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北京波の新世紀映画水路コミュの「大奥」評

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この映画、言いたいことは山ほどある。
なぜ、こんなにアホにでもわかるように説明するのだろう?実に単純明快で含みというものがない。

ナレーションによる実に明快な説明だけで飽き足らず、登場人物においても補足的な台詞が少なくない。腹を立てかけたが、そのうち最大のクライアントである観客に合わせたのであれば、これも当然なのかと思われてきた。

演出は6割がテレビ的だが、それでも映画的な拡がりは終盤には確実に高まる。(仲間由紀恵が主役としての風格を備えていることがなによりよかった。)

この作品「大奥」というタイトルからすれば決定的に違う戦略がクライアントのために行使されている。信じられないことに、それは純愛である。

「大奥」といえばお世継ぎをめぐる色と欲が中心であった。しかし、この新作では井川遥の月光院の間部詮房に対する恋の煉獄にしろ、高島礼子の天英院にしろどことなく女学生のような恋愛については色欲よりも恋愛が勝っている。これは絵島を罠にはめるべく生島に要請していく杉田かおるの天英院の中藹でさえ、権謀術数の人間とは到底思えない。

これは六代将軍家宣がすでに死に、七代将軍が幼子であるという設定が効果を挙げることになる。つまり色の代わりにクローズ・アップしてくるのが側室でありながら世継ぎの生母であるだけで町人の出でありながら取り立てられていることへの嫉妬である。

仲間由紀恵の色欲とは無縁のキャラクターに当てられた生島も西島秀俊という生臭とはもっとも遠い俳優を起用しており、これらの戦略は実に巧みであると言わねばならない。

だからこそ、この映画は茶の間で「大奥」を見ていた女性客をターゲットに制作されたことが歴然なのである。

「絵島生島」といえば舟橋聖一の原作になる小説は映画にもテレビ・ドラマにもなっている。一番有名なのは淡島千景と先代・市川團十郎の共演になる松竹作品である。

そのあらすじを挙げてみる。そして黒字で書き込んだのが今回のキャスト、あるいはその役割を果たす役どころの配役である。

六代将軍家宣(市川左団次)の側室で病弱な鍋松の生母左京の局は、御台所(天英院)(三宅邦子・高島礼子)が老中土屋相模守(柳永二郎・岸谷吾朗)らと結托し、七代将軍に紀州の吉宗を迎えようと画策していると知り、家宣の寵臣間部越前守(高橋貞二・及川光博)の政治力に縋った。

※今回の映画では家宣は死んだあとという設定になっている。

そして、千代田城内ははしなくも左京の局、間部、大年寄絵島(淡島千景・仲間由紀恵)派と、正室、老中派が対立を続けたが、家宣急逝のあと、鍋松が七代将軍家継となるや、間部越前守、新井白石(石黒達也)の二摂政時代を迎え、月光院(高峰三枝子・井川遥)を名乗る左京の局は天英院を圧し、権勢を檀にした。

※井川遥扮する月光院はただただ弱弱しく、町人の出だという共通な出自から絵島は月光院を擁立して護っていく。

ある夜、図らずも月光院と間部のひめごとを目撃した絵島は、激しい衝動を受けた。月光院はそうした絵島を慰めるため、奥医師好竹院(河野秋武・火野正平)に命じ、人気役者生島新五郎(市川団十郎・西島秀俊)を秘かに大奥に迎え入れ、絵島と生島の心は固く結ばれた。生島に惚れぬいている中藹の宮路(丹阿弥谷津子)はそれを知って天英院に訴え、一時は大騒ぎになるが月光院のはからいで無事におさまった。その夜から、絵島の女ごころは火と燃えた。その絵島を陥れようとたくらむ宮路は、芝居茶屋につれ込んで生島を取り持ったばかりでなく、大奥の権利を掴もうとする商人の賄路を絵島に受けさせた。

※このあたりになると仲間由紀恵のお姫様的な不可侵イメージがあくまでも純愛の展開を選択させる。ひたすらに純白なヒロインに較べると、悪役はひたすらに悪役に徹する。

一方、生島を慕う彼の義妹、宇津(草笛光子)は、噂がひろまるにつれ、奥女中と義兄の恋の行末が案じられ、ひとり胸を痛めるのだった。やがて家継が病床に臥し、再起不能とみた間部は、天英院の先手を打って吉宗の出馬を乞い、自分と月光院の風評を揉み消すため大奥粛正を断行した。家宣の命日に当る日、月光院の代参として増上寺に赴いた絵島は法要半ばに生島が召捕られたことを聞いた。かくて、絵島は信州高遠に、そして生島は三宅島に流罪ときまり、二十八年の歳月が過ぎた。病に倒れた絵島は生島の名を呼びつづけて、その生涯を終った。絵島の死を知って、生島も心につなぎとめてきた一切の希望を断ち、後を追うようにこの世を去った。

※新作では生島は絵島をかばいながら磔刑に処せられ、絵島の目の前で息絶える。あたかもプラトニック・ラブに殉じたかのごとくにである。するとである。あれほど腹が立ちかけていた不満は、何のことはない。最大のクライアントに受け入れられるドラマを目指したのだと思えば腹も収まった。


それではいいところを探すことにしたら、これはいろいろとある。

まず予想に反してCGを多用した安っぽいものを覚悟していたのに、見事なほどアナログである。いま、金をかけて、これぐらいのセットはまだ可能だとわかった。

テレビで作られたセットを流用しているんだろう・・・と思ったが、まったく違う。また山村座の火災炎上シーンは上手いと思った。琵琶湖湖畔に大オープン・セットを建造したと聞き、やっと分かった。

パーマネント・セットより大きく作られていたし、だからこそ本当に炎上させた炎の威力があった。

いいところばかりを挙げていく感想なんてどうかとは反省しておりますが、女性客は楽しんでいたようですよ。
(★★★☆)

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