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生活保護者の集いコミュの生活保護引き下げで相談ホットラインへ寄せられた「藁にもすがる思い」

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https://diamond.jp/articles/-/181957

みわよしこ

生活保護費引き下げで浮かび上がる
受給者の深刻な「社会的孤立」
 2018年10月1日、生活保護費のうち生活費分(生活扶助)の見直しが、改正生活保護法の施行(一部条文を除く)とともに実施された。30%の世帯では若干の引き上げとなったが、70%の世帯では引き下げ(2020年までに段階的に最大5%、今回は最大1.7%)である。

 10月9日と10日の2日間にわたり、生活保護問題対策会議などが設置した全国一斉ホットラインには、全国の当事者たちから、150件の声が寄せられた。本記事では当事者の声を、今回の当事者の声を受け止めた弁護士らの声とともに紹介する。

 私にとって意外だったのは、ホットラインに寄せられた当事者の声の重点が必ずしも「引き下げで生活が苦しくなる」というところにはなかったこと、さらに、今回の見直しで引き下げとならず引き上げとなった当事者の声も少なくなかったことだ。

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 最も深刻だと感じられたのは、社会的孤立の問題だ。

「メンタルの不調が続いています。長らく、生活保護基準以下の暮らしを続けてきました。現在は生活保護で暮らしており、担当ケースワーカーからは精神障害者向けの社会生活訓練を勧められています」(関東・男性・年齢不詳・単身)

「法律以前に、身近な生活相談に応じていただけるところはないでしょうか。生活保護で暮らせていますが、精神疾患を抱えて、孤立しています」(関東・女性・40代・単身)

「生活していて、困ったときに相談できる相手がいないんです。でも、既存の支援団体にも抵抗があります」(関東・女性・40代・単身)

 貧困ゆえに孤立したのか、孤立ゆえに貧困に陥ったのか。社会的に排除されて孤立したのか、孤立したから社会的に排除されたのか。因果関係はわからない。しかし私は、「生活保護で暮らす人々は社会的孤立状態に陥りやすい」という現実を、改めて突き付けられた気がした。

「男性に比べて女性は孤立しにくい」という俗説がある。しかし「相談相手がいない」という声を寄せた人々には、女性も多数含まれていた。孤立のあまり沈黙しやすく、家庭の中で孤立しやすいのは、むしろ女性かもしれない。いずれにしても、声をあげられない人々の声は聞き取りようがない。

 なお、2013年に成立した生活困窮者自立支援法のもと、2015年から全国の自治体に相談窓口が設置されている。社会的孤立の解消は、法案提出前の検討会での中心的議題の1つだった。しかし同法は、一部の例外を除き、生活保護とは同時に利用できない建前となっている。

 なぜ、生活保護が孤立に結びつくのか。何があれば、生活保護と孤立がセットになりやすい状況を解消できるのか。答えを性急に求める前に、孤立と社会的排除の実例を丁寧に見ていきたい。

当事者だからわかる
当事者が「渇望」しているもの

ホットラインの模様
 孤立と社会的排除と貧困の中に、希望を芽吹かせようとする人もいる。

「精神障害者で、働けないので生活保護を利用しています。2012年末、第2次安倍内閣が成立して以降、社会保障改革が進んでいる中で、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)の級の認定が厳しくなりました。私も、症状は変わらないのに、手帳の級を2級から3級に引き下げられ、障害者加算(約1万7000円)が出なくなりました。

 暮らせないので、いわゆる“ドクターショッピング”を繰り返し、やっと2級に戻してもらったところです。症状が変わらないのに、手帳や年金の級を引き下げられて暮らせなくなる人がたくさんいます。私は自分で努力して知識を得て対応できましたが、『そうしたくてもできない人のために、声をあげていかなくては』と思っています」(関東・男性・単身・50代)

 精神疾患については、生活保護ではなく自立支援医療を利用していたはずだ。自立支援医療のもとでの主治医の変更は、容易ではない。それでも、納得できる診断を求めた男性の努力には、素直に敬意を表したい。しかし、男性の障害等級が3級から2級に戻ったのは、“ドクターショッピング“の成果というよりは、2013年以後に「適正化」の名の下に実施された障害者手帳・障害年金の等級引き下げが、多大な弊害を生んだ結果、見直されたことによっていると考えられる。

