生活保護者の集いコミュのバブル崩壊で借金→生活保護　80代男性の納得できない思い

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　「毎日不安と我慢の連続。もちろん助けられてはいるが、元々減らされ続けてきた生活保護費を維持するといわれても……」

　横浜市に住む男性（87）は生活保護をうけ始めて22年余り。一人暮らしで、生活費は月約7万円。高騰する電気代の影響で、ガスや水道代も含めた月々の光熱水費は1万5千円ほどまであがり、生活を苦しめる。

かつて一晩の飲み代、今はひと月の生活費
　若い頃、不動産販売の会社を友人と立ち上げた。「バブルのころは一晩で7万円分くらい飲んだこともあった」

　しかし、バブルが崩壊した1990年ごろ、会社の事業はそれまでの借り入れの返済などに追われ立ちゆかなくなった。負債は1億円を超え、貯金はすべて返済に消えた。それが原因となり、妻とも離婚。その後、持病の高血圧や脳梗塞（こうそく）などを患ったこともあり、働くことはできなかった。

ここから続き
　「かつての一晩の飲み代が、今のひと月の生活費。人生何があるか分からない」と振り返る。

　国民年金だけでは医療費を払うことができなくなり、生活が行き詰まった。そして生活保護をうけることになった。

　住んでいる団地内では、生活保護をうけていると言いふらされたことがあった。「批判的な声には慣れてはいる。でも誰しもがうける可能性がある」と話す。

元々引き下げられていた基準額　納得いかぬ
　政府は、5年に1度実施される生活保護の改定で、2023～24年度の引き下げを見送ることを決めた。

　だが今回は引き下げを見送ったものの、13年から3年間にわたって生活扶助の基準額を最大10%引き下げた。物価動向を踏まえたデフレ調整という理由だった。減額をめぐっては、各地で決定の取り消しを求める裁判が起こされた。

　「今の基準額を維持するといわれても元々基準額は下げられていた」。男性も納得できない思いを抱える。

　物価高騰に直面しながら、日々の生活や自分の体調など不安はつきない。杖をつきながら自分でスーパーにいき、安くなった総菜を買うなどしてなんとかやりくりをしている。

　大好きだった果物やラーメンは食べられない。かつての友人たちは自分が生活保護をうけていることは知らない。食事の誘いをうけても、支払えないために断り続けた。今、ほとんどの人と疎遠になってしまった。

　「寂しいことが一番つらい」。食料品の値上がりは続き、ますます人との交流が限られる。そんな不安ばかりが募る。（石川友恵）

生活保護
　5年に1度の生活保護の見直しについて、政府は来年度の当初予算案で、2023～24年度は特例措置として引き下げを凍結することを決めました。厚生労働省が19年の消費実態をもとに出した試算では高齢者世帯を中心に食費などにあてる「生活扶助」の基準額の引き下げが必要という結果が出ていましたが、物価高騰の影響を考慮しました。25年以降は改めて判断することにしています。ただ、生活保護費は13～15年に大幅減額され、大阪や東京など4地裁で、国の決定を違法と取り消す判決が出るなど、困窮する人たちの生活に影響が出ているとも指摘されています。生活保護を利用する半数以上は高齢世帯で、今後さらに増え続けていく課題も残されたままです。

吉永純・花園大教授（公的扶助論）の話
　生活保護の基準額は、2013～15年に食費などにあてる「生活扶助費」が最大10%引き下げられるなど、この10年間で生活は相当悪化し、深刻になっていると推察される。

　さらに今般の物価高騰では、特に今年5月に食費や電気、ガス代などの「基礎的支出項目」が4・7%も上がっており、生活保護を利用する世帯など低所得層が最も影響をうけているのは明らかだ。

　来年度予算案で、時限的に1人あたり月1千円の加算を決めたことは画期的であるといえるが、物価の上昇に額が追いついていない印象だ。「据え置き」についても、現状はすべての世帯で「引き上げ」が必要な状況で、生活苦への対応という視点では不十分と考える。

　一方で、今回の基準の改定では、当初示された厚生労働省の試算をそのまま実行すれば、暮らしに相当な打撃があることから、加算をつけるなどの措置にいたった。

　一般低所得（所得下位10%）世帯と比較して改定するやり方が、必ずしも実態を反映する結果にならないことや、19年の統計を使うなどタイムラグが生じるという点で現行の基準の検証方法にも問題があることがあらわになったといえる。（聞き手・石川友恵）