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生活保護者の集いコミュの生活保護への誤解を煽り立てるテレビ報道続出の驚愕

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http://diamond.jp/articles/-/122338

生活保護のリアル〜私たちの明日は? みわよしこ

年明けから生活保護に関する大変気がかりな報道が続く。背景には、本年予定されている生活保護法の再改正・生活保護基準見直しもあるように思われてならない(写真はイメージです)
新春の生活保護占いはいきなり「大凶」
外国人に生活保護の適用は必要ないのか?

 2017年1月5日木曜日夜、本連載の記事を手離れさせてホッと一息ついていた私は、友人・知人たちがSNSに書き込んだテレビ番組に対する感想を読み、びっくり仰天した。

 その番組とは、NHK・Eテレの「ハートネットTV」で放映された「シリーズ 暮らしと憲法」の第2回「外国人」だ。「ハートネットTV」は、障害者や福祉について、他のメディアが取り上げない題材を積極的に取り上げてきた番組だ。切り口は鋭く、必ずしも「お茶の間にウケる」とは限らないが、そこは視聴率が売上に響くわけではないNHKの「強み」をフル活用しているのだろう。

 しかし友人・知人たちの感想は、「そのハートネットが?」と私を驚愕させる内容だった。テレビを持たない生活が33年目に入っている私だが、その番組はなんとしても見ないわけにはいかない。というわけで、手段を講じて視聴した。そして、真っ青になった。

 番組は、日本で働き続け、年老いて生活保護に頼るしかなくなった外国人労働者たちの姿を、その人々の生活の基盤が日本にしかないことと共に示している。また、日本で生まれ育ち、日本語を第一言語としている外国人の少年少女たちの姿や声も紹介している。

 その人々に生活保護以外の選択肢がないのなら、福祉事務所と生活保護ケースワーカーの出番となる。番組の中では、外国人の多い豊橋市で、外国人生活保護世帯に親切・丁寧に対応するケースワーカーの姿も紹介されている。

 しかしながら、番組の内容を一言で要約すると、「外国人に生活保護は適用しなくてもよいのではありませんか?」だ。冒頭では、日本国憲法が定めた「基本的人権」や「法の下の平等」の主語が国民であること、憲法には外国人に関する記述はないことが紹介されている。

 また、当分の間「外国人に生活保護制度を準用する」とした1954年の厚生省通達を紹介し、豊橋市のケースワーカーの声として、「半世紀以上……当分の間というには長過ぎる気が」という意見を紹介している。

 また、2014年7月、日本の永住権を持つ外国人高齢女性が生活保護を申請したところ、認められなかった件に関する最高裁判決があった。番組は、最高裁判決の「生活保護は日本国民に限られる」「自治体の判断で外国人に支給している」という判断も紹介している。

 年明け、神社で引いたおみくじは「中吉」だった。しかし新春生活保護占いは、大凶だ……

生存権は「基本的人権」で
「国が前提」なのか?

 番組は、識者の声として2人の大学教員の意見を紹介している。

 1人目の近藤敦氏(名城大学法学部教授)は、まず基本的人権が普遍的な人間の権利であることを述べ、さらに基本的人権のうち最も重要な生存権、すなわち生活保護を利用する権利は、国民に限定された権利ではないとしている。

 しかし、2人目の百地章氏(国士舘大学客員教授)は、法律の文言に「国民は」「何人も」と書いてあるかどうかを問題にする考え方は現在主流ではないこと、「国家以前の権利」として説明できる権利があることを述べた後に、「国家を前提にしないと説明できない権利がある」とし、例として参政権・社会権・入国の自由を挙げている。生活保護を利用する権利については、「財政が破綻しても保障しなくてはいけないのか、日本人を放っておいても外国人を優先するのか。国家としてあり得ないことです」としている。ということは、生存権は「国家以前の権利」ではない、ということだろう。

 番組はこの後、外国人の子どもに対する義務教育現場の混乱を紹介して終わる。どう解決されるべきかについては、両論併記、玉虫色だ。しかし少なくとも、「外国人に生活保護を認める必要はない」というメッセージが隠されていることは、構成から言って否定のしようがない。

 しかも、生活保護に関する重要な文書や規定、このような番組をつくる人々なら知っていて当然の事柄に、なぜか触れられていない。もしかすると、“なぜか”と問うことさえ野暮というものかもしれないが。

