勝又公仁彦(邦彦)は、そのキャリアのスタートから、夜間における長時間露光で都市景観や自然を撮影することをその主たる手法としてきました。 また、スクラップ&ビルドなどによって新陳代謝し揺れ動く都市の稜線と、めまぐるしく変転する空を大判カメラによってパノラマ状に切り取る『Skyline』などの作品で注目されてきました。 いずれにしましても、被写体は光や大気、建造物によって移り変わっても、撮影する主体は安定した大地と三脚で支えられて不動であるという前提によった作品を発表してきました。 しかし、東日本大震災後に開始された『cities on the move』と銘打たれた本作品では、その前提を根底から崩し、撮影者自体が動いている乗り物に身を置き、三脚を立てずに手持ちで長時間露光を行なっています。そして、撮影者が動くことで発生する複雑な移動線を定着させています。 被写体は認識できずストライプ状の紋様、あるいは抽象絵画のようにも見えます。しかし、そこには確実に移動する撮影者によって引き延ばされた被写体の時間と空間が定着されており、見分けのつかない何かは知覚を刺激し、鑑賞者は僅かな手がかりを頼りにそこに何かを見ようとします。定着されたストライプ紋様は、知覚と認識の揺らぎそのものといえるでしょう。 DVDではフラッシュライトのように作品を明滅させることで、鑑賞者に僅かなサインを喚起させ、揺らぐ知覚と認識のモビリティに誘い込みます。 新たに勝又公仁彦が開いた知覚の扉をご覧下さい。