ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

はまかず文庫コミュのFate / DRAGON QUEST 第六話『キャスター出現』

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
時間を少し遡ろう。
1月末、まだ弓使いも騎乗戦士も復讐者も召還さてていないころ。
冬木の管理者である遠坂邸の北にある旧エーデルフィルトの別荘における出来事である。
協会から送り込まれた魔術師であるバゼット・フラガ・マクレミッツは顔見知りである言峰綺礼に不意を突かれ、聖杯戦争開始前にサーヴァントを失うという失態を演じてしまった。
左腕を切断され、背中を袈裟に切り裂かれた彼女は床に広がった紅に横たわり、荒い息を吐いている。
彼女の意識は既に無く、ただ本能だけが「死にたくない」と強く叫んでいた。


――――――正史において、その時刻、その場所でサーヴァントは召還されない。
彼女が2体目となるサーヴァントを率いてその館を出るのはまだずっと後の筈であった。


しかし、奇跡は起こる。
彼女にとって幸運だったのは、倒れた場所が以前サーヴァントを召還した魔方陣の上だったこと、自己を回復しようと無意識に魔術を行使したこと。
意識の無い彼女の枕元でエーテルが渦を巻き、徐々にそれは人型に収束する。
そこに現われたのは、明るい茶髪をポニーテールに括った少女だった。



F a t e / D R A G O N Q U E S T -Another Side-



― side : バゼット ―

「ん・・・」
真っ暗な闇の中から這い出すように、私は重たい瞼を持ち上げた。
「あ、気が付いた?」
それに気づいて、誰かが近づいてくる。

「―――ラン、サー?」

不意に、口からこぼれたのは、そうであって欲しいと願ったからだろうか。
目の前に居たのはバンダナを巻いた槍兵ではなく・・・オレンジの服に鮮やかな赤茶色のポニーテールを靡かせた少女だった。

「うわ・・・今のちょっと傷ついたよ。いくら昔の彼氏が忘れられないからって開口それ?」
少女はヒクヒクと唇の端を震わせて露骨に嫌な顔をした。
「だっ、誰――――ガッ!!」
誰だ、と言おうとして全身を激痛が電流のように全身の神経を駆け巡る。


痛い、痛い、痛い、痛い、


信じられないくらい、背中と左腕が痛い。


熱い、熱い、熱い、熱い、


まるで焼き鏝を当てられた位熱い。熱が神経を焼く。
同時に襲い来る苦痛に意識が一瞬とび、また引き戻される。

「まだ痛むの?」
少女はむぅ、と困った顔で私の傍に跪く。

「――――ッ、ハッ・・・。」

左腕と背中を基点に、寄せては返す痛みの波が全身を刻む。
「う〜ん、こっちの人には魔力の通りが悪いんだけど、貴女は特にかな? 『ベホイミ』」
少女はぶつぶつ呟いたあと、両手をかざして聞いた事のない呪をシングルアクションで紡いだ。
ポゥ、と淡い光が私を包み、痛みを和らげる。
「どう? 貴女の傷はもう治ってるはずだからその痛みは精神的なもののはずだけど。」
言って少女は向かいのソファーに腰掛けた。
ぼんやりした頭がここにきてやっと目の前の少女のことを考え始める。
一見すれば15歳くらいの少女だけど、身に纏う気配は明らかに異質。
まず感じる魔力の量が絶望的なまでに違う。例えるなら溜池と湖。桁が、違うのだ。

「サーヴァントですか。でもおかしいですね。私のサーヴァントはラン・・・」


――――バチッ


脳内に火花が散る。

この街に来た目的、聖杯戦争、サーヴァント、ランサー、言峰に自分は襲われ、左手を斬られ更に背中を痛い痛い痛いイタイイタイ「貴様、何を!!!」「令呪に告げる、主変えに同意せよ」ダメ駄目だめダめ絶対に痛いイタイ血が赤い血が血が血血血流れて溜まる溜まるたまるたマる赤い紅いあかいアカいあかイアカイ寒い寒いサムイさむい寒い嫌だ嫌だ嫌だ死にたくない死にたくないシにたくないシニシニsiニs・・・・・・・

いきなり襲い掛かる記憶の流れ。
それは先ほどまで存在した忘却という堰を外され、正に濁流となって私の意識を飲み込んだ。

「あ。あああァァァァァぁぁぁぁああアアアッッ!!!」

狂う。このままでは、

「ちょ、ちょっと・・・」

絶望。痛み。怒り。感触。温度。忘れていたそれらが一気に私を、私の精神を切り刻む。

「落ち着いて!―――ああもう、」

「アアアアアアアアァァァァァ!!!!」

(嫌――――こンナに寒クテ痛くテ苦シイなラ、心ナんテ必要らナ・・・)

「『イオ!』」


   パアァァァンッ!!


(イ――あああっ!???)

