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首都圏に住む大学生の女性は、ここ数カ月、生理用品を切り詰めている。
「コロナでアルバイトが減って、数万円の収入がなくなった。何を減らそうかといったら、その一つがナプキンだった」
生理痛が重く、鎮痛剤も買わざるをえないという。そのぶん、ナプキンは1日に何回も交換しないようにして節約している。
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生理と貧困� ．妊競ぅ鵝κゝ楡藹�
トイレに行けば、経血の汚れは気になる。そのたびに「我慢できる」と自分に言い聞かせて、しのぐ。
初潮から閉経までの平均約35年、月経のある女性が避けては通れない、生理とのつきあい。だが、月に千円程度の生理用品を、経済的理由で満足に使えない「生理の貧困」が、若年層を含む多くの女性の間に確かに広がっている。
「生理用品は、友達にもらったり、知らない人にもらったりしてきた」
「生理が来たら、街で配っているティッシュを1パック使って、それでしのいでいた」
生活が困難な若年女性の支援を続けてきた西日本の女性は、こんな声を多く聞いてきた。今も女性たちへの差し入れには、食品などとともに生理用品も入れている。
「親に買ってもらえず、生理中に学校の保健室でもらっている子もいる。でも、そうした機会がない20代の女性などは、よりしんどい状況ではないか」とこの女性は言う。
経済的理由で女性が生理用品の入手に苦しむ実態が民間の調査で明らかになりました。コロナ禍で困窮が広がる中、生理をめぐる動きをリポートする連載です。
「5人に1人が苦労」
生理用品に関するアンケートに答えた若年女性のうち、5人に1人が金銭的理由で生理用品入手に苦労したことがある――。大学生らが中心になって立ち上げた団体「#みんなの生理」が今月、こんな結果を発表した。
今年2月、団体のホームページやSNSを通じて、高校生や大学生からの回答を想定して過去1年以内の状況を尋ねた。当初、回答は「200人ほど集まれば」と思っていたというが、予想以上に大きな反響があり、開始2週間で回答数が600を超えた。
今月2日までに集まった有効回答671件の集計によると、過去1年以内に「金銭的理由で生理用品の入手に苦労したことがある」と答えた人が20・1%いた。
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生理と貧困�．▲鵐院璽鳩覯�
さらに「生理用品を交換する頻度を減らした」人は37・0%、「生理用品でないものを使った」という人も27・1%いた。
自由記述では、「生理用品の値段が高い。もう少し低くしてもらえれば、その分を生活費に回せる」「（鎮痛剤などの）薬代の負担も大きい」などの声があったという。
同団体によると、1周期の生理で使う生理用品代の合計を千円、初潮から閉経までを38年として試算すると、女性が生涯に使う生理用品代は約45万円になるという。
同団体の共同代表を務める谷口歩実さんは「厳しい状況にある人が多いとは思っていたけれど、想像していた以上の結果だった」と話す。コロナ禍の長期化、またアルバイトが減った学生もいて「今後も支援がなければ困る人は増えていくと思う」。
「不平等に気付かず」男性の声も
アンケートは国会でも取り上げられた。
4日の参院予算委員会では、公明党の佐々木さやか参院議員が「5人に1人の若者が金銭的理由で生理用品を買うのに苦労した」と結果を紹介したうえで、「日本でもこの生理の貧困の問題について、実態を把握し、学校での無償配布など必要な対策を検討していただきたい」と訴えた。
丸川珠代男女共同参画相は「コロナの感染拡大によって女性が特に大きな影響を受けているということも踏まえ、文部科学省、厚生労働省などとも連携をしながら、今後何ができるか検討したい」と応じた。
19日にも同委で、立憲民主党の蓮舫参院議員が質問。生理用品の交換頻度を減らしたり、痛み止めを買えずに学校も仕事もいけなかったりする例を示しながら、「これは自己責任とは言えない」と対策を迫った。菅義偉首相は対応に当たるNPOへの支援に触れ、「活動を少しでも後押しすることができればいいなというふうに思っている」と答えた。
政府は23日、コロナで苦境にある女性を支援するための交付金に13・5億円を投じることを決めた。相談事業などを行うNPOなどを自治体を通じて支援する。想定される事業として、孤立した女性の居場所づくりなどとともに、生理用品の提供が含まれることになった。
