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朗読用の物語のひろばコミュの新・西遊記「飛翔号の冒険2ー預言者」

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(まえがき)
今から約2500年前、
地球から1万光年ほど離れているある惑星から、
聖人の智は、ブッダになったお釈迦様に会い、修行するために、
「飛翔号(ひしょうごう)」で、地球のインドを目指します。
---
飛翔号(ひしょうごう) : 小型の超光速宇宙船
---
智(とも): 男性、32歳、聖人
勇(ゆう): 男性、29歳、船長
恵(めぐ): 女性、18歳、操縦士
凛(りん); ホログラム、24歳、コンピュータ
蘭(らん): アンドロイド、1歳(11歳児ぐらいの精神年齢)
             、ロボット
---
信(しん): 男性、33歳、『岩(いわ)の惑星』の預言者
---
「預言者」では、預言者・信(しん)と交流する物語で、
パート2です。

コメント(7)

「飛翔号の冒険2ー預言者」 第1話 誤解

 今、宇宙船の飛翔号(ひしょうごう)は、『岩の惑星』の周回軌道上を静かに飛んでいます。
 ラウンジには、智(とも)、勇(ゆう)、恵(めぐ)、そして、ホログラムの凛(りん)とアンドロイドの蘭(らん)がいます。

 ***

凛「飛翔号の修理に、二日(ふつか)ほどかかります」
勇「じゃ、その間、この惑星で、休暇というのは、どうだい?」
蘭「パパー。嬉しいなー」
智「仕方ないですね」
恵「でも、勇様がいないと、修理できないんじゃありませんか?」
勇「いや、凛さえいれば、修理できるでしょう」
凛「はい。
  ほとんどがソフトウエアの修復ですから、
  私ひとりで、可能です」
勇「ほーら、見ろ」
智「では、飛翔号の修理が終わるまで、
  この惑星で、休暇を取りましょう」
勇「そう、こなくっちゃ!」
智「勇。
  ここの住民へのコンタクトには、気を付けてください。
  ……
  この惑星は、『巨石文明』を築いていますが、
  まだ『火の時代』です。
  その上、『象形文字』ができたばかりなんですよ」
勇「分かった。
  コンタクトしないように、気を付けるよ」
蘭「私が、見張っている」
勇「はぁ?」

 ***

 飛翔号は、『岩(いわ)の惑星』の自転と同じ速度で、周回軌道上を静かに飛んでいます。
 そして、飛翔号の真下から、『光エレベーター』が、惑星の地表に向かって、延びていきます。

 ***

凛「真下は、岩だらけですから、
  この惑星の住民は、寄りつきません」
勇「かなりへんぴな所だね」
蘭「ぼうけん!ぼうけん!ぼうけん!」
勇「まぁ、いいか」

 ***

 勇と蘭は、『光エレベーター』を使って、岩場に降りていきます。
 ……
 ちょうどその頃、
 『岩(いわ)の惑星』の預言者・信は、『聖なる岩場』でしていた瞑想を止(や)めると、立ち上がり、遠くを見つめています。
 なんと、そこには、空から地表に向かって、一筋(ひとすじ)の光の帯が現れ、その中を、ふたりの人物が降りてくるのが見えるんです。
 信は、「神様?」とつぶやき、ふたりが降りてくる場所に向かって、走り出します。
 ……
 ようやく、信は、ふたりの目の前に、飛び出します。
 その時、
 勇は、ちょっと離れたところで、うしろを向いていて、信は、蘭と向き合います。

 ***

蘭「おじさん、なに?」
信「このお方は?」
蘭「パパだよ」
信「パパ?」
蘭「うん。
  私を創ってくれたパパなんだ」
信「え?
  あたなを創ったのですか?」
蘭「うん、そうだよ。
  パパが、人間に似せて、私を創ってくれたんだよ」
信「えーっ!
  じゃ、神様ですか?」
勇「えっ?
  誰だい?」

