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北京波の新世紀映画水路コミュの『不撓不屈』増補改定版・評

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“飯塚事件”として知られる一人の税理士と国税局の7年間にも渡る理論闘争の顛末を描いた高杉良の同名経済小説を映画化。
中小企業のために真摯に働いてきた真面目な税理士が国税局の不当な弾圧に屈することなく、自らの信念に基づき国家権力に真っ向から立ち向かっていく姿を描く。
主演は滝田栄、共演に松坂慶子。
 故郷の栃木県鹿沼市と東京に会計士事務所を構える税理士、飯塚毅。
その顧客は中小企業の経営者たち。脆弱な経営基盤しか持たない彼らのために、時に国税庁のキャリア官僚とも真正面から渡り合うことも厭わない謹厳実直な男。
しかし、そのことで飯塚は国税局から目を付けられてしまう。
やがて国税局は飯塚が顧客に勧めていた節税対策に対し“脱税”の嫌疑をかけ、その他あらゆる手段を用いて飯塚の追い落としに乗り出すのだった…。 (HPより)



 まあ、真面目な真面目な真面目な・・・もう真面目が1kmくらい続くかと思える映画である。だが、こんな映画は嫌いではない。

『若者たち』3部作の森川時久監督作品なのだから、そうであることは百も承知の上だよ。

社会の繁栄から取り残された人間たちの、それでも前を向いて歩んでいく活力、若さゆえの怒りと希望を描いていた『若者たち』から、監督も観客も40年近く歳を重ねた結果、この映画に満ち溢れていたのは理不尽な権力への糾弾ではなく、静寂をもって誠実に生きる、ひたすらに生きることへのガンジーのような誠実であった。

愚直なまでの誠実であり、それゆえの脆さと強さであった。

この達観、あるいは諦観なのであろうか・・・、すごいと思った。

『若者たち』3部作は決して洗練された映画ではない。むしろ大変に不器用で重苦しい映画である。たぶんに図式的な雰囲気を持ち、清く正しく生きることが貧しかったとしても仲間がいるし若さがあるだろう頑張れぇ、という物語にはそれなりにこめられたものがあった。

清貧を擁護するあまり内容は窮屈になりかけたが、それを馬鹿とは言わせないぞという熱気が溢れていた。

豊かさがあまねく浸透していない社会においては、こういったエールは絶対に忘れてはならないものであったはずだ。

そのなかに観客は、5人兄弟の生きる姿の端々に自分や知っている人々の姿をオーヴァーラップさせながらスクリーンに対峙していた。

それはなんと甘美な時代であったことだろうか。

この映画のなかで象徴的な人物がでてくる。飯塚税理士への謂れなき国家権力への蹂躙に対してオカチューとあだ名される代議士(田山涼成)がその人だ。

これは昔なら徹底的にやっつける清濁あわせ飲む老獪な代議士として描かれたはずである。しかし、日本社会党が与党として政府に参加し、総理大臣まで出したあと、もはやいくら描こうとしても描ききれず、ただの親切な人物程度にしか描写されないのは、そんな時代であるからだ。

国家権力への正義を前面に出した闘いよりも家族愛として描こうというのも、時代が変わったからである。

しかし、時代がいくら変わろうとも、誠実に真面目に努力している人間はひるむことなく頑張れ・・・、そのテーマだけは受け継いでいることに驚かされるのである。

それまでを一笑に付す時代ではないと信じたい。

作者たちの願いもまたそこにあると考える。
(★★★☆)

最後にひとつ。この映画の最高の魅力は、いまや滅多に見かけることのなくなった、往年のベテラン新劇俳優たちの終結ぶりにあった。

北村和夫、織本順吉、高田敏江、原千佐子、高橋長英、中野誠也、金内喜久夫、中島久之、中原丈夫、大橋吾郎、夏八木勲、久富惟晴。

この脇役陣だけでも入場料は惜しくない!

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