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カズエの夢日記コミュのラーメン屋 オリ

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そして、その2,3日後にももう一つ電話があった。
でもやっぱり・・・日本語のことではなく、受話器の向こうの男性は、

「あの〜、ラーメンを作りたいんだけど、一緒に作ってみませんか?」
と言った。

「は?ラーメン?あの〜、確かにラーメンは食べたいけど、もう一度ゆっくり話してください。」
一瞬、変なナンパかなとも考えたけど、それにしては、声がシリアスだったし。

でも、2,3回、事情を聞きなおしてみても、予想外の説明に事情が飲み込めない。
「よりにもよって、ラーメンって・・・」
と、もちろん頭の中はクエスチョンマークが回っていた。

でも、電話の相手は、全然うっとうしがる様子も見せずに丁寧に説明してくれた。
なんでも、彼はオリバーという男の人で、仙台に留学していた友達を訪ねて日本に言った時、ラーメン屋の手際良さに感銘して、自分もドイツで屋台をやりたいと、作り方を研究したらしい。屋台もだいたい案ができているという。

「でも、実際に作った事はないから、一緒に作ってみませんか?」

「はい、じゃあ・・・」
と、特に用事があるわけではないし、ラーメンを食べるのも悪くないなあと思い、何よりも、自分の中に住んでいる好奇心旺盛虫が「はーい!」と手を上げた感じだったので、とりあえず、カフェで会う約束をした。




2、3日後、その頃できた唯一日本人の友達のアキくんを誘惑して、一緒につるんでカフェに行ったところ、ニコニコ笑うオリバーは、人がよさそうなドイツ人で、一緒にビールに飲みだして、その晩だけで、1人7,8本は飲んだ。最初は人数分おごってもらい、次は別な人が人数分買ってきて、その次はまた別の人が人数分調達してきた。それは、彼の日本への好奇心のおかげだった。

このオリバー、今や東ベルリンでは有名な、週末だけのラーメン屋屋台のおやじと化している人物だが、このとき、彼から聞かせてもらった話は、移動式のラーメンの屋台を作って、ラーメンを作りたいという夢だった。それから、『たんぽぽ』というラーメン作りがストーリーになっている映画が好きだという事。

『たんぽぽ』といえば、伊丹ジュウゾウ監督の、宮元信子さんが主人公を演じている映画で、ラーメン屋の主人が死んで、未亡人になった彼女がラーメン屋の後をついだはいいが、くそまずく、ラーメン屋の修行を積んで、おいしい行列のできるラーメン屋になっていくというストーリーで、実は、私が昔バイトしてた横浜の中華街にあるチャイハネのネネ店舗のあるビルが、これまた昔、ぼろ小屋だった時に、その修行中の女主人が中華街のおいしいラーメン屋の秘伝を盗むシーンでこっそり覗き見をするところだったし、その盗み見をされるラーメン屋というのが、これまた私がバイトしてた頃にたまに昼ごはんを食べに行く中国料理屋だったこともあり、親近感がわかないわけがない。私の中では、そこの中国人のウェートレスのお姉さんに、いつも帰る時に「ありがとうごました。」って言われるのが、つい昨日の出来事のようによみがえってきていた。


そんなことはいいとして、オリが手元から出した企画書に、本当に細かい作り方が書かれていたのには本当にビックリした。これぞ、ドイツ人気質なのか・・・。材料の種類、作り方、私も知らなかった具の実態。それは彼の友達のミヒャエラさんが、日本で調べてきたのだと言う。私の貼り紙も彼女が見つけてくれたらしい。自分が考えている屋台も、ちゃんと図面に起こしていた。

そのうち、アキ君、実はラーメン屋でバイトしていた経歴があることが発覚して、次の週、早速作ってみることにした。

そんなんで、7時に待ち合わせをしたはずが、もう12時近くになっていることに驚いた。はっきり、初対面の面会で、こんなに長く過ごせるとは思いも寄らなかった。






さて、実験開始の日、オリの家の近所で待ち合わせをして、オリの車で買出し。買い物カートの中には今まで買ったことの無いほど大量の材料が山盛りになっていた。なんせ、一つ一つ野菜の束も大きいし。やきぶたにする豚肉の塊には、とても贅沢な感じがした。

