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日本曲者女優伝(芸一筋)コミュの八の巻・三好栄子さん

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明けましておめでとうございます。
今年もまた張り切って曲者女優語りを続けて参りますので
どうぞよろしくご贔屓のほどをお願いいたします。

さて平成20年度の初回は三好栄子さんのお話しをしましょう。
1963年に亡くなった女優さんですからほとんどの方はご存じないことでしょうが、
昭和20〜30年代の旧い邦画をお好みの方には
あのギョロ目と独特の口跡を持つ不思議な老女優の顔を
キット思い浮かべることができるのではないでしょうか。
二年ほど前にも小津作品の「お早よう」に出ていた変な女優はどういうヒト?
とあるマイミクさんから尋ねられたことがあり、
彼女のファンだったアリは歓んで知っている限りの一部始終を吹聴したことがありました。

現在ネットを調べても彼女のフィルモグラフィーだけは不完全ながら見られるものの、
彼女の映画履歴や顔写真などを見つけ出すことはできませんでした。
平成三年発行の「ノーサイド/戦後が似合う映画女優」(文芸春秋社刊)
という雑誌が手元にありましたのでそこから簡単な経歴を紐解けば、
明治27年(1984)に東京で生まれ、
ご主人が東宝のプロデューサーだったことから、
1946年の黒澤作品「わが青春に悔いなし」(東宝)で銀幕デビューと記載されています。
なんと御齢52歳で映画に初出演された訳ですからまさに遅咲きの女優さんではあります。
それまでの芸歴とかが不明なため映画に出る前は
どのような生活をしていたのかが全く分かりませんが、
そのお歳でいきなりデビューしてあれだけ凄い演技ができるのであれば
誠に大したものだと驚くばかりです。
なにしろ二作目か三作目でもう黒澤作品「野良犬」で淡路恵子の母親に扮し、
後年彼女が得意としていたオドオドイジイジした名演を見せて呉れていたのですから・・・
(写真左はその「野良犬」からの1シーンです。)

今で言えば樹木希林風の焦点が定まらないギョロ目と歯並びが悪い出っ歯顔・・・
小柄でもガラガラ声は大きくて不思議なエロキューションを持ち、
死に損ないの弱々しい婆さんを演じていたと思ったら、
次にはガラッパチで意地の悪い姑役をいかにも憎々し気に演じている。
かと思えば「カルメン純情す」(1952松竹)では口髭がうっすら生えた女性代議士を熱演し、
「大当たり三色娘」(1955東宝)ではモダンな洋装姿の金貸し婆々を怪演する。
稲垣監督三船主演の「宮本武蔵三部作」ではあのお杉婆々の見苦しさを惜しげもなく曝し、
黒澤作品にはほぼ常連のように顔を出す・・・
まさに八面六臂の活躍振りで彼女が出てこない邦画のスクリーンは
なんだか淋しく感じられるような具合でした。
(写真中は「大当たり三色娘」の洋装姿、右は「どん底」での瀕死の姿です。)

黒澤作品「どん底」のヨレヨレの死に損ない婆さん役を下の動画で観てみましょう。
息も絶え絶えながら巡礼役の左ト全に愚痴る姿は
まさに彼女の真骨頂を発揮しているといえます。
<video src="2522754:dd0d593e7b524c67e4c961ba4f3c1787">

上の雑誌「ノーサイド」では脚本家の石堂淑朗氏が彼女のエピソードを披露されていますが、
それによると普段の彼女はいかにも控え目で礼儀正しく、
大人しく気が小さくて全く目立たない存在なのに、
いざ演技の段になると瞬間的に沸騰して想像を絶する物凄い迫力を発揮するという
本物の彼女とそれが化けて演技する偽物の彼女との落差が極めて激しい女優さんであり、
化けるという演技の原点を失った今どきの俳優にとっては
誠に怖く感じられる存在であったそうです。

