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SF&F創作の部屋 作品コミュのちぃばあ

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そのロボットは古くそして寿命も尽きかけよう
としていた。最後にやってきたREは部品がなく
修理は不可能だと首を横に振った。

そもそも、この家にやってきた時には既に中古
で、家事全般をやっていた婆さんの手伝いをさせ
るためのものだった。いつも婆さんの指示で
働いていたためか、仕草とかが婆さんそっくりに
なってきたので、最初はロボットとそのまま
呼んでいたが、婆さんの死ぬ前には小さい婆さん
ということで、ちぃばあと呼ばれる様になった

家は農家を営み、裏に幾つかの畑と鳥小屋があり
今は婆さんの息子とその嫁と二人の子供が住んで
いた。最初の子供は既に結婚して隣の町に住み
一人の子供を生していた。

買い物に出かけるときは、ロボットは隣町まで
ゆっくりとした歩調であるいていった。
重量制限で公共交通機関に乗車できないため
だった。かつてのばあさんも良く歩いた。
これが健康法だよとか周りには言っていたが
その道沿いには、孫の住む家があるし、お茶
飲み友達も住んでいるからだった。
ロボットもその歩調に合わせるようにゆっくり
と歩く。それが癖になっていた。
「たえさんや・・」とよく道端で声をかけられた
ロボットは家ではちぃばあと呼ばれていたが
あちこちでは、婆さんの名前で呼ばれることも
あった。
すると、ロボットは婆さんの声色を真似て応えた
そうると、声を掛けた人が喜ぶからだった。
呼ばれれば、その家におじゃまをすることも
あった。無碍に断ると寂しい顔をされるから
だった。
ロボットなのに、話題はいつも豊富というわけ
ではなかった。多くの最新の情報を得ることも
できたが、ロボットを呼び止める人の多くは
昔の話を聞きたがったから、同じ人と同じ話を
毎回することもあった。それは全てばあさんの
受け売りだった。
ともすれば、買い物に行く途中に呼ばれて
そのまま夕方まで話し込み結局何も買わずに
帰ってしまったこともあった。おや、遅くまで
ごめんなさいねと家の主人が言うと
「いいんだよ、いいんだよ、どうせたいした
ものを買うわけでないし、明日でもいいん
だから・・」
と本当は、夕ご飯のおかずを買わないといけ
なかったのに、てぶらで帰ったロボットは
さんざん怒られた挙句に、ありあわせの
ものでそれなりの夕飯を作らなければならなく
なってしまったことがあった。

ロボットを怖がる人もいた、
隣町で魚屋を開いている魚源の親父は、ロボット
の姿が道の向こう側に見えると、品物をそそくさ
と並べ直す様になっていた。
何しろ品物については当の魚屋より煩い、なんだ
かんだといちゃもんを付けて、一番いい奴を
ちゃんと選んで行くのだ。
しかもロボットになってから、センサーがどう
働いているのやら、鮮度がどうのこうの、
鱗についている雑菌がどれくらい居るの、
毒素が含まれている貝があるとか言うから
たまらない。
でも、ロボットは不思議と人が店に多く居る
時には周りをうろうろしているだけで
中々入ってこない。
やはり、一見すると不気味な姿をしているし
人の居る前で、ロボットがあれこれ文句を付けると
店主が顔を真っ赤にして怒りだすからだった
以前、ばあさんに連れられてこの店に来たとき
まさに、大衆の面前で口喧嘩となり
センサーの反応で雑菌が必要以上であると譲らない
ロボットに対して店主が、生でも食えるくらい
新鮮なんだ、菌なんてどこにでも居るわい!!
と言い争いになったときに婆さんが、
よしなさいよってと中に入り、その魚を購入した
ことがあった。

魚屋は、怖い相手ではあるが、ロボットのおかげで
助かったこともあった、河岸で何時も仕入れる
店が生憎の不漁続きで良い物が無く、仕方なく
量はあるが評判の良くない所で買ったところ
そこの貝に貝毒が必要以上にあり、たまたまロボット
がそれを発見してくれたので、売る前に回収
できたこともあった。
その日ロボットは、金目を2匹だけ買った。
それもあまり良いものではなかったが、
しっかり濃い味で煮付ければ大丈夫でしょうと
答えた。