“この人は本気なんだ・・・”。
いつも変な所に感動するのは、私の悪い癖。
わかってる。わかってる。
でも、そう思うことで、私も真剣にやらざるを得ない気がした。
長ネギの太い束、たまねぎ2kgのネット、にんじん1kgのパック、肉の塊、しょうゆ・・・などなど、結局、買い物袋は4袋にもなり、その後、さらにアジアショップに行って、麺を選んだ。いろんな乾麺があるけど、どれも中国製で、どれもどれだったけど、何種類か買って試してみることにした。

さて、オリの家の台所は、それにしても自分で工夫して作りこんだ台所で、料理しやすい大きなテーブルと棚の上にそれこそ山積みになったパスタやスパゲッティが印象的だった。


ラーメン屋でしか見たことの無い、例の、麺をすくい上げる大きな網のおたまや、スープを取り分けるひしゃくも、新しいのが準備されている。それらは日本から調達したラーメン屋用のものらしかった。

アキ君のリードで、焼き豚から仕込んでみることにした。
その後はスープ。
結構時間が経ったけど、やきぶたにも、スープには思ったように味がつかない。
もっと時間がかかるらしい。

それでも、麺をゆでて、試食することにした。
醤油を入れれば、結構おいしい。でも、中国製の味の濃いしょうゆ、ちょっと違う気がするな・・・と思いながらも、これで一応できたことになった。

それから、オリバーが提案した。
「今度、日本のコンピューターゲームの展示会があるんだけど、そこでラーメン試してみようか・・・」。

そんなことを言われても・・・
でも、結局時間はあるわけだし、コンピューターゲームの展示会って何をするんだろとまた好奇心の虫が騒いでいたので、とりあえず、話に乗ってみた。

イメージは、映画『たんぽぽ』






当日、家の前まで車で迎えに来てもらい、連れられていったところは、ミッテのシナゴークから川沿いに入ったところの行き止まり。車の中の材料をみんな一袋ずつ持ってオリの後ろについていったら、草ぼうぼう生えた土の道を少し入って、なんとコンクリートの階段を降りていく。そして、川沿いにあるコンクリートのマッチ箱のような殺風景な建物の中に入っていった。

さらに階段を下りると、中もまた何も飾り気も無い殺風景なコンクリートの建物。聞いてみると、昔家畜をさばくところ?家畜場とでもいうのかな? グレイのコンクリートのでかいマッチ箱のような感じだった。入り口から入ると、段差で下がっていて、下は左一面を見渡せる長四角のフロアになっていて、そのフロアに下りると、入り口の段差と同じ高さで小さな部屋が一つあって、もう既に、半分だけの屋台が建てられていた。殺風景な場所の中に、シックな色の濃い木の板でしっかりと組まれている屋台は、やっぱり、なにか才能を感じさせるものもあった。

「言われたとおりにスープを煮込んどいたけど、まだあんまり味が染みてないんだよ。」
と言って、となりの部屋から出てきたのは、リトと三ヒャエラのカップル。そこで初めて挨拶をした。

そんなんでも、開場まであとわずか、この日のために作ってくれたおそろいのTシャツに着替えて、三角巾もつけて準備OK。

なにせ、イメージは『たんぽぽ』

でも、開場時間は昼の1時から夕方6時頃までで、一体どんな人達が食べに来るのかもわからない。

それにしても、この展示会。日本のコンピューターゲームの展示会とは言うものの、どこかで集めてきたような、形や大きさの違う、中には今時めずらしい木枠の大きなテレビが合わせて7、8台くらいが、部屋いっぱい、所々砂埃があったりもする床にそのまま置かれていて、各テレビの前には、プレイステーションが一台ずつあって、ゲームができるという催し。まあ、名前には反していない企画だけれど、なんといっても、ラフでワイルドだった。第一、この催しをどうどうとやってしまっているという事が、ベルリンの『何でもあり』度を上げていて、これでOKなのかと思うと、なんだかなんでもできそうな希望がわいてきて、見るのに楽しかった。

下のフロアには、ポツリ、ポツリ、客が入り始め、オリやリトや三ヒャエラが客と話をして、呼び込むと、早速ラーメンを食べたい人が目の前に座った。


イメージは『たんぽぽ』





早速オーダーと共に、そのとき初めてやった、あの、ラーメンを網の上でクルクルして人玉分をとるしぐさに挑戦してみたけど、やっぱり初めてだけあって、時間がかかりすぎだった。
「でも、道具は私のではないし、練習しておくわけにもいかなかったしな・・・」