突然響いた破裂音に頭が真っ白になる。
パーティーで鳴らすクラッカーを何倍にもしたような耳がキンとなる音。


「 落 ち 着 い て ! 」


大きな眼が此方を睨みつける。
視覚化出来そうな程の気迫を浴びせられ、けれど幼さの残る彼女の怒った顔が妙に可愛くて、白熱していた頭が急速に熱を放出した。

「あ・・・」

「もう、痛いならもう一回寝ていいよ。それからゆっくりと気持ちを整理して。それじゃあ話もできないじゃない。」
呆れた様に言い放つ。
「いえ・・・大丈夫です。見苦しいものを見せました。」
改めて全身に意識を通して確認すると、確かに傷らしい傷はない。
さっきの激痛は溜まりに溜まった脳内の物質が生み出した幻だったのか。
「とてもそうは見えないけど、まぁいいかな。いざとなったらラリホーで強制的に眠らすし。」
なにやら失礼かつ物騒なことを言われた気がするが、それを聞き流して私は体を起こす。
ギシギシと体が軋む。
本調子には程遠いらしい。
特に左の肘の辺りと背中に線状違和感があり、「ああそうか、ここを斬られたのですね」と理解するには充分だった。


「それで、君は誰ですか? サーヴァントのようですが、私の召還したランサーとは別人ですね。出来れば今の状況も会わせて説明して頂きたいのですが。」
「オッケー。じゃ、ちゃんと最後まで聞いてね。
まず察しの通り、私はサーヴァントよ。勿論、そのランサーっていう貴女の彼氏とは別人。」
「なっ、彼とは」
「いいよ〜、照れなくても。」
にんまり、と彼女は唇の両端を持ち上げる。
その表情は間違いなくその年代の少女もものだった。

「で、いざ現界してみると、貴女が血の海で倒れてた。ほっといて召還後数分で脱落じゃあ笑い話にもならないって思って慌てて治療したってわけ。
完全に離れちゃってた左手も苦労して繋いだんだから感謝してよ? もっともそれがなきゃ意味ないんだけどね。」

喋る彼女は楽しそうに、表情がくるくる変わる。だが内容は中々にハードだ。

しかし・・・

「おかしいですね。私の――元ですが――サーヴァントはランサー。なら君は誰に召還されたのです?」
そう言うと彼女は一瞬きょとんとした顔をして、

「あ、なんだ、そういうこと。うん、私を召還したマスターならまだ生きてるよ。」

妙に愉しそうに、ニコリと笑った。それで、私の中のスイッチが入る。
人間としての私から魔術師の私へと意識がシフトする。
(なら、この子は・・・敵。)
「誰が、何の目的で、私を助けたのです?」
私のサーヴァントはランサーだった。それは間違いない。
彼は言峰に奪われた。それも認めたくは無いが事実だ。
今の私の言葉は、言外にこう言ったつもりだ。「何故、敵である私を助けた」と。
意図的に文節を区切り、射殺すような視線を叩きつけるが、彼女は意に介すどころか口元を押さえて小刻みに肩を震わせる。

「クスクス・・・アハハハハ。まだ寝ぼけてるの。私の話聞いてなかったでしょ?」


―――ぴきっ


あ、何か別のスイッチが入ったみたいです。
『切り札』は何処に置きましたかね。いくら子供だからってとりあえずおしおきは必要ですね。
うん、そうです。彼女の目的を問いただすのはそれからでもいいでしょう。
・・・と、危ない危ない。もう少しで思考が暗礁に乗り上げて座礁するところでした。
私は慌てて舵を戻しました。

「私を召還した人なら、そこ♪」

ちょっと暴走した思考を諌めて現実に帰還する。
そして彼女は指差す方向をみて、驚愕した。指は壁際に向いている。

(この部屋に!? そんな気配なんて感じなかった。)

はっとして警戒レベルを1発で最大まで弾き上げ、即座に戦闘の準備を整える。
全身に魔力を流すとまだビリビリと痛むがかまってはいられない。
出来うる限りの準備でもって彼女の指先を追うと・・・あれ!?
そこには見慣れたショートカットの女性。
普段は男物のスーツを着ている身体は、白いワイシャツだけになり、下も幾分ゆったりとしたズボンというラフな格好。

つまり――――― 私 。

「えっと・・・・・鏡?」
理解するのに数秒かかった。またも彼女はくすくすと笑っている。
「――ッ!! 貴方はッ!!」
からかわれたと知って、自分でも解るくらいに真っ赤になりながら視線を戻すと、鏡を向いていた指が何時の間にかこっちを向いている。

彼女の真剣な眼差しが真っ直ぐ私の眼を捕らえている。
たっぷり10秒は待っただろうか。少女の突然の豹変に私が呑まれていると、彼女の唇がゆっくりと言葉を紡ぎ始める。
「貴女が私をを召還したの。今更だけど、一応訊いておくわ。
汝に、我の内に眠る黄金の竜と自身の業を以って、この戦争を勝ち抜く覚悟はありますか?」

