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生活保護者の集いコミュの所詮は絵空事? それともリアル?  生活保護を扱ったマンガ・ドラマ・報道番組の現実味

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http://diamond.jp/articles/-/52345

生活保護のリアル  みわよしこ

世の中はゴールデンウイーク。住まいで時間に余裕のある休日を過ごし、通常より「健康で文化的な生活」を送ることのできる方々も多いことだろう。非正規雇用の人々・自営業者にとっては、長期連休は収入減を意味することも多いけれども。

ここ数ヵ月、貧困問題や生活保護そのものを題材とした作品やTV番組が急増している。そこで今回はゴールデンウイークにあたって、それらの内容や見どころを紹介したい。

現実を知る手がかりとするためには、作品のどこにどのような視線を向ければよいのだろうか?

ヒロインは新人ケースワーカー
柏木ハルコ「健康で文化的な最低限度の生活」

 現在、週刊青年コミック誌「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)に、生活保護制度をテーマとした作品が連載されているのをご存知だろうか? 柏木ハルコ「健康で文化的な最低限度の生活」だ。

 主人公・義経えみるは、大学を卒業して東京都・東区役所に就職したばかりの新人公務員。就職早々、福祉事務所に配属され、ケースワーカー業務を担当することになった若い女性だ。この作品の中では、えみるの戸惑いや奮闘ぶりが、福祉事務所の日常や生活保護を利用する当事者たちの姿とともに描かれている。現在は、誌上で第5話までが公開されている。

 第5話は、稼働年齢の生活保護当事者に対する就労指導が中心だ。えみるは、担当している中年男性・阿久沢さんに対して就労指導を行っている。医師は「身体状態に問題なし」と判断したはずなのに、福祉事務所を訪れた阿久沢さんは激しい咳をしている。歩く後ろ姿もフラフラだ。真面目で実直そうな人物として描かれている阿久沢さんは、ハローワークで求職活動に取り組んでいるけれども、就労という成果には結びついていない。食事は、1日1食だけだという。なぜ1日1食しか食事ができないのか? ギャンブルや酒にお金を使っているのだろうか? そもそも、阿久沢さんの体調不良は本当なのか? 働きたくないので仮病を使っている可能性はないか?

 福祉事務所の先輩たちのアドバイスにより、えみるは家庭訪問を行ってみた。あまりにも質素で閑散とした室内。ほとんど何も入っていない冷蔵庫。その冷蔵庫のドアには、借金の返済を求める書類がマグネットで止められている。生活扶助費で借金を返済……? 最後のページの次回予告によれば、次回、阿久沢さんのさらなる秘密が明らかになるようだ。

「健康で文化的な最低限度の生活」は、ヒロインが新人ケースワーカーであることと舞台が福祉事務所であることを除けば、基本的には青春ストーリーだ。しかし筆者は、描写の細部に充分なリアリティを感じており、今後の展開を楽しみにしている。また本作品に対しては、筆者の周辺の生活保護経験者・貧困問題に関わる支援者たち・福祉事務所での勤務を経験したことのある公務員たちも、概ね「正確に描かれている好作品」と評価している。

なお、ブログ「赤鮫が行く!!」に、柔術家・近藤哲也氏による柏木ハルコ氏インタビューが掲載されている。このインタビューにおいて、柏木氏は本作品について、

「生活保護を受けてる方と公務員側の方からお話を聞くんですけど、取材前では予想してなかったいろんなケースなどがあったりして勉強になってます。実は2年ぐらい前から取材をしていまして、いろんな人に会ってお話を聞けば聞くほど簡単に描けることではないなとわかってきて…」

 と語っている。

「簡単に描けることではない」に、筆者は激しく同感する。

 本作品は現在、未だ単行本化も電子書籍化もされていないため、読むためには「週刊コミック誌のバックナンバーを入手する」という一手間が必要だ。しかし、このインタビューだけでも、柏木氏の作品への思い・生活保護制度や社会保障への感じ方を知ることは充分に可能であろう。ぜひご一読いただきたい。

ドラマ「サイレント・プア」を
生活困窮経験者・支援者たちはどう見る?

