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生活保護者の集いコミュの気づいたら全財産103円 42歳女性が「見えない貧困」に落ちるまで

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https://mainichi.jp/articles/20210122/k00/00m/040/380000c

「気がつくと、所持金は103円でした。4日の仕事始めに出勤する電車賃もなくなっていました」。短大卒業後、非正規雇用で働いてきた女性(42)は突然、自分とは関係ないと思っていた「リアルな貧困」に直面した。給料が安くても仕事を絶やさずにやってきた。でも40代になるとバイトの面接にすらなかなか呼ばれなくなってしまった。家賃の引き落とし日が迫るのが怖くて仕方がなくなった。「真面目に生きていきたいだけです。どうしてこんなことになったのでしょう」。女性に声をかけると、こう聞き返してきた。【木許はるみ/統合デジタル取材センター】

 夕暮れ時、人影が少なくなった会場を出ようとした女性が支援スタッフの男性から声をかけられていた。「野菜もあるよ、あ、ガスが止まってるんだったね」。女性ははきはきした声でお礼を伝えていた。記者(木許)と同世代に見えた。1月3日、東京都千代田区の聖イグナチオ教会で開催された「年越し大人食堂」の取材で、女性に声を掛けてみた。

 「これ見てください。笑いますよね」。女性はショルダーバッグから長財布を取り出した。小銭入れを開けて、100円玉と1円3枚をジャラジャラと揺らして見せた。小さな水玉のワンピースにズボンで防寒した細い体。「2週間、カップ麺で食いつないできました。友達からもらったココナッツサブレももう切れました。所持金がゼロでも拾い食いでもして、何とか頑張らないといけないと思っていました」。乾いた声で笑った。そして、道中に拾ったというドロップあめをカバンから出した。

バイトをキャンセルされて苦境に
 女性は地方の小都市で生まれ育ち、高校卒業後、短大進学のために上京。卒業後、都内で1人暮らしをしてきた。新型コロナウイルスの影響で10月に学生寮の清掃の仕事を失った。失業後は1日3件、求人サイトで清掃や販売、物流など、業種を問わず、求人情報に応募してきた。計200件応募したうち、面接にたどりつけたのは20件以下だった。


「年越し大人食堂」で提供された弁当を椅子に座って食べる人たち。新型コロナ対策のため、食事はテークアウトになった=東京都千代田区の聖イグナチオ教会前で2021年1月1日、國枝すみれ撮影
 12月、電子機器を組み立てる軽作業の仕事が見つかり、20日からシフトに入ることができた。給料日は1カ月後。貯金は底を突いていたが、友人から紹介されたライブハウスの仕事を手伝えば、年末年始を乗り越えられるはずだった。

 「やっぱりいいわ、ごめん」。12月26日に友人からキャンセルのメールが入った。31日から3日間、日当8000円のはずだった。あてにしていたバイト代の「損失」。奈落に落ちた気がした。

非正規に応募しても「お祈りメール」
 短大新卒の時は就職氷河期で、正社員にはなれなかった。就職活動では「結婚したら仕事は辞めるの?」「内定をあげるからホテルに行こう」と言う面接官や会社の幹部に遭遇した。「本当にこんなこと言う人がいるんだ」とあきれたが、現実だった。

 「真面目に働きたい気持ちがうせていきました」。登録型派遣の仕事でイベント会場の設営やコールセンター業務などをして、生計を立ててきた。社員登用の仕事もあったが、競争率が高く「気付けば、ずっと非正規の仕事を続けていました」。


「年越し大人食堂2021」に訪れた女性=東京都千代田区の聖イグナチオ教会で2021年1月3日、木許はるみ撮影
 留学生向けの学生寮の清掃は2019年秋から始めた。新型コロナの流行以降、入寮者は半減し「人数を減らしたいから。ベテラン社員だけで回したい」と社員から告げられた。非正規の清掃員が真っ先に切られた。女性は職場の人間関係に悩んでいたため、自らも退職の意思を伝えてしまった。離職票では「自己都合退職」とされていた。

 失業手当は、会社都合による退職なら申請から1週間で支給されるが、自己都合退職では約2カ月後。すぐに仕事が見つかると思い、申請はせずに求職活動を優先した。しかし、採用どころか面接にもなかなかたどりつけない。「コロナの影響でしょうか、応募の段階で、ここまではねられるのは初めてでした」。女性は東日本大震災の時も、雑貨店の販売員の職を失ったが、すぐに次の仕事が見つかっていた。

 「当時は30代前半でしたから。今はこの年齢で未経験の業種は厳しいんですかね。『厳正に審査した結果……』ってお祈りメールがたくさん来ました」。新型コロナによる解雇・雇い止めは8万人を超え、非正規でも競争は激しくなっている。

「公助」の網をすり抜ける
 新型コロナ前、女性の収入は月収16万円。日常の生活で困ることはなかったが「非正規なので、もともと余裕がなく」、貯金は6万円ほどだった。

