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海保Childrenコミュの短編小説 いつもの男〜彼にはストローは必要ない〜

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【この物語はノンフィクションであり、実在の人物・団体・事件などにモロに関係あります】



…いつだってそうだ。

彼は同じ時間帯で店に来て、同じものを買っていく。


そして今日も………


僕がセブンイレブン横浜岸根公園店で働き始めた当初から知るお客。


だから今日も見かけたからってなんら違和感はない


そう“店に入ってくる”所までは……



時は2007年11月5日午後3時30分に遡る。

朝方の青い空とはうってかわり、午後になると次第に雲行きが怪しくなっていた。

しかし、店には普段と変わらずある程度のお客がいた。

ただ、1つだけ「普段どおり」でなかったことは、弁当や惣菜類が完売に近く、わずかな商品しか残っていなかったことだ。



するとそこへ、「彼」がやってきた。

いつものシャツに、いつものズボン。

片手にはセカンドバッグ。


眼鏡をかけた初老の男だ。


その男は店に入るや否や、ガゴをとり入り口の向かいにあるサンドイッチ売り場に目をやった。


しかし、彼の目に入ったのは彼にとってあまりにも残酷すぎる現状だった。

その視界には1、2種類だけ残ったサンドイッチが映ったたことだろう。


ちょうど近くにいた僕に彼はこわばった表情でこう言った。

「サンドイッチは……ないですか……??」

僕は彼が何の目的でここに来たのか痛いほど分かっていた。

『すいません…もう少ししないときません。はやければあと40分くらいで着ますね……』

そう言い返したときの、彼の表情はとても切なそうな顔をしていた。

「じゃあ4時過ぎにくるんですね……?」

『はぁ…おそらく……』

そういうと彼は店の外へ出て行った。。。。



そして時間が経って時刻は同日午後4時5分。

彼がまたやってきた。


確かに4時過ぎにくるかもとは言ったが、まさか5分足らず過ぎただけの正真正銘の「4時過ぎ」の出現に僕は驚いた。

しかしまだ愛しのサンドイッチは来ていない……

「サンドイッチ…まだですか…?」

『すいません…まだですね……』

予想外の返答に彼は困惑そうな表情を浮かべていた。

「あぁ、そうすか…」

力の抜けたか細い声でそうつぶやくと彼はそのまま外に出た。

僕は彼を目で追った。

外へ出た彼は5歩位進んだところで立ち止まり、車の行き交う目の前の道路をジッと見つめていた。


それを見た僕は彼が何をしているのかすぐに分かった。


待っているのだ。ただ1つのトラックが自分の元にくるのを。。。


空はすっかりどす黒い雲でおおわれ、小雨がぱらついていた。


しかし、彼は傘もささずに静止したまま一点を見つめて待っていた。

まるでご主人の帰りを待つ忠犬ハチ公のように……




しばらくすると、緑とオレンジの横縞に大きく「7」と書かれた車体のトラックが店に近づいてくるのが見えた。


                〜つづく〜





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