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SF小説『SAMPLE』を読んでみるコミュのあとがき

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 どうも、作者の日吉舞です。
 ここまでお付き合い頂きました読者の皆様に、心よりお礼を申し上げます。拙い文章力の本作品をお読み頂き、本当にどうもありがとうございました。
 もう少し欲をかいていいのならば、読者の方々からの感想をお寄せ頂きたく存じます。別に賞賛の言葉だけを求めてるわけじゃないですし、厳しいお叱りの言葉も甘んじて受け止めるつもりです。ですので、是非お声を聞かせてくださいませ。お待ちしております。返事も出来る限り書きますので!
 さて、この小説「SAMPLE」は2009年5月末には全編を書き終えていたのですが、そう言えばあとがきを書いてなかったなぁとふと思い出したので、書いてみようかと思います。
 ええと、まずは本作誕生のいきさつとかをぼちぼちと。
 書くきっかけとなったのは、2007年の秋に国立科学博物館で開催されていた「大ロボット博」を見に行ったことでした。私は子どもの頃から少女マンガより図鑑、女の子向けアニメよりロボットアニメと特撮、リカちゃん人形より顕微鏡や双眼鏡、美術館より博物館が好きなアイタタ女でして、大人になった現在もそこから抜け出せないでいます。
 で、大ロボット博は古今のマンガやアニメに登場したロボットから、現代の最新技術を駆使した実用的なロボットまでを展示・解説しているという内容。こりゃー行くしかないでしょう、と意気揚々と家族連れで混雑した秋晴れの上野公園に飛び込んでいきました。
 そこで見かけたのが、その当時主に介護分野での実用を目指して開発中だというロボットスーツ。これは他のロボットとは違い、生身の人間が装着してその動きを助けたり、作業時の負担を減らしてくれる筋力の補助を目的としたものでした。
 そういう分野で活用できるんならいいけど、これって思いっきり軍事転用できるじゃん。
 そう遠くない未来で、軍隊はこういうのを採用してるのかも……
 なんか、面白いものが書けそうじゃない?
 と、ふと考えたところで執筆活動スイッチオン。
 やっぱりビジュアル的な刺激、三次元で実在するものを感じるというのは大事です。
 帰宅してから、それまで数年は軽く錆びついていた知的欲求が回転し始めたことに驚きつつ、現代のハイテク装備や武器の変遷、関係がありそうな分野の資料を調べまくる日々が始まったのです。もともと科学技術オタクな私は、ウハウハしながら本やネットを漁って情報を仕入れていきました。
 まず最初に主人公が戦闘用サイボーグという設定ありきで、自分がどういったものを書きたいのかというテーマを決めてから、話の大筋を考えていきました。
 主人公は自分が女だから女性のほうが書きやすい。軍事兵器の扱いとされるようなもので、近未来が舞台でリアル志向の話にするのなら、物事を知らない未成年はダメ。彼女をサポートする存在として、医療や技術専門のサポーターがいるはず。サイボーグなんかを開発するんだから莫大な資金と大きな組織が絡んでいて、彼女は何と、どうして戦うのか……という感じで、必要なパーツをどんどん埋めていった感じです。
 杉田や生沢、リューといったキャラクターはこういった過程の中で生まれました。そして話の細部が決まってくると、ミリタリー関連に詳しい友人に武器について聞いたり、都市型ゲリラとの戦闘時にどういった作戦を展開するのかとか、専門の資料も集めたり。苦労しながらも楽しんでましたね。
 そしてこの作品の終盤で出てきた、未来と母との対決。
 サイボーグというものが書きたかった!というのはあるのですが、ただそれだけではストーリー的にありふれているし、何よりも書いていて面白くない。そこで、日ごろ自分が疑問に思っていることを何とか盛り込めないかと思いついたのが、今の日本で頻発している殺人事件。
 子が親を殺すという、もうありふれた殺人事件です。
 どうして子どもは、親を殺さなければならなかったのか?
 何か救いはなかったのか?
 フィクションの世界では「親子愛」が何にも勝る美徳として描かれており、時にはそれが奇跡さえ起こすこともあります。
 そんな話を見る度に、こんなのは嘘だ、現実は違うじゃないかといつも思ってました。
 親のいない子はどうなる?
 親から愛されず、見捨てられた子はどうなる?
 そんな子たちに救いはないのか?
