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生活保護者の集いコミュの「自己責任論」をあおると、じつは「経済成長」が難しくなるって知ってましたか?

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https://news.yahoo.co.jp/articles/9527f6e30775693fa54d656130bb0055d7cdebd4

近年、日本においてかなりの頻度で耳にするようになった言葉のひとつに「自己責任」がある。投資やビジネスの世界では、結果の責任はすべて自分が負うという意味で「自己責任」という用語がよく使われるが、今、日本社会で多用されている自己責任論はこれとはニュアンスが異なる。

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 本来の意味を超えた過度な自己責任論は、社会的にはもちろんのこと、適切な経済成長を阻害するという点において経済的にも問題がある。

声高に叫ばれる自己責任論
〔PHOTO〕iStock

 自己責任という言葉は、投資の世界における「自己責任原則」を除けば、明確に定義されているわけではなく、自分の行動がもたらした結果は自分が責任を負うというニュアンスで広く使われている。だが、責任が及ぶ範囲がどこまでなのかについては、その言葉を口にする人によってバラバラであり、明確な共通認識はない。

 投資における自己責任原則のように投資活動に限定した使い方であれば、この言葉が多用されたところで大きな問題は起きない。株式投資はまさに自己責任の世界であり、どの株をいくらの値段で、いつ買うのかを決めるのはすべて自分であって、それ以外の要素が入る余地はない。

 「アナリストの言ったことが外れた」「マスコミの報道が間違っている」「投資本に書いてある通りに投資して失敗した」などというのはただの言い訳である。ビジネスの世界も同じであり、判断ミスをすれば損失が発生するのは当たり前のことであり、それを他人のせいすることはできない。

 明確にルールが定められているわけではないものの、経済活動における自己責任論の背景には「相応の意思と能力を持った人が参加」することが前提になっており、そのようなゲームにおいては「自分自身がすべての結果を負う」という暗黙のルールが存在している。実際、投資をする意思や能力がない人が、騙されて投資をした場合、自己責任ではなく、被害者という位置付けになるはずだ。

 だが近年、日本において声高に叫ばれている自己責任論は、それとはニュアンスが異なっている。不可抗力であったり、本人に法的な権利があるものに対してすら、自己責任という言葉を適用し、権利の行使を抑圧しているように見える。

 もっとも顕著なのは新型コロナウイルスへの感染だろう。もちろん公衆衛生上の一般論としての感染予防策というものは存在しているが、広範囲にウイルスが存在している状況では、感染を100%防ぐ方法はない。各人がより慎重に行動した方がよいのはその通りだが、本人に大きな過失がない限り、感染については不可抗力と考えた方が合理的である。

認知バイアスがもたらす弱者バッシング
 ところが日本ではそのような認識になっていないようである。大阪大学の研究グループが昨年、実施した調査によると、「新型コロナウイルスに感染する人は自業自得だ」と考える日本人は11.5%と、米国人(1.0%)、英国人(1.49%)、イタリア人(2.51%)、中国人(4.83%)と比較して突出して高い水準だった。

 日本人だけが比率が高いことの明確な理由は不明だが、「公正世界仮説」という心理メカニズムが作用している可能性が高いという。公正世界仮説というのは、「社会は本来、安全で公正なものであるべきだ」という認知バイアスのことである。この価値観が強すぎると、想定外の悪い事態が発生すると「そんなはずはない」と考えてしまい、被害を受けた人が過去に悪いことをしたに違いないと考える傾向が強くなる。

 日本では性犯罪が発生すると、加害者ではなく被害者が批判されることも多いが、これも同じメカニズムといわれる。日本社会は安全であるという「神話」が崩れることに耐えられず、被害者に問題があるという歪んだ形で自身を納得させようとするのだ。

 もし、こうした認知バイアスが日本における自己責任論の背景なのだとすると、それはもはや経済活動における自己責任論とはまるで異なる概念と言わざるを得ない。不可抗力や権利を有する事柄についてこの用語を使うことについて、社会的にしっかりと抑制していかなければ、容易に弱者へのバッシングにつながりかねないし、すでに生活保護の領域ではこの問題がかなり深刻化している。

 生活保護の申請は国民が持つ権利だが、現実には「住所がないから申請できない」など不当な理由で追い返されるケースが後を絶たない。申請者の親族に対して援助できるか問い合わせが行う扶養照会も、申請を諦めさせる手段として使われている(生活保護申請者が親族から虐待を受けている可能性もあるため、扶養照会は重大な人権侵害を引き起こす可能性があり、先進諸外国ではほとんど行われていない)。