とにかく当時の彼女は邦画界を席巻し捲っており
例えば1957年には以下の17本もの映画に出演しています。

蜘蛛巣城(東宝)..城の老女
正義派(松竹大船)
御用聞き物語(東宝)...シズ
雪国 (東宝)...師匠
東京暮色(松竹大船 )... 女医笠原
山鳩 (東宝)... 浅間教巫子
ひかげの娘(東京映画)... おつた
地獄花(大映京都)... 白女の姥
忘却の花びら 完結篇 (東宝)... おこま
大当り三色娘 (東宝) ... 金貸し婆々
東北の神武たち (東宝)... おかね婆
どん底 (東宝)... あさ(鋳掛屋の女房)
女殺し油地獄 (東宝)... 母 さわ
気違い部落 (松竹大船)... 野村お三重
その他智恵子抄(東宝)、黒い川(松竹)、歌う不夜城(東宝)

そしてこれらの映画の半数以上は今でも日本映画史に残る名作揃いなのですから、
いかに彼女が日本映画に貢献していたかがお分かりいただけることかと思います。

そんな彼女も働き過ぎて体力を消耗し尽くしたのか、
1959年に日本版シラノの「ある剣豪の生涯」で出雲の阿国役を怪演し、
同年の「野獣死すべき」を最後の出演作に残した後
1963年に69歳の若さで逝去されてしまいました。
僅か13年の短い女優生活に残した名作の数々は今でも日本映画史上に燦然と輝いています。

コメント(13)

本当に怪優というのはこの人のことを言うのでしょうね。
<お早う>で押し売りを追っ払うシーンはすごかったから、
その知り合いの方がびっくりするのも当たり前でしょうね。
この方映画デビュー前は、演劇の世界で大活躍されたようで
なんとスタートはあの松井須磨子さんと関係があったという
すごい人のようです。ですから映画の前は40年ぐらいは
演劇界の隠れた大物だったわけです。もしよろしければ
こちらが持っております<日本映画俳優全集>のコピーを
お送りしましょうか?2ページ近くにおよぶ記載があります。
追記です。
彼女が映画に入る前に属していた劇団は
新国劇  第一劇場  新声劇  芸術座などだそうです。
たしか以前何かで読んだ記事に、彼女が映画に入るときに
関係者に「私みたいなブスな女も必要でしょう!」と言ったとか。
画像は昭和32年松竹映画「正義派」(渋谷 実)から
プロフィールはなかなかじゃないですか。
ハンバーガー
はじめてお邪魔いたします。

昭和32年といえば、あたくしが生まれた年でございまして。

この方のお顔どこかで拝見したことがあるようで。これだけの名画に出られておられるのでしたら、恐らく、脳裏に焼きこまれておりますのでしょう。

演劇に長く身を置きながら、映画でその異彩振りを発揮するというパターンの女優さんとしては、
やはり、白石加代子さんの市川作品の一連が、現代のそれでございましょうか。

仕事で、白石さんの舞台で全国をご一緒しましたが。
あのおどろおどろしい演技をこの人がするのかと、本当に想像が出来ない良妻賢母のカガミとも見まごう家庭的で良識のあるご婦人であられます。

PARCO劇場で暮れまで、大竹アンポンタンと「ビューティー・クイーン・オブ・リナーン」という翻訳モノに主演されておられました。
☆朝風呂さん
貴重な情報をどうもありがとうございます。
やはり新劇での下地があったのですねぇ・・・
それでなくてはいきなりあんな凄い演技をできる筈がありません。

こういうコミュを生意気に書く以上は
そうした全集ものを持っている必要がありますねぇ。
前にも書いたように折角大枚をはたいて入手した
キネ旬社の女優全集を手放してしまったことが今でも悔やまれます。
教養文庫から出た「日本映画俳優全史」は文庫本で邪魔にならないから
手元に残してあるのですが、
それを見ても三好栄子さんは載っていないのですよぅ・・・
折角の機会ですからなんとかその手の書籍を探してみたいと思っています。

オマケにもう一つ彼女の写真を追加しておきます。


ハウツリー・ラナイさん
カキコをどうもありがとうございました。
三好栄子さんは一度見たら絶対に忘れられない顔をしていますから、
多分御大の記憶の中にも刻まれていることと思いますよっ。