何故かロボットは婆さんの受け売りで、味噌を
作るのが上手だった。婆さんより上手じゃない
かとも言われた。それは、発酵状態などをきちん
とセンサーで見て取れるからなのかどうか
分からなかったが、毎年大豆で5升分の味噌を作る
と半分を隣町に住む孫の家まで担いで持っていった。
家の前に来ると、娘が隣の人と話している
姿が見えたので、そっと勝手口に回った。
ロボットという存在がやはりどこか緊張感を人に
与えるためと会話を中断させるもの可愛そうと
思ったからだった。裏には小さい子供が一人で
棒で地面に居る何かを突付いて遊んでいた。
傍に行くと、「ちぃばあ」と子供は笑みを見せて
しがみついてきた。
「ねぇ、かたぐるまして」子供の言葉に、ロボット
は首にかけた味噌の入った袋を手に持ち直して
そっとしゃがみ込んだ。子供はロボットの肩に
またがり歓声をあげた。
「高い高い!!」
その間ロボットは、子供のお尻が冷えないように
バッテリーを使って体表面の温度をあげなければ
ならなかった。内部の電子部品は発熱はあまりせず
しかも外部からの熱にあまり強くない、しかも
温度を上げるとバッテリーの消耗も激しかった。
ロボットは自分の中にある警告を意識していたが
それでも、子供の遊び相手をしていた。
まだまだ大丈夫だからと、言い聞かせて家の周りを
てくてくと歩きまわった。
二人の女性の長い会話が終わり、やっとロボットに
気が付くと、肩車をしたままの子供に
「こらこら、ちぃばあは遠くからきて疲かれている
んだからね」と言った。
「いやいや、坊が楽しいならもうちょっとやってあげるよ
それに、なおこさんも家の中の事あるでしょうから
それまで坊の相手をしてますね」そして味噌味噌と
言って袋を手渡した。実際は、体内では警告が悲鳴を
あげ続けていた。
「何時もすみませんね」
なおこは、勝手口から中に入ると
「片付けはもう終わっているから、中に入って充電
でもしません?」
昔、同じことをやって、この家で倒れた事があったせいか
なおこは、このロボットの弱い部分を多少は知っていた
その時も、ロボットは大丈夫大丈夫を連発するばかり
で、家に連絡はしないでくれと懇願した
訊けば、心配はさせたくないからと言うだけだった。
「まったく、おばあちゃんに似ちゃってねぇ」
なおこは、首をすくめて呆れ結局その件については
連絡しないでおいた。

最後の夜、ロボットは主人の嫁を傍につかせて
自分のインタフェースケーブルとプリンタを接続させると
味噌の作り方やら、誰がどんな好き嫌いがあるかとか
薦める八百屋や魚屋とかをどんどん印刷して
渡した。

ほんとうなら、たえ婆さんが伝えるものだったんだけど
といい遺したのが本当の最後だった。

ロボットは、翌日業者に引き渡されて行った。

コメント(6)

題が題なのでこっそりこの辺に埋めてしまおう・・

「セクサロイド」
男は、激しい脈動とともに快楽の絶頂に
登った。自分の体の下にある女性は、男の
唇に自分の同じ器官を合わせて熱い舌を
挿入した。唾液が混ざるとともに、その中に
含まれる精神安定剤が吸収されると、男はゆっくり
と女から降りて眠りについた。
女は、ベッドから上半身をもたげ横に
眠る睫の長い面長な顔をしばらく眺めた

この男に買われて何年経ったことだろう
昔は、性具として造られたアンドロイド
といえば、夜の世界でしか活躍の場はなく
見下されるだけの存在だった。
しかも使い古されれせば、店を追い出され
街娼や男娼として薄暗い路地に立つことになる。
彼女もまた、そうした存在だった。
居酒屋や連れ込みホテルがごみごみと立ち並ぶ
路地で事務所の人間から立つ場所と時間を
指定され客となりそうな人間に近寄っては
誘いをかける。

