ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

生活保護者の集いコミュのなぜ立ち退き、それは東京五輪のため 「加速する問題」専門家に聞く

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
https://digital.asahi.com/articles/ASPCC759MPBMPTFC021.html?pn=21&unlock=1#continuehere

 ついのすみかを、なくしました。オリンピックのために――。

 公開中の映画「東京オリンピック2017 都営霞ケ丘アパート」(青山真也監督)は、住民たちが立ち退きを強いられる様子を描いています。場所は明治神宮外苑の国立競技場のすぐ近く、競技場の歓声の聞こえる距離にありました。この都営住宅はなぜ建てられ、なぜ解体されたのか。理由はどちらも東京五輪でした。

 住まいと貧困の問題に取り組む一般社団法人「つくろい東京ファンド」代表理事の稲葉剛さんによると、これは特殊なケースではないといいます。コロナ禍のいま、むしろ現在進行形で加速している、と。五輪が終わっても続く問題を考えます。

稲葉剛 1969年広島市生まれ。被爆2世。大学在学中は平和運動に参加。94年、東京・新宿を拠点に路上生活者支援に取り組み始める。年越し派遣村など社会活動で知られる湯浅誠さんとともに2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。東京五輪開催を機に14年、一般社団法人つくろい東京ファンドを設立。施設ではなくプライバシーの保たれた住まいの提供を最優先に掲げる「ハウジングファースト」の考え方に基づき、生活困窮者支援の最前線に立つ。

――映画の印象は

 東京五輪の問題は、コロナの感染対策の問題に絡んで大きく知られるようになりました。しかし、国はコロナ以前から人々の命をないがしろにしてきた。改めてそれを明らかにしてくれた作品だと思っています。

映画「東京オリンピック2017 都営霞ケ丘アパート」
「東京オリンピック2017」。このタイトルがすべての映画だ。2020でもなく、2021でもなく、なぜ4年前なのか――。もう一つの、五輪の物語。

 五輪と排除の問題は昔からあります。2016年のリオ五輪では、ファベーラといわれる貧困地域の排除が問題になり、激しい抗議デモが起こりました。現在の「つくろい東京ファンド」を作った背景の一つにも、東京五輪があります。開催によって路上生活者に対する排除が強まる危機感を抱きました。実際に、明治公園で路上生活をしていた方々のテントは強制執行という形で撤去されました。

――映画の舞台となった霞ケ丘アパートは都営住宅です。住民の多くが立ち退きに難色を示していましたが、安く住めるアパートは減っているのでしょうか

 以前は、都内にも風呂無しや4畳半の木造の賃貸住宅がよくありました。月3万円などで借りられ、低所得者の受け皿として機能していた。しかし東日本大震災以降、耐震性の問題もあって取り壊されるようになっています。銭湯が少ない中、新たに風呂なし物件が作られることはなく、家賃は5万、6万円。さらに敷金礼金、手数料で初期費用が20万円ぐらいはかかります。払えない人は、ネットカフェや脱法ハウスと呼ばれるような劣悪なシェアハウスへ行き着く。

安全網はクモの糸
――映画では、新たな住まいへと移る高齢者や障害者の大変さが描かれています。

 高齢者の住宅事情に関しては、「あまり入居してほしくない」という民間賃貸住宅オーナーが6、7割に上ります。孤独死が困るから、入居拒否をする事例は増えています。障害者に対する入居差別も厳しい。

 今回の映画では、住人は都営住宅から都営住宅へ引っ越しましたが、一般的には都営住宅は倍率が非常に高い。20倍、30倍ということもあり、セーフティーネットとして機能していない。クモの糸です。

 戦後の1950、60年代は公営住宅をどんどん作っていく方針でしたが、人口の減っている今は違います。自治体としては、地域の公営住宅に低所得者や高齢者が集まるので、そういう住宅を作りたくない意向が働いています。

 ヨーロッパだと、公的な住宅が2、3割ほど存在している国や地域がありますが、日本では少なすぎます。公営住宅やUR住宅など全部合わせても6、7%ほど。入れればラッキーで、大多数の低所得者は民間の賃貸住宅を探さないといけない。低所得者向け住宅は、実質的には民間市場任せです。

――民間任せの問題点は

 民間は営利で行っているわけです。質が良く安価な住宅の提供は難しい。行政が住宅市場に公的な介入をすることが必要です。

――今回の住民のように次の住まいを見つけられたら生活のめどは立ちますが、誰もができるとは限りません。稲葉さんは、行き場のない人が民間の貧困ビジネスの施設に行き着く問題を指摘しています。

 貧困ビジネス施設が終(つい)のすみか化している実態は以前から問題視されています。住まいのない人が生活保護を申請した時、行政が施設を紹介し、そこに入れば生活保護をかけましょうと対応する。本来は強要してはいけないことになってるのですが、事実上施設に入ることが生活保護の条件となる運用をしているところが少なくない。

