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生活保護者の集いコミュの「生きてもいいですか?」生活保護引き下げ反対デモの参加者に聞いた本音

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http://diamond.jp/articles/-/154619

みわよしこ

デモが無事に終了し、記念撮影を始めようとしているところ。掲げられた2枚の横断幕は生活保護で暮らすMさん(女性・38歳)の作品で、「生活保護はみんなの味方」「生きるを守る 生活保護改悪反対」とある

 今回は、2018年1月4日午後に新宿で行われた、政府の生活保護引き下げ案に反対するデモの様子、デモ参加者たちの素顔と思い、さらに経済学者・井手英策氏(慶應義塾大学教授)の思いを紹介する。

「リレーメッセージデモ・わたしたち、明日を生きてもいいですか?」と題されたこのデモは、西武新宿駅近くから、JR新宿駅を大きく一周して戻ってくる1時間程度のコース。参加者は80名程度のように見えた。メガフォンを使ってメッセージを語りながら歩んではいるけれども、「主張を声高らかに叫ぶ」という感じではない。

 参加者の男女比は正確にはわからないが、女性40%、男性60%程度だろうか。年齢構成は、50代以上が70%程度のように見えた。そして特筆しておきたいのは、生活保護で暮らした経験を持たない人々が、少なからず含まれていたことだ。しかもその人々の多くは、いわゆる「プロ市民」ではない。

「生活保護は守んなきゃダメ」
当事者でないのにデモに参加する男性

貧困・生活保護・ホームレス・拉致被害は「みんな辛い」というAさんは、いつも左胸に拉致被害者救出のシンボル・ブルーリボンを着けている
 Aさん(男性・56歳・自営業)も、そんな1人だ。生活保護の経験はなく、社会的活動が生活の中心というわけでもないが、生活保護や貧困にかかわる運動に日常的に参加している。

 高校卒業後、機器メンテナンス・製本など、数多くの現場で働いて生活してきたAさんは、2008年末の「年越し派遣村」のころからホームレス支援に関わり、炊き出し・夜回り・生活保護申請の付き添いなどの活動に参加し始めた。Aさんは、ホームレス支援のきっかけを、「近所に、ホームレスがたくさんいたから」と、ごく自然に語る。

 当時のAさんは、新宿駅から徒歩15分ほどの地域に住んでいた。2008年末は、「派遣切り」にリーマン・ショックの影響が重なり、職と住を同時に失う成り行きが全国の至るところに見られた。

 Aさんは、新宿の街並みを指差しながら、「ホームレスになっている人たちは、建設労働者が多いでしょう? そういう人がいて、ビルや道路ができて、街ができているわけでしょう?」という。続けて、語気を少し強めて語る。

「建設労働者は日雇いだから、職にあぶれると、路上に出て来ることになるんです。街をつくっている人たちが食えなくなったら『知らない』って、そんなのおかしいじゃないですか」

 この日、Aさんがデモに参加したのは、生活保護を「守んなきゃダメ」だからだった。Aさんは、拉致被害者を救う活動にも参加している。ちなみに、今上天皇を尊敬しているAさんは、一般参賀のために皇居を訪れることもある。どういうつながりがあるのか。

「みんな、辛いじゃないですか。いきなり北朝鮮に連れ去られた人たちも、家族の方々も、ホームレス状態の方々も、生活保護の方々も。本当は、政治家に解決してほしい問題なんです。僕は一市民として、それを訴えることしかできないから、今日もデモに参加しました。政治がちゃんとしてくれれば、今よりは良い方向に行くと思います」(Aさん)

 デモに参加して声をあげたくらいで、問題が簡単に解決するわけはないだろう。拉致問題も生活保護問題もホームレス問題も、解消するわけはないだろう。でも「黙ってちゃダメ」。その思いがAさんを静かに歩ませる。

生活保護削減なら就活が困難に
これでは本末転倒では?
 Mさん(女性・38歳)は、2010年、精神疾患が原因で失職したことをきっかけとして、生活保護で暮らすようになった。治療を受けながら就労支援プログラムに参加し、現在は再就職が現実となりそうな状態まで回復している。そんなMさんにとって、2018年秋に現実になるかもしれない生活保護基準引き下げは、再就職の足かせになりかねない。


手芸の得意なMさん(38歳)は、生活保護で暮らしながら精神疾患を治療し、再就職へと歩み始めているところ。猫のお面は自身の作品。「引き下げSTOP」という文字が踊る
 今、Mさんが困っているのは、就職活動の費用だ。交通費だけは生活保護の「生業扶助費」から出るのだが、後払いなので給付まで「待つのが大変」だということだ。

 生活保護は「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する制度だが、就職にあたっては生活保護なりの「最低限度」というわけにはいかない。面接に臨むにあたっては、髪は美容院で整え、化粧をする必要がある。スーツもパンプスもビジネスバッグも必要だ。安価なものや中古品で済ませるとしても、「それなり」の出費になる。これらの費用の中には、福祉事務所の方針次第では生活保護費でカバーされ得るものもあるのだが、「現状では無理かなあ」と思われる物品も多い。

「それから履歴書用紙も、履歴書に貼る写真代も。就職活動には本当に、こまごまとお金がかかります」(Mさん)

