ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

仁露館コミュのガチャフォースSS 「たとえばこんな〜ネコベ/オロチ編〜」

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 夕方から降り始めた雨はさばな町のすべてを濡らし、ある者には恵みを
そしてある者には休息を与えた。

 そしてここに一人、雨に打たれて走っている者がいる。

「ったく、なんで降水確率20パーで降るんだよ。」
猫部である。
 コタローとのトレーニングにつきあわされ、コウにクシャクシャにされた上でこの雨である。

「弱り目に祟り目ってこう言う事だよなぁ。」
「早く走れ!『下手な考え休むに似たり』とはお前の国の言葉だ。」
 雨にあたらないように軒下に隠れては次の軒下へと走っていくが、それもさして効果は無く、
そして家はまだ遠かった。

「母上殿は傘を持っていけとあれほど言っていたのに。」
「ったく、余計な事ばかり聞いていやがってょ。」
 ヴラドは制服の内ポケットに入って直接の雨から逃げているが、すでに尻のあたりがしっとりとしている。
ずぶ濡れになるのも時間の問題だろう。
 

 とうとう近くに軒下も無くなり、仕方なくひたすら走っている時である。
 工事現場の工事材の下のあたりで、見た事のある顔がいたような気がした。
「ン?」
 いつもバンダナで止めてある癖のある長髪は今、力なく萎れ
いつもにらむ様な、鋭いつり目は閉じてはいるけれど、見間違い様も無かった。
デスコマンダー、オロチだ。
 いつもアリのように群れているデスボーグは見当たらない。
 とりあえずヴラドに周りを見回りに行かせる。
 ブツブツ言いいながらも胸ポケットから出るとジャンプステップしながら木材の影に消えてゆく。
嫌がってる割にきびきびした動きである。
今日もコウに負けた訳だし、きっと八つ当たりの相手が欲しいのだろう。

 さてと、問題はこっちだ。
 土管の中で丸まって縮こまっている姿は、いつもの威厳も無く
ただの小学生に見える。

「…考えてみれば当たり前か。」 
 このまま放っておくのもなんだし、とりあえず中に入ってみる事にした。
「おじゃまするぜ。」
「だ、誰だ!!」
 そう言って、こちらに向けた顔は、最近なかなか見られないくらい凄い顔をしていた。

 目の周りは泣き疲れたのか赤く、その他は涙と鼻水でぐしゃぐしゃ、唇は寒さで真っ青。
 そのくせガクガクした体を止めて必死に威厳を保とうとしている。
「とりあえずさ、顔吹けよ。台無しだぜ?」
 クシャクシャのハンカチだけど、とりあえず投げて渡した。
もちろん、左手ではガチャボックスをいじくってる。
 中には確か、あいつとあいつがいたはず、ヴラドが戻るまでは持つだろう。

 「…なんだ、ヴラドのGFコマンダーか。」
 そう言うとオロチはハンカチを広げて(少し臭そうな顔をしたけど)顔を拭いてその上鼻をかんだ。
 あー、きたネェ。
 オロチも右手でガチャボックスを握り締めているけど、何も出そうとはしない。

 ウラドが帰ってきた。
特に周りには何も居ないらしい。
 とりあえず、どうしよう?
 オロチは俺とウラドの話を聞いたのか、安堵するようにずるずると崩れるように座った
仕方無しに俺も座る。
雨はまだ結構降っている。

 ガチャボーグやデスボーグってのは基本的に完全防水らしく、水に入っても壊れる事は無い。
 ただ、雨は何故か嫌いらしく、雨の日は決まって出てこなかった。
ヴラドなんかは「泥だらけになるのは嫌い」だからだそうで、普通に下水道や河原でも出るのを渋る。
まぁ、俺も汚れたままのヴラドをポケットに入れたくは無いが。

 「デスフォースから」
 ほつりとオロチが呟く。
「デスブレンから逃げてきた。」
 え、ちょっとまて。
「ロイヤルガード達が、ダークナイトが身を呈して逃がしてくれた。」

涙声。

 「いくらあいつらでも、コズミックドラゴンの小隊になんて適うはず無いのに…」
手にもってるボックスをぎゅっと握る。

 おいおい勘弁してくれよ、こういうの苦手なんだよな
そんな俺の事も置き去りにして、オロチはまたハンカチで鼻をかんだ。

 まてよ?
てことは、追っ手が来るって事か。
ここはヤバイな。

 くちゅん
くしゃみの音だ、オロチのくせに可愛い。
 「とりあえず、動くか。」
この捨て猫も、放っておけないしな。






 てことで、なぜか俺の家。
 庭にあるプレハブが俺の部屋。
 建設屋の癖に女社会のわが家が嫌いで、親父に泣いて頼んだ4畳半
けっこう好き勝手ができるから、よくキツネとかを呼んで遊んでる。
 説明するのがめんどいから、隠れるように二人して部屋に入った
そして俺だけ家に戻って、Tシャツとトランクス2つとバスタオル2つ、盗むようにとってくる。
 かあちゃんは居ないようだが、上でステレオの音がする。
 あの音はダイ姉ちゃんだ、暫くは大丈夫だけど下手な事は出来ねぇ。

 そして、一組をオロチに渡して着替えさせた。
え、どうやってって?まぁ、察しろ。

 とりあえず今のオロチは魔法瓶に詰めてきた暖かいお茶を持たせて毛布に包まっている。
俺も、さっさと私服に着替えてある、呑んでるのはコーヒーだけど。
「服は今洗濯機にぶち込んである。乾燥までやる全自動のやつだから
少しすれば服もすぐ綺麗になって戻ってくるから、まぁそれまで我慢してくれや。」
「ヴラドのコマンダー。」
「ねこべかつみ、ネコベーでいいよ。」
「ネコベー、何故私を?」
実は、そこんところは俺も知りたい。
俺は言葉を濁らせたままコーヒーをすすり、視線を外した。
オロチは布団にくるまったまま、こっちの顔を覗いてくる。
釣り目だけど、くりっとした目がこっちの目をまっすぐ追ってくる。
泣きはらした目はまだ赤かったけど、もう唇はきれいな色を取り戻している。

「し、しらねぇよ。」
なんか気恥ずかしかった。

 横の机の上でウラドが小さく鼻を鳴らした。
あいつはいつものトマトジュースを何かのおまけのミニコップに注いでいる。
あいつ何かいいたげな視線は、何故か少し痛かった。

 そのとき、窓ガラスが割れた。
 外から入ってきたそいつは、オロチ目指して一直線に飛んでくる。
そこに横からウラドが飛び出す。

 「ウラド、ソニックスラッシュ!!」
キィーンという音と共に飛ばした十字の光は
しかし盾に止められる。
逆にそいつの放ったビームにヴラドは肩をやられて吹っ飛ぶ。

「まて、ヴラド!!」
みずからヴラドの追撃を止め、オロチの前に着地したのは
オロチの脱出を助け、自らも脱出してきたロイヤルガードの片割れ
青騎士サファイアナイトだった。

「すまなかった、いきなりだったもので。」
「そりゃこっちのセリフだよ。」
いきり立