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SF&F創作の部屋 作品コミュの煙

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女の体は炎に包まれつつあった。
その姿が煙に包まれ、見えなくなっていく様をお前は人ごみから見ていた。
元は貴族の娘ということで薬を嗅がされ眠らされているとは言え、その身体が火あぶりになる様を、人々は魔女狩りの熱狂に酔った頭で見ていたが、その姿を見るお前の頭は冷静だった。
お前はただ主人の終わりを見ていた。
生まれてすぐに捨てられたお前はあの女に拾われた。
女はいつでもお前を傍に置いて可愛がった。
世間では勘の強い我侭なお嬢様と思われたお前の主人が、実はただの寂しがり屋なことをお前は知っていた。
世間ではお前の主人が、魔術の品を蒐集していると噂していたが、ただ単に綺麗なものを、それが何であっても蒐集する癖があったことをお前は知っていた。
お前の知る限り、お前の主人はただの娘だった。
だがその趣味がお前の主人の命取りになった。そこに魔女が儀式に使うと言われる宝石があったのだ。
誰の告発であったのかは知らない、だがお前の主人は告発され、形ばかりの裁判にかけられ魔女として処刑されることになった。
炎は彼女の足元の薪を糧に見る見る体を大きくして、煙はあっという間に彼女の姿を覆い隠した。
煙が晴れた時、そこには炭になった薪に混じって消し炭となったお前の主人の身体があった。
魔女の体は墓には埋められず晒される。墓には入れないということは永遠に神の救いが与えられないということだからだ。
だがお前は神を知らない。神の教えなどもちろん知らない。
だから、お前は炭の山を掘り起こしその骨を一本拾い上げる。処刑吏がそれに気付いてお前を追うが、お前は咥えた物を離さずに駆ける。
そして、処刑吏を撒いて逃げた深い深い森の中、深い深い穴を掘ってお前の主人だったそれをそっと埋める。土をかける。
今、お前は気付いただろう。お前は間違いなくあの女を愛していたのだ。
お前は犬。だから、この場において吼えるより他の術を持たない。

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