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生活保護者の集いコミュの「問答無用」で扶養照会を強行した杉並区 誤った制度の運用はいつになれば根絶されるのか

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https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20220210/pol/00m/010/003000c?cx_fm=mailhiru&cx_ml=article&cx_mdate=20220214

「どうしてもやる」
 「扶養照会はどうしてもやらなくてはならない。やるのは違法じゃない。ただでお金もらっているわけじゃないんだから」

 昨年7月、失職して生活に困窮したAさん(50代男性)は、住まいのある東京都杉並区で生活保護を申請した。地方に暮らす80代の両親に心配をかけたくないと考えたAさんは、区に扶養照会(福祉事務所が親族に援助の可否を問い合わせること)を実施しないことを書面で求める申出書を事前に用意して、申請時に提出しようとしたが、対応した複数の職員は書面の受け取りをかたくなに拒否したという。

 「申出書をひっこめないと保護申請の手続きは進められない」とまで言われたAさんは、書面の提出を諦めざるをえなかった。

 生活保護が決定した後も、Aさんは担当となったケースワーカーに、親族に連絡をしないでほしいと口頭で伝えたが、それに対しての返答は冒頭に書いた言葉であった。

 Aさんが抗議すると、担当者は「ただでお金もらっているわけじゃない」という部分については謝罪したが、後日、親族への照会はAさんの意向を押し切る形で強行されてしまった。

親族への連絡を恐れ申請をためらう
 生活困窮者支援の現場では、扶養照会が生活保護利用にあたっての最大のハードルとなっていることが問題視されてきた。路上生活者支援の夜回りの活動では、80代以上の高齢者に出会うことも珍しくないが、その中には親族に連絡が行くことを怖れて生活保護の申請をためらっている人が少なくない。

 せめて、本人の意向を無視して「問答無用」で役所が親族に連絡をしてしまうことを止められないか。そう考えた私たち支援関係者は、昨年、扶養照会の運用改善を求めるネット署名に取り組み、厚生労働省に対して2度にわたる申し入れをおこなった。

申請者の意思を尊重する厚労省の通知
 その結果、昨年3月末、厚労省から各地方自治体に対して、照会の範囲を限定した上で、申請者本人の意思を尊重することを求める通知が発出された。通知には、照会の対象は「扶養義務の履行が期待できる」と判断される者に限ること、生活保護の申請者が親族への照会を拒んだ場合、その理由について特に丁寧に聞き取りを行い、照会をしなくてもよい場合にあたるかどうかを検討するように、という内容が盛り込まれている。

 以前から厚労省は、「概(おおむ)ね70歳以上の高齢者」は「扶養義務履行が期待できない者」として扱ってよいとの解釈を示してきた。Aさんは申請時に、80代の両親が老老介護の状態にあることを職員に伝えており、区も彼の両親が援助を見込める状況にないことを承知していたはずである。

 本人の意向を尊重することなく、80代の両親に照会文書を送りつけることは、厚生労働省が示している方針に二重の意味で背くことになる。それなのに、なぜ杉並区は「問答無用」の照会を強行したのだろうか。

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 区の姿勢の背後にある構造的問題には、ぜひ第三者による検証のメスを入れてほしいと願っているが、私はそもそも杉並区の担当者が法律や制度を正確に理解できていないのではないかと疑っている。

扶養は保護の「要件」ではない
 生活保護法によると、親族の扶養は保護に「優先」するとされている。「優先」とはわかりにくい言葉だが、実際に親族からの仕送りが行われた場合にその金額の分だけ保護費が減額される、という意味であり、扶養は保護の「要件」や「前提」となっているわけではない。なお、法律には親族への照会に関する規定はなく、扶養照会は厚労省の局長通知に基づいて実施されているに過ぎない。

 だが、杉並区など一部の自治体のホームページでは、扶養が生活保護の「要件」や「前提」であるかのような記載が散見される。杉並区の場合、わざわざ生活保護に関するQ&A方式のページを作り、「保護を受けるための要件はありますか」という質問に対して、「保護を受ける前提」として「親・きょうだい・子どもなど扶養義務者からできる限りの援助を受けるようにしてください」と回答している。