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生理用品を購入する際のレシート。消費税率は10%
アンケートをした「#みんなの生理」は、もともとは生理用品を軽減税率の対象とするよう求める活動をしてきた。2019年末から実施しているオンライン署名の賛同者は4万5千人を超え、なお増え続けている。
署名サイトの自由記述には「生理が来てしまった時、金銭的、体力的にも苦しく困ったことがあった」「娘が2人います。毎月3人分の生理用品はかなりの負担です」といった当事者の声のほか、「大きな不平等に気付かずにいて申し訳ない」という男性の声も寄せられた。無償提供などの仕組み作りを求める声も目立つという。
「隠すべきもの」から社会の関心事に
谷口さんが生理に関心を持つようになったきっかけは、幼い頃に聞いた祖母の体験談だった。
祖母は60年ほど前、地方から上京した。そのころを振り返り「朝食のパンを買うか、生理用品を買うか選ばなきゃいけなかったの」と話してくれた。「生理用品とご飯を2択にかけるなんて」。谷口さんは衝撃を受けた。
その後、大学でジェンダー・セクシャリティ研究を専攻したこともあり、卒論のテーマを「大学生が生理についてどう考えているか」「月経がある人にとって、社会にはどのような障壁があるのか」に設定した。
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生理と貧困��
友人らにインタビューすると「アルバイト代が生理用品に消えていくのが切ない」といった声のほか「学校に生理用品を捨てる場所がなくて困った」「生理を理由に欠席した授業の成績が下がった」といった、経済的要因以外の生理の悩みも多かった。
「生理が社会の仕組みの中で理解されていない。月経がある人ばかりが我慢を強いられているのは、なんだかおかしい」
必要な人が生理用品を手に取れる仕組み作りを今後の団体の目標に、余った生理用品の寄付の窓口作りを考えたり、大学や公的機関のトイレに生理用品を無償で置いたりといった試みに着手している。
「生理の話は『隠すべきもの』ではなく、社会全体で考えていくべきトピックであると伝えたい」（中井なつみ、編集委員・秋山訓子）
首都圏に住む大学生の女性は、ここ数カ月、生理用品を切り詰めている。
「コロナでアルバイトが減って、数万円の収入がなくなった。何を減らそうかといったら、その一つがナプキンだった」
生理痛が重く、鎮痛剤も買わざるをえないという。そのぶん、ナプキンは1日に何回も交換しないようにして節約している。
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生理と貧困� ．妊競ぅ鵝κゝ楡藹�
トイレに行けば、経血の汚れは気になる。そのたびに「我慢できる」と自分に言い聞かせて、しのぐ。
初潮から閉経までの平均約35年、月経のある女性が避けては通れない、生理とのつきあい。だが、月に千円程度の生理用品を、経済的理由で満足に使えない「生理の貧困」が、若年層を含む多くの女性の間に確かに広がっている。
「生理用品は、友達にもらったり、知らない人にもらったりしてきた」
「生理が来たら、街で配っているティッシュを1パック使って、それでしのいでいた」
生活が困難な若年女性の支援を続けてきた西日本の女性は、こんな声を多く聞いてきた。今も女性たちへの差し入れには、食品などとともに生理用品も入れている。
「親に買ってもらえず、生理中に学校の保健室でもらっている子もいる。でも、そうした機会がない20代の女性などは、よりしんどい状況ではないか」とこの女性は言う。
経済的理由で女性が生理用品の入手に苦しむ実態が民間の調査で明らかになりました。コロナ禍で困窮が広がる中、生理をめぐる動きをリポートする連載です。
「5人に1人が苦労」
生理用品に関するアンケートに答えた若年女性のうち、5人に1人が金銭的理由で生理用品入手に苦労したことがある――。大学生らが中心になって立ち上げた団体「#みんなの生理」が今月、こんな結果を発表した。
今年2月、団体のホームページやSNSを通じて、高校生や大学生からの回答を想定して過去1年以内の状況を尋ねた。当初、回答は「200人ほど集まれば」と思っていたというが、予想以上に大きな反響があり、開始2週間で回答数が600を超えた。
今月2日までに集まった有効回答671件の集計によると、過去1年以内に「金銭的理由で生理用品の入手に苦労したことがある」と答えた人が20・1%いた。
