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生活保護者の集いコミュの生活保護は切り捨てる? 2015年度予算案 住宅扶助190億円、冬季加算30億円削減の衝撃

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ダイアモンドオンライン http://diamond.jp/articles/-/65175  みわよしこ

2015年1月14日、2015年度予算が閣議決定された。この予算には、生活保護の住宅扶助・冬季加算の削減が含まれている。

これに先立って、1月9日、社保審・生活保護基準部会は、2013年10月からの議論と調査結果を報告書に取りまとめた。

報告書の内容は、どのように政策に反映されたのであろうか?

住宅扶助3.5%、冬季加算8.5%引き下げ
「聖域なき」2015年度予算案


第22回基準部会開始直前の様子。手前の二列は厚労省事務局
Photo by Yoshiko Miwa
 2015年1月9日の午後、社保審・生活保護基準部会(以下、基準部会)が開催され、一連の議論にもとづいて報告書を取りまとめた。この報告書は同日に公開された。

 報告書内には、住宅扶助については全く、冬季加算についてもほとんど、「引き下げが妥当」とする結論は書かれていない。冒頭の前文の最初の一文では、生活保護制度の意味が

「生活保護制度は、国家が国民に対し、人間らしい生活=健康で文化的な最低限度の生活を保障するナショナルミニマムとしての機能を担っている。それと併せて所得再分配機能やセーフティネット機能等を有しており、格差・不平等の是正や他制度等の補完・補充を果たす最終的施策として社会保障制度を基底から支えている」

 と再確認された上、

・国交省「最低居住面積水準(2007年)」の重要性
・生活保護世帯の住居の最低居住面積水準達成率が、一般世帯を大きく下回っていること(単身世帯では、生活保護世帯で46%、一般世帯で76%)
・住宅扶助は「住のナショナルミニマム=健康で文化的な最低限度の住生活の保障(筆者注:すなわち最低居住面積水準が充たされていること)」を可能にする必要があること
・冬季加算は、「冬季における健康で文化的な生活の維持」が可能な金額である必要があること

 など、基準部会委員たちが「重要」と合意を見た事項が列挙されている。しかしながらこの日、基準部会が終了した直後、まだ報告書が公開されていない時間帯に、「基準部会で引き下げ方針が決定された」と読める一部報道があった。


第22回基準部会には、在京TVキー局のほとんどとNHKのカメラクルーが取材に訪れていた。しかしNHK以外は、冒頭の「頭撮り」後はすぐ退出した Photo by Y.M.
 連休明けの2015年1月14日、2015年度予算案が閣議決定された。この予算案には、生活保護費の削減も含まれている。2015年度、住宅扶助と冬季加算は、それぞれ30億円削減されることになった。

 特に住宅扶助削減は今年度の30億円削減にとどまらず、2015年7月から2017年度までの足かけ3年間で、190億円削減される方針となっている。現時点で最新の2013年度実績では、住宅扶助は5384億円(国費分)であった。190億円削減は、3.5%減にあたる。

 冬季加算の方は、2014年度実績推計値356億円(国費分)に対して、30億円の減額は8.5%減となる。なお生活保護費負担は、国75%・各自治体25%となっているので、いずれも4/3を掛ければ、各自治体の負担分も含めた総額が判明する。

この閣議決定および予算編成に先立ち、2014年12月27日、「平成27年度予算編成の基本方針」という文書が閣議決定されている。この文書内には、

「強い経済の実現による税収の増加等と、聖域なき徹底的な歳出削減を一層加速させる」(1ページ)
「社会保障経費についても、いわゆる『自然増』も含め聖域なく見直し、効率化・適正化を図り」(2ページ)
「生活困窮者に対する自立支援の強化と生活保護の適正化に取り組むなど、徹底した効率化・適正化を行うことで極力全体の水準を抑制する」(2〜3ページ)

 とある。公的扶助に関わる経費(日本では生活保護費)・公債費・公務員の人件費は、先進国の多くで義務的経費となっており、日本も同様だ。「聖域なき見直し」という名の政策判断によって増減させることの可能な裁量的経費ではない。

