ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

生活保護者の集いコミュの宮本太郎氏が語る…「新しい生活困難層」を支援するために、いまの日本で最初にやるべきこと

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
https://news.yahoo.co.jp/articles/eb6b68e05e21fe8ea06af27055d011f80511c199

 岸田文雄首相は「新しい資本主義」を政策の看板に掲げている。しかし、歴史の流れを押さえたうえで現在の日本社会が陥っている状況を精査していくと、この「新しい資本主義」には様々に不十分な点があることが浮かび上がってくる――中央大学教授で『貧困・介護・育児の政治』(朝日新聞出版)などの著書がある宮本太郎氏はそのように指摘する。

【写真】3年後、5年後、10年後に「生き残る会社」「消える会社」371社

 「新しい資本主義」や、それとともに岸田首相が推す「日本型資本主義の復活」の何が問題なのか、ジャーナリストの佐々木実氏が聞いた。

 【前編】「宮本太郎氏が語る…日本の働き方が「挑戦できないメンバーシップ型」と「発展可能性なきジョブ型」に分断された理由」はこちら

「新しい生活困難層」
〔PHOTO〕iStock

 佐々木 宮本先生は『貧困・介護・育児の政治』(朝日新聞出版)で、「新しい生活困難層」をこう定義しています。

 「(1)複合的な困難を抱え世帯内で相互依存にある場合も多く、(2)それゆえに雇用と社会保障の制度の狭間にはまり現行制度で対応しきれず、(3)横断的で、低所得不安定就労層、ひとり親世帯、低年金の高齢者、ひきこもり、軽度の知的障がい者など、多様な人々を含む」

 宮本 要するに制度の狭間で支援が届かない人たちが急増しているわけですが、その背景については説明が必要でしょう。

 男性稼ぎ主による家族扶養を軸とした日本型生活保障は、社会保障を抑制したといわれますが、必ずしもそうではありません。男性稼ぎ主の雇用頼みだったからこそ、その定年退職や病気・けがに対応する社会保険が決定的に大事だったのです。

 社会保険は、本来は保険料を財源とするものですが、日本では社会保険財源に社会保障の税支出の大半が投入され、国民皆保険・皆年金を1961年という早い段階で実現してきました。しかしその分、生活保護などの税財源は十分に確保されず、給付対象が狭められました。

 宮本 日本はこのように、〈安定雇用+社会保険〉と〈働くことが困難な人たちに事実上絞り込まれた生活保護〉の二極構造になっていました。日本型生活保障が半壊状態の今、この二極の間で「新しい生活困難層」が急増しているわけです。この層は安定して働けていないので保険料拠出も困難ですが、なんとか働けているということで生活保護も受給できない。

 「新しい資本主義」論は「勤労者皆保険」を唱えていてこの点でも「夢よ再び」なのですが、いったいどうやって実現するのか。まして、この層に属する現役世代に「人への投資」をいかに届かせるのでしょうか。

困窮のジャングルジム
 佐々木 「新しい生活困難層」のなかでも、30代後半から40代前半までのいわゆる「就職氷河期世代」の問題はきわめて深刻ですね。

 宮本 かつて社会運動家の湯浅誠さんが『反貧困』(岩波新書)で日本を「すべり台社会」に喩えました。安定雇用から非正規へ、そして深刻な困窮へと容易に滑り落ちるというイメージですね。でも就職氷河期世代にみる「新しい生活困難層」の実態は、このイメージすら妥当しない。この世代はその後の世代より非正規雇用が100万人ほど多く、そもそも最初から不安定就労だったので、「上」に位置する正規雇用から滑り落ちたわけでもありません。

 コロナ禍は就職氷河期の子ども世代にも深刻な影響を与えていて、子どもたちは人生のスタートラインから可能性を制約されています。まさに「親ガチャ」ですね。

 そして、コロナ禍で所得がさらに低下しても、生活保護の受給は容易ではなく、そちらに移行できるわけでもない。実態として、コロナ禍のなかでも生活保護の受給者は減少すらしています。児童公園の比喩でいうなら、「すべり台」というより、困窮という「ジャングルジム」のなかに閉じ込められたかたちです。

 佐々木 男性稼ぎ主の雇用を保障することで家族の扶養を支えるという仕組みが機能不全に陥ってすでに久しいわけですけれども、こうした制度の問題はどこから手をつければいいのでしょうか。

 宮本 「人への投資」が「新しい生活困難層」に届く条件について考えましょう。岸田首相の『文藝春秋』論文では「人への投資」として100万人程度を対象に能力開発支援、再就職支援等をおこなうことになっているのですが、「新しい生活困難層」を現役世代に限定しても、そうした支援を活用する条件はあるでしょうか? 
 この層の人たちは、家族のケアや自分のメンタルヘルス、さらには生活費の確保に追われている。能力開発どころではないのではないか。まず所得保障の拡充などで、生活を安定させることが必要です。たとえば現在、ヨーロッパであるような社会保障給付としての住宅手当で家賃負担を免れれば、一息つけるという世帯も多いでしょう。

 さらに踏み込んで制度の転換についていえば、生活保障の「内付け」を「外付け」にして人々のキャリア形成を可能にすることだと思います。日本型生活保障では生活維持機能が正規雇用にいわば「内付け」され、年功賃金や企業内福利厚生で提供されています。先ほど住宅手当の話をしましたが、住宅手当といえば、日本では会社の手当を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。でもヨーロッパの生活保障では、雇用に対して「外付け」されています。住宅手当もヨーロッパであれば福祉国家をとおして供給されてきたわけです。