 筆者の周辺で評価が大きく分かれているのは、同じく2014年4月よりNHK総合でオンエアされている連続TVドラマ「サイレント・プア」だ。

 舞台は東京23区内に設定されているが、モデルとなったのは大阪府・豊中市で行われてきた「コミュニティ・ソーシャルワーク」の取り組みであるという。ヒロインは社会福祉協議会のコミュニティ・ソーシャルワーカー(CSW)という設定だ。番組サイトには、

「サイレント・プア――声なき貧困。いま、そんな「見えない貧しさ」が社会に広がっている。それに立ち向かうべく新たに全国各地に登場したのが、コミュニティ・ソーシャルワーカー(CSW) という仕事だ。

 里見涼(深田恭子) は東京下町の社会福祉協議会CSWとして、今日も愛する町を駆けまわる。

 涼が出会うのはゴミ屋敷の主、引きこもり、ホームレス、若年性認知症など、懸命に生きながらも現代の社会的孤立の淵に沈んだ人たち。彼らに手を差し伸べ、それぞれの人生にふれていく涼だが、そんな涼自身にも独りで抱え続ける絶望的な孤独があった。

 人は何度でも生き直せる――この信念で走り続けた涼がその先に見出したのは、自らが手を差し伸べてきた人や町に支えられ、新たな生へと踏み出す自分自身の姿だった」

 という記載がある。

筆者は、豊中市で長年にわたって先進的な取り組みが行われてきた事実を、もちろん知っている。ここ数ヵ月で盛んに報道されている「中間的就労」「コミュニティ・ソーシャルワーク」のモデルケースの1つとなったのは、豊中市・豊中市社協でもある。番組サイト内「番組のみどころ」ページにも、豊中市がモデルであることが明確に示されている。しかし筆者は、

「このドラマで描かれているのは、豊中市で地道に積み上げられてきた取り組みの内容そのものなのだろうか? 少なくとも地続きではあるのだろうけれども」

 という疑問と違和感を抱いている。しかし「いつか豊中市で現地取材を行ってみたい」と思いつつ、未だ果たせないでいる。

 筆者の周辺では、引きこもり経験者には「最もされたくないタイプの支援」「余計なお世話、気持ち悪い」と評する声が多い。統合失調症を抱える精神障害者の1人は「こんなことをされたら病気が悪化する、やめてほしい」と怒りを示す。また、貧困問題に取り組む支援者たちからは「自助努力や共助を強調しすぎ」という声もある。その声には筆者も共感する。

 筆者自身は「人間ドラマとしては評価してもよいのではないか」と思うし、深田恭子の好演ぶりには好感を抱いてもいる。しかし、「これがコミュニティやコミュニティ・ソーシャルワークということで、いいのかなあ?」という引っ掛かりが残る。その引っ掛かりを言葉で明確に表現するためにも、なるべく早く豊中市で現地取材を行い、現場の人々の声を聞いてみたい。

生活保護はタブーなのか?
NHK総合・Eテレの3作品

 では、コミック作品・ドラマに引き続き、貧困問題を扱ったTV報道番組3本を紹介したい。2014年1月に報放映されたNHK「クローズアップ現代」・2014年4月に放映された「NHKスペシャル」と、2014年4月のEテレ「ハートネット」から、それぞれ1本である。

 2014年1月27日、クローズアップ現代で報道された「あしたが見えない 〜深刻化する“若年女性”の貧困〜」は、低賃金・長時間労働で生活保護基準以下の収入しか得られない女性・貧困状態から脱出できない20代のシングルマザー・家族からも社会からも支援を得ることの難しい困窮女性が最後に風俗産業を頼る現状を描き出した。この番組は現在、「NHKオンデマンド」で視聴できる(有料・http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2014054585SA000/)。

筆者は、

「風俗産業で働く女性たちを含め、見れども見えにくい女性の貧困を可視化したこと・多くの視聴者たちに現状を伝えたことについては、一定の評価がされるべきではないか」

 と考えている。しかし、視聴しながら何回も

「だから、そのために、生活保護があるんでしょうが!」

 と大声を上げたくなったことを白状する。

また生活保護そのものについて、「もしかして、利用を妨げる目的?」と勘ぐりたくなる内容も含まれている。たとえば番組中には、生活保護の利用を考えた女性が「生活保護は申請しても2〜3ヵ月待たなくてはならないので、それまで待てなくて風俗店の面接に」という内容を語るシーンがあるのだが、申請を受けた福祉事務所は、2週間以内に保護の可否を通知する必要がある。

 女性は本当に「2〜3ヵ月必要」と思い込んでいたのであろうし、「だから風俗に」も事実なのであろう。でも、テロップやナレーションに、

「申請から保護開始までの期間は2週間以内、緊急時には即時保護開始も可能」

 という情報を含めることは、難しいことではないはずだ。

 貧困問題に取り組む法律家・支援者たちが、「あしたが見えない」に対する数多くの批判や提言を行った。また、視聴者からは賛否とも数多くの反響が寄せられたという。この結果、2014年4月27日、NHKスペシャルにおいて検証番組「調査報告 女性たちの貧困〜"新たな連鎖"の衝撃〜」が放映されることとなった。こちらも、「NHKオンデマンド」で試聴することができる(有料・http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2014054777SC000/)。