 2015年度予算は、

・一般会計総額 前年度比0.5%増の96.3兆円
・社会保障費総額 前年度比3.3%増の31.5兆円(増加分は主に医療・介護)
・防衛費 前年度比2.0%増の4.9兆円

 となっている。社会保障費の中には、裁量的経費も含まれている。防衛費はもともと裁量的経費である。一方で義務的経費である生活保護費は、

・生活保護費総額 前年度比較2.1%増の3.0兆円 

 である。生活保護費に関しては、2013年度予算で決定された生活扶助削減が2013年8月より開始されているにもかかわらず、2013年実績の2.8兆円以後、増加が続いている。それは、生活保護利用者の増加が続いているからだ。「背景にある貧困の拡大に対して、有効な政策が実行されていないから」というしかないであろう(生活保護関連の予算額は厚労省の「平成27年度歳出概算要求書」による)。筆者は、しばしば生活保護利用者にぶつけられる「義務は果たさず権利(裁量権)ばかり主張」という非難を、政府に対してぶつけたい気持ちになる。

 第二次安倍内閣は、発足以後一貫して景気対策・産業振興・国防を重視している。その必要性と重要性は、もちろん筆者も大いに認めるところだ。しかし、国防の拡大・あるいは戦争を前提とした軍備までが真に必要であると認めるとしても、国内に貧困が拡大しており、低所得層も含めて個人も社会も「心身ともに健康」とは言いがたい状態を解消しないままで、産業振興や国防・軍備は機能しうるのだろうか?

基準部会は

「冬季加算は引き下げが妥当」と認めたのか?

 いまさら感はあるが、冬季加算の意味を再確認しておきたい。

 生活保護基準は、憲法第25条に定められた「健康で文化的な最低限度の生活(最低生活)」を実現するはずの金額である。しかし冬季には、光熱費・雪や強風への対策・防寒衣料等が必要不可欠なため、生活が圧迫されて最低生活以下になる。それを最低生活まで引き上げるために、冬季加算がある。

冬季加算に対しては、2015年度予算では30億円の引き下げが行われる。この根拠は、基準部会報告書の、

「2人以上の低所得世帯における冬季の光熱費増加支出額と冬季加算額を比較した場合、現行の冬季加算の地区区分では、I区を含む大部分の地区において、低所得世帯における光熱費増加支出額が冬季加算額を下回っていた」(報告書30ページ)

 に基づく、と考えられている。確かに、下記のグラフを見る限り、概ね、一般低所得世帯での冬季の寒冷による光熱費増加を冬季加算が上回っている。より高い所得階層との比較もあるが、この傾向は変わらない。


世帯人員による冬季の光熱費増加と冬季加算を比較したグラフ(第20回基準部会資料より)。2人世帯・6人以上の世帯を除き、現状の冬季加算は高すぎるかのように見えるけれども、どのような計算によっているのかに注意する必要がありそうだ。

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基準部会報告書45ページの表から作成した、2人以上世帯における所得階層別の冬季の月当たり光熱費増加を、同等の世帯構成に対する冬季加算額(第20回基準部会資料・12ページ)と比較したグラフ(筆者作成)。横軸は地域区分。直感的に「消費実態の方に、地域による差がなさすぎる」などの違和感を覚える。なお、地域区分については下記の地域区分の表を参照

現在の生活保護制度では、冬季の気候によって地域区分が行われている。しかし、たとえば北海道の中での冬季の寒冷の状況・積雪の状況の違いや、岩手県内での沿岸部と山間部での冬季の問題の違い(強風か、積雪か)は反映されていない

 数多くの生活保護世帯の暮らしぶりを実際に見ている筆者から見ると、この原因は極めて明らかだ。生活保護世帯の住居は概ね「安い・古い・不便」の全てを満たしている。建物自体の断熱性能も強度も、「快適」「安全」には程遠く、破損箇所があることも少なくない。このため、問題の少ない住居に暮らしている世帯に比べて、より多くの光熱費を必要とするのは当然であろう。