杉並区ホームページに記載された生活保護制度の誤った解釈=2022年2月13日最終閲覧
杉並区ホームページに記載された生活保護制度の誤った解釈=2022年2月13日最終閲覧
 親族による扶養が保護の「要件」や「前提」であるという誤った解釈を披露するQ&Aは、杉並区が法律に反した制度運用を続けていることの証左となっている。「要件」や「前提」であるから、扶養照会は本人の意思を無視してでも実施されるべきだと区は考えているのだろう。

区によって異なる対応
 ちなみに同じ東京都の特別区でも、足立区のホームページでは「親・子・兄弟姉妹等(民法に定める扶養義務者)から援助が受けられる場合には、可能な限り援助を受けてください」との文言はあるが、その下には「扶養義務者が扶養しないことを理由に生活保護を受けられないということはありません。『扶養義務の履行が期待できない』と判断される扶養義務者には、基本的には扶養照会を行わない取扱いとしています」との説明も併記されている。また、「扶養義務の履行が期待できない者」の例も列挙しており、その中には「概ね70歳以上の高齢者など」という記載もある。

 どちらの自治体が、法律や厚労省の通知に沿って制度を運用しようとしているかは明白だろう。

一方的な扶養照会に歯止めをかける都の通知
 本人の意向を無視して扶養照会を強行した杉並区に対して、私たち支援団体は2月4日、申し入れを行った。私たちはAさんご本人を交えて話し合いの場を設定することを求めたが、区はコロナの感染拡大の影響で多忙であることを口実にして、話し合いに応じなかったため、「抗議・要請書」を書面で提出できただけであった。

 だが、その後、私たちが申し入れをしたのと同じ日に、区を指導する立場にある東京都が、都内の各自治体の福祉事務所に対して「生活保護に係る扶養能力調査における留意事項について」という保護課長名の事務連絡を発出していたことが判明した。

 都の保護課長はその通知の中で、「要保護者が扶養照会を拒否する書面を提出するケースが見受けられます」と「申出書」に言及した上で、「扶養が保護適用の前提条件であるといった誤解を与えないよう」にとくぎを刺し、「要保護者が扶養照会を拒否する場合は、理由を確認し、照会を一旦保留し理解を得るよう努めてください」と、従来の都の方針を再確認している。

 東京都の通知が私たちの申し入れに反応したものであるかどうかは不明だが、このタイミングでの通知発出は事実上、杉並区のように「問答無用」で扶養照会を強行する自治体に対して歯止めをかける効果をもたらすものだ。


「本当に屈辱的」
 Aさんは扶養照会を拒否したいという意向を示すために「申出書」を作成して役所に持参したが、生活保護の申請手続きを進めてもらうために「背に腹は代えられない」との思いで、書面の提出をあきらめざるをえなかった。生活保護の申請に恣意(しい)的な条件を課す区の対応は申請権を侵害するものだが、その時の心境をAさんは「本当に屈辱的でした」と語っている。

 杉並区のAさんに対する対応は、厚労省や東京都の方針に幾重にも背くものであり、何よりAさんの尊厳を著しく傷つけるものであった。残念ながら同様の対応は他自治体でも散見されており、職員から「親族への照会はさせてもらう」と言われて、制度の利用を断念させられた人も少なくない。

 国や都も表向きは否定する「問答無用」の扶養照会は、いつになったら根絶されるのだろうか。そもそも扶養照会という法律に基づかない仕組み自体が必要なのか、という点も含め、国会や地方議会での活発な議論を期待したい。

 <杉並区ホームページ:質問 生活保護について聞きたいのですが。(1)>(2022年2月13日最終閲覧)

 <足立区ホームページ:生活保護について> (2022年2月13日最終閲覧)

 <「申出書」の受け取りを拒否し扶養照会を強行した杉並区に抗議・申入れ>

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