市場メカニズムと自己責任論の混同
 制度があるにもかかわらず正当な理由もなく申請から排除されることの背景には、当然のことながら過度な自己責任論がある。生活が困窮したのはすべて本人の責任であり、支援する必要はないという概念だが、これも認知バイアスを前提にしたある種のダブルスタンダードといってよいだろう。

 生命の危険が脅かされる状態であっても、経済活動の結果について、すべて自身が責任を負うべきだという概念が日本社会でコンセンサスを得ているのなら、政府が行っているコロナ関連の支援策は全否定されるべきだろう。だが、現実の世論はそうなってはいない。

 すべてが自己責任ならば、企業にリストラされるのも自己責任なので公的な失業保険も不要だろうし(必要だと思うのなら自費で保険に入ればよい)、そもそも終身雇用という慣行すら不適切ということになる。米国のように年金や医療も民営にしてしまえばよい(ちなみに、自己責任社会の頂点に立つ米国ですら、生活困窮者向けには公的な医療制度や年金制度などが整備されている)。今の日本で年金と医療を民営化してしまったら、保険料は跳ね上がり、3分の1の国民は満足な医療を受けられないだろう。

 結局のところ、今の日本における自己責任論とは、弱者に対するバッシングを行うための道具に過ぎず、従来の自己責任とは異質のものとなっている。こうした歪んだ自己責任論は、社会的に問題があるのは当然のことだが、健全な市場メカニズムを阻害するという点において、経済的な悪影響も大きい。

 時折、市場メカニズムと上記の自己責任論を混同している人を見かけるが、それは完全な誤りである。健全な市場メカニズムの維持と、過度な自己責任論の抑制は両立するどころか、むしろクルマの両輪と言っても良い関係にある。

 企業というものは本来、利益を追求するための存在であり、個人が過度なリスクを負わなくて済むよう編み出された。従って、競争力を失った企業は容赦なく市場から退出させるのが望ましい。時代とともに企業が変化していくのは当たり前なので、健全な経済を運営するためには、企業も一定頻度での入れ替わりが必要である。だが企業で働く労働者は違う。

 企業が入れ代われば、当然、そこで働く労働者も転職を余儀なくされるが、立場の弱い労働者にとって、ひとたび失業すると生命の危険が生じるような状況では容易に転職などできるわけがない。このような環境では、企業の新陳代謝は進まず、結果として企業の競争力も低下が進む。

健全な成長を実現できない
 つまり、失業対策には、単に労働者を保護するだけでなく、持続的な経済成長を実現するという目的もあるのだ。生活困窮者への支援を政府が行わなければ、結局のところ自由な経済活動が阻害されるという話であり、各種の支援策は実は成長戦略も兼ねている。過度な自己責任論は、市場経済の運営にとってむしろ邪魔な存在といってよい。

 近年、AI(人工知能)の技術が急速に発達していることから、業務の多くが消滅するとの予想が増えている。程度問題はともかくとして、これまで人間が行っていた作業の一部が機械化されていくのはほぼ間違いない。マクロ経済学的には、この動きは資本分配率の上昇をもたらすことになるが、資本分配率と労働分配率は対の関係なので、機械化の進展は賃金の下落につながる。

 つまりコロナ後にやってくる高度IT化社会では、IT資本への投資から得られるリターンが増え、労働者が受け取る賃金が低下するので、資本を持つ人とそうでない人の格差が拡大する可能性が高い。自由競争が進むと格差が拡大するというのは一般的な傾向だが、格差拡大が行きすぎると、経済にはむしろマイナスとなる。

 いくら資産家が富を増やしたところで、日常的に1人の人間が消費できるモノやサービスの量には限界がある。賃金の低下で中間層の消費が衰退すれば、需要減少という形で最終的には資本家の収益も脅かしてしまう。米国において、いわゆる超富裕層と呼ばれる人たちの中から、中間層以下への富の再配分が必要という意見が出ていることにはこうした背景がある。

 資本分配が高まる状況において不毛な自己責任ばかりぶつけ合っていては、富の偏在化だけが進み、中間層以下はもちろんのこと、富裕層も富を拡大できないという、全員にとっての負けゲームと化してしまう。過度な自己責任論は、社会的に不適切なだけでなく、経済的にも極めてデメリットが大きいという現実について、私たちはもっと強く認識した方がよいだろう。

加谷 珪一

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