いずれにしても、「精神障害者で身体障害がないのなら、生活コストは健常者と同等のはず」というわけにはいかない。症状や治療薬による生活面の困難は、精神障害が「必ず」といってよいほどもたらすものだ。男性は、そのような状況の最中にありながら、見知らぬ仲間のために声を上げようとしている。自分自身が孤立と社会的排除に苦しんだからこそ、切実に必要性が感じられるのではないだろうか。

医療機関で軽んじられ誤診も
断わりもなく性病・HIV検査まで
 多くの場合、障害や疾患により生活保護を必要としている人々は、そのことによって多重の困難に苦しめられ、救いから遠ざけられがちだ。残念ながら、その人々を苦しめる大きな存在の1つが、一部の医療である。

「目の手術を受けたとき、通常の血液検査に加えて、梅毒とHIVの検査もすると言われました。医師に理由を聞くと『日本では梅毒が流行しているから』とのことでした。『検査に応じないと手術しない』と言われたので、仕方なく検査に応じました。でも、生活保護ではなく同じような手術を受ける方は、性病の検査はされていませんでした」(関東・女性・50代・単身)

 性病検査のための採血は、騙し討ちのように行われたという。採血時に本人が気づかなかったら、本人も知らないまま性病検査が行われていたかもしれない。

 関東の別の地域で別の病院を利用している女性からも、共通する内容の声があった。

「病院で治療内容について質問すると、『公費で医療を受けているのに、何を言っているんですか?』と答えてくれなかったりします。また、苦しくて病院に行ったら『そのくらいで病院に来ないように』と言われました。その後、肺炎だったことがわかりました」(関東・女性・40代・子どもと2人暮らし)

 私の友人知人には、心ある医療従事者が多数おり、このような同業者に強い憤りを示している。しかし残念ながら、医療機関での生活保護差別は、特に珍しいものではない。私自身、「単身生活の女性障害者=生活保護」ということなのか、しばしば生活保護と間違えられ、強烈な差別を受ける。「生活保護ではない」と判明すると差別は止むが、私に一度刷り込まれた「生活保護差別をする医療機関」というイメージは変わらない。

実際に生活保護である場合には、「誤診がそのままになってしまう」という深刻な問題もある。生活保護のもとでは、セカンドオピニオンを求めるための受診が認められていないからだ。もちろん、医師は万能ではない。深刻な疾患を見逃すこともある。悪化してから致し方なく受診した人を、「なぜ、ここまで放置しておいたのか」と叱責することもある。このようなことは、生活保護であってもなくても起こりうる。

 しかし生活保護で暮らす人々から話を聞くと、現に存在する臓器が「ない」と言われるなど、「誤診」以前の事例もある。虫垂がある人の虫垂を「ない」ことにしてしまうと、当然ながら虫垂炎は見逃される。腹膜炎になって初めて治療が開始されれば、多大な医療コストが必要になる。ホットラインには、このような事例の経験も寄せられた。

「誤診されたとき、生活保護なのでセカンドオピニオンが受けられないんです。生活保護なら、誤診されたままになるしかないのでしょうか」(関東・50代・女性・単身)

重大な副作用が出るまで
後発医薬品を飲まされ続ける
 さらに生活保護の医療では、2013年の生活保護法改正で後発医薬品が「優先」、2018年改正で「原則」とされた。このことも問題を引き起こしている。

「これまでの長期間の闘病生活で、後発医薬品は効果がなかったり副作用が出たりすることがわかっていました。そのことは、かかりつけ薬局も主治医も把握していますし、『お薬手帳』にも記載してもらっています。でも、入院した病院の主治医が、『生活保護だから、最初は後発医薬品から』と、過去に副作用があった医薬品を処方しました。深刻な副作用が出てから、初めて先発医薬品が処方されました」(関東・50代・女性・単身)

