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生活保護者の集いコミュの中島京子さん『やさしい猫』が第56回吉川英治文学賞を受賞。中島京子×小林美穂子「生活保護と入管の共通点は、現場に裁量権があり過ぎること」

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https://article.auone.jp/detail/1/2/2/196_2_r_20220302_1646212932681368

シングルマザーと娘、スリランカ人の彼、という小さな家族を中心に、入管行政の問題点に光を当て、「読売新聞」の連載時から話題を集めていた中島京子さんの『やさしい猫』(2021年8月刊)が、第56回吉川英治文学賞を受賞した。選考委員は浅田次郎、五木寛之、北方謙三、林真理子、宮城谷昌光、宮部みゆきの6氏。中島さんが、入国管理施設の問題などについて、小林美穂子さんと意見を交わした『婦人公論』2021年11月24日号の対談を再配信します。


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生活保護受給者や路上生活者。在留資格を失って入国管理の施設に収容された外国人。コロナ禍でますます困窮する人たちの身に今、何が起きているのか。小説『やさしい猫』で入管行政の問題に焦点を当てた中島京子さんと、生活困窮者支援を長年続けてきた小林美穂子さんが語り合った(構成=古川美穂 撮影=本社写真部)
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【写真】「日本は入管の裁量権が大きすぎる」と語る中島京子さん

<前編よりつづく>

コロナ禍で開いたパンドラの箱
中島 小林さんは昨年、『コロナ禍の東京を駆ける』という本を出されました。緊急事態宣言下の東京で、困窮した方の相談に乗って当座の宿泊費や食費をお渡ししたり、生活保護の申請に付き添ったり。コロナ以降ほぼ休みなく、文字通り駆け回ってこられましたね。

小林 インターネットの相談フォームを作ったら、膨大な数の相談が寄せられたんです。ネットカフェに寝泊まりしていた若い方や、女性も多くて。東京都が17年に行った調査によれば、東京には4000人のネットカフェ生活者がいるとのことですが、これまではなかなか支援の手を届けられずにいました。それがコロナをきっかけにパンドラの箱が開いてしまったと感じています。

中島 ご本のもとになったSNS上の日記も読んでいましたが、毎日のように「今日も福祉事務所に同行してひどい対応をされた」と。今の日本でこんなことが起きているのかと、本当に驚きました。

小林 私たちもまさかネットカフェやファストフード店が一斉に閉まる日がくるとは想像していなかった。それらの場所を住まいにしていた人々から寄せられるSOSに当時10人足らずのメンバーで一人一人会いに行き、朝から晩まで生活保護の申請につなげる繰り返し。目が回るような忙しさで……。

中島 生活保護申請者を役所が窓口で追い返す、いわゆる「水際作戦」がどんなものか、本当によくわかりました。

「自分は守られている」と思うのは幻想
小林 福祉事務所は、生活保護の人数を増やしたくないという気持ちが潜在的にあるのではないかと思います。都市部ではケースワーカーひとりの担当件数が100件を超える場合も珍しくありません。とてもまともなケースワークができる状態ではないのです。一時期の公務員バッシングで職員数が減らされたり、忙しすぎて新人の教育がままならなかったりという構造的な問題も背景にあります。



『やさしい猫』(著:中島京子/中央公論新社)
中島 粘り強く交渉するのは大変でしょうけれど、支援のお陰で助かった方がいると伺うと本当に良かったと思います。

小林 一足飛びで世間の言う「自立(=就労)」までいかなくても、ただ元気でいるだけでも十分です。ご飯もろくに食べられない、医療も受けられないマイナス地点からようやくゼロ地点になったのですから。若い人たちの今を支え、今後の人生を変える制度だと思います。

中島 非正規雇用などで経済的に不安定だった方だけでなく、正社員で自分はこの先路頭に迷うことなどないと信じていた人でも仕事を失ったり、住む家がなくなって困っているのがコロナ禍での大きな特徴ですね。