 それらの文書や規定の中から、最も重要と私が考えるものを2点紹介しておきたい。

 最初の1点は、1954年の「外国人にも生活保護を準用する」という厚生省通知だ(生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について/昭和29年5月8日 社発第382号)。この通知は、生活保護法新法が1950年に施行されてから4年後に発せられているのだが、生活保護法をつくった厚生官僚・小山進次郎氏は、1951年、自らの著書『生活保護法の解釈と運用』の中で、生活保護法旧法(1946)では「社会福祉の分野においては堅持せらるべき」態度として内外人平等の原則を採ったが、新法では外国人に対して明確に保護の請求権を認める一方で、法文上は「日本国民の権利」と一歩後退させた、という内容を述べている。

 とはいえ法文上、生活保護法は日本国民のための制度である。小山氏は外国人に関し、「まずはその国の外交機関、解決しない場合には生活保護制度で」とも述べている。これらを明文化したものが、1954年の局長通知である。しばしば喧伝されている「厚生省の局長が、暴動などの圧力に屈して勝手に通達を出した」という説は、全くの誤りだ。

 また、2014年の外国人と生活保護に関する最高裁判決に関しても、重要なことが1つ、番組内で全く紹介されていない。それは、もともと外国人の生活保護に関する権利は、日本人と同じ意味で認められてきたわけではないということだ。外国人には保護請求権があっても審査請求権がないため、生活保護申請が却下された場合、残る法的手段は行政訴訟しかない。

 しかし、この番組を見て、「ちょっと大変だけど、小山進次郎氏のその原典を読んでみるかな」「外国人の権利について、ちゃんと整理してみようかな」と思った人は、たぶん1人もいないだろう。番組が、そういう理解を促すつくりにはなっていなかったからだ。

気になる生活保護報道が相次ぐ
春のテレビ番組を徹底リサーチ

 その後も、生活保護に関しては大変気がかりなメディア報道が続いている。

・2017年3月6日/「好きか嫌いか言う時間」(TBS)

「正しい生活保護の在り方について話し合う60分」ということだが、「正直者は馬鹿をみる?」「あなたの税金が無駄使いされている? 受給者の生活に密着」という番組内容紹介から、「正しい」の意味するところは「死ぬ気で働け」「充分に悲惨でいろ」「自分の希望を持ったり実現したりするな」といったことだろうと予測され、見る前からウンザリする。

 番組には当事者も登場しており、最初の1人は生活保護で暮らしながら生活保護バッシング記事を書いているライター。合法的な範囲で生活保護を利用していることを番組内で強調して反感を買っていた。「そう主張して反感を買うように」という演出ありき、なのだろうか。登場した他の当事者は、傷病を持つ子だくさんのひとり親・傷病がありながら水際作戦を経験した女性であった。

 実際のところ、その人々が「生活保護世帯を代表している」と言えるだろうか。生活保護世帯の半数以上は、今や低年金・無年金の高齢者。「働けるのに働かない」、あるいは就労による生活保護脱却を期待できる人々は、もともと生活保護で暮らす人々の中では多数派ではなかったが、そういう人々は、さらに少数派になっている。

 むろん、番組制作側に「働けるのに働かない生活保護の人々」というイメージと反感を煽る意図があるのなら、「働けないから働いていない」「働いているが、自分や家族を養えるほどの収入を得るのは難しい」という生活保護の多数派にフォーカスするわけがないだろう。

2017年3月12日/「そこまで言って委員会NP」(読売テレビ)

 この日取り上げられた6つのテーマのうち1つが、小田原市の「生活保護なめんな」ジャンパー問題であった。パネラー8名のうち4名(長谷川幸洋氏・猪瀬直樹氏・加藤清隆氏・竹田恒泰氏)が、ジャンパーをつくった小田原市職員を支持し、理由は「役人の仕事が大変」「やる気を出す意図」「ひどい受給者もいる」「むしろ表彰すべき」というもの。支持しなかったのは、「他にも方法があるはず」という桂ざこば氏、「モチベーションを高める方法なら他にも」という峯岸みなみ氏、「ジャンパーに効果があると思えない」という萩谷麻衣子氏の3名。田嶋陽子氏は「どちらでもない」。

 支持派が優勢なのだが、小田原市が開催した検討会(前回参照)は、放映1週間前の3月5日までにすでに2回、このジャンパー問題に関する検証を行っている。ジャンパーをつくり着用していたケースワーカーたちは、検討会に直接参加はしていないが、経緯や当時の思い、現在の所感などは検討会で紹介されている。