とちょっと反省しているうちにも、どんどんオーダーが寄せられたので、どんどん作っていた。

「お味はどうですか?」
「う〜ん、初めて食べたからね・・・おいしいかどうか分からないけど・・・」

(そうなんです。
5個も一緒に作ったから、麺がのびのびなんですよね〜。
ごめんなさ〜い。)

と、心の中で謝るシーンもありで、注文に追われながら、どんぶりも何度か洗って、しばらくたった頃、やっと終わりが見えてきた。

そして、例のゲームの展示の方を見てみると、オタッキーらしい青年が二人、一生懸命ゲームをしていた。

「やってみれば?」

とオリに言われて、リモコンに触ってみたけど、ワタシ、ゲームって柄でもないしな・・・
ゲームは、中学2年の時に、登校拒否をしてまでも死ぬほどやって、それで、一生分はしたから、もう二度とやらないだろうな・・・と思ってたこともあった。




その建物、当時は『クンスト アンド テクニック』といわれ、アーティスト集団のデザイン事務所兼アトリエになっているところで、毎週1回、口コミだけのバーを開いていたら、そんな面白い企画と場所が珍しいらしく、人でごった返しになったので、週1という分かりやすいオープンの日をやめて、7のつく日とか、その数字も毎月変えたりして、オープンしているという話だった。

こんな企画がありで、そんな強気な態度もありなんだ・・
それに、その日見た人たちは、みんなマジな感じで、何かを生み出そうとしてる姿勢も見えた。

そういえば、町全体がそんな雰囲気だった気もする。
壁崩壊後、みんなが富を求めて西側に移り住んだ後、旧東側の空になったぼろぼろのビルに、オルタナティブな若者が住み着いて、何でもありで何でも試せる自由を作り出していた。今思うと、あそこは、ベルリンの夜明けにしかなかった、スクワットハウス系カルチャーの代表的な発信地の一つだったんだな。外見や仕事の種類よりも、突拍子もない行動やアイデアで盛り上がってる、全く不思議な町だった。そうかと思えば、あちこち建設中で、これからどんどん変わっていくだろう気配もあり、やっぱり、最初から居心地が良かった。なんといっても、私の持ち物の大部分を占めているインド製の洋服が、ここでは特に目立たないのが、落ち着いた。




ところで、このオリ。
半年後に日本に帰った時、オリも偶然来ていて、会った2日とも、ラーメン屋のはしごをするという、実にラーメン熱の強い人で、あれから6年たった今では、手打ちの麺を打ち、週末だけ数限定のラーメン屋を出している。というわけで、最近はなかなか食べられない。

あああ、ラーメン食べたいな・・・。


コメント(6)

その後、半年後にもう一度、別の場所で屋台を出した時、

電気グルーブのピエール滝さんが店にやってきた。

滝さんはハイテンションで屋台を囲んで、オリや私も参加して何枚か写真を撮って帰ってった。珍しい場所を取材するコーナーを持ってるそうで・・・

その時の写真、某テレビ雑誌(え〜っと何だっけ?)『テレビブロズ』?そんなのあったっけ?のコーナーと、そのコーナーをまとめた単行本『へコキでウクライナ』に載ってます、と・・・。

でも、私の手元にはない!
見たい!

・・・と思い続けて、早7年
誰か見つけたら、メールください。。。
おおっ

マヤの新月にコメントくれてたんだね。
遅くなってごめんよ。

>僕も食べに行ったのですが、もう終わったと言われ...

そうそう、今限定でやってるから、なかなか食べられないんだよね。私ももう何年も食べてないよ。
手打ち麺だし焼き豚がおいしいよ。


>あのラーメン屋、一江さんがサポートしていたんだと初めて
知りました。

いやいや、サポートしてたなんて、オリも私もさっぱり思ってないから。。。たまたまそこにいたって感じで。

>元気ですか?

はいはい、おかげさまで。
元気に先生やってます。

写真、笑えるね。Good!
この前、ハンガリー人の友達と話してて、彼の笑い顔にGABROの横顔を見たよ・・・。

これ、ベルリンで有名なベトナム料理屋"ミスターウォン"の肖像がに匹敵するくらいすばらしい肖像画…
ちなみに…いまさらなんだけど、届いてる…ってメールしたっけ?ごめんなさい。


ラーメン屋その後…
オリのラーメン屋がとうとうお店になりました!

「COCOLO RAMEN」 in Next to Kuchi...
Gipsstr.3 10119 Berlin
mo-so, open: 18:00-24:00

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