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生活保護者の集いコミュの生活保護が進学で打ち切りに?シングルマザーと息子を襲った落とし穴

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2017.11.17
http://diamond.jp/articles/-/149892

漫画家を目指す発達障害の子ども
生活保護は彼らを支えているのか?

 ただいま、幼児教育無償化や給付型奨学金の議論がたけなわだ。生活保護世帯の子どもたちに対しても、高校受験料を2回分支給する(上毛新聞記事)、大学や専門学校の進学に給付金を支給する(毎日新聞記事)などの施策が、厚労省を中心に検討されている。これまで、高校受験料は1回限りだったし、大学等への進学については何の経済的支援もなかった。一歩前進であることは間違いない。

 では、これらの施策によって、生活保護世帯の子どもたちは、大学などに進学しやすくなるのだろうか。大学などに進学した場合に抱える学業・生活の困難は、どの程度緩和されるのだろうか。

 今回は、専門学校に通う19歳の息子を持つシングルマザーの、現在進行中の生々しい実例を紹介したい。その上で、厚労省が検討している施策が「焼け石に水」なのか、それとも生活保護世帯の子どもたちの進学を本当に後押しする力になれるのか、読者の皆様にご判断いただければと思う。

 篠田真紀子さん(仮名・53歳)は、大阪府M市で、19歳になる息子の光さん(仮名)と2人暮らしをしている。生活保護を利用し始めたのは、光さんが5歳のときからだった。

 発達障害を持つ光さんは、幼少期から絵に熱中し、絵画コンクールで入賞するなどの評価も得てきた。現在は、漫画家を目指し、専門学校でマンガを学んでいる。

「誰にでも、得意不得意があると思います。そのデコボコが大きいのが、発達障害です。『デコ』を活かすことを、大人たちが助ければいいと思うんです」(篠田さん)

とはいえ、篠田さんは、光さんが漫画家になることに強くこだわっているわけではない。

「難しいだろうなあとは思います。でも、『難しいからダメ』と大人が芽を摘んでしまうようなことは、したくありません。漫画家を目指して頑張って、『自分、思ったより才能ないな』と気づくかもしれませんし、そのとき『ちょっとずれた道だけど、こっちがあるやん?』と何かを見つけることができるかもしれません。漫画家になれなくても、たとえば看板描きとして生きていくことはできるだろうと思うんです」(篠田さん)

自立のために大学へ進学すると
生活保護費が減らされる現状

 しかし現在、篠田さん親子の生活は、極めて厳しい状況にある。生活保護の対象となるのが、篠田さん1人だけだからだ。

 生活保護で暮らしながら大学(専門学校を含む)に進学することは認められていない。生活保護で暮らす家族と同居しながら子どもの1人が大学進学する場合には、その子ども1人を「世帯分離」して別世帯とし、生活保護の対象から外すこととなっている。生活保護は世帯単位で実施されるからだ。篠田さんも、光さんの進学にあたり「世帯分離」を余儀なくされた。

 篠田さん親子に支給されていた生活保護費を計算してみると、光さんが障害児であることによる加算を考慮すると、約16万7000円となる。住宅費の上限額(4万7000円)を除くと、生活費分は約12万円となる。

 ところが、光さんが専門学校に進学した今年4月以後は、生活保護の対象となっているのは篠田さん1人なので、生活費分は8万円しか支給されなくなっている。問題は、実際に篠田さんが1人暮らししているわけではなく、光さんがいるということだ。篠田さん1人分の生活保護費で、2人分の生活を賄い、さらに光さんの学費を捻出することはできない。光さんはアルバイトすることも難しいため、学生支援機構奨学金を最大限に借り入れ、学費と生活費をなんとかやりくりしている。卒業すれば、光さんは借金を背負うことになる。

 問題はそれだけではない。障害を持つ光さんの20歳の誕生月まで、篠田さんは児童手当(月額3万7000円)・特別児童扶養手当(月額4万2000円)を受け取ることができる。篠田さんと光さんの二人世帯とされていた間は、これらの手当の給付はされていたものの、生活保護の原則により「収入認定」(召し上げ)され、親子に支給される総額は変わりなかった。現在も給付は続いているのだが、篠田さんはこれらの費用を光さんのために使うことができない。保護者である篠田さんに給付され、篠田さんが生活保護で暮らしている以上、やはり同じように「収入認定」されてしまうのだ。

 子どものための給付があるのに、必要とする子どもが現にいて生活保護の対象となっていないのに、親が生活保護世帯であるという理由で、その給付は子どものために役立てられないことになってしまうのだ。

家に引きこもっているほうが
生活が楽になるのはおかしい

 子どものための手当を含め、「利用できる他の制度は利用してください」「できることはやってください」というのが生活保護の原則だ。むろん、篠田さんはベストを尽くしている。障害のある光さんを育てながら、自分の病気を抱えながら、可能な範囲で働いてきた。妊娠するまで働いていた篠田さんにとっては、自然な選択だった。