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生理と貧困�．▲鵐院璽鳩覯�
さらに「生理用品を交換する頻度を減らした」人は37・0%、「生理用品でないものを使った」という人も27・1%いた。
自由記述では、「生理用品の値段が高い。もう少し低くしてもらえれば、その分を生活費に回せる」「（鎮痛剤などの）薬代の負担も大きい」などの声があったという。
同団体によると、1周期の生理で使う生理用品代の合計を千円、初潮から閉経までを38年として試算すると、女性が生涯に使う生理用品代は約45万円になるという。
同団体の共同代表を務める谷口歩実さんは「厳しい状況にある人が多いとは思っていたけれど、想像していた以上の結果だった」と話す。コロナ禍の長期化、またアルバイトが減った学生もいて「今後も支援がなければ困る人は増えていくと思う」。
「不平等に気付かず」男性の声も
アンケートは国会でも取り上げられた。
4日の参院予算委員会では、公明党の佐々木さやか参院議員が「5人に1人の若者が金銭的理由で生理用品を買うのに苦労した」と結果を紹介したうえで、「日本でもこの生理の貧困の問題について、実態を把握し、学校での無償配布など必要な対策を検討していただきたい」と訴えた。
丸川珠代男女共同参画相は「コロナの感染拡大によって女性が特に大きな影響を受けているということも踏まえ、文部科学省、厚生労働省などとも連携をしながら、今後何ができるか検討したい」と応じた。
19日にも同委で、立憲民主党の蓮舫参院議員が質問。生理用品の交換頻度を減らしたり、痛み止めを買えずに学校も仕事もいけなかったりする例を示しながら、「これは自己責任とは言えない」と対策を迫った。菅義偉首相は対応に当たるNPOへの支援に触れ、「活動を少しでも後押しすることができればいいなというふうに思っている」と答えた。
政府は23日、コロナで苦境にある女性を支援するための交付金に13・5億円を投じることを決めた。相談事業などを行うNPOなどを自治体を通じて支援する。想定される事業として、孤立した女性の居場所づくりなどとともに、生理用品の提供が含まれることになった。
拡大する写真・図版
生理用品を購入する際のレシート。消費税率は10%
アンケートをした「#みんなの生理」は、もともとは生理用品を軽減税率の対象とするよう求める活動をしてきた。2019年末から実施しているオンライン署名の賛同者は4万5千人を超え、なお増え続けている。
署名サイトの自由記述には「生理が来てしまった時、金銭的、体力的にも苦しく困ったことがあった」「娘が2人います。毎月3人分の生理用品はかなりの負担です」といった当事者の声のほか、「大きな不平等に気付かずにいて申し訳ない」という男性の声も寄せられた。無償提供などの仕組み作りを求める声も目立つという。
「隠すべきもの」から社会の関心事に
谷口さんが生理に関心を持つようになったきっかけは、幼い頃に聞いた祖母の体験談だった。
祖母は60年ほど前、地方から上京した。そのころを振り返り「朝食のパンを買うか、生理用品を買うか選ばなきゃいけなかったの」と話してくれた。「生理用品とご飯を2択にかけるなんて」。谷口さんは衝撃を受けた。
その後、大学でジェンダー・セクシャリティ研究を専攻したこともあり、卒論のテーマを「大学生が生理についてどう考えているか」「月経がある人にとって、社会にはどのような障壁があるのか」に設定した。
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生理と貧困��
友人らにインタビューすると「アルバイト代が生理用品に消えていくのが切ない」といった声のほか「学校に生理用品を捨てる場所がなくて困った」「生理を理由に欠席した授業の成績が下がった」といった、経済的要因以外の生理の悩みも多かった。
「生理が社会の仕組みの中で理解されていない。月経がある人ばかりが我慢を強いられているのは、なんだかおかしい」
必要な人が生理用品を手に取れる仕組み作りを今後の団体の目標に、余った生理用品の寄付の窓口作りを考えたり、大学や公的機関のトイレに生理用品を無償で置いたりといった試みに着手している。
「生理の話は『隠すべきもの』ではなく、社会全体で考えていくべきトピックであると伝えたい」（中井なつみ、編集委員・秋山訓子）
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