 ……と、そこまで考えたときに、主人公たる未来のキャラクターの筋が固まりました。
 彼女は傍目から見れば立派に独立した一人の社会人だけれど、その一方でいつまで経っても親に認めてもらえないことに悩み、自分はどこか人間としての欠陥があると思い込んでます。
 親が自分を心から愛してくれることがなく、尊重してくれないと心のどこかで絶望もしています。その挙句、心が壊れた果てにその思いを元凶にぶつけても理解はされず、心から和解することもなく、根本的な問題は解決しません。
 しかし、それでもいいんじゃないか?と思うが故に、彼女が母を選ばず、パートナーである杉田と共に新天地へ旅立つ、というラストにしました。
 いくら親子でも、互いの気持ちが100パーセントわかるなんてことはありえません。
 人間はこの世に生まれ落ちたときから一人であり、個人です。
 それを誰かが思いのままの人生を歩ませよう、などという権利はないのです。
 たとえそれが肉親でもそうだと、私は思います。
 ただし、みんなが思いのままに振舞っていては社会が崩壊し、とんでもないことになってしまいます。そのために互いを思いやる気持ちが必要だし、理解しようと歩み寄る姿勢が大事になってきます。
 そしてそこで大切なキーワードとなるのが、「私はこの人のことを理解している」と思い上がらないことではないでしょうか。自分が誰よりもこの人のことをわかっている、なんて安易に考えるのはとんでもないエゴです。
 世の中、「絶対」なんてものは時間の流れ以外に存在しません。
 「真実」だって事実を見る瞳の数だけ存在しているわけで、一つじゃない。
 この世界は実に、あいまいなことだらけ。
 でもそれがいいんです。
 何でもかんでもわかっちゃったら、生きていてつまらないわけですし。
 ……で、何だか話が逸れたのですが、この話を通して私が言いたかったのは「肉親以外にも救いはある」ということです。
 もちろん、家族に対して無償の愛を注ぐのが一番普通と言えるでしょう。
 でも、それが得られなかったからと言って、決して悲観することはない。
 救いとは自分で見つけるものだ……というのが、私からのメッセージです。
 とまぁ、あんまり真面目なことばかり書いてると作者もつまらないので(笑)、ここからはキャラクターについて書いていきたいと思います。
 まず主人公の未来について。「間未来」の姓は、皆様ご存知漫画界の巨匠、手塚治虫氏の作品「ブラック・ジャック」の主人公がその由来です。未来という名は、実は私の兄が女の子だったらつけられていた名前。なんとなく語呂がいいので合わせてみました。作品の最初の方では子どもっぽい面が目立ち過ぎてしまい、23歳にしては幼い印象になったのが反省点です。ただ、戦闘シーンになると別人のような戦いぶりを見せるギャップが強烈なようなので、却って成功したのかなぁ、とも思っております。
 続いて、サブ主人公の杉田医師。彼も手塚作品から苗字と名前を拝借しております。とにかくこのインテリ秀才メガネ君は、個性が強烈な他のキャラに食われてしまうことが多くて影が薄くなりがちなのが泣き所です。心理描写という点では、未来の次に多いのに……最初の頃なんか、キャラが立ってなくて悲しいぐらいに目立ちません。作品中の良心を代表する立ち位置のため、ある程度は仕方ないところも多いのですが、登場からラストに至る過程で一番成長した人だとも言えるかと思います。以降の活躍に期待してください(!)。
 生沢医師は普段いい加減で面倒臭がりだけど、見るところはちゃんと見ていて細かい気配りもできる、縁の下の力持ち。本当は頭脳明晰なのに、決してそれをひけらかすことはしません。熊みたいに大柄で酒好き、お腹がちょっとメタボ。一見してそうは見えないけど、実は外科手術の世界的権威で、誰よりも医師の仕事に誇りを持っている……彼については、自分の上司としてこういう人がいたらいいな、というつもりで書きました。お婿さんタイプの杉田先生とは間逆のキャラ。こういうおっさんキャラって、現実ではもうあまり見かけませんよね。
 リューは一番最初のプロットでは影も形もなく、司令官的な人もいないとマズいと思って作った即席キャラ……のはずが、「元軍人のイケメンハーフ、三次元より二次元をこよなく愛するオタク青年」の設定が暴走して、作中で一番面白い人物になりました。読者の皆さんの間でも人気者のようで、彼の飄々としてマイペースな生き方は、作者から見ても羨ましくなるばかりです。全キャラクターの中で最も波乱に満ちた人生を歩んできているはずだし、いつか彼を主人公にした話も書いてみたいなと考えてます。