さっきまでのいたずら好きな子供の笑みは既に消え失せ、清浄で透き通った魔力が私を射抜く。
そのあまりの変化に、私の頭は時間を止めた。


「問おう。汝は、我がマスター足り得るか?」


その言葉が契約の呪文だとしって、私の全身が総毛立つ。
その拍子に時が動き出す。その言葉が嘘や引っ掛けではないことは、彼女の雰囲気が教えてくれる。
私はゴクリと唾を飲み込み、それに応える。

「無論、一度は脱落しかけた身ではあるが、今だ私はその目的を失っていない。
もし適うならば、私の運命は貴方に預けよう。そしてこの戦争に必ずや勝利することを誓いましょう。」

「――その誓い、確かに受けました。これより我の竜は汝と共に。汝の運命は我と共に。ここに契約は完了した。」

左腕の、肘と手首の中間付近に強い熱を感じる。
驚いて袖を捲くると、そこには紅の光を放つ3画の令呪が赤々と光を放っていた。
同時に、蜘蛛の糸のように細かったラインに魔力が流れ込み、その存在を確たるものに増幅する。

「っ〜ふぅ、やっぱこういうのは柄じゃないね。」

ソファーから此方に歩み寄り、彼女が右手を差し出した。

「じゃあこれからよろしく、マスター。えっと、名前は?」

「はい、私の名前はバゼット・フラガ・マクレミッツ。以後、よろしく頼みます。」

私はその手を力強く握る。彼女も握り返す。
「そう硬くならないでよ、肩の力は抜いていこう、バゼット。」
大きく息を吐き出して、彼女の雰囲気が元の子供っぽいものに戻る。
言うまでもなくこっちが素なのだろうが、契約の際に感じた存在感は決してランサーに勝るとも劣らない。
彼女も紛れも無く英霊なのだろう。

再び、ぐっと固い握手を交わした。


「―――ところで・・・ちょっと待ちなさい。何処へ行こうというのですかっ!?」
「え? えっと、貴女の看病を丸1日やってて疲れたから寝ようかなって思って・・・ダメ?」
「まだ質問が終わっていません。席に戻って下さい。」
彼女は肩をおとして「え〜、明日にしようよ〜」とぼやきながら席に戻った。さっきの考え、訂正してもいいだろうか。

「まず、君は私に召還されたと言いましたが、私は既にランサーを召還している。そんなことは有り得るのですか?」
「ん〜、現にこうやって現界してるし、いけるんじゃないかな。まぁサーヴァントを2体以上使役するなんてそんな非効率な事をして生き残った魔術師がいなかったから前例が無いだけじゃない?」
「ふむ確かに。ですか私には召還の儀式を行った覚えもないのですが。」
「ああそれはね、偶然みたい。
召還用の魔方陣の上が血で満たされて、バゼットが無意識の内に治癒の魔術を使った。
それで条件を満たしたみたい。それに私にはバゼットの『死にたくない』って声がハッキリ聞こえたから召還に応じたんだよ。」
言われてみたら納得した。
呼び出すのは聖杯の役目で、魔術師はあくまで召還時のキッカケと現界のための触媒なのだ。
召還はあくまで聖杯が行う。
大掛かりな魔方陣を描いたり、触媒を選定したりするのはよりよいサーヴァントを引くための『作業』だ。
同時に少し嬉しい気持ちになる。彼女は、私の為に召還に応じたということらしい。

加えて、死を恐れる感情は他のどんな感情よりも強い。
そんな事例が他にあるかは解らないが、理由としては充分かもしれない。


「それに令呪の残った腕と体が血で繋がったままになってたのも幸運だったね。輝きを失っても令呪は令呪だから。」
大きな宝石の様な眼で嬉しそうに語るのを見ると、私の顔もつい緩む。
「なるほど、多少の疑問は残りますが、このサーヴァントシステムには例外も多いと聞く。それで納得しておきましょう。」
「うん、それで納得しといて。」
「では最後に・・・本来は最初に訊くことなのですが、忘れていました。」
「ん、なになに?」
「君のクラスと真名、教えていただけますか。」


数瞬の沈黙。。。。。


「あれ、言ってなかった?」
頭の上に電球が見えそうなくらい、今気付いた、という表情を返された。
「ごめんバゼット。私は『キャスター』のサーヴァント。真名は―――――」


その返答は、私を驚かすのに充分だった。彼女は御伽噺より現れた伝説の魔術師。

こうして私は、聖杯戦争に復帰するための新たなサーヴァントを得た。

-------------------------------------------
NEXT・・・・・・

・ 第7話『運命の変わる夜』

・ 第9話『規格外の宝具とは・・・』

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

はまかず文庫 更新情報

はまかず文庫のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。