 表面的に「元受給者による傷害事件が起こったので士気を高めるため、問題のある文言を刷り込んだジャンパーを着用した」という事実だけに対して「賛成」「反対」と議論しても意味はない。発覚直後ならともかく、1ヵ月以上経過し、小田原市の検討会で詳細が明らかになっていたタイミングで、なぜこのような番組が放映されてしまうのだろうか。しかも、小田原市の検討会で共有された情報の多くはウェブで公開されていた。

「親族扶養は保護の要件」は
極めてよくある誤解

・2017年3月15日/「『悪い奴らは許さない!』直撃!怒りの告発スペシャル」(日本テレビ)

 ”悪い奴ら”の一例として紹介されているのは、世帯認定が実態と異なるというタイプの不正受給だ。ある地方都市で、「生活保護で暮らす50代の独身女性が、別の住所に居住して(以下略)別の住所に居住して余裕のある生活をしているといる」という市民からの通報があり、実際に1週間以上、自分の住所にいなかった。市役所職員らは張り込みを行い、女性が実際には比較的裕福そうな実家に居住していること、自動車を運転していることを突き止めた。父親からの経済的援助も認められたため、不正受給とされた。その時点で、世帯の認定と実態の間に食い違いが生じていたことは間違いない。

 番組は、他にも同様の不正受給の例が多数あることに加え、弁護士の「扶養能力のある親族がある場合には保護は受けられない」という意見も紹介した。親族による扶養は生活保護に優先されるのだが、弁護士の意見は「親族による扶養は生活保護の要件」を意味する。「親族扶養は保護の要件」というのは、極めてよくある誤解である。

 また、女性の不正受給について、弁護士は「詐欺罪にあたる」とコメント。詐欺に当たるかどうかは、どの時点で、どのような意図で、福祉事務所が把握していた「女性は単身世帯」という情報と実態との違いが生じていたかによる。

 この他にも、週刊誌などのメディアを中心に、気がかりな生活保護報道が続いている。

狙われているのはどこの誰?
背景に生活保護基準の見直しか

 こうした報道の背景にあるのは、本年2017年に予定されている生活保護法の再改正・生活保護基準見直し(引き下げ)であろう。

 生活保護法の再改正では、生活困窮者自立支援法の施行後のフィードバックも含め、より就労促進的になることが予想される。

 私自身は、「働けるのに働かないという人々が多数いて生活保護、国の財布を圧迫している」という俗説は否定するが、「働きたいけど働けない」「働きたいと思うには何もかもが不足している」という人々に対する支援は、人権の問題として重要だと思う。しかし、現在目論まれている生活保護法の再改正の方向性は、「働けるのに働かない」という範囲を拡大し、「働けるのに働けない」という“認定”を容易にし、ペナルティと結びつけることにあるのではないかと危惧している。

 また厚労省は福祉事務所に対し、受け持ち生活保護世帯がパチンコをしているかどうかに関する報告を求めている。これもまた、「働けるのに生活保護でパチンコ」というイメージを独り歩きさせるために役立てられるのではないだろうか。

 また生活保護基準の見直しで、現在最大の標的になっているのは、ひとり親家庭に対する母子加算だ。自民党政権下で廃止され、その年のうちに政権交代によって民主党政権下で復活された母子加算に対し、現政権は「どうしても再度廃止したい」という強い意向を持っているようだ。

 この他、児童養育加算など生活保護世帯の育児に関する加算、生活保護世帯の子どもが保育園に入所しやすいことなども、現政権は「解消」すべき点と考えているようだ。


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 母子加算も児童養育加算も、生活保護世帯が保育園に入所しやすいことも、貧困の中での育児が子どものハンデにつながることを減らし、子どもたちが心身ともに健やかに育成されやすい状況をつくるために設けられたものだ。それらが失われれば、生活保護世帯の子どもたちは、現在でも貧困なのに、さらに深刻な貧困へと押しやられる。

 子どもの貧困を本気で解消するつもりがあるのなら、子どものいる世帯の生活保護基準は高め、少なくとも悪化させず、さらに生活保護ではカバーできない支援を充実させるしかないだろう。私は、現政権や政府文書がどれだけ「子どもの貧困に取り組む」と語っても、とても信じられない。

 この国は、どこに向かって進もうとしているのだろうか。

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