 お次は敵役、P1こと金城拓也。生粋のワルで自身の勝利にのみ固執し、弱い者を利用する汚い手も平気で使うという典型的な敵役キャラです。あまり歪な面を持たない悪役なので書きやすかったかな。未来との戦闘シーンがメインとなりましたが、思う存分暴れる描写の中に傭兵らしい強かさを盛り込むのには苦労しました。彼のおかげで都市型ゲリラの戦い方や傭兵の武装、その生き方については随分と詳しくなっちゃいましたね。
 後半部分の敵参謀、若松貞明。実はP2の開発者については結構悩み、他とタイプが被らないようにしようと試行錯誤した末に落ち着いたのが、「破天荒DQN型」のキャラクターでした。イメージは漫画「BLEACH」の主人公、黒崎一護を派手にして悪くしたような感じです。パンクっぽいファッションも、なるべく科学者というイメージから遠ざけるために付け加えてみました。彼はリューと同じくハーレー乗りですが、多分二人が会うことがあったらものすごく仲が悪いだろう……と考えたりもしましたね。
 それから未来の宿敵、P2こと岩元源三。実は敵キャラの名前は友人男性に考えてもらいました。敵サイボーグ二人は結構年齢が高いのですが、それに見合った渋い名前です(笑)。イメージは「勇者王ガオガイガー」の凱の頭を地味にして、身体を黒っぽくした感じ。彼は作中で珍しい、冷酷でストイックな正統派の悪役になりましたね。人間の感情をほとんど忘れているという設定なので仕方ないんですが、際立った特徴もあんまりなくリアル感が薄かったので、もうちょっと個性を出したかったなぁと思います。
 んで、ラスボスの大月専務。初期の頃は単なるヒステリックなオバサンで、作者の力量不足なためかようやくその悪役っぷりを発揮するのが物語後半になってから、という遅咲きです。名前には「月」と「華」の字を入れようと決めていて、「咲く場所を違えた日陰の花」という意味を込めました。美しくはあるかも知れないけれど、それは全て見せかけ。全身を必死で身につけた知性と美容整形という偽りの鎧で守り、自らの力量を見誤った。そんな彼女に相応しい最後はやはり、「自滅」であったということで。
 余談ですがタイトルの「SAMPLE」は、まだ内容があんまり固まってなかった頃に会社のパソコンでプロットを固めていて、もし誰かにファイルが見つかってもいいように、一番ありがちなSAMPLEというファイル名をつけてたのがそのまま残ったものです。
 勿論これはサイボーグ実験体である未来のことを表してもいるのですが、何ともセコい発想からこんな渋いタイトルが生まれることもあるんだから、不思議なものです。
 最後に次回作について。もうお察しの方もいらっしゃるかと思いますが、このシリーズはここで終わりではありません。次作以降は、舞台をアメリカに移しての展開になります。
 FBI特別捜査官となった未来と、同じくFBI犯罪科学研究所の検査官となった杉田。この二人を主とする仲間たちが手を携えて様々な難事件に立ち向かう新シリーズを、現在執筆の真っ最中です。
 勿論未来が軍事用から保安用のサイボーグになったからと言って、作風を変えるつもりはありません。リアルさに重点を置き、その中にSF要素を盛り込んだお話にしていくつもりです。でもまぁ、敢えてジャンル分けをするとなるとサイコ・サスペンスに近いものになるでしょうか。
 この手のお話の欠点は、調べることが多いせいで書くのに膨大な時間がかかる、ということ。只今システムエンジニアとして仕事をしながら執筆を続けてはおりますが、まだまだ公開できるような量を書き溜めることもできていなければ、お話の全体の流れもちゃんと決まっていないという悲しい状況です。
 なので、掲載はしばらくお休みさせて頂き、皆様がご覧になるのに耐えうるレベルのものが書けたと思ったときに、公開を開始しようと思っている次第です。
 多分半年先くらいに、なっちゃうのかなぁ……(汗)
 その時まで本作に登場したキャラクターたちを、どうか皆様の心の隅に住まわせてやっておいてくださいませ。満を持して、彼らは皆様の前に再び現れるかと思います。
 その時まで、どうぞお元気で。
 また読者の皆様にお会いできる日を、楽しみにお待ちしております!


                          2009年8月某日  日吉 舞

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