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北京波の新世紀映画水路コミュの「女の一生」(昭和24年1月封切り・東宝映画)

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 記録映画作家として名を残す亀井文夫監督の劇映画である。

文献によれば徳永 直の原作を水木洋子と八住利雄が共同脚本。撮影は独立プロの重鎮・宮島義勇。プロデューサーはこの年『青い山脈』前後篇を7月に送り出す藤本真澄である。


物語は、(大日本印刷が撮影協力しているのだが)印刷会社に勤めるBGの岸 旗江は喘息の父とまだ小学生の兄弟を抱えて一家の稼ぎ頭。同僚の沼崎 勲から結婚を熱望されるも経済的なことが解決しないので踏み切れないでいる。

しかし父親は正式に仲人が来ると、娘が結婚してしまうと生活が逼迫することが明白であるにも拘わらず「望まれるうちに嫁ぐのが幸せってもんだよ」と、生活力にそぐわぬ父性を示す。

彼女は結婚し、沼崎 勲の家で姑と同居し、会社勤めも続けていくが、結婚の条件として実家への毎月1500円の仕送りがあるため、夢の結婚生活は経済的には潤わない。

姑は家の経済に寄与しない嫁についつい辛くあたり始める。経営者が変わって合理化の波が押し寄せ始め、仕事も女性にはキツい内容となっていく…。

この映画の眼目はおおまかに2つある。

一つには彼女がやっていた仕事というのが、写植が終わって返されてきた活字を元の分類型式に戻す作業なのである。

アイウエオ順なのか、イロハ順なのかは分からないが夥しい量の活字を整理する。そこには「活字を拾う」という言葉が残っているように、写植という地道な作業が当然のごとく存在し、彼女たちは整理整頓する仕事から“フーセン”と呼ばれる写植工としての仕事にリストラを逃れるために変化していかねばならなくなる。

男でも辛い仕事に女性が従事するために、乳飲み子をおぶって仕事にきていた女性の背で赤ん坊が窒息して果てる事故があり、職場では労働環境改善のために組合活動が活発化していくのである。

こういう組合活動の描写はなにも珍しいものではないが、写植という作業をきちんと描いたところが貴重である。


あらゆる年齢層がクライアントとして成立していた頃の映画には、物語の背景としての生活描写が(どれほど珍しい仕事や環境であっても)ちゃんと出来ていたものなのです。

極論すれば、この映画のシーンを見せるだけで、「写植」という昔あって今は消え去った業務を理解させられる。

映画は常に流動的な芸術であるが、どんな時代のどんなにつまらない内容でもウソなく描写しなくてはならない…と思うのは、こういうことがあるからである。


二つ目は、「同性愛じゃないの」といった単語が登場したり、夫が夫婦生活を求めてくるが疲れていると拒否する妻、そしてムクレる夫など、戦後4年目となった昭和24年当時でもいささかストレートで激し過ぎるのではないかと思われる表現が全編にかけて見られることだ。

これは日本人の性質からいっても多分に過激である。それだけ戦後の社会の変貌ぶりを仄聞させるではないか。

慣れないことにはエキセントリックになる、その見本のようなものだろう。成瀬巳喜男の脚本で知られる水木洋子と、豊田四郎の脚本で知られる八住利雄という豪華なタッグ・チームのシナリオは、昭和24年という時局を娯楽作品の制約のなかにうまく表現していると思う。

ラスト近く夫婦の家の2階で組合員たちが労働文学の読書会を開いている。

少なくとも、若い希望にだけは溢れた生活であったのだろう。

社会全体が貧しければ妬み嫉みは生ぜず、宮島義勇の力強いキャメラが写し出すモノクロの空に碧い色彩が滲み出しているように、本当ノ豊カサトハ何ナノダロウカ、と旧い映画を見るたびに感じてしまうのはボクがかろうじて貧しかった日本の時代を覚えているためだけであろうか?

(★★★)ビデオ:キネマ倶楽部より.

それにしても組合の指導者役で志村 喬が出ている.

朗読しているときの声質の素晴らしいと言ったらない.

昼休みの屋上でアコーディオンの伴奏でロシア民謡を歌っているシーンなど時代を感じさせます。

そう言えばロシア映画『シベリア物語』は好きな作品ですが主題歌「バイカル湖のほとり」は可憐な旋律で大ヒットしました。全国に歌声喫茶を普及させることになった『シベリア物語』は昭和20年代の邦画にいくらでも孫引きの例を挙げることが出来ます.

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