 女性は失業してから前職の給料で暮らしていたが、11月下旬には、貯金を切り崩さないと生活が成り立たなくなった。元同僚に教えてもらった新型コロナによる困窮者向けの公的融資「緊急小口資金」を思い出し、区役所を訪れた。

 緊急小口資金とは、新型コロナの影響により、休業や失業などで収入が減少した世帯を対象に、20万円を上限に無利子で貸し付ける制度だ。


厚生労働省は、コロナ禍の困窮者のために緊急小口資金の制度を拡充した。各地の相談窓口は、申し込みをする人が多く訪れている。写真はイメージ=茨城県の水戸市社会福祉協議会で
 厚生労働省は従来、融資に所得制限をつけていたが、コロナ禍に柔軟に対応するため、制度を拡充していた。厚生労働省は「非正規や個人事業主をはじめ、生活に困窮した方のセーフティーネットを強化する」と制度を紹介している。本来、雇用を失ったこの女性の受け皿になるはずだ。

 区役所の待合用の椅子はほぼ埋まり、女性は20分待って相談することができた。しかし、窓口の職員と話したのはわずか5分。「職場で人員削減があった」と伝えても「100%コロナの影響かどうかがわからない」と職員に言われた。

 さらに、2週間後にアルバイト代が入ると伝えると、職員から「もう働いてるんですよね。あと2週間なら何とかしてください」「もっと大変な人がいます」と突き放されてしまった。何とか説明しようとしていたら、別の職員が近づき「まだ何か? 次の人どうぞ」と席を立つよう急かされた。

 「私は対象にならないんだ」。ほかの制度を自力で探す気にもなれなくなっていた。隣の窓口からは「家を追い出されそう」という男性の声が聞こえてきた。「私より深刻な人がいる」と自分に言い聞かせて区役所を後にした。

友達、家族に言えない「貧困」
 「これが大学生なら『お金がないからおごって』って言えるんでしょうが、この年で貧乏なんて恥ずかしいです」。女性は周囲に生活困窮を打ち明けることができなかった。生活費を節約するため、友人からカフェに誘われても行けなかった。「お金がない」とは言えず「忙しいから」「作業があるから」と言い訳をした。

 「友達だから相談ができないんです。重たい話をしたら引かれるかもしれないし、『あいつ、大人食堂に行ったってよ、大丈夫かな』って、変な形で話が伝わりそうで」

 友達を失うのが怖かった。ツイッターやフェイスブックを開けば「実家暮らしとか、家族のいる友達の投稿が出てきて、幸せな写真が並んでいました。見るのもダルくなりましたね」。友人との連絡も控えるようになり、数少ない会話は応募先の面接官たち。自宅からリモートで面接を受け、画面越しの自己アピールが他人との数少ない交流になった。

 実家の家族にも話ができなかった。「両親は病気がちで、父親は仕事や勉強ができない人にあたりが強いタイプ」。弟は正社員で妻子を養っている。「40代の平均を記録したような人」という。

 「身内には自分のことを言いたくありません。年をとった親に相談するくらいなら自分でどうにかしたい」。生活保護の申請も考えていない。「申請をして、万が一、実家に連絡が行ったら、父親から罵詈(ばり)雑言を浴びせられます。絶対に嫌です。お金がないのは私の自己責任ですから」

「自己肯定感が粉砕」
 迷った揚げ句、空腹に耐えかねて大人食堂に足を運んだ。12月末の時点で家賃が引き落とされ、所持金は600円になった。スーパーで3割引きになった80円のチキンカツサンドとカップ麺の生活を続けた。気付けば所持金は103円まで減っていた。


女性は1人、自宅で過ごす日々が続いていた。SNSを見るのもだるくなっていた。写真は年末の土曜日でにぎわう吉祥寺駅前の商店街=東京都武蔵野市で2020年12月26日、手塚耕一郎撮影
 女性はリーマン・ショックの年越し派遣村を思い出し、大人食堂をネットで知った。「そういうところに並ぶのは、家もなくなった人。そういう先入観がありました。ネットのニュースに出てくるのは、家もなくなってどうしようという人たちでした。そこまでにならないと頼れないのかな。ギリギリまで迷いましたね」。区役所で言われた「もっと大変な人がいる」という言葉も頭をよぎった。

 実家では厳しくしつけられ、プライドも植え付けられていた。

 「人様に助けてもらうのは最低だと思っていました。ここまで落ちてしまったかという絶望感がありました。まさか自分がこういうところに行くのか。非正規だろうが何だろうが、自分は大丈夫だと。ここまで追い詰められるとは思いもしませんでした。厳しい父親の影響でしょうか。自分の肯定感が粉砕される気持ちでした。でも交通費もない、栄養のある物を何か食べたい。プライドなんかより、空腹に負けました」

 女性は食料と最低限の生活費をもらい、年明けの仕事に行くための交通費も確保することができた。

氷河期世代が落ちた「クレバス」
 「私は氷河期なので、クレバス(深い割れ目)に落ちたんですね。暗くて周りも見えず、外からも見えにくい。困窮して孤立無援の状態でした。氷河の上を歩いているから自己責任だろうって、クレバスに落ちた人をたたく風潮がある。コロナより人が怖いです。そういう風潮がなければ、私はギリギリまで追い詰められなかったと思います」