 生活保護世帯の住居の劣悪さは、基準部会報告書にも掲載されている。


民営賃貸住宅を利用している生活保護世帯の場合、世帯人員によらず、面積・設備とも国交省の「最低居住面積水準」の達成率は一般世帯に比べて劣ることが明確になった(基準部会報告書より)

災害時等に避難経路が確保されているといえる、幅4メートル以上の道路に接した住居に居住しているのは、生活保護世帯のうち38.0%。一般世帯では58.3%
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 さらに、「冬季とはいつからいつまでを指すのか?」という問題もある。現在の冬季加算は、11月〜翌年3月に支給されているが、寒冷により光熱費の増大する時期は地域によって異なる。また、「3月の暖房費は4月に請求され5月に支払われる」といった「カレンダー要因」の問題もある。これらの問題について、議論はされかけたが結論には至っていないまま、報告書は取りまとめられている。


生活保護世帯の13.8%は、腐朽・破損のある住居に住んでいる。パーセンテージでいえば一般世帯の11.3%と「大差ない」とも言えるが、民営賃貸住宅のみの統計であることに注意が必要。生活保護世帯で自家の保有を認められている場合、補修費用が十分でないため、さらに住宅の状況は劣悪となる場合が多い


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 なお、生活保護世帯の光熱費の高さが、生活保護世帯の住環境の劣悪さと関連している問題については、本連載第86回でレポートした第20回基準部会で、委員の園田眞理子氏(明治大学教授・建築学)より、

「(筆者注:生活保護世帯の最初の住宅の質は保障されているわけではなく、断熱性も低いことが多いため)初期値の状態が良い状態をキープされていないのを、月々のお金で辻褄を合わせる構造になっています。『そもそも』が良くないと、月々の追い銭、フローが大きくなります。そういう関係にあることを前提において、どうするか議論する必要があるのでは?」(筆者のメモによる)

 という指摘があった。

また1月9日の取りまとめの際、「生活保護世帯の光熱費は高すぎるということを基準部会が認めた」と取れなくもない文言を報告書に含めるにあたって、委員の岩田正美氏(日本女子大教授・社会福祉学)は、前回、2014年12月26日に開催された第21回基準部会において、

「実質的に冬季に暖房が使えなくならないような傍証が必要。(略)あとでとんでもないことが起こったら、私たちは責任を負うことができません。(略)現実的な消費量を取り上げていくことが大事。差額、そんなにないにしても。確証がほしいです」

 という懸念を述べた。これらの検討および発言は、基準部会報告書に、

「今回の検証結果を踏まえて冬季加算を見直すに当たっては、(略)留意事項を十分に踏まえつつ、生活保護受給世帯の健康に悪影響を及ぼすことのないようにする必要がある」(31ページ)

 として含まれている。留意事項には、冬季加算が万一引き下げられた場合に起こりうる問題が数多く列挙されている。

 筆者には、厚労省が「十分に踏まえた」結果として、冬季加算の引き下げを判断したとは、到底思えない。

劣悪さが明らかになった「生活保護の住」
それでも住宅扶助まで引き下げへ

 では、冒頭で述べたとおり、190億円の削減、3.5%減となる住宅扶助は、誰にどの程度適用されるのであろうか? 

 毎日新聞の報道によれば、引き下げは主に都市部で行われる見通しである。

生活保護:住宅扶助190億円減額 17年度、厚労省
毎日新聞 2015年01月11日 21時53分(最終更新 01月12日 00時59分)
(略)
(引用注:厚労省は)08年の総務省の住宅・土地統計調査などを検証し、支給額以下でも借りられる物件が地域によって市場の十数%あるとして都市部を中心に上限額引き下げが可能と判断した。
 ただし、緩和措置として、家賃の契約更新まで新たな上限の適用は猶予する。家賃が上昇している東日本大震災の被災地域などでは相場との比較で上限額を引き上げることもあるとした。(略)
 もし、一部地域では引き上げもありうることを考慮し、東京都の単身者に対する現在の上限額5万3700円が4%引き下げられるとすれば、5万1500円となる。現在でも、上限額の範囲で最低居住面積水準を満たす賃貸住宅を探すことは困難だが、さらに困難になるであろう。単身者を対象とした公営住宅は非常に少ないため、現状では「公営住宅に入居する」も解決策となりえない。