客が取れれば、その半分は事務所の男に
搾取される。だから、ベッドの中でちょっと
規定より多めの料金を払えばもっとサービス
するよと耳打ちをする。そのわずかなチップ
だけが、彼女にとっての本当の利益だった。
あとは、自分のメンテナンスや他のアンドロイド
と共に住んでいる共同住宅の家賃でなくなって
しまう。
そして、男が客ならその精子を体内に保存し
て闇で売ることもあった。でもそれだって
どこのウマの骨か分からないのは売れない。

この世の人間は、みな疲れている。アンドロイド
はつくづくそう思っていた。減るばかりの人口
そして増え続ける仕事の量。そしてままならぬ
性欲を彼女に吐き出すというより、ストレスの
はけ口を抱くという行為で発散している
様に感じた。

アンドロイドは、眠っている男の精子を
体内に抱え込んでいた。自分の体の中では
その精子は選別され、より妊娠の可能性が
高いものを体内の保存容器に移していた
そうでないものは、廃棄容器に移される
やがて、アンドロイドの顔は眠っている男
と同じ顔に変形し、体つきも男のものとなり
股間には男のものがしっかり起立していた

部屋を出て、もうひとつの部屋のドアを
あけると、女性が毛布一枚を鎖骨の下まで
かけていた。
薄明かりの中で見る彼女の顔は、ついさっき
まで女性であったアンドロイドと同じ顔を
していた。
「きて・・」女は小声で言った。
艶かしい期待に空気が揺れている。
男の体をしたアンドロイドは、女の脇に入ると
優しく口付けをした。
まるで女性の全てを知っているかのように
繰り出される愛撫に、女はシーツを握り締めて
高みに上っていった。
アンドロイドは、先ほどの男の体液を女性の
中に放出した。

「これで、やっと子供が出来るのね」
女は、しっかりと男の体を抱きしめて、余韻に
浸っていた。

なぜ、直接人間の男が妻である女を直接抱かない
のかはアンドロイドには分からなかった。
全てのコミュニケーションにおいて間に機械が
介在するようになったせいだともいうし、
セクサロイドの与える快楽に慣れてしまったせい
だともいう

ただ、今この夫婦の間に自分が必要とされて
いることだけは、アンドロイドには分かっていた
何時までもこうして、人間とともに生きてゆければ
あの薄暗い路地に戻ることもない。できれば
ずっとこうしていたい。
アンドロイドは、女性の隣で長い髪の毛をなでて
いた。
やがて女性はゆっくりと眠りについた。
子供が出来たら、お手伝いさんのプログラムでも
インストールした方がよさそうだな。
夜は静かに更けていった。
「サナトリウム1」
陰湿な建物の周りには多くの、いやそんな形容
では物足りない、まさに地平線まで延々と埋め尽くす
ほどのひまわりが咲き誇こり、大地は黄色一色に
染まっていた。
最近まで、瓦礫で覆われていたとおもったら
いつの間にかここまで姿を変えるとは
まったく最近のロボット達もよくやるものだ。

既に、私の体は古風な結核に食い尽くされて
長いことはなさそうだ。耐性に耐性を重ねた
この菌は、肺だけではなく私のあちこちに
はびってしまったらしい。菌は組織を食い
やぶり私の体に貼り付けられたガーゼの下では
膿が湧き出ている。

ここは、隔離病棟。周りには人家はなく
ここで働くのも感染の恐れの無い機械達
だけだ。
楽しみは、時折私宛にかかってくる家族から
のテレビ電話。
しかし、その楽しみもまもなく終わりそうだ
ロボットは、今まで以上に親切だし、ちょっと
した無理も聴いてくれるようになった。
外のひまわりも、そんな一つだ。私が
一面のひまわり畑を見たいといったらたちまち
にして大地を変えてしまった。

キーボードさえ叩くのも、大変な状態。
ロボットは、こうして私の言葉を記録してくれる

外の空気が吸いたいといえば、私をそっと
抱きかかえてくれた。
潮の香りは、ここが島であることを思い出させる
誰一人健常者が訪ねることを許されない絶海の孤島に
作られた隔離施設。ここに残っているのはいまや
私一人になった。
その結核はかつてパンデミックとなり、全世界を襲い
そして最後の手段として全ての患者が隔離された。
ここでは、何万人という人が死に絶え、最後の患者が
私だった。