 ***

 勇が振り返り、信と向き合います。

 *** 

勇「おっと、こりゃ、まずい」
信「お、お待ちください。神様!」
勇「『神様』って、俺のことかい?」
信「はい。
  このお嬢さんを創られたんでしょう?」
勇「えっ?
  『お嬢さん』って、蘭のことかい?
  うふふ。
  お嬢さんねぇ」
蘭「わ〜い、お嬢さんだぁ〜」
勇「まあ、人間に似せて、俺が創るには創ったんだが、
  俺が、『神様』ってことは、ないんじゃないかな」
信「いえ。
  なんと奥(おく)ゆかしい神様なんでしょう。
  ……
  申し遅れました。
  私は、信(しん)です」
勇「俺は、勇だ。
  間違っても、神様じゃねーよ」
蘭「はじめましてだよ。
  私、蘭」
信「はじめまして。
  ……
  神様は、自分のことを『神様』とは言わないという
  予言書が残っています」
勇「はぁ?」
信「私は、『聖なる岩場』で、
  『神様』の言葉を聴きたかったんです。
  そこで、瞑想をしていました。
  ……
  3日(みっか)が、経ちました。
  その時、
  目の前に、あなた様が、光と共に降りてきたんです。
  ……
  神様!
  どうか、私をお導きください」
勇「はぁ?」

 ***

 勇は、信に、『神様』と誤解されて、岩の上で立ちすくんでいます。
 蘭は、面白そうに、勇と信を、交互に見つめています。

2007/8/13〜14・志村貴之
「飛翔号の冒険ー預言者」 第2話 説得

 勇は、とても困っています。
 『岩の惑星』の住民・信に会ったことが、智に知られれば、きつく叱られることになるでしょうし、なによりも、信に、『神様』と誤解されていることが、落ち着かないのです。
 そんな中で、勇は、智の言葉を思い出しています。

 ***

勇「あ、そうだ。
  信に、質問してもいいかな?」
信「はい。なんなりと」
蘭「私も、いいよ」
勇「え?
  今は、蘭は、いいんだ。
  ……
  えーと、
  ……
  信は、ここで、『神様』の言葉を聴きたかったんでしょう」
信「はい、そうです」
勇「でも、ちょっと変だな?」
信「『何』が、でしょうか?」
勇「いいかい?
  よーく聴いてくれよ。
  『嘘をつかないこと。
   そして、正直に考えて、答えること』
  信は、これができるかい?」
信「はい!
  できます!」
勇「よーし。
  じゃ、聴くよ。
  信は、『予言書』の内容を疑っているんだろう?」
信「え?
  『疑っている』なんて?」
勇「じゃ、どうして、
  ここで、『神様』の言葉を聴こうとするんだ?」
信「はい。
  ……
  お許しください。
  正直に言います。
  ……
  『違和感』があるんです。
  ……
  『唯一絶対の全知全能の神様』なのに、
  『予言書』の中の神様は、厳(きび)しすぎるんです。
  いや、厳しいのは、いいんです。
  『違和感』を感じるんです。
  ひょっとしたら、
  預言者が、神様の言葉を聴き間違えているじゃないか?
  ひょっとしたら、
  時代が経って、『予言書』を書く時になった時に、
  預言者の言葉を、正確に書かなかったのではないか?
  ……
  それゆえ、
  私は、改めて、神様の言葉を聴きたかったのです」
勇「それって、
  『罪』になるんじゃ、ないのかい?」
信「そうですね。
  『予言書』を信じていないのですから、
  『罪』になります」
勇「いいのかい?」
信「民(たみ)が、苦しんでいます。
  民の心が、荒廃しているんです。
  にもかかわらず、
  指導者も、それに聖職者までもが、
  自己保身に生きているだけなんです。
  ……
  『予言書』を信じているだけでは、
  民は、救われません」
勇「でもな、それじゃ、
  あんたが、処刑されるんじゃないか?」
信「そうかもしれません。
  でも、
  もう1度、『神様』の言葉を聴きたいのです。
  もう1度、『神様』の真意を知りたいのです。
  ですから、
  これが、実現できたら、
  処刑されても後悔しません」
勇「ほほー、
  そこまで、覚悟しているんだ」
信「はい」
勇「うーん。
  ……
  残念ながら、俺は、『神様』ではないんだなぁ」
信「それは、……」
勇「まぁ、待ちな。
  もともと、『神様』は、いないんだ」
信「『いない』って、そんなことはないです」
勇「でもな。
  ここの民が、信じている『神様』は、いなんだ。
  ……
  しかし、信が信じている『神様』なら、いるかもしれないよ」
信「え?
  どういうことですか?」
勇「俺は、この宇宙を旅しているんだがねぇ。
蘭「私も、一緒に、旅しているんだよ」
信「『宇宙』ですか?」
勇「そうだ。
  旅の中で、いろいろな世界を見てきたんだ。
  ……
  中には、
  全面戦争になった世界もあったんだよ」
信「『全面戦争』ですか?」
勇「その世界では、2つの民族が、
  『唯一絶対の全知全能の神様』を信じているんだ」

