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生活保護者の集いコミュのお金なし保証人なし歓迎の賃貸業者 「ないない尽くし」に寄り添う

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https://digital.asahi.com/articles/ASQ137F62PD9ULFA023.html?pn=4&unlock=1#continuehere

いまは珍しい屋内の土壁が、築年数の古さを感じさせる。

 大阪府大東市の住宅街。長屋のようなつくりで、隣家と壁でつながる木造2階建て3DKで暮らす女性(81)は、家賃を必ず手渡しすることにしている。「もう年やし、歩くのはしんどい。受け取りに来てくれるのは、助かる」

 2カ月分の家賃7万円を受けとった大家の松本知之さん(42)は「こっちも元気な顔をみると安心するわ」と、領収証のつづりにハンコを押した。

新しい年、そしてその先の未来に、経済社会はどこへ向かうのか。私たちに何が問われているのか。様々な分野で取材を重ねてきた経済記者たちが、テーマごとに現場を訪ねながら、コラム形式で考えます。

ここから続き
 魚屋だった夫に10年前に先立たれて一人暮らし。娘の住まいに近い、この家に越して3年になる。築50年以上の家は雨漏りしたり、トイレの水があふれたり。それでも、この家賃なら年金暮らしでもやりくりできる。

 気に入っているのは家賃や住み心地だけではない。「とっても、ええ人やな」。家に不具合が出るたびに相談にのってくれる松本さんを、頼りにしているようだ。

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松本さんに家賃を手渡しする女性。娘の住まいにも近いため、この家への入居を決めたという=大阪府大東市、小杉豊和撮影
 大家の松本さんは、戸建てやマンションを安く貸すベンチャー企業「リノベーター」(京都府京田辺市)の社長でもある。

 主な利用者は、高齢の単身者や所得のあまり多くない人たちだ。連帯保証人になってくれる人がいない、孤独死するかも、家賃を滞納するかもしれない――そんな不安から、大家から入居を拒まれることが多い。

 松本さんの考えは違う。「若くて経済力のある人に貸しても、やがては転勤や住み替えなどで出ていく。だったら、困っている人に安心して長く住んでもらえれば、事業として成り立つはずだ」

 信用金庫やファンドなどから資金を集め、古い空き家を買っている。大阪や京都、東京などに約80戸を持つが、ほぼ満室だ。リフォームは最小限にとどめて経費を抑え、家賃は平均4・8万円と各地の相場より安めに設定。敷金・礼金、連帯保証人も原則不要だ。自社の保有物件を貸すため、入居者には仲介手数料もかからない。

 そのぶん家賃を取りはぐれる心配はあるが、みずから各地の物件を定期的に回るなど入居者との接点を密に保つことで、トラブルを防ごうとしている。

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生活に困る人たちに低家賃の住まいを提供するソーシャルビジネスを手がける松本知之さん=大阪府大東市、小杉豊和撮影
 収益を上げながら、持続可能な形で社会の課題を解決することをめざすソーシャルビジネス。まだ雇う従業員は1人だけの小さなベンチャーに、自治体や個人からの相談が相次いでいる。

 「クリスマスイブまでに家を追い出されそうだ」

 昨年12月初め、大阪の寝屋川市社会福祉協議会の相談支援員、忠本修二さん(49)のところに、自宅マンションから退去を迫られた一人暮らしの50代男性から相談があった。

 数年前に会社を辞めた男性は、新型コロナ禍で職探しが難航。マンションの住宅ローンの返済が滞った。忠本さんは、離職や休業などで生活に困り、家を失うおそれがある人に家賃を補助する国の「住居確保給付金」の申請を考えた。だが、退去期限まで2週間あまり。もう時間がない。

 そこで頼ったのが、寝屋川市内でも物件を展開する松本さんのリノベーターだった。ほどなく、家賃4万5千円の戸建てに入れることが決まった。「仕事も保証人もお金も時間もない、『ないない尽くし』の人も受け入れてくれた」と忠本さんは感謝する。

 コロナ禍は、日本の住宅政策のもろさを浮き彫りにした。

 国の住居確保給付金の支給が決まった人は2020年度、約13万5千件と前年の34倍に達した。足もとでも高水準が続く。ただ、この給付金は期限つきだ。原則3カ月、いまは最長12カ月まで。低所得者の住宅支援は、まだまだ課題が多い。

 本来なら、住まいに困る人を助ける安全網を担うはずの公営住宅は、自治体の財政悪化で整備が進んでいない。住宅扶助を含めた生活保護を受けるには所得や資産を調べられるため、ためらう人も多い。

 高齢の単身者や低所得者が自力で家を探そうとしても、民間住宅では「入居お断り」の商慣行が根強い。

 日本福祉大の藤森克彦教授(社会政策)は「借家で暮らす非正規雇用の人や単身世帯が増える一方、正社員として社宅に入り、いずれ家を購入するという人生設計を描く人は以前より少なくなった。『持ち家支援』中心の住宅政策は見直して、借家に住む人の支援に力を入れるべきだ」と話す。

 住まいがなければ生活基盤は失われる。「ないない尽くし」の人からの相談が相次ぐリノベーターの松本さんの存在は、「公助」には頼れず、「自助」に頼る社会に欠けたものを映し出しているように見える。それは単なる「共助」の仕組みというより、「助けてもらえる」と思える安心感なのだろう。「より寛容な社会」への切実な願いを、受け止めることなのかもしれない。

 「ここは同じ日本なのか」。大阪や東京で目立つタワーマンションを見上げるたび、目の当たりにする格差の現実に、松本さんは考え込んでしまう。

 景気浮揚を重視したアベノミクスを機に、借金を引いても1億円以上の金融資産を持つ富裕層は増えてきた。一方で、日々の備えである預貯金も持たない「貯蓄ゼロ」の世帯も各世代に存在する。

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アベノミクス以降、純金融資産1億円以上の富裕層が増えてきた
 これまでに松本さんの物件で、生活保護や年金で暮らし、ひとりで亡くなった入居者は4人いた。それでも家賃の高い東京では、すぐに借り手がつき、困っている人の多さを実感する。

 松本さんは子どものころ、父親の経営する自動車部品工場が倒産した経験を持つ。生活に困っている人に役立つ仕事をしようと思ったのは、同じように苦労した両親の姿が記憶にあるからだ。自分にできる「住まいの提供」という方法を通じ、多くの人に心休まる居場所を提供するために、3年前に大手生命保険会社を辞めて起業した。

 「どこまで、人に寄り添うことができるのか」

 松本さんの問いは、私たちにも投げかけられている。(編集委員・堀篭俊材)

     ◇

 堀篭俊材(ほりごめ・としき) 編集委員。1966年、千葉県生まれ。1989年に入社し、函館・甲府での勤務を経て、東京・名古屋・大阪の経済部で金融や電機業界、財界などを取材。異動のたびに計8回引っ越したが、今回の取材で住まい選びに無頓着だったこと、住めるありがたさに気づかされた。

 昨年読んだ本で考えさせられたのは、ある財界人に薦められたマイケル・サンデル米ハーバード大教授の「実力も運のうち 能力主義は正義か?」。人々の生活が分断され、交わることがなくなり、大きな問題に向き合う政治や社会の力を失わせているのではないかと感じる。朝日新聞デジタルでの最近の連載に「多様性と企業」(http://t.asahi.com/wld5別ウインドウで開きます)など。

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