ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

私的文章倉庫コミュの気持ちの天秤

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
懐かしい夢を見た。


一時だが、付き合っていた女性との思い出。
多分、彼女の記憶はそれ一つきり。


----------------------------

一緒にコーヒーを飲んでいた。

安穏な夕暮れ時、彼女はいつもの様に角砂糖を積み上げてピラミッドを作っていた。

カップを挟んで右と左。
ピラミッドは三段を数え終わっていた。


「…ねえ。」

視線を合わせずに呼ばれた。

「私が右、あなたが左。」

そう言って、向かい合わせの僕と角砂糖を指差した。

「私…、気持ちって量が決まってると思うの。」

『気持ち?』

「[好き]の気持ち。」

言いながら彼女はピラミッドを立方体に積み直した。

「100%から始まって、何かあると減っていくの。」

まだテーブルを見つめたままで、右の角砂糖から二つをコーヒーに落とした。

「片方が軽くなると、多い方が分けようとして自分を削るの。」

左の四角から一つ右へ移した。

「…これがずっと続くと、どうなると思う?」

テーブルに置いた腕に顔を埋めて、まるで居眠りをしているみたいな彼女。

『…いつかは無くなるね。』

伏したまま、

「片方は減る。片方は削られる。
…言い換えると、片方は嫌いになっていく。
片方は、好きなのに諦めていくの。」

目の前で右の山が崩され、たった一欠片、ポツンと残されていた。

『無くなったら、足せないの?』

僕の問いに、彼女はカップを傾けて見せた。



「…溶けて無くなったものは、二度と戻りはしないの。」



答え終わると、中身をそのままに、彼女は飲まずに席を立った。


----------------------------



後味の悪いコーヒーだった。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

私的文章倉庫 更新情報

私的文章倉庫のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング