイアキラ。僕の元担任。僕をさんざんけなしてきた人間のクズ。下等生命体。
僕の手は、少しの恐怖と溢れる喜びで震えた。
偶然とはいえ、なんと絶好の機会なんだろう。入学早々、僕の復讐の対象となる人物が現れたのだから。

声を押し殺してうずくまっていると、室井(兄)が心配そうに駆け寄って来た。
「どうした?…みんな心配してたぞ。気分でも悪いのか?」

ーみんな、って誰なんだよ。僕はそう思いながら、立ち上がった。

「いえ…大丈夫です。少し気分が悪くなっただけですから。室井先生。」
わざとらしい口調で先生を振り切り、僕は1人で教室へと戻っていった。
僕が教室へ戻ると、クラスの「みんな」が一斉にこっちを見た。
となりの女子が、僕を見ながら「大丈夫?」と聞いてきた。僕はうつむいたまま、「あぁ」とだけ答えた。
ただ僕はこれからの楽しい「中学校ライフ」をどう送るか、心臓をドキドキさせながら考えていた。

家に帰って、部屋に戻ると、僕は真っ先に卒業アルバムを開いた。
そして、担任の顔写真を黒マジックで塗り潰した。
2.係(かかり):1

入学から、約一週間が過ぎた。今日の学活(小学校の学級会のようなもの)は、委員会を決めるらしい。
生活。保健。体育。学習。合唱(文化祭のコンクール等のイベント時に活動する。他の委員会と兼務)。学級委員長、副委員長、書記がすんなりと決まっていった。
図書と環境は昔から雑用などが多いためか、よく敬遠され、なかなか決まらないことで有名だった。
逆に生活は人気があり(清掃活動などは環境が行なってくれるためほぼ何もしなくていい)、今でももめている。

そして、そこには僕の姿もあった。

―何故僕がわざわざ決めるのが厄介な委員を希望しているか。

それは、担当している先生が、僕のお目当ての先生だったからだ。

そう。親愛なる僕の室井先生。


結局、ジャンケンという幼稚かつ典型的な勝負で委員は選ばれた。その選ばれし者の中に、僕がいた。今まで12年と少し生きていて、これほどまでにグーを出してよかったと思うことはなかった。きっとこれが最初で最後だろう。

後からアイツに、「委員会でも僕を助けてくれよ」と言われた。

僕はとびっきりの笑顔で、「はい!」と答えた。


給食の時間、僕は同じ班の人ととりとめのない話をしながら時計を見ていた。委員会の時間がとても楽しみだった。
僕の前の席の相田(あいだ)君は、顔の造りのせいか、最初はボーっとした様な奴と思っていたが、案外頭もよく、僕の考えを理解してくれる人だった。新たな発見だ。

そして、5時間目のチャイムが鳴り、数学が終わった。
いよいよ待ちに待った委員会活動の時間だ。

「これから、各種委員会を始めます。委員の生徒は各自決められた場所で待機してください。」
僕はこの放送を聞いて、すぐに駆けていった。

14時40分。
時計の針が14時40分を示した。ついに委員会という名の見世物が始まった。

「では、これから生活委員会を始めたいと思います。起立、礼。」
僕はにやにやと笑った。不気味なくらい笑ってやった。
その日は上級生を指名して、委員長と副委員長、書記と運営会計役を決めて、終わった。

僕は、特に目立った行動は起こさなかった。
ただ。

役割を決めてさっさと委員会を終わらせよう、と提案したのは僕だった。
先生は、役割分担、前期の運営内容、運営目標、そしてお得意の自己紹介、をして終わる予定だったらしい。
僕の読みとしては、僕を筆頭に、ここにいる集団(上級生を含む)は委員活動なんてさっさと終わらせて帰りたいことだろう。だから、僕が用事がある、とか体調が悪い、とか言って適当な理由を漏らせば、あとは上級生が便乗してくれるだろう。

いわゆる「煽動」という行為だ。

案の定、ここにいる集団は馬鹿ばっかりだった。

そして僕の思い通り、先生は若干顔を引きつらせ、不愉快そうな表情を見せていた。

ささやかな僕の抵抗。それが全ての引き金となったことなど、僕はまだ知らなかった。

2.係(かかり):2


「浅川君。」

ふと、うしろで声がしたような気がした。僕は振り向いた。

「あぁ、相田君か。」

彼は、席が近いせいか、僕と少し親しくなった。
彼は息を切らせて僕に話しかけてきた。恐らく走ってきたのだろう。
僕は、彼と一緒に帰った。だれかと一緒に帰りながら、つまらない話をするのもなかなか良いものだった。

家へ帰った。いつものように、誰もいなかった。

ここで、僕の家族について少し話をさせてほしい。
僕は4人家族で、父は大手の製薬会社の課長だ。そのおかげで、僕は何の不自由もなく暮らしている。そのかわり、僕はもう約半年父の顔を見ていない。父は忙しい人なのだ。
母は普通の専業主婦で、エリートで将来も約束されている父とお見合いの末結婚したのだが、生活のすれ違いのせいか、適当な理由を告げては外へ出ていき違う男と会っている。子供とは意外に何でも知っているのだから、そこのところをもう少し頭に入れて欲しいところだ。
そして、高校2年生の姉がいる。
姉は、関西の名門校の特待生としてさぞかし優等生ぶりを発揮しているだろう。自活している上に勉強に追われているのだから、もう何年も会ってないのも無理はないのかもしれない。
そして、僕がいる。

この特異な状況を、ある人は「家庭崩壊」と言うかもしれない。でも僕にとってはこの「環境」は好ましかった。別に悪さをするわけじゃないし、かといってとびきり良い子でいるわけでもない。ただ僕は「誰にも邪魔されない自分だけの時間」がたくさん欲しいだけなのだ。
だから、このままでいいのだ。

翌朝、いつものように学校へ行くと、僕の獲物、いや担任の先生が僕を引きとめた。
「浅川君…昨日はどうしたんだい?委員会をあんなに早く終わらせようとするなんて…。何か、僕に至らないところでも…?」
僕は先生をちらり、と見た。

そして、

「そんなに遠慮しないで下さい。本当は昨日の僕の態度に不満があるんでしょう?」

と、告げた。

―わざと挑発してやった。
僕は、自分の頭の中で最悪の生徒像を形作り、その顔を僕の顔に彫りこんだ。
先生が、何が起きたかわからないような顔をしているうちに、僕は教室へと戻っていった。

それからというもの、先生は僕にものを言わなくなった。優等生ネタも一切聞かない。
何か、僕に怯えるような感じがしていた。

ざまぁみろ。

…雪もなくなり、あたたかな日差しが、春の到来を確かなものとしていた。
僕の目にも、春がすぐそこにあるかの様に、見えたのだった。

あの時は。

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