 ***

 勇は、信に、その時の状況を説明します。
 ……
 両者では、『神様の名前』が、違うこと。
 預言者が伝える『神様の教え』も、かなり違うこと。
 お互いに、相手の『宗教』の勉強を禁じていること。
 勉強すると、『罪』になること。
 ……
 両者の間で、2000年以上、争(あらそ)っていること。
 ことごとく調停は、失敗に終わり、もはや修復できないところまできたこと。

 ***

勇「その結果、
  俺たちが、そこを通りかかった時には、
  『全面戦争』が、始まろうとしていたんだ。
  ……
  信!
  よーく、聴くんだ!
  両者は、『唯一絶対の全知全能の神様』を信じていて、
  お互いに、相手の『神様』を否定していたんだ。
  ……
  ここでも、こんなことが起きるよ」
信「いえ、もう起きています。
  ただ、まだ『全面戦争』には、なっていませんが」
勇「でもな、
  あと、1000年や2000年経つと、
  『全面戦争』が起きるかもしれないよ」
信「そうかもしれません。
  では、どうすれば、……?
  あっ!
  『神様』は、いるんですね?」
蘭「ブッダが、いるんだよ」
勇「そうなんだ。
  この宇宙に、ブッダが生まれたんだ」
信「『ブッダ』って、『ブッダ』って、
  なんですか?」
勇「もちろん、俺のことじゃないぜ」
蘭「そうそう」

  ***

 信の目が、輝いています。
 
2007/8/19〜20・志村貴之
「飛翔号の冒険ー預言者」 第3話 招待

 ついに、勇は、信を智に会わせる決心をします。

 ***

勇「信。
  空(そら)には、俺の仲間がいるんだ」
信「神様ですか?」
勇「いや。
  あくまでも俺の仲間だ」
蘭「私の仲間だよ」
勇「そうなんだ。
  俺と蘭の仲間だ。
  そこに、俺よりブッダに詳しい仲間がいるんだ」
信「あっ!
  会わせてくださいませんか?」
勇「ちょっと問題があるんだが、
  なんとか信が会えるように、頑張ってみるよ」
信「えっ?
  そんなに大変なんですか?」
勇「まぁ、ちょっとな」
蘭「そうなんだよ〜」
信「はぁ?」

 ***

 勇は、蘭と一緒に、『光エレベーター』に乗って、飛翔号に戻ると、智と恵とホログラムの凛に、信とコンタクトしたことを説明します。

 ***

智「困りましたね」
勇「信は、真剣だぜ」
恵「ごまかすことができそうもないんですね」
蘭「信を、ここによぼうよ」
恵「え?」
智「そうするしか方法がないようですね」
勇「いいのかい?」
智「お叱りは、この件が、終わってからです」
勇「そういうこと?」
蘭「私も?」
智「そう。
  蘭も、あとで、お叱り」
凛「準備が、できました」

 ***

 勇と蘭は、信を迎えるために、『光エレベーター』に乗って、岩場に降りていきます。
 岩場に着くと、『光エレベーター』に乗っている勇と蘭の横に、信が、おそるおそる乗り込みます。
 『光エレベーター』は、徐々に上昇し始めます。
 それにともなって、信の眼下では、徐々に世界が広がっていき、最後には、球形の惑星になっていきます。
 信は、その光景に驚いています。
 ……
 そして、
 『光エレベーター』が、飛翔号の船内に到着します。

 ***

信「なんと?
  ここは、天国ですか?」
勇「いいや。
  これは、宇宙を旅する船の中だ」
蘭「信、下を見て」

 ***

 下の窓から、『岩の惑星』が見えています。

 ***

蘭「信が住んでいる惑星だよ」
信「丸い!」
蘭「そうなんだ。
  どの惑星も、丸いんだよ」

 ***

 ここにきて、
 ようやく、勇は、智と恵に、信を紹介します。
 信へ説明が難しいので、ホログラムの凛は、姿を隠しています。
 ……
 勇に促(うなが)されて、智が信に話しかけます。