「調査報告 女性たちの貧困」では、女性の活躍に期待される一方で女性の貧困化も進んでいる現状・「一家を支える男性の長期安定雇用」という前提が崩れたために、妻が容易に貧困化し、さらに子どもたちも貧困状態に…という現状を、中学校に通うこともできないネットカフェ生活の14歳の少女・学費を稼ぐために東京に「出稼ぎ」して工事現場などで働く地方の大学生女子・長年望んで高齢で授かった胎児を「産んでも育てられない」と特別養子にする決意をした30代後半の母親など、衝撃的な実例とともに伝えている。

 筆者は、

「この取材力と訴求力は、優秀なスタッフの多いNHKだからこそ」

 と評価するものの、やはり何度も、

「だから、そのために、生活保護があるんでしょうが!」

 と絶叫したくなった。父親の失職や病気などのトラブルを、一家全員の困窮、特に子どもたちが健全な生育環境を失うことに直結させないためには、おそらく、さいきまこ著・漫画「陽のあたる家」(本連載 政策ウォッチ編・第35回参照)の一家のように早急に生活保護を利用することこそが最良の対応なのである。

 もちろん、自助努力は可能ならしたほうが良い。有効な自助努力は、何よりも本人の自尊感情を高める。地域での人間関係構築も必要だ。地域コミュニティとの関係を強めることも重要だ。そのためにも、番組中で当事者たちの声として紹介されていた「普通の生活」、とりあえず明日食べるものや眠る場所を心配せずに今日眠ることができる生活が続くことは必要条件であろう。その必要条件を整えるために利用できる日本唯一の制度が、生活保護なのだ。

最後に、2014年4月30日にEテレ「ハートネット」で放映されたばかりの「シリーズ 子どもクライシス 第4回「子どもの貧困」寄せられた声をもとに〜」を紹介したい。こちらは「NHKオンデマンド」では視聴できないが、5月7日(水)の午後1時5分より再放送が予定されている。

 この番組中では、天災によって父親の収入がなくなり、祖父・母は病気という一家に育つ少女が紹介されている。2年前、小学5年生だった少女は、充分な食事を摂ることができず栄養失調で体調不良。学校は休みがちになっていた。その後、一家は生活保護を利用し、現在は生活を再建しつつある。中学1年になった現在の少女は、2年前と同じ「保育士になる」という夢を実現するため、一家の経済面のやりくりと家事を一手に担いつつ、高校進学のための貯金まで実行している。他の家族の状況も少しずつ好転しており、父親は新しい仕事を見つけようとしている。

 この番組でも、いくつかの衝撃的な事例が、希望へと向かうその後の成り行きとともに紹介されている。事例のいくつかでは生活保護が利用されている。大阪市・西成区にある施設「こどもの里」の事業継続が、大阪市の方針転換によって困難に瀕している事実も紹介されている。「こどもの里」は、貧困を含むさまざまな理由により居場所のない釜ヶ崎地域の子どもたちに居場所を提供し、生育を支援してきた重要な施設だ。番組では触れられていなかったが、生活保護世帯の子どもたちも多い。

 さらに、スタジオでは荻上チキ氏が、

「生活保護を自分が受給できると思わないままでいる人も多い。またスティグマを恐れて申請できない人も多い」

 と述べた。これに対してキャスターは「生活保護にはトランポリンの役割が必要」と述べたものの、ついで視聴者からの

「生活保護の申請時は、支援者や支援団体に付き添いをしてもらってください。申請させてもらえないことがあります」

 という意見が紹介された。もしかするとこの日、いわゆる「水際作戦」の存在と具体的な対応策に関してNHKが番組中で言及するという画期的な出来事が起こったのかもしれない。

 筆者は、生活保護に関する「誰が利用できるのか」「どう利用できるのか」「何が権利で何が義務なのか」という明快な説明がなかったことを「惜しい」と思う。しかしNHKには公共放送として、今後も引き続き国民のために、事実と国民の権利を明快に示してほしい。

 今回は、困窮者支援または生活保護を扱った5つの作品を紹介した。個々の作品にはそれぞれ、果たせていること・果たせていないことがある。追及不足や情報不足を感じる場面も少なくない。しかし、生活保護そのものについて語ること、貧困について語ることは、タブーではなくなってきたと考えてよいのではないだろうか?

 筆者は、この現状の延長上にある未来の作品に、心から期待している。

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