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「ゼロの五線譜」コミュの「自滅裁判」

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【第0日目:絶対論】

この世には、「絶対」という存在が確かにある、とお考えでしょうか?
きっと皆様は「絶対」という言葉を日常的に使用していることでしょう。

しかし、この世には本当に「絶対」というものがあるのでしょうか?

答えは…貴方が決めてください。

「人間」という不確かな存在が、同じく不確かな「人間」を支配し、裁いている日常。
そこには、「絶対」間違いがないと言えるのでしょうか?

答えは…それも貴方が決めてください。

私はこの疑問に答えを出すことができません。

なぜなら…









私も、人間だからです。

コメント(7)

【第1日目:矛盾】

「連続凶悪殺人犯に対する死刑取り下げの動き」

今日の新聞もテレビもネットも、この話題で持ちきりだ。
無理もない。
まだ僕が小さい頃に7人もの赤の他人を殺して、時効ギリギリまで逃げていた、某殺人犯の死刑が取り下げられる、という話なのだ。
理由は精神がどーのこーのという理由。
普通じゃない精神状態と認められたら、刑が軽くなると言われている。

僕はテレビを消して、溜め息をついた。

嫌になる。

精神がどうとか、病気がなんとかって。
言い訳じゃないか。
どんな状態にしろ、やったことはやったこと。

こいつ、人殺してんだぞ?

仮に減刑になって、いつか出所してきてみろ。
僕はそんな奴と暮らしたくはない。

日本は間違っている。

遺族が払っている税金で、受刑者が飯を食って、布団に入る。
遺族が払っている税金で、「更生」だかなんだか知らないが、犯罪者が舞い戻るのを手助けしている。

舞い戻った犯罪者全てがそうとは限らないが、再犯に走る奴だっている。

日本は間違っている。

陪審員制度とかいうものが取り入れられたけど、僕が仮に陪審員、いや、裁判長になったら、

犯罪者はみんな死刑だ。とくに殺人を犯した奴なんて。

法律を盾にして甘い汁を吸おうとしている奴、みんな死ね。
僕にもし力があれば、…片っ端から潰してやる。

親が警察官だとか、そういうのは関係無しに、僕は正義心に燃えていた。
僕は矛盾することが許せないだけだ。

ただ、それだけなのだ。
【第2日目:枯渇】

だだっ広いだけのリビング。

そこにはかつて「彼」がいた。

「彼」はアクアリウムに凝っていて、部屋には巨大な水槽が構えている。
その中には珍しい熱帯魚や、なにやら不思議な形をしている水草が蠢いている。

シンプルで無機質なデザインの時計は、針を休めない。

玄関にはブランド物、と一目でわかる悪趣味な革靴が1足。
それとは対照的に、かなり履き込んだ、と見られるスニーカー、それとサンダル。
くつべらが無造作に床に置いてある。

キッチンには、外国製のスパイス。
それとフライパン、鍋、ボウル。
蛇口から漏れる水がシンクを打つ音が、かすかに聞こえる。

時計の針が、14時という時間を示した。勿論針は動き続ける。

「彼」が吸っていたと思える煙草が床に転がっていた。
中身は5本。

シーツがくしゃくしゃになったベッドルーム。

舌を出しているかのようにネクタイが垂れ下がる、開けっ放しのクローゼット。











そして、バスルームの、血痕。










そこに「彼」は、いた。









こんな、ことになるとは思わなかっただろう。

「彼」の瞳はとうに光を失っていた。
「彼」の鼓動はすでに止んでいた。

「彼」はこの世からすでに消えていた。









主人を失ったアクアリウム内の熱帯魚だけが、その空間で唯一「生」を受けていた。









蛇口の水漏れが、止まった。










そして、この空間から「音」が消えた。









そう、「彼」のように。
【第3日目:N】

「またか…これで5件目だぞ…。」

ここ数年で薄さを増した頭を掻きながら、その刑事はパトカーから降りてきた。
訝しげな面持ちで、さっきまでくゆらせていた煙草を携帯灰皿に放り、「現場」と呼ばれるマンションへ向かう。

「あ、黒崎さん、お疲れ様です。」

「生憎ながら、本当にお疲れだよ。」

黒崎、と呼ばれた刑事が、ロープをくぐって部屋へと滑り込む。
さっきコートのポケットにねじこんだ携帯灰皿を危うく落としそうになりながら、彼はコートを脱ぎ、小脇に抱えた。

「相変わらず、酷いな。」

見慣れたブルーシート。
その凹凸でだいたい、中身の人間がどういう状態かわかるようになってしまったのはいつからだろうか。
ガイシャ、と呼ばれるその中身を見るたびに嘔吐していた頃の自分が懐かしくも思える。
が、今は過去の思い出に浸っている場合ではない。

黒崎は手を合わせて、ブルーシートをめくる。



―やっぱり。









致命傷を与えない程度の浅い外傷。
ある程度傷を負わせて、一気にグサリ。
必ず、心臓を一突きして殺している。

心臓を貫くまで、まるで遊んでいるかのようにいたぶる。

そして…









「…N、か。」

黒崎がぽつり、と、横にいた若い刑事に語りかけた。

「はい。」

若い刑事が黒崎に答える。黒崎の眉間に深い縦皺がひとすじ、浮かぶ。




「N」
この界隈で起きる、怪奇な殺人事件。
被害者はすべて同じ方法で殺害されている。
ある程度の傷を負わされてから、最後は急所を一突き。
それで即死している。おそらく今回のガイシャもそうだろう。