 2014年8月、基準部会は全国の福祉事務所に勤務するケースワーカーの協力のもと、「生活保護の住」の実態を調査した。生活保護全世帯の約10%をカバーする大規模な調査であった。この調査により、「生活保護の住」の貧困は極めて明確になった。このことは、基準部会報告書にも、

「生活保護受給世帯の住宅水準は、一般世帯(生活保護受給世帯を含む)に比べると、低くなっている」(11ページ)

「(筆者注:生活保護世帯の)最低居住面積水準の達成率は、単身世帯で 46%、2人以上世帯で 67%となっており、一般世帯(生活保護受給世帯を含む)の最低居住面積水準が、単身世帯で 76%、2人以上世帯で 86%となっているのと比較すると、大きく下回っている」(11ページ)

 と記述され、さらに

「以上のことから、生活保護受給世帯において、より適切な住環境を確保するための方策を検討することが必要である」

 とある。公営住宅の少ない現状でただちに実施できることは、住宅扶助の引き上げであろう。しかし、厚労省は「引き下げ」という判断を下した。

生活保護とは別立ての
困窮者に対する住宅施策の可能性は?


第22回基準部会には、社会・援護局長・鈴木俊彦氏も出席していた Photo by Y.M.
 一連の動きは、

「国交省が定めた『最低居住面積水準』という基準は、厚労省によって事実上『生活保護世帯に対しては適用しなくてよい』とされ、それを財務省と内閣が認めた」

 というチグハグな形になっている。「官僚制度自体が内部から破綻?」と考えてもよいところかもしれない。

 しかし、基準部会は、国費、すなわち税金を財源として行われている審議会である。予算ベースで約700万円(委員手当231万円・委員旅費348万円・厚労省庁費113万円 2014年度概算要求による)、当初予定になかった作業班による作業・実態調査を含めても、実績1000万円前後であろう。この「チンケすぎる」と言いたくなる予算の範囲でベストを尽くしたと思われる委員たちの発言から、将来のポジティブな展開につながりそうな発言を3つ紹介して、一連の基準部会レポートの結びとしたい。


開会直前、会話する道中隆氏(左)と宮本みち子氏(右)。宮本氏からは、ビッグイシュー基金による若者の住の貧困に関する調査に関しての言及もあった Photo by Y.M.
「戦後、社会保障が何もない時期に発足した制度。もっとスリムにすべきでは。住宅は国交省、教育は文科省。そういう制度設計の見直しという方向性も、ぼちぼちあっていいのでは」(道中隆氏(関西国際大学教授・社会福祉学))

「『自分はここに住んでいていいんだ』という安心感は、すべての人に必要です。それが社会的に包摂するということです」(阿部彩氏〈国立社会保障・人口問題研究所〉)

「(生活保護は)制度疲労しています。抜本的見直しが必要だと思います。(略・日本の豊かさを)維持するために、最も貧困な人たちに手当をしなくちゃいけないけれども、足りていません。やるなら『今でしょ』。外国から見た時に、日本、見習うものが何もありません。住宅政策、建設省と厚生省、今は国交省と厚労省に分かれている。(略)国交省が庶民的。厚労省が逆。米国では住宅局が一括。統合的にどういう仕組がよいのか、考えざるをえない時期。(略)市場家賃、ビッグデータ駆使でかなりのことがわかります。(略)PDCAサイクルを回すことは世界の常識です。国だから遅れていていいわけではなく、最先端ができるはず。待ったなしだと思います」(園田眞理子氏)

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