 生活保護で暮らす人々から、「自分は生活保護だから、医療機関で実験動物扱いをされる」という話を聞くことは少なくない。内容を詳しく聞くと、「治療内容自体は妥当だが、医師や看護師が高圧的で差別的」ということが多いけれども、患者に「自分は実験動物」と感じられてしまったら、治療効果は上がりにくいだろう。多くの医療従事者は、意図的な生活保護差別や「負の特別扱い」はしていないと信じたいが、現在の生活保護制度には、それらを抑止する仕組みがない。

進学希望なのに労働を求められて
子どもの自立を妨害する教育方針
 行政に「生活保護だから、この程度でいい」という態度が見受けられる地域もある。

「子どもが高校生のとき、最初からケースワーカーに『進学志望』と伝えていたのに、アルバイトするように執拗に求められました。また、高校生が対象の奨学金も、ケースワーカーに『受けたら収入認定(召し上げ)します』と言われていたので応募しませんでした」(関東・女性・40代・大学生の子どもと2人暮らし)

 その子どもが高校に入学したとき、厚労省はすでに、生活保護世帯の高校生の奨学金は収入認定しない方針を明らかにしていた。同じ県の他の自治体には、生活保護世帯の高校生が奨学金を受けて充実した高校生活を送り、就職や進学など次のステップに進んだ事例が多数ある。しかしその自治体は、国とも県とも異なる独自の方針のもと、生活保護世帯の子どもの「自立」を妨害していたことになる。

 なお、無事に現役で大学進学した子どもは、現在女性と同居しているが、生活保護の対象とはなっていない。子どもは、学費と生活費を自力で賄い、国民健康保険の保険料も支払いながら大学生活を送っている。しかし病気になったとき、医療費の自費負担が困難なため、医療がなかなか受けられない状況にあるという。

 この他、ホットラインには「光熱費が払えなくてガスが止まっている」「電気を使わないようにしている」「夏は熱中症になりそうだった。夏季加算があったらいいのに」という生活苦の声も多数寄せられている。

 今回、特徴的だったのは、社会運動に特別な関心がなかった当事者、支援団体等に距離を置いていた当事者からも、「何かしなくては」という声が寄せられたことだ。

「過去に労働組合の活動で不快な経験をしたので、貧困問題に関連する活動には消極的でした。今回の引き下げで、審査請求をしたり声をあげたりしなくてはと思うのですが、まだ迷っています。審査請求の期限は、引き下げの通知から3ヵ月ですから、もう少し考えてみます」(関東・女性)

 ホットラインの向こう側にいた弁護士らからも、同様の声があった。

「どこの組織や団体ともつながっていない一個人の当事者の方が、勇気をもって声を振り絞っているイメージがありました。普通の、一生活保護受給者の『審査請求をしたい』という声が聴けたことは、新しい発見でした」(ベテラン弁護士)

ホットラインから明らかになった
お互いを理解し合うことの重要性
 今回、初めてホットラインに加わった弁護士からは、生活保護の暮らしの実態が理解できたという声もあった。

「今回の減額は、数百円だったり、1000円だったり、2000円だったりします。でも、生活保護費の中での重みは……。だから『電気を今まで以上に使わなくする』ということになるんですね」(若手弁護士)

 私たちと同じ社会に、生活保護で暮らす人々が生きている。まず、同じ人間として声を聴き合わなくてはならないだろう。声を聴き合うために何かが不足しているのなら、その不足を埋める必要があるだろう。


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 なお今回、保護費が引き下げではなく引き上げとなった場合も、都道府県庁に対して審査請求を行うことができる。審査請求の結果として保護費が見直されることは期待できないが、審査請求を受けた都道府県は、外部の審理員からなるチームに意見を求める。

 審査請求の書面では、生活保護基準そのものや見直しのプロセスだけではなく、具体的な生活上の困難、社会の生活保護差別、担当ケースワーカーへの不満などを訴えることもできる。その内容は、行政に加えて審理員たちが読むことになる。詳しくは、生活保護問題対策会議による審査請求の呼びかけ(http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-318.html)を参照いただきたい。

(フリーランス・ライター みわよしこ)

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