 さらに、居住環境の劣悪な施設もあります。東京だといまだに10人部屋があり、すし詰め状態に近いところも。しかも生活保護費の大半が宿泊費、食費の名目で天引きされ、手元にお金が残らない。厚生労働省は少しずつ改善に動いていますが、まだまだ問題はあります。

――そうした施設に流れ着くきっかけの一つに、映画のテーマの「立ち退き」があると聞きます

ここから続き
 元々賃貸住宅に暮らしていた人が、アパートの老朽化や取り壊しで立ち退きになったり、困窮して家賃が払えず追い出されたり。他の住まいを自力で探そうにも、高齢者差別があってなかなか見つからない。ホームレスの方だけでの問題ではないのです。

――コロナ禍の今、高齢者でなくとも働き口や住まいを失うケースは増えています

 これまで、路上生活者の支援といえば50代、60代といった中高年単身男性からの相談がほとんどでした。コロナ禍の今は、若年層、女性、外国人の相談が多い。世代や性別、国を超えて貧困は広がっています。

 しかし、公営住宅を抑制する政策が続いてきたため、公営住宅になかなか入れません。住まいの貧困の背景には、住宅政策の貧困があります。

社会の底が抜けた
――「社会の底が抜けた」とおっしゃっていました。コロナ下で医療崩壊という言葉が言われてきましたが、「福祉崩壊」だとも

 コロナ禍のなかで住まいを失う人が急増している状況を、私たちは災害と捉えています。寄付金をもとに、部屋を借り上げて提供する取り組みをしていますが、本来は行政のすべきこと。手が届いていないのです。

――「公助が見えない」と指摘していました

 民間支援団体の活動はギリギリです。自助も共助も限界なのに、政府が何をやってるのかが見えてこないのです。

――「見えない問題」でいうと、アメリカの「ゲーテッド(門のある)コミュニティー」を思い出します。街の周囲を壁で覆い、富裕層はその中で暮らす。分断や格差の問題は、コロナ禍のなかで進んでいくのでしょうか

 格差が互いに見えないのです。同じ社会で起こっていることなのに、見えにくくなっている。すると社会的な連帯感、一体性は失われていく。その究極な形がゲーテッドコミュニティです。

――バーチャルスラムのように、目に見えない仮想空間での貧困問題も指摘されています。キャリア決済が進み、個人の信用度や将来性がAIによって格付けされ、ランクが低ければサービスから排除される。貧困の固定化につながるという懸念があります

 新たな形の社会的排除が広がっています。たとえば家賃の滞納歴や犯罪歴はデジタルタトゥーという形で残ります。コロナ下でスマートフォンの無償貸与サービスが始まっていますが、電話の止まっているケースがとても多いのです。今はスマホで買い物をする時代。代金が払えなくなると電話も止まる。滞納情報が出回ると、新たにスマホや部屋を借りる時、仕事を探す時、大きな壁になります。

監視と排除
――街中でも、監視や排除の意識が垣間見える場所があります。公園を施錠したり、野宿禁止の警告板を立てたり。

 2013年に東京五輪の開催が決定してから、さらに加速した印象があります。公園を夜間施錠するケースが増えました。ライトアップをして野宿者の眠れない雰囲気を作ったり、飲食店が入ったりする公園も増えています。

――長居しにくいデザインのベンチも目立ちます。一見アートっぽい形ですが

 排除アートと言われています。ベンチの真ん中に板をつけて寝られないようにするとか。アートといっても、実際は排除です。

――映画では、人々の暮らしが五輪の環境整備の名の下にないがしろにされる姿を描いています。終わった話ではない気がします

 五輪によって住まいの問題がないがしろにされたことと、コロナ禍にもかかわらず開催が強行されたことは、同じ構造の現在進行形の問題だと思います。国は政策の優先順位を間違えず、人々の住まいを守ることを最優先にしてほしいと思います。

 映画「東京オリンピック2017 都営霞ケ丘アパート」は11月13日から川崎市アートセンター(神奈川県川崎市)で公開。(土井恵里奈)

稲葉剛 1969年広島市生まれ。被爆2世。大学在学中は平和運動に参加。94年、東京・新宿を拠点に路上生活者支援に取り組み始める。年越し派遣村など社会活動で知られる湯浅誠さんとともに2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。東京五輪開催を機に14年、一般社団法人つくろい東京ファンドを設立。施設ではなくプライバシーの保たれた住まいの提供を最優先に掲げる「ハウジングファースト」の考え方に基づき、生活困窮者支援の最前線に立つ。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

生活保護者の集い 更新情報

生活保護者の集いのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。