 「人への投資」でいえば、そもそも教育費の家計負担がきわめて重い日本では、子どもの学費も年功賃金からなんとか捻出するという意味で「内付け」です。その他、医療や家族手当なども含めて、正規雇用に「内付け」された日本型生活保障の仕組みを、雇用のポジションにかかわりなく利用できる「外付け」の仕組みに転換しなければ、「人への投資」は成り立ちません。

 佐々木 雇用に「内付け」された仕組みは、メンバーシップ型という特殊な雇用システムが可能にしたともいえますね。しかし現状はといえば、非正規ゆえに正規雇用に「内付け」された制度から排除された「新しい生活困難層」が大量に存在しています。

 宮本 ここに大きなジレンマがあります。「内付け」を利用できる側は決して特権層であるわけではなく、年功賃金や福利厚生で子供の学費や住宅ローンをなんとかまかなっている。「外付け」の制度ができる前に、「不平等だから半分は困難層の人に回しましょう」ともっていかれたら生活が破綻する。かといって、そのままでは「新しい生活困難層」は放置状態です。

 「内付け」から「外付け」への転換を資源の取り合いにしてはいけません。「人への投資」の現実的基盤が形成され、誰もがキャリアづくりを可能にしていくその効用をみすえて、しかるべき財源を確保し、合意形成を図りながらすすめる必要があります。

 佐々木 特定層に負担を負わせるのではなく、「内付け」から「外付け」に徐々に制度を転換していくという考え方ですね。雇用から切り離された「外付け」の制度になれば、安定した「メンバーシップ型」と不安定な「ジョブ型」といった、これまでの雇用の構図は根本的に変わってきますね。

 宮本 雇用のポジションの如何を問わず、「外付け」の、つまり「社会保障給付として制度化された生活保障」にアクセスできるようになったとき、「メンバーシップ型」か「ジョブ型」かというのは、より純粋に人と仕事の関係、働き方の相違になりうるかもしれません。つまり、「人に仕事をつける」メンバーシップ型か「人を仕事につける」ジョブ型かという働き方の違いです。

 ただ併せて強調したいのですが、「新しい生活困難層」が参加できる働き方は、より柔軟に、「人に合わせて仕事を調整する」ようなかたちを含めて考えるべきだと思います。いわば「オーダーメイド型」です。

 宮本 家族のケアや自分のメンタルヘルスの関係で午後からの出勤になるとか、対人関係が苦手だとかいうのを特性ととらえて仕事を調整すれば、社会を支える人材は大きく広がります。

 たとえば、「ウチらめっちゃ細かいんで」という株式会社は引きこもりの人が引きこもったままホームページなどを制作する会社として知られています。引きこもりの人たちが引きこもるきっかけになった繊細さは、リモートワークを活かして仕事を調整すれば、そのまま細部がよくできたホームページを作成する武器に転じるわけです。

 地域では一方で「新しい生活困難層」など多くの人たちが働けずにいて、他方では多くの中小企業が人手不足に悩んでいます。「オーダーメイド型」の雇用を調整することで、両者を架橋することができると思います。

 「人への投資」は、これまでの生活保障や働き方をそのままにして、人々の能力だけ引き上げようとしたら、まず頓挫するでしょう。逆に、生活保障の拡充と働き方の柔軟化と連動できれば、きわめて大きな効果をあげるのではないでしょうか。

どっちつかずの日本
 佐々木 制度のどこが問題なのか、総合的にとらえる視点が必要になるわけですね。

 宮本先生は麻生太郎内閣で「安心社会実現会議」の中心メンバーとして、また、民主党政権でも「社会保障改革に関する有識者検討会」の座長を務めるなど政策形成に関わってこられました。

 『貧困・介護・育児の政治』では、「社会民主主義的な観点に近い提言を重ねたが、予想以上に議論が受け入れられたと思う」とふりかえりながら、日本で福祉の機能強化の議論が全面に出てくるのは「政治的な例外状況」に限られるとも指摘されていますね。

 宮本 こうした政策形成に関わるなかで、経済団体からもヒアリングをする機会も多かったのですが、社会保障については年金の財源は消費税でとか、要するに企業の負担を減らしたいという話ばかりでした。「人への投資」を活用するという発想は、少なくとも経済団体からは聞こえてくることはなく、ヨーロッパの資本主義との落差を痛感しました。個別の経営者にはいろいろなビジョンをお持ちの方がおられることは知っていますが。

 佐々木 日本では、どっちつかずの状態のまま、それでも日本型生活保障の制度を維持しつづけています。まさに“ゆでガエル”の状態ではないでしょうか。

 宮本 「挑戦できないメンバーシップ型雇用」と「発展可能性なきジョブ型雇用」が組み合わされている、といったのはそのことです。このままではどちらの強みも発揮できないまま沈み込んでいく。「新しい資本主義」というとき、このあたりをどうするつもりなのか。ぜひリアルな議論をしてほしいと思います。

宮本 太郎(中央大学)/佐々木 実(ジャーナリスト)

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

生活保護者の集い 更新情報

生活保護者の集いのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。