そして、死体の右頬に刻まれている「N」のアルファベット。
なにか棒のようなものにガイシャの血をつけて、ペイント作業をしている。









そして、被害者は必ず









前科者。









黒崎はブルーシートを戻した。
そして、溜め息を吐いて、静かに目を瞑った。





【第4日目:鼓動】

「犯罪歴のある人間を狙った連続殺人、依然後を絶たず」

メディアは、この事件で沸いていた。

僕は相変わらず、テレビの電源を入れたり、消したり。









やっぱり、この世界はバカばっかりだ。









僕は静寂を取り戻した空間でひとり、ベランダの青空を見ていた。
よく、祖母が「神様は全ての人に雨を降らせる」と有り難がっていたのを思い出す。

―馬鹿馬鹿しい。

もし神様とかいうものが実在するなら、なぜこの世がある事を赦しているのだろう。
メディアが煽動されているこの事態。
つい最近まで「加害者」として蔑まれていた存在の人間が一転「被害者」として哀れまれている。

かつては「加害者」だった、この死体たちに酷い目に遭わされた、かつての「被害者」はどう感じているのだろう。

矛盾している。

この猟奇的殺人者、という長ったらしいレッテルを貼られた、「N」という人物は何を思って殺人を繰り返しているのだろう。









案外、僕と似た理由で―、もとい、僕に似た人間なのかもしれない。
この、「N」と名乗る人物は…。









僕の思考と、メディアを撹乱させ続けている、この「N」という人物。
この「N」が何処か近くにいるのかもしれない、と思うと、僕は寒気がした。

このときの寒気が恐怖からなのか、それとも好奇心からなのか、そのときの僕には全く、わからなかった。





ベランダの空が、少し、曇った。
【第5日目:虚】

死ねよ。

死んでしまえよ。

みんな死ね。

死ね。

死ね。









―あの瞬間が、堪らない。









追い詰められたネズミみたいな顔してさ。
今まで自分がしていた癖にされるのは嫌なんだね?

いや、この場合は、俺がネズミなのかな?

窮鼠猫を噛む。
猫気取りの犯罪者を追い詰めて噛み殺す。

いや違うか。

俺は別に追い詰められてなんかいないから「窮鼠」ではないか。

結果論、と言えば言葉は足りるだろう。

要は、噛み殺すことが出来ればそれでいいのだ。









―突き刺した瞬間に、身体が僅かに跳ね上がるのだ。









あくまで噛み殺すことが目的であって、事後には興味がない。
死体愛好者でもないしカニバリズムも推奨してるわけではない。

ただ俺は俺の思うようにしているだけ。

だって生きてたところで危険でしょ。実際。

一種の清掃作業、と言えば納得してくれるかな?









―あの瞬間。あの一気に刺した瞬間に溢れるあたたかい液体。
跳ね上がって、痙攣する身体。









並なセックスよりも、恍惚感に浸れる。









快楽殺人、というよりは猟奇的、という表現のほうが好ましい。

俺が俺…「N」でいられるうちは、まだまだ…止められない。










俺は、「N」。

俺の人格は「N」なのだ。
【第6章:追憶(1)】

−今月に入って、もう10件近くになっている。

警視庁の前科者リストの漏洩だとか、被害者遺族の復讐だとか、近辺に在住する前科者が地方に流れ出るとか出ないとか。

メディアの妄想はとどまるところを知らない。

もっとも、その妄想を肥大させているのは、未だ犯人にたどり着くことができない私たち警察なのだが。




「黒崎…尻尾は掴めたか?」

「いえ、尻尾どころか、頭の先すら見えません。」

「くそ、いったいどこのどいつなんだ。」

−煙草を蒸気機関車のようにふかしながら、黒崎の上司である井上はそう言って目を細めた。

井上と黒崎は、今回のこの連続殺人の捜査を任されている。
特に井上は今までの功績が評価され、この捜査では相当重要なポジションについているようだ。
そして、井上も黒崎も、お互いを信頼していた。

それには、黒崎の過去が関係していた。

お互いの信頼関係が芽生えるまで…それまで、黒崎は闇の淵を歩いていた。












それは、15年前に遡る…。









黒崎には、「かつて」家族が居た。

黒崎自身、妻、そしてひとり息子。









「かつて」そこにあった幸せ。

しかしそれは、あっけなく取り去られたのだ。









あの忌まわしい事件によって。
【第6章:追憶(2)】

「強盗殺人事件発生 被害者宅の夫は警察官」


黒崎は資料室で、そんな見出しの新聞記事を眺めていた。


「15年、か…。」









黒崎は当時、大卒で試験に合格し、警察官になってから5年が過ぎていた。

結婚して2年と半年。子どもがひとり。男の子だった。


黒崎は幸せだった。

人間の生死に立ち合い、人間の醜い部分、弱い部分、そういったものを露出した空間。現場。
神経が磨り減るような思いに何度なったことか。それでも、黒崎は何があってもくじけることはなかった。

守るものが、あった。









強盗殺人。忘れもしない、6月の雨降り。梅雨の真っ只中だった。

連絡を受け、血相をかえて駆け込んだ黒崎を迎えたもの。


いつもなら自分が愛すべきもののために開けていたドア。
今では黄色いテープが張り巡らされ、そのドアも開いていた。

いつもなら自分がネクタイを緩めながら歩いた廊下。
今では自分と同じ、紺色の制服を着た人間が出入りしている。



いつもなら自分を真っ先に迎えてくれた、愛する存在。



今では、もの言わぬ固体物となって、静かにシートをかけられている。









「死因は失血死、心臓を一突き。」









身内で起こった事件のため、黒崎は捜査に参加できなかった。
黒崎のひとり息子は、殺された妻の祖父母に引き取られていった。









―黒崎は静かに、資料室を後にした。


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