 現在、篠田さんは、公立学校の学習支援と事務の仕事に就いている。1回あたり4時間、時給は1000円。月収は、長期休みのない月には6〜7万円、夏休みは0円、春休み・冬休みのある時期には4万円ということだ。生活保護の場合、就労による収入はそのまま「使える」収入の増加になるわけではない。一定額は手元に残るが、多くの部分は「収入認定」の対象となる。しかも、扶養家族である光さんは、生活保護制度上は「いない」ということになっている。光さんを実際には扶養していることに対する配慮は、生活保護制度上は、まったくない。

 さらに不可解なのは、もしも光さんが進学せずに家にいれば、問題なく、生活保護の2人世帯であり続けられたということだ。通常の就労が見込めない光さんは、おそらく今後も福祉事務所に就労自立を期待されないだろう。

「福祉事務所にも、『専門学校に行かず、ニートのような形で家にいるのなら、保護費は出せる』と言われました。『障害のある子どもは学ばず家に引きこもっておれ』ということでしょうか」(篠田さん)

 もしも光さんに障害がなかったら、光さんはアルバイトをして、自分の学業と生活を少しでも自ら支えることができるかもしれない。その収入は光さんのものなので、生活保護の「収入認定」の対象にはならない。しかし光さんは、主治医から「就労能力なし」と診断されている。

「児童手当や特別児童扶養手当が保護者に支給されるのは、子どもが未成年で金銭管理できないからですよね。光は18歳を過ぎましたが、障害があるので、まだ手当の対象となっています。そういう子どもを、なぜ世帯分離するのでしょうか……」(篠田さん)

福祉事務所は相手の立場に立って
考えられるようになってほしい

 私は、お話を聞きながら「あんまりだ」と思う。しかしその一方で、生活保護制度その他の制度の規定を、何も考えずに当てはめる限り、「こうしかなりようがないだろう」と思う。

「福祉事務所は、お金を減らすこと、保護費を減らすことしか考えていないのでしょう。だったら光も私も、自立できないじゃないですか。福祉事務所に、相手の立場に立って方法を考えられるような人格者を配置してほしいです」(篠田さん)

 福祉事務所の誰かに、「この親子の厳しすぎる状況を、なんとかしたい」という気持ちがあれば、成り行きは全く異なっただろう。光さんの障害を認識して「ニートのような形で家にいるのならば、世帯分離しなくていいのですが」というのなら、光さんの専門学校進学も「ニートの趣味のイベント通いと同様ですから」ことで、通常の大学などへの進学と異なる扱いとする方法は考えられたはずだ。

 あるいは、大学夜間部や通信課程への在学・大学昼間部の科目履修など、現在も「生活保護ではダメ」とされていない方法を親子に提案し、生活保護のもと、大きな無理をすることなく光さんが伸び伸び学べる環境を整備することができたかもしれない。
それでも、大変な思いをしながら光さんの学びと暮らしを支えている篠田さんには、希望がある。

「大学には進学したけれど、『やりたいことがない』と無気力になり、就職にも至らない方々が、たくさんいます。でも、光には『漫画がやりたい』という信念があります。だから、漫画そのものでなくても、できることを何か見つけられるでしょう。親として、探すことを精一杯手伝いたいと思います」(篠田さん)

 その背後には、篠田さん自身の生育歴の中での悔しい思いがある。

「私にも、したいことがありました。でも、親に『アンタにできるわけはない』と言われてきました。働き始めてから、お金を貯めて学校に行きましたが、始めた年齢が遅すぎました。だから、子どものやりたいことに反対したくありませんでした。『やりたかったら、やりなさい』と言い続けてきました」(篠田さん)

「自立とは何なのか?」
息子の将来を諦め切れない母


本連載の著者・みわよしこさんの書籍『生活保護リアル』(日本評論社)好評発売中
 とはいえ、漫画業界・イラストレーション業界全体の状況が厳しいなか、楽観はできない。

「でも、諦めなくていいと思います。卒業してすぐ、漫画家やイラストレーターになれなくてもいいと思います。40代から芽が出てもいいんじゃないかと思います。できるだけ、その子に適した世界、障害があるからこそできることを何か見つけられるようにして、社会に出て、税金も払えるようになってほしいです」(篠田さん)

 しかし、篠田さん親子の住むM市の生活保護行政は、篠田さんのその気持ちに、まったく応えられていない。

「自立」とは何なのか。生活保護での「自立」とは何なのか。何が「自立」を妨げているのか。私自身、篠田さんのお話で、目を開かされることの連続だった。

 ともあれ私としては、すべての人の「健康で文化的」な暮らし、すべての人のあらゆる場面での「自立の助長」を支える制度としての生活保護の今後に、引き続き、読者が関心を向けつづけていただくための発信を続ける心づもりだ。

(フリーランス・ライター みわよしこ)

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