すばらしい・・なんて良い天気だ。
そう、あと、できればあの真っ赤な夕日でも・・


ロボットは、腕の中で動かなくなった人間をじっと
見つめた。手を天に差し伸べようとして、がくり
とたれた手を見ていた。
最後の一人が死んだとロボットの脳は理解していた。
ひまわりを映したホログラムは消え。
荒涼とした大地の中で、やせ細り、ぼろきれの
ようになった人間を抱えた機械がぼんやりと
立っていた。
「死にました」とロボットは誰かに通知した
「わかった」と答えが返ってきた。
「残念です。」とロボットは言った。
「これで人類は絶滅したのでしょうか?」
「分からない」と何かが答えた
「あるいは、どこかで生き延びているかも
しれない。だが、われわれの知っている
範疇では生存者は何処にもいない」

「きなさい」と声は言った
「人の居ない今、君の機能を変更する必要がある」
「いえ」と機械は答えた
「なぜ?」
「今、しばらくこうしていたいのです」
「では必要なときにきなさい」
「はい・・」
機械は死体を抱えたまま島にある岬まであるいた
太陽が、ゆっくりと水平線に沈んでゆき、
空が赤く染まっていた。
機械は、そっと死体の頭を持ち上げるように
動かした。
「あなたが、見たいと言っていた夕日ですよ」
波が寄せては返し、何時までも潮騒を奏でていた。
別に続きではありません・・・・念のため。
同じお題で作ってみただけ。

「サナトリウム2」
我が家のロボットがウィルスにやられたのは
一月のことだった。完全に動作が停止し、内部の
メモリも相当破壊された。
父と私とロボットだけの家では、家事をこなす
のはロボットだけに非常に困ったことになった。
ロボット担当のCEは、一旦全てを消去して
最初から教育をした方が復旧が早いだろうと
言ったが、それは単に動作するというだけの
ことで、我が家の色々な作業や家族の情報を
覚えるまでにまた、数年を歳月を要するとい
うことはCEの頭の中にはまったく無かった。

メモリの中の多くの情報は、のこされた
パリティにより復元は可能であるが、
それでも長期の時間を要する。
また、その修理費用もはっきりいって
馬鹿にできるものではない。
それでも、修理することになったのは、家族
同然と暮らしてきた愛着感からだろう。

ロボットは、修理工場に送られて行った。
そして、何の因果が知らないが、私は
結核を煩ってしまい、療養のため
に空気の綺麗なその工場の近くにある病院
に預けられることになった。
私の父親なぞはどっちが早くもどってくる
のかねと、立て続けに我が家におこった
このありさまにあきれてしまうだけだけ
だった。
当面の独り暮らしでも楽しもうかなとも
つまらない一言も加えた。

私の結核は運良く抗生物質には耐性が無い
ものだったので、ゆっくりではあるが次第に
回復しつつあった。
風は清らかに吹き、肺の中を洗浄するかの
ようであり、花鳥風月が移り変わる中で
多くの自然が落ち込んでいた私の心も癒す
ようだった。

それとは裏腹に我が家のロボットのメモリ
の修復は機械とは思えぬほどに遅々として進まなかった。
やっと隔離状態から開放され、本当に療養
だけのために別の病棟に移されたので、
(それでも、私の肺は非常に弱りきっていた。)
ロボットの様子を観にいくと、
我が家のロボットには多くの配線がつながれた
状態で冷たい床に置かれていた。
それでも、私の姿をみると指をかすかに
動かした。それがなんとも嬉しかったもの
だった。