 クレバスに落ちた人に届く「救命ロープ」は、大人食堂だった。「行政は『おーい、大丈夫か、生きてるな。あっちに要救助者がいるから』って、困窮者をトリアージしているみたいです。選別してもいいと思います。せめて、制度をわかりやすく、ちゃんと届くようにしてほしい」

 年越し大人食堂と相談会を主催したのは、支援団体でつくる「新型コロナ災害緊急アクション」だった。

 「『自助・共助・公助』と言われていますが、民間の支援は共助、自分で仕事したり、求職したりするのは自助ですよね。公助はどこに行ったんでしょうか」


「年越し大人食堂2021」では、温かい手作り弁当が提供された=東京都千代田区の聖イグナチオ教会で2021年1月1日、國枝すみれ撮影
 女性は1月6日に不定期のアルバイトに入ることもでき、2500円の日当を得た。「米だけは切らさないように、2キロの米とふりかけと調味料を買いました」。今でも毎日欠かさず、求人サイトで募集状況をチェックする。「今、自分がいる場所は決して安全ではないと知りました。いつクビを切られても大丈夫なように求人を確認するようにしています」

コロナ禍の非正規女性
 厚生労働省によると、女性と同世代の40〜44歳の非正規労働者の平均賃金は月額19万5200円。女性は、月給16万円(額面)で平均より少ないが、何とか不自由のない生活を送ってきた。しかし、新型コロナによる急激な労働環境の変化により、「リアルな貧困」に直面した。

 相談支援をしている作家の雨宮処凛さんは「女性のように年収が200万円以下の場合、貯金をする余裕はありません。でも社会人のはじめから非正規でその生活に慣れている場合、自分が貧困だと気付いていないケースがあります。非正規の間でこうした認識が広がっているのが日本の現状なのです」と話す。

 新型コロナは、非正規雇用の女性を直撃している。労働相談を受け付けるNPO法人「POSSE」によると、新型コロナに関係した相談は2月以降、3304件(11月末時点)が寄せられた。女性からの相談が約6割、そのうち約7割が非正規雇用だった。

 「特にサービス業が打撃を受けていますね。飲食、観光、販売など、サービス業は、非正規の女性中心で担ってきました。その弊害が露呈しています」と雨宮さん。

 支援活動の中で、女性からの電話やメールの相談はよく受けるが、対面の相談や炊き出しに来る女性は少ないという。

 「男性がたくさん並んでいたり、そもそも路上生活者のための炊き出しだと思っていたり、ハードルが高いと思います。会場に来るまでにすごく勇気が必要だったという話も聞きます。まさか自分が野宿になる可能性があるなんて、考えたこともない人にとって、抵抗は余計に大きいでしょう」

 さらに、相談から遠ざけているのは、「自己責任論」だという。

 「ずっと究極の自己責任論を押し付けられてきたロスジェネ世代にとっては、誰かが助けてくれるという発想がありません。何もしてくれないというあきらめがあります。そもそも自分は相談や支援の対象だと思っていないのです。相談に来た人は『申し訳ない』と私たちに言うんです。社会に謝っているんですね、やるせないです」

 そして雨宮さんは力を込める。「彼らに謝るべきは社会や政治です。ロスジェネ世代は、仕事や生活苦の愚痴をこぼしたら、社会から総攻撃をされる風潮の中で生きてきました。相談をすれば、何かのカモにされる、辱められると思っています。でも相談ができないと孤立してしまいます。女性の自殺者が増えていることも関係していると思います」

 だが、相談できないのは本人だけの問題ではない。「生活に困っている人がいるのに、ケースワーカーをはじめ、役所の職員は増えていません。役所で冷たい対応をされたという話も聞きますが、職員は完全なオーバーワーク状態で、役所もパンク寸前です。失業した人を役所で雇うこともできます。必要なところを増員して対応すれば、(困窮者を)しっかりと救うことができると思います」

 雨宮さんらは困窮した人に、生活保護の利用を呼び掛けている。支援団体が申請に同行し、扶養照会をしなくていいように交渉することもあるという。

 「失業をしても日雇いの仕事があるからと、生活保護を考えない人がいます。でも、生活保護を受けて、生活費を補ってもいい、数カ月生活保護を受けて仕事が見つかったら生活保護をやめてもいいです。いろいろな使い方があります。家をなくしてからでは生活再建はさらに大変です。生活保護は、貯金や資産がなく、国が定める最低生活費に満たない収入しかない場合(東京23区で単身の場合、13万円ほど)、利用できます。収入がこれ以下の場合は、すぐに生活保護の相談をしてほしいです」

 雨宮さんは「公助」をもっと利用してほしいと訴えている。

 相談先や支援情報は、新型コロナ災害緊急アクション(https://corona-kinkyu-action.com/)や厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15468.html)にまとまっている。

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