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登記の勉強と情報コミュの否認の登記

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破産法による否認の登記
2010年7月10日 5:51月末案件で「破産法による否認の登記」を初めて経験しましたので、
自分の備忘録も兼ねてまとめようと思います。

<登場人物(仮名)>
・山田太郎 :破産者
・山田花子 :太郎の妻
・鈴木一郎 :弁護士、山田太郎の破産管財人

<登記簿>
甲区1番 所有権保存(原因:売買) 所有者 山田太郎
甲区2番 保有権移転(原因:贈与) 所有者 山田花子

<時系列>
1、山田太郎の事業が行き詰る
2、破産が見えてきた時点で、自宅を守るために
  債権者を害することを知って、自宅名義を妻へ贈与
3、山田太郎、破産宣告


※以下、断りが無ければ条文は破産法です。


破産者が破産債権者を害することを知ってした行為は、
破産手続開始後、破産財団のために否認することが出来ます。
(第160条第1項第1号)

今回の山田太郎から山田花子への自宅の贈与は正に上記に該当し、
こちらの行為を否認します(否認権の行使)と、
自宅と言う不動産は原状回復します(第167条第1項)
 ↓
つまり、山田花子から破産財団(山田太郎)に戻ります。

上記否認権の行使は破産管財人である鈴木一郎が
「訴え、否認の請求又は抗弁」という形式で行使します(第173条)。

さて、登記手続です。

現在の登記簿には所有者として山田花子が公示されており、
否認権の行使により、所有権が山田太郎の破産財団に回復した
事を公示する必要があります。

まずこちらは裁判所の「嘱託」ではなく、
破産管財人の「申請」で行います。
(第260条第1項)

■登記の目的
 2番所有権移転登記原因の破産法による否認

■原因
 平成  年  月  日判決(又は決定) ※日付は確定した日

■申請人 鈴木一郎

■添付書類
 登記原因証明情報
  (判決書又は決定書の正本、及び、確定証明書)

 代理権限証書
  (破産管財人の選任証書、及び、委任状)

■免許税
 非課税 (第261条)


こちらの登記をしますと、
甲区3番に下記のように公示されます。


■登記の目的
 2番所有権移転登記原因の破産法による否認

■原因
 平成  年  月  日判決(又は決定)


つまり、ここまで登記簿の記載を確認しますと、


<登記簿>
甲区1番 所有権保存(原因:売買) 所有者 山田太郎
甲区2番 保有権移転(原因:贈与) 所有者 山田花子
甲区3番 2番所有権移転登記原因の破産法による否認

このように公示されます。


<ここで注意>
この時点では、所有名義について甲区2番の山田花子については
下線が引かれて消されることはありません。

我々がもしこの状態の登記簿見たときには、
この甲区1番〜3番までをじっくり見て、

「あー、今の所有者は山田太郎ですね」

と判別する必要があります。

ここまでが破産法による否認の登記です。


ちなみに折角ですので、その後の話もしたいと思います。

否認権の行使により、この自宅は山田太郎の破産財団に
権利が回復しましたので、ここから裁判所に売却許可を頂き、
第三者に処分することが出来ます。

ここで登場人物を一人追加します。

<登場人物(仮名)>
・山田太郎 :破産者
・山田花子 :太郎の妻
・鈴木一郎 :弁護士、山田太郎の破産管財人
・佐藤二郎 :買主


破産管財人の鈴木一郎が売主、佐藤二郎が買主となり、
この自宅の売却決済を行ったとします。

登記は勿論こうなります。

■登記の目的
 所有権移転

■原因
 平成  年  月  日売買

■権利者 佐藤二郎
■義務者 鈴木一郎

■添付書類
 登記原因証明情報
 裁判所の許可書
 住民票       (買主)
 印鑑証明書    (破産管財人)
 代理権限証書  (破産管財人の選任証書、及び、委任状)


それでは、登記の記載はどうなるでしょうか?


<登記簿>
甲区1番 所有権保存(原因:売買) 所有者 山田太郎
甲区2番 保有権移転(原因:贈与) 所有者 山田花子
甲区3番 2番所有権移転登記原因の破産法による否認
甲区4番 2番所有権、3番否認登記抹消
甲区5番 所有権移転(原因:売買) 所有者 佐藤二郎


ここで注目は甲区4番ですね。
こちらは登記官の「職権」で登記されます。
(第260条第2項)

そして、甲区2番と3番に下線が引かれて消されます。

そうしますと、ここから初めて登記簿見た第三者にとっても、

「あー、色々あったみたいだけど、山田太郎から佐藤二郎に
 所有権が移転され、現在の所有者は佐藤二郎なんだな」

と理解しやすい公示となります。

ちなみに今月末の決済では、甲区3番の否認登記と
甲区5番の所有権移転登記を「連件」申請しました。

無事に登記が完了しまして、ホッとしております。

<その他ご留意点>
・否認登記に添付します「判決書又は決定書の正本」ですが、
 こちらは主文で否認の登記をせよと命じた「給付判決」の形式が
 必要なようです。

 (参考)
 『倒産法と登記実務 (登記実務講座)』  藤原 勇喜 (著)  236頁

 こちらの否認登記は、所有権を山田太郎の破産財団に戻すという意味では
 実質的に「所有権移転」登記的な要素が多分にあり、
 そのような登記を例外的に破産管財人の「単独申請」で行うことから、
 給付判決が必要との見解です。

・破産手続開始の決定があったときの嘱託登記について

 イ) 破産者が法人の時は、その会社登記簿に破産手続開始決定が嘱託により登記されます。
    ※不動産登記簿の甲区にはそもそも登記されません。

 ロ) 破産者が個人の場合は、下記事由の場合に不動産登記簿に破産手続開始決定が登記されます。

    一  (裁判所書記官が)当該破産者に関する登記があることを知ったとき。
    二  (裁判所書記官が)破産財団に属する権利で登記がされたものがあることを知ったとき。


    <注意!>
    つまり、既に破産手続は開始されておりますが、その旨が不動産登記簿に反映されていない
    ことは多々ございます。
    これは第三者として登記簿を読み込む際に注意が必要ですね。


http://www.facebook.com/note.php?note_id=128457070529996
以上です。

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