 2013年、生活保護基準の引き下げが行われたとき、すでに生活保護で暮らしていたMさんは、「外出して友達と会う」か「冷暖房を使い入浴する」の二者択一を迫られた。外出すれば交通費も飲食費もかかるので、冬は暖房を使わず、厚着して寒さをしのぐ。すると風邪を引きやすくなるなど、身体の健康が脅かされる。外出を控えれば、1人で家にいて孤立がちになり、精神の健康が脅かされる。「外出か、冷暖房と入浴か」は、「精神的健康か、身体的健康か」の二者択一でもある。どちらかが損なわれている状態を「健康」とは呼ばないだろう。

 現在のMさんは、精神の健康と身体の健康を天秤にかけるような生活の中から、就職活動の費用を捻出している。生活費全般を「できるだけガマン」しながらの就職活動だ。生活保護の目的は、「最低生活の保障」と「自立の助長」なのだが、現在の生活保護はすでに、就職や就労継続を「助長」できるものではなくなっているのではないだろうか。

「働くべき」と言い、「働け」と尻を叩きながら、しかし働くことを応援しているようには見えない生活保護の矛盾に、多くの人が気づき始めているようだ。歩道や交差点でデモを眺める人々の視線は、決して冷たくなかった。一度だけだが「がんばってー!」という声も聞こえた。かつてしばしば聞かれた「デモができるくらいなら働けよ」という声は、少なくとも私の耳には全く入らなかった。

「皆の日常に直結する生活保護」
社会の理解は以前より進みつつある
 生活保護で暮らした経験を持つ援助職の和久井みちるさん(50代)は、この日、職場の休暇を利用してデモに参加していた。社会の変化は、和久井さんも感じているようだ。

「2011年・2012年ごろ、生活保護に関するデモに参加しているとき、周囲を歩いている人から感じたのは徹底した無関心でした。皆さん、自分にも関係することだとは思っていなかったんでしょう」(和久井さん)

生活保護基準を引き下げると、子どものいる家庭の就学援助、高齢者がいる家庭の年金・介護保険など、生活保護で暮らしているわけではない多くの家庭に影響が及ぶ。でも2012年、その認識を持っていた人々はごく一部だったかもしれない。そのことは、生活保護で暮らしつつ「引き下げ反対」と声を上げる人々への冷ややかな風当たりにつながっていた。しかし6年後の現在、生活保護基準引き下げは国民生活に直結することが、しばしばメディアで報道されるようになっている。

「このところ新聞の社説にも、『自分たちの暮らしに直結するから、生活保護基準は下げちゃいけない』と書かれています。生活保護が社会に果たしている役割が知られるようになり、空気が変わってきたと思います」(和久井さん)

 とはいえ、デモ参加者の中には、社会の右傾化を憂慮する声もあった。車椅子で参加していた重度障害者のSさん(女性・40代)は、沿道にいる茶髪・革ジャンの10代男子数名が、ニヤニヤしながら自分たちを眺めているのに気づいた。Sさんはその後、「あ、そうなのね」と沿道を見ずに参加し続けていたという。

「身近な若い子たちも、どんどん右傾化しています。流れ的にそうなんだろうかと……。右派は強そうだから、カッコよくてマトモだと思うんでしょうか」(Sさん)

 しかし、国家財政の健全化のために生活保護基準引き下げが不可避であるなら、引き下げるしかないのかもしれない。経済学者・井手英策氏(慶應義塾大学教授)は、どう見るだろうか。井手氏に意見を聞いてみた(筆者とのQ&A方式でお伝えする)。

財政健全化の役には立たない
経済学者も警鐘を鳴らす
――国家財政の健全化という目標のために、何かを削減する必要性があることは、確かにあるのもしれませんね。

「でも、『どこから、何を削るのか』に関する判断基準が必要なはずです。今回は、都市部の保護世帯の受給額が低所得層の生活費を上回っていることが判断基準として示されました。しかし本来であれば、低所得層の賃上げが筋でしょう。『それはできないから生活保護を引き下げる』というのは、政府が自らの失政を低所得層に尻拭いさせているも同然だと感じます。最低限の生活保障の『最低限』を、財政的理由で恣意的に切り下げていくというやり方は、ハッキリ言って『人の道にもとる』と思います」(井手氏)

――削減効果のほどは?

「毎年の財政赤字は、30兆円以上です。ここで1000億円や2000億円程度の予算削減を行っても、焼け石に水でしょう。しかし生活保護の利用者にしてみれば、その1000億円や2000億円は生き死にに関わるお金です」(井手氏)

――しょせん「焼け石に水」にしかならない予算削減のために、生存権を犠牲にしていいのでしょうか。人としての倫理の問題に加え、政策自身にも矛盾が発生しています。

「政府は、給付型奨学金や『すべての家庭の子どもたちに就学前教育を保障』するという政策を打ち出しています。これと生活保護の基準切り下げは論理的に矛盾していると思います。政策の整合性が気になります」(井手氏)

「削れるところから削る」という
安易なやり方が人を犠牲にする

本連載の著者・みわよしこさんの書籍『生活保護リアル』(日本評論社)好評発売中
――この状況の背後には「数の論理」があり、それがただちに変わる可能性はないですね。

「生活保護利用者は、数で見れば民主主義の少数者です。『削れるところから削る』という安易なやり方が、人間の命を犠牲にして行われていることに憤りを感じます。 同時に、少ないパイ、少ない税収を奪い合う状況を変えるために、汗をかかなくては。つまり、命や暮らしの保障のために増税を行う議論をもっと進めない限り、限られたパイの奪い合い、小さき声からの剥奪という現状は変わらないと思います」(井手氏)

 現状は、どこから変えることができるのか。どう変えられるのか。今年も引き続き、考えていきたい。

(フリーランスライター みわよしこ)

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