小林 ええ。貧困は誰にとっても他人事ではなくなりました。

中島 「自分は守られている」と思うのは幻想だった。弱い立場にある人たちが守られない社会は自分も守られない社会だということを、今回はすごく思い知らされました。そんななか、生活保護申請の際に申請者の親族に援助を打診する「扶養照会」において本人の意思を一定尊重するようにと、今年の4月から運用が変わったのは画期的でした。従来から批判が多かったですよね。

小林 ええ。信じられないような変化です。これまでは家族に知らされるのがイヤで生活保護の申請をためらう人がたくさんいらっしゃいましたから。

公的機関が人を救おうとしない
中島 「扶養照会する」と脅すことで申請者を追い払う意味もある?

小林 残念ですがそのように使ってしまっている職員もいます。実際に親族から何らかの援助ができると返答があるのは東京都内ではおそらく0.5%以下。全国平均だと1.45%。もともと経済的な問題や不仲、虐待や暴力など、親族に頼れない事情があって生活保護を申請している方も多いわけですから。

中島 公的機関が人を救おうとしない、申請を受け付けたがらないという面で、生活保護と入管の問題には共通点がありますね。

小林 おっしゃる通りです。生活保護基準を下回る経済状況の世帯が実際に保護を受給している「捕捉率」は、日本では20%程度。フランスや北欧では80〜90%台ですから、日本ではどれだけ保護を利用する権利のある人が利用できていないかがわかります。

中島 一方で日本の難民認定率は1%以下。欧米諸国は20〜50%ぐらいです。そもそも難民になった方はどこにいようと難民のはずなのに、ある国では難民と認められ、別の国では認められないということ自体おかしいです。

小林 日本の難民認定は先進諸国の中でも異常なハードルの高さですね。難民の方々は命がけで国を出てきて、生きるための選択肢がほとんどなくなっている人たちなのに。

中島 現場に裁量権がありすぎるところも似ています。難民認定とか仮放免を決めるのに、入管の裁量権が大きすぎる。

生存は椅子取りゲームではない
小林 生活保護も同じですね。担当者によっては窓口で簡単に追い返したりする。たまたま目の前に座った職員の判断で生き死にを決められてしまうロシアンルーレット状態なのはおかしい。頑張っているから助けるとか、真面目にやらないから許可しないとか、職員の価値基準や好き嫌いが入ってしまうぐらいならAIが判断を下したほうが公正です。

中島 小林さんたちのご活躍を見て、私はこの国ではいかに人権が軽んじられているかが可視化されたと思いました。

小林 人権のある人とない人に区分けされているような現状はおかしいです。生存は椅子取りゲームじゃありません。

中島 ところで実際に路上生活で困っている方を見かけたとき、何か力になりたいと思ったらどうすればいいのでしょうか。

小林 何年も路上生活をしている方たちは地域の支援者が把握しています。ただ女性は危険にさらされやすいので、「どこそこにいる女性が気になる」と福祉事務所に保護を求めてもいいかもしれません。また、お店で何か買ってきて「召し上がりますか」と聞いてみるとか。断られたらそれでもいい。気にかけている人がいると周囲に見せることが、暴力の牽制にもなります。孤立させてしまうのが一番危険なんです。ただ、人との接触を怖がる人もいらっしゃいますから、そのへんは加減しながら。

中島 昨年、都内のバス停で路上生活をしていた60代の女性が、男性にいきなり殴られて亡くなられました。こんな痛ましい事件も、もしかしたら未然に防ぐことができたのかもしれません。

小林 はい。全員と仲良くしよう、というわけではない。相手の存在を認めて、私がここにいて生きていいのと同じだけの権利を相手にも認めよう、ということです。

中島 差別を根絶するのは簡単ではないけれど、みんなが価値観の転換をして大きな運動を起こさなければいけないと思います。コロナ禍の痛みを経て、少しはその芽が出てきていると信じたいですね。

03/02 18:00 婦人公論.jp

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