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生活保護者の集いコミュの「分配」を語るなら、「生活保護」敵視政策の転換から

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https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20211012/pol/00m/010/009000c?cx_fm=mailyu&cx_ml=article&cx_mdate=20211013

 「私たち一人一人は微力だが、無力ではない」

 さまざまな社会問題に取り組む市民運動の現場で繰り返されてきた言葉。その言葉の意味を実感できる出来事が最近、東京・中野で起こった。

生活保護担当課の職務スペースが分割
 中野区は、私が代表を務める生活困窮者支援団体「つくろい東京ファンド」が活動の拠点としている地域である。

 中野区では、現在の区役所庁舎を取り壊し、2024年に建設される新庁舎に移転するという計画が進められてきたが、今年7月末、突如として生活保護担当課の職務スペースが2分割され、課員の半分以上が新庁舎ではなく、別の区有施設で職務に当たるという計画が発表された。

 区の説明では、生活困窮に関する区民からの相談は新しくできる庁舎でおこない、生活保護の申請も新庁舎で受け付けるものの、生活保護決定後の相談や保護費の支給などは新庁舎ではなく、そこから徒歩数分の場所にある別の施設で実施するという。その理由としては、コロナ禍や高齢化の影響により、今後、生活保護利用者が増えることが予想されるため、職員の増員を計画しているが、生活保護を担当する職員全員が入れるスペースを新庁舎内に確保できなかったというのだ。

 新たな庁舎をこれから建設するのにもかかわらず、生活保護担当課のみ全員の職務スペースを確保できない、という奇妙な説明に納得できる人はいないであろう。この計画は、生活保護を担当する現場の職員の声も聞かずに決まったことが、その後の区議会での質疑で判明した。

生活保護担当課は新庁舎に入れない?
 実は東京都内では、区役所庁舎の改修や移転に伴い、生活保護担当課が新庁舎に入れなかったという事例が、板橋区(14年改修)、豊島区(15年移転)、渋谷区(19年移転)で相次いでいる。

 その意図が区側から明確に語られることはないが、板橋区の区議会では14年3月17日の予算審査特別委員会において、川口雅敏区議(自民党)が「生活保護の受給者が並ぶ、そんな状況は役所の前でみっともないでしょう。向こう側だったらいいんじゃないかな」と差別的な表現を用い、窓口を別の場所に移すべきだと主張したことが議事録に残っている。

 川口区議のように明言はしないものの、どの区においても「新しくなる庁舎に生活保護利用者を入れたくない」という差別的な意図が働いているのは間違いないと私は考えている。

 都市の再開発や建物の改修によって貧困層の居場所が奪われることは、「ジェントリフィケーション」と言われ、世界中で非難の的となっているが、都内の自治体では行政主体の排除が進められているのだ。

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中野区の計画は見直し
 中野区では、区有施設の整備計画案に対するパブリックコメントが9月1日まで募集され、急きょ、私たちは生活保護担当課もすべて新庁舎に入れる計画に変更することを求めるパブリックコメントを提出した。一般の区民や関係者にもパブコメ提出を呼びかけたところ、短期間の呼びかけにもかかわらず、数十人が意見を提出してくれた。

 その後、つくろい東京ファンドスタッフの小林美穂子が中心となり、この問題に関心を持つ区民とともに区議会各会派への働きかけや議会傍聴などのアクションを続けていった。私たちが外から声をあげている間、各会派の区議や区の職員労働組合もそれぞれの立場で動き、区側の姿勢も徐々に変わっていった。

 そして、10月6日、中野区議会において区側からパブコメの報告がなされ、その場で従来の計画を見直し、生活保護担当課を含めた生活援護機能を一体的に新庁舎に配置する、という方針が示されたのである。

 これは多くの市民の声が差別的な政策を撤回させた瞬間であった。中野区の酒井直人区長が区民や職員の声を聞く姿勢を持っていたことも幸いしたと思う。

行政内部で「日陰の存在」扱い
 だが、生活保護の担当者ごと庁舎外に排除しようとした今回の動きは、いまだに行政内部において、生活保護がいかに「日陰の存在」扱いされているかが明白になったと言える。

 こうした生活保護に対する敵視や冷遇は、残念ながら国政においても徹底している。

 10月8日、岸田文雄首相は就任後初めての所信表明において、新自由主義的な政策は「富めるものと、富まざるものとの深刻な分断」を生んだと語り、今後は「成長と分配の好循環」で格差を是正していくと強調した。

 演説の中で、「分配」という言葉は12回、「格差」という言葉は3回使用された。

 しかし、その一方で、「貧困」や「生活保護」という言葉は一度も使われなかった。コロナ対策に関する項目の中で、「非正規、子育て世帯などお困りの方々を守るための給付金などの支援も実行していきます」という文言は盛り込まれたが、生活保護制度を軸とする平時からの貧困対策をどう強化するのか、という点への言及はなかった。

本気で新自由主義から脱却するなら
 私は、岸田首相が本気で新自由主義から脱却し、社会の隅々にまで「成長の果実」を分配したいのであれば、まず自公政権のもとで引き下げられてきた生活保護基準を12年の水準に戻すことから始めるべきであると考える。


 生活保護基準は、生活保護世帯に支給される保護費を算定するためだけでなく、国が憲法25条に基づき、全ての人に保障している「健康で文化的な最低限度の生活」の水準(ナショナルミニマム)を示すという役割も担っている。

 実際にその基準は、生活保護以外の他制度の運用においても活用されており、厚生労働省も18年、生活保護基準が就学援助、介護保険料・利用料の減免、国民年金保険料の減免など、47の低所得者向け施策に連動していることを認めている。

 しかし、第2次安倍政権は発足直後の13年1月、生活保護の生活扶助基準(生活費部分)の過去最大の引き下げ(平均6.5%、最大10%)を発表し、3年にわたって段階的な減額を進めてきた。さらには18年にも生活扶助基準を見直し、約7割の世帯の基準を段階的に引き下げた。

 今年に入って、厚労省は生活保護基準の級地区分の検討を進めているが、これも実質的な引き下げとなることが懸念されている。

 こうした一連の引き下げは、生活保護利用者の生活を苦しめるだけでなく、生活保護を利用していない低所得者が他の支援制度を利用するのを妨げる役割も果たしている。

日本経済再生本部の会合に臨む安倍晋三首相(中央)=首相官邸で2013年1月8日、藤井太郎撮影
日本経済再生本部の会合に臨む安倍晋三首相(中央)=首相官邸で2013年1月8日、藤井太郎撮影
生活保護を敵視してきた過ち
 安倍政権下においては、アベノミクスの「果実」が社会全体に行きわたるという神話がまことしやかに語られていたが、実際には日本社会で最も経済的に苦しい立場にある人たちの生活水準が、政府によって政策的に引き下げられていたのである。

 この9年間、自公政権は生活保護制度を中心とする低所得者への所得再分配政策を冷遇し、敵視してきたと言わざるを得ない。岸田首相が「分配」を語りたいなら、生活保護を敵視してきた政策の過ちをただすことから始めるべきである。

稲葉剛・立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

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