白石加代子さんは最近ではあまり映画には顔出ししていませんね。
ワタシは『細雪』での変に色っぽい女将役が大好きでした。
三好栄子さんこそ曲者と呼ぶにふさわしいですね。いつも名前をタイトルに見つけると嬉しくなってしまいます。顔を見ただけで得した気分。
強烈だったのはやっぱり『お早よう』!杉村春子と怖いもの知らずで、最強の母娘でしょうね。
『カルメン純情す』の熊子女史もスゴかった。主演のデコちゃんも翳むくらい映画を浚ってました。こっちの淡島千景も桁外れの蓮っ葉娘だから最強母娘?2!
それにしてもこれヘンテコな映画でしたね。東山千栄子がお手伝いさん役というのもビックリで、しかも捻くれた性格にミョウチクリンな服装だし。

同じ淡島さんの母親でも『夫婦善哉』では哀しみが身に沁みる好演で、この路線では『おかあさん』も消え入りそうな哀れさ。
小津の『東京暮色』では堕胎医でシリアスな演技でしたし、ただのモーレツ婆さんじゃないですね。


takaまっすぃさん

『カルメン純情す』は公開当時には観ていなくて、
最近になってTV放映を観たのですが、
三好栄子が猛烈な役を演じていたのにはビックリしてしまいました。
あの強烈な目を剥いての猛女役や、
貧相で哀れっぽい老婆役を交互に演じては、
場面をさらっていたのですから、
まさに曲者女優の鑑みたいな方でした。

いつもいかに日本映画を見ていないか痛感されます・・
が、よく考えたら松竹映画であれば”君の名は”あたりの時代のはすぐとなりの映画館を遊園地代わりに”ニューシネパラ”のトト少年なみに、毎日ただで出入りして総て見ていたはずなんですけどね・・。
 東宝映画はすっかり少年になって”駅前シリーズ”や”姐ちゃんトリオ”の時代にいっぱい見たんですけどね・・大映でいえば大作”釈迦””秦の始皇帝”(本郷功次郎が好きでしたね。やっぱ色黒で東南アジアぽいですね 笑)とか雷蔵は眠狂四郎より陸軍中野学校シリーズが好きでした。
Shwujiさん

ワタシも子供時代は映画館が遊び場でした。
親から10円貰って映画館へ行けば、
それだけで朝から晩まで三本立てを繰り返して楽しむことができましたもの・・・

本郷功次郎は可愛くて清々しくて凛々しくてセクシーでしたねぇ。
「嗚呼江田島」なんて戦記物での軍服姿は特に素敵でしたっ!
大映映画は専ら長谷川一夫ばかりを観ていたせいか、
カツシンと雷蔵はあまり好きにはなれませんでしたわっ。
三好栄子さんでは『どん底』『東京暮色』が印象的ですが、
ワンシーン出演の『猫と庄造と二人のをんな』も忘れられません!

山田五十鈴がかつて奉公していた芦屋か神戸かの裕福な令夫人役で、
セリフも少ないのですが、その鷹揚なムードの面白味ったらexclamation ×2
普通なら細川ちか子あたりがやるような役柄を、
三好さんが鹿鳴館ばりの衣装で演じるのだから、
場面をさらってしまうのは当然ですね。
ショウゴさん

『猫と庄造と二人のをんな』はワタシもビデオを持っています。
山田五十鈴と香川京子の女の争いが猛烈な豊田四郎監督作品ですねっ。

この映画の三好栄子の澄ました顔には随分笑ってしまいました。
ホントに死に損ないから令夫人まで
色んな役をこなした女優さんでした。



このところ立て続けに、レンタルで観た映画に三好栄子さんを発見exclamation ×2

先週は『白痴』、先々週は『夫婦善哉』、その前は『蜘蛛巣城』と、
毎週三好さんの様々な演技を楽しめました。

『夫婦善哉』以外は出演されているのを知らなかったので、
なんだか得した気分です。わーい(嬉しい顔)
それにしても、『白痴』では娘役が千石規子さんとは驚き!あせあせ(飛び散る汗)
ショウゴさん

先日BS2で放映した
黒澤の『生きる』にも出ていましたっけ・・・

しかし三好栄子と千石規子が親娘役とはねぇ。
『白痴』はDVDを持っているのにまだ観ていないから
早速観なくてはなりませんっ!

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