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生活保護者の集いコミュの生活保護「水際作戦」検証 当事者抜きの調査に意味はあるのか

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https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20240513/pol/00m/010/006000c

足立区役所=山口朋辰撮影
 東京都内に暮らす竹内さん(仮名、30代男性)は、今年4月、足立区議会のサイトで自分のことが書かれている行政文書がアップされているのを発見した。

 文書のタイトルは「生活保護相談における窓口対応の検証及び相談窓口の録音についての報告書」。作成者は足立区長の付属機関である「足立区生活保護適正実施協議会」。報告書の中で、竹内さんは「相談者A」として登場している。

行政の窓口に相談に行ったら…
 昨年秋、生活に困窮した竹内さんは10月10日、足立区東部福祉事務所の窓口に生活保護の相談に行った。このままだとホームレスになってしまうと訴えた竹内さんに対して、区の相談員が示したのは「6人部屋、カーテンの間仕切り部屋」の施設に入るか、借金をして自費で住宅を確保する、という二つの選択肢だった。

筆者提供
筆者提供
 竹内さんが面談でのやりとりを録音した音声データによると、相談員はまず、家がない人には「基本的にうちは集団生活のようなところに入ってもらう」と説明した上で、集団生活が嫌な場合は「自分でやる手段の提案として自費転居というのがある」と発言。「例えば自腹で、借金しろとは言わないですけど、親族に金を借りるお金があるとかだったら金借りて、自分で転居先をどっか見つける」との方法もあると竹内さんに提案した。

 また、相部屋ではない個室の施設に入るという第三の選択肢もあるが、現状、個室は「全部埋まっている」。「千葉の、めちゃくちゃ山の中にいるわけじゃないですけど、駅から歩いて30分とか、そういうとこ」なら検討できるが、遠隔地の施設に入ってしまった場合、交通の便が悪いので「仕事の問題」が生じ、「ご自身が生活保護をやめるとか継続した場合に家を探すタイミングがわからない。で、うちも費用も出せないので完全にショートする」と述べ、この選択肢は「お勧めできない」と述べた。

 だが、安定した住まいのない生活保護利用者がアパートを契約する場合、福祉事務所は敷金などの初期費用を支給することが可能だ。このことを事前に調べて知っていた竹内さんは「家を借りる費用も出してもらえる」のではないかと質問したが、相談員は生活保護では転居費用が出ないという虚偽の説明を撤回せず、貸し付けなどの別の支援制度はあるが、要件が厳しいので「ほぼ不可」だと語った。

「水際作戦」
 執拗(しつよう)に「自費転居」を勧める相談員に竹内さんはここで相談をしても無駄だと感じ、生活保護の申請を諦めざるをえなかった。

 竹内さんはその後、支援団体と足立区の小椋修平区議に相談。支援者同行のもと、生活保護を申請することができた。小椋区議は10月12日の区議会決算特別委員会で、本事案が遠回しに生活保護を申請させない「水際作戦」にあたると指摘。区としての検証を求め、再発防止のため面談室の録音可視化を提案した。区側は今後、現場の指導を徹底すること、録音制度についても相談者の同意を得る形での導入を検討すると答弁した。

足立区議会のある区役所庁舎=藤沢美由紀撮影
足立区議会のある区役所庁舎=藤沢美由紀撮影
 ところが、今年4月に竹内さんがネットで見つけた足立区生活保護適正実施協議会の報告書は、竹内さんが受けた対応が「水際」であることを否定する内容だった。

 報告書は、相談員の言葉遣いや提案の仕方に問題があり、「個室は全部埋まっている」「遠方の施設しかない」「完全にショートする」など、「客観的な事実を述べていない」説明があった点を不適切だと認定。「水際対応と誤認されかねない」対応があったことは認めたものの、相談終了間際に竹内さんが相談員の提案に「ちょっと考えます」と答えていたことをもって、「申請書を渡さない『水際対応』と言われる対応はなかった」と結論づけた。

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 しかし、相談員が繰り返し推奨していたのは、竹内さんが親族や交際相手からお金を借りて、自費で部屋を借りるという選択肢だった。生活保護を申請した上で住宅を確保する方法があるにもかかわらず、それを否定する虚偽の説明を行い、私的に借金をすることを勧めるのは「水際」ではないのだろうか。

本人には聞かずに
 足立区は昨年12月、常設の生活保護適正実施協議会の中に学識経験者らによる検証部会を設け、本事案の検証を進めてきた。区の福祉事務所長は12月11日の区議会厚生委員会で「当事者のヒヤリングを行うのか」と質問された際、「関係者、全てヒヤリングを行う予定」と答弁していたが、実際の検証ではヒヤリング対象者は区の職員に限られ、竹内さん本人や彼に関わった支援者、区議からの聞き取りは行なわれなかった。今年4月に報告書は区議会に提出されたが、竹内さん本人への連絡はなかった。

筆者の問い合わせに対する足立福祉事務所事務所長の回答=筆者提供
筆者の問い合わせに対する足立福祉事務所事務所長の回答=筆者提供
 行政窓口での違法行為が疑われる事案の検証で、職員側からしか聴取を行わないのは、公平性を担保する意思が最初からないと見なさざるをえない。この点について、私が足立区に取材したところ、「本人からの検証の求めがあったものではないため、第三者による部会では本人への配慮からヒヤリングを実施しなかった」との回答があった。当事者抜きの検証を本人に知らせずにまとめること以上に、「配慮」を欠く行動はないと思うのは私だけだろうか。竹内さん本人の意向を確認する機会はいくらでもあったはずだ。

 竹内さんは区の検証について「自分のことなのに自分が関わることができない。僕のことなのに、僕に聞いてくれないのかと思った」と、悔しい思いを語っている。

牽強付会
 区の報告書は、面談の録音可視化についても導入のメリットとデメリットを検討した上で、録音が相談者を萎縮させかねないリスクがあるため導入を見送ると結論づけている。

 報告書の中で録音制度導入の可否についての結論が書かれた節を読んだ際、私は驚いた。

 節の冒頭には「生活保護相談において、いわゆる『水際対応』と評価される窓口相談はあってはならず、相談者の意向は真摯(しんし)に受けとめなければならない」との一文がある。しかし、改行後の次の文では「生活保護相談窓口は、本来違法・不当な行為の行われる現場ではないから、証拠として記録することを制度導入の目的とすることはできない」と書かれているのだ。

 違法・不当な行為は「あってはならない」から、抑止や検証のための仕組みが必要だと考えるのが一般的な思考回路だろう。報告書には、こうした牽強付会(けんきょうふかい)が随所に見られる。

 当事者不在の検証は、行政職員の「言い逃れ」をまとめたものでしかない。公平性・中立性を担保した再検証を求めていきたい。

足立区役所
足立区役所

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