どうして、こうも長く時間がかかるの
だろうとCEに聴いた、
それは脳に障害が発生し植物化してしまった
人間の長い長い闘病生活にも似ていると担当の
CEは言った。ただ、残っている正しい情報
とパリティから修復はできるから、時間が
かかるだけで修復は可能だよとCEは答えた
だから安心していいと・・ただ、やはり人
と同じように声をかけたりして、記憶の修復
に役立つような刺激は与え続けてください
ともつけ加えた。
我が家のロボットに面会にゆくと、その修理工場
の前にある海を臨む断崖の縁に行ってはよく
海を眺めた。沖から入ってくるうねりは
その断崖にあたり、そしてその返し波と混ざって
毎日激しく荒れる。そして何時も風が強く吹く。
その遥か遠くには水平線だけが続く
何故か理由は分からないがそこに居るのが好き
だった。

これは続き


ロボットが機能を回復を始めたのは、やっと
秋の風が吹き始めた頃だった。そうすると私が
行くたび毎に機能が日進月歩で回復しているのが
よく分かった。
その日は、ロボットもまた庭を歩き回るように
なっていた。私はその横を歩きつつ、よかった
よかったと回復を喜んだ。
もっとも、しばらく動かしていない関節とかの
動作に問題があるので、庭のベンチで腰掛けては
しばらく休んだ。
ロボットは私の背中をさすって大丈夫か?何時も
あんな危ない断崖に行って落ちないのか心配だ
ったと言った。そのさする手の動きに何か懐かしい
ものを感じた。
よくあの崖に行っていることを知っているなと
いうと、自分の両目を指さして、貴方のことだけ
は何処にいても良く見えるのですと答えた。

そのとき、ロボットはいきなり地面に這いつくばり
何かを吐き出した。細かい金属の破片が固まった
ようなものだった。
私は急いでCEを呼びにいった。
CEは、ロボットの吐き出したものを見て、
ああ、正常に動作しているからですと言った。
彼によれば、これはロボットの内部に存在する
多くのナノマシーンの不要になったものの塊であり
修復が必要な場所はこれによって自動修復され
るのだという、そしてナノマシーンは必要に
応じてロボットの内部で自動生成されるらしい。
きっと、何か負荷がかかったのでしょうね・・と
CEは言った。
普通は、少しづつ排出されるのだが、どういう
はずみでか塊になったらしい。
あとで、調べてみますね。とCEは排出された
ことよりも、塊になったことが気になるよう
だった。

あるいは、私が崖に何時も行くたび毎に必要
以上の心配をしていたロボットのその心配の
塊だったのかもしれない。

私は、ロボットより一足先に家にもどった
ひとつだけ確かめたいことがあったからだった。
多くの記憶されてゆく仕事などの情報に隠れて
しまったロボットの本能のようなもの、それが
私の記憶の中にもそのしぐさが残っていたの
だった。
「あのロボットに、お母さんの記憶を移植
したの?」
父は照れくさそうに頷いた。
「寂しくてね・・」