 ***

智「この宇宙で、ある生命が、ブッダになったんです」
信「『ブッダ』って、何ですか?」
智「『ブッダ』の意味を
  信に説明するのは、とても難しいです。
  今は、『生命としての最高の智慧(ちえ)者』
  と考えてください」
信「『最高の智慧(ちえ)者』ですか?
  では、『神様』ではないわけですね」
智「そうです。
  『ブッダ』は、『神様』ではありません」
信「では、『神様』と『ブッダ』とは、
  どこが違っているんですか?」
智「多くの世界で、人々は、苦しんでいます」
信「はい。
  私の世界でも、苦しんでいます。
  他の世界でも、同様なのですか?」
智「支配される民族は、もちろん苦しんでいますが、
  支配する民族も、苦しんでいるのです」
信「それは、『神様』を信じていないからではありませんか?」
智「うーん。
  それは、違うでしょうね」
恵「私の世界にも、『神様』は、いました。
  でも、
  『唯一絶対の全知全能の神様』ではありませんでしたが」
勇「俺の世界でも、
  『唯一絶対の全知全能の神様』じゃ、なかったね」
智「いろいろな世界を見てきて、分かったことですが、
  とてつもない『苦しみ』をいだく民族に、
  『唯一絶対の全知全能の神様』が、生まれているんです。
  国を追い出されて、
  国を持たず、
  支配されて、
  奴隷のような、
  生活を強(し)いられている。
  そのような生活が、何千年も続いている。
  そこでは、民族の一貫性を保っていけません。
  そんなどん底の状況の中で、生まれたのが、
  『唯一絶対の全知全能の神様』です」
信「『どん底』ですか?」
智「そうです。
  どんな苦しい生活が続いても、
  『どん底の苦しみ』がない所では、
  『唯一絶対の全知全能の神様』は、生まれていないんです。
  ……
  また、
  『唯一絶対の全知全能の神様』は、その民族の神様です。
  そのため、
  その民族の多くでは、時代と共に、
  他(た)の民族を、攻撃し、侵略し、命を奪ってもよい
  という解釈が生まれていきます。
  自分たちには、『神様』の後ろ盾があると信じていますから、
  躊躇(ちゅうちょ)しません。
  むしろ、
  正しい戦(いくさ)となるんです。
  聖戦(せいせん)となるんです」
信「私たち民族も、その道を歩んでいるんでしょうか?」
智「信は、そう感じているんじゃありませんか?
  だからこそ、
  もう1度、『神様』の真意を知りたいんでしょう?」
信「そうです。……そうなんです!」

 ***

 信は、智に、真剣に訴えます。

2007/8/23〜24・志村貴之
「飛翔号の冒険ー預言者」 第4話 救世主伝説

 飛翔号の修理が終わるまでの一泊二日、信は、飛翔号に泊まります。
 そして、その間、智は、信に、注意深く、いろいろな話をします。
 『無常』や『無我』の話もしますが、中心は『神様』の話です。

 ***

智「信。
  まず、『唯一絶対の神様』から、考えましょう。
  ……
  『唯一絶対の神様』が、存在するなら、
  それは、特定の民族の『神様』なんでしょうか?」
信「え?
  はい。
  今までは、そう思っていました」
智「では、
  今は、違うんですか?」
信「はい。
  今は、違います。
  私が今まで感じていた『違和感』が、ここにあったと、
  はっきり分かりました。
  『唯一絶対の神様』は、
  誰にとっても、どんな生命にとっても、
  同じ『神様』のはずです」
智「そうです。
  その通りです。
  人間には、どんな人間の命を奪う権利はありません。
  もちろん、どんな生命の命を奪う権利もありません」
信「そうか。
  命を奪う権利は、『神様』だけが持っているんですね」
智「そうです。
  虫一匹であっても、人間には、その命を奪う権利はないのです。
  もちろん、
  『神様』が、むやみに人間の命を奪うはずはないのですが」
信「そうですよね」
智「ですから、
  人間が、ほかの生命の命を奪うならば、
  自分の命の権利を放棄したことになります」
信「はい!」
智「簡単に言えば、
  『殺されても、殺してはいけない』
  ということです」
信「はい!」