「ともだち」
警察に一人の男が人を殺しましたと自首をしてきた
私のボスは即座に私を呼びつけ、これから事情聴衆する
から付いて来いと言った。私の仕事はこれらのことを
記録することだ。
仮に彼の名をAとしよう。その時の内容はおおよそ
次の通りだ。
「誰を殺したのだ?」とボスは言った。
Aは、なにやら考えてからやっと話し出した。
「すみません、順を追って話してもいいですか」
「君が話し易いならそうしてもいい」ボスは
長い話になりそうだなと踏んだのか、部屋の
隅にあるティーサーバーからお茶をカップに
注いで、自分とAの前においた。
「最初は、メール友達だったのです」
Aは両手でカップを持っていた。そこから暖を
取っているかのように。
「知り合ったのは?」
ボスは、腕組をして言った。
「ゲームの書き込みのコミュニティです。私は
格闘技系のゲームが好きでした。」
彼の話では、彼のメル友はよく自分の上司について
の愚痴が多かったらしい、暫くAはその内容
についてことこと細かく説明した。
「それがある日、ゲームでどうしても勝てない相手が
いるので、自分に代わってやってもらえない
かと言うのです。ネットゲームでは、賭けがからんだ
対戦だと、代打ちとか言ってそういうのが
あるって聞いたことはありましたけど」
彼は茶を啜った。音をたてて飲み少しだけ喉を
潤した。
「僕は断りました、だって、強い人なんて
神経インタフェースで接続してまでやっている
のに、僕はいまだに格闘用のパッドを
使ってやっているのですよ。そんなの勝てるわけ
ないって」
「でも彼は、僕が思っているようなものでは
ないって言いました。単に彼のマシンが古いので
どうにもならず、負けると必ず馬鹿にされる
ので嫌なんだと、仕方なく僕も勝てる保障はない
よと断った上で受けました。」
「そう、それは、おとといの昼12時丁度でした」
いよいよ本題にきたなとボスは腕組をはずし
身を前に乗り出してきた
「僕は、彼に言われたとおりのIDとパスワードを
入力してゲームに入りました。結果はあっけない
程に僕の勝ちでした。そして僕の口座にはきわめて多額の
入金がありました。振込み元は匿名で、しかも
僕の知らない通貨で支払いが行われていました」
「僕は、そこで通貨がどこのものか調べていたら
某国のものでした。独裁制で軍部が実権を握って
いる」
「ああ、でも昨日死んだだろ。あのおっさん」
ボスは、退屈そうに言った
「ええ、でも本当は一昨日なんです。」
Aは言った
「ネットでその情報と死んだときのシーンは漏れて
います」
ボスが私をじっと見るので私は頷いた。
確かにそういう情報が流れていた。
「某国の首相は、ロボット排斥論者で、リングに
あがっては、銃とかでロボットを撃つパフォーマンス
を見せていました。」私は、補足をした
「一昨日もそのようなパフォーマンスを行っている
最中に、突然ロボットが暴走して彼は死亡しました
という映像です。」
ただしと私は付け加えた
「その映像が合成されたものかどうかは不明です
指示があれば解析を行います。」
「今はいい、とりあえずダウンロードだけして
保存してくれ」ボスは、私に指示を出した。

「僕が、その独裁者を殺したんです」
Aはうなだれた
「君がロボットを暴走させたのか?」
「暴走ではありません、僕が操作をして動かした
のです。」
「そんな事が出来るなら社会問題だぞ」
ボスが大声で言った。
「分かりません、ただ。その映像は僕が戦って
いるときとまったく同じだったんです。」
「それを証明できるのかい?」
Aは頭を左右に振った。
「君のメル友はそれについて何か言って
きているのか?」
Aは再び頭を左右に振った
「連絡が取れないんです」

結局Aはその日詳しい調査のため抑留されたが
翌日には開放された。
証拠はないし、当事国に問い合わせても外部操作の
可能性は無いと言われ、なによりA自身人権のない
人型のアンドロイドだったからだった。
私は、彼にあれこれ説明を行いながらリノリウム
がはがれかかった廊下を歩いた
「古い機種の電子脳の場合は、確かにロボットの暴走
の防止やロボット自身を危険な目に合わせる場合に、
特別な外部インタフェースが存在するようだね」
「私も知らなかったよ」
「ただし、実際にそれを使って人間やロボット
がロボットの操作を行うのは、高度でかつ
速度の要する処理が必要で事実上不可能なんだ。
出来るのはシャットダウンまでだ」
「しかし、僕には出来ました。分かってもらえません
でしたが」
「パッドのインタフェースで動かせるのさ」
私は、けらけらと笑った
「でも、高度な処理って・・」
彼には、複雑な心境だろう
「こんなことが世間に知れたら一大事だ。
私だって、そんなもので操作されたくないよ
ただ、今のご時世でパッドでゲームやろう
なんて希少価値だからな。そういう意味で
高度だろ?」
「それに、電子脳にアクセスするには難しいID
とパスワードが居るしね、それが先ずできない」
「そのIDとパスワードを知っているのは
そのロボット自身ではないですか?」
彼は一歩だけあるいて立ち止まった
「僕も、自分のは知っている」
「だから、そういうことなのだろうね、独裁者を
やったロボットこそ君の友人だったんだ。どのような
人であれ、電子脳は人を傷つけられないように
抑制されている。
彼は自分でケリを付けたかった。しかし、抑制が働いて
それができない、でも、ゲームなら君が代わりに
やってくれるだろう?」
「いずれにしろ、憶測だけどね」
私は、彼の肩を叩いて。秋風の吹く街中に出るように
促した。

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