 ***

 信は、智の言葉をしっかり受けとめています。
 ……
 また、智は、信に、こんな話をします。

 ***

智「では、次に、『全知全能』について、考えましょう。
  ……
  神様が、『全知全能』であるならば、問題が起きます」
信「え?
  『全知全能』が問題なのですか?」
智「そうです。
  神様が、『全知全能』であるならば、
  なぜ、人間は、不完全なのですか?
  なぜ、『苦しみ』があるのですか?」
信「それは、……」
智「神様が、『全知全能』であるならば、
  『苦しみ』は、神様が創ったことになります。
  そうなると、
  人間に、『道徳』がなくなります。
  人間が、良いことをしても、悪いことをしても、
  神様の気分次第で、『苦しみ』が決まるのですから」
信「しかし、……」
智「『道徳』がなくなれば、『信仰』もなくなりますよ」
信「そうか。
  今、民に起きている『心の荒廃』は、
  『全知全能』が原因なのですか?」
智「そうでは、ありませんか?
  ……
  聖職者が、『道徳』維持のために、
  神様への『信仰』を勧めていますが、
  神様が、『全知全能』では、この矛盾は消えません。
  ……
  そこで、聖職者は、
  『神様に、疑問を持ってはいけない』
  『預言者に、疑問を持ってはいけない』
  『疑問を持てば、罪になる』
  と、言うことになるんです。
  ……
  永遠に、堂々巡りになっているんです」
信「しかし、……」

 ***

 凛は、智に、飛翔号の修理が終わった事を告げます。
 最後に、
 智は、信に、『ブッダ』の話をします。

 ***

智「信は、『神様』は、存在すると思っているでしょう?」
信「申し訳ありませんが、
  この宇宙を創った『神様』は、存在すると思います」
智「そうですか?
  それも、一つの道ですね。
  私だって、
  『ブッダ』が存在するかどうかの確信がないんですから」
勇「えーっ?」
恵「そうなんですか?」
智「私の先生は、『ブッダ』が現れたと言っています。
  しかし、先生は、ご高齢のために、
  私に、旅を命じたのです。
  もちろん、先生が信じている『ブッダ』を、
  私は信じていないわけではありませんが、
  どんな存在かは、分かりません」
信「まったく、分からないんですか?」
智「いいえ。
  推測はつきます」
勇「どんな?」
智「うーん。
  ……
  この宇宙の生命は、常に『苦しみ』をいだいています」
信「え?」
智「そうなんです。
  転生輪廻して、たとえ天国に生まれかわったとしても、
  『苦しみ』をいだいています。
  信。
  残念ながら、天国に行っても、『苦しみ』をいだきます。
  生命である限り、神様も、『苦しみ』をいだいているんです」
信「『神様』も?
  そんな馬鹿な?」
智「本当に、『そんな馬鹿な?』ですよね。
  私の先生も、ショックを受けていました。
  そこで、先生は、この『苦しみ』から、
  ずーっと『脱出』する方法を考えていました。
  その中で、生まれた技術が、『ブッダセンサー』です」
勇「その『ブッダセンサー』が、ブッダの存在を示したわけだ」
信「では、
  ブッダは、生命がいだく『苦しみ』から、
  『脱出』したんですか?」
智「そうなんです。
  ブッダは、神様すらできなかった『道』を歩んでいます。
  たぶん、
  その『道』は、修行方法として、弟子達に伝えているんじゃ
  ないでしょうか?」
勇「しかし、『修行方法』は、ないかもしれないよ」
智「うふふ。
  そうですね。
  『修行方法』は、あると思っていますが、
  ない可能性もありますね」
勇「ほーらみろ」
智「しかし、ブッダに会えば、すぐに分かりますよ」
勇「諦(あきら)めないんだ」
智「はい!」
恵「私も、諦めません!」
蘭「私も!」
勇「はぁ?」
信「『全知全能』ではないかもしれませんが、
  この宇宙を創った神様は、存在するのではありませんか?」
智「そうですね。
  ブッダは、この宇宙を創った神様ではありません。
  ひょっとしたら、
  この宇宙を創った神様は、存在するかもしれません。
  ただし、その神様を見た者は、誰もいませんが。
  ……
  信。
  その道を歩むのなら、注意深く歩んでください」
信「はい。
  私の人生は、この惑星に生きる民と共にあります」
勇「本当に、気を付けなよ」
蘭「信なら、大丈夫」
信「ありがとう……みなさん!
  智。恵、そして、勇、蘭。
  私は、
  あなた方を、『神様の使い』だ
  と信じています。
  迷える私に、
  『神様の福音(ふくいん)』」をもたらしたのですから」

 ***

 信は、『光エレベーター』に乗って、岩場に降りていきます。
 その時、信を探しにきた仲間のひとりが、その様子を見つめています。
 まさに、空から地表に向かって、一筋(ひとすじ)の光の帯が現れ、その中を、信が降りてくるのを見ているんです。
 ……
 この直後から、
 『岩の惑星』では、信は、『預言者』となります。
 そして、
 この時から、信の『救世主伝説』が、始まったんです。

2007/8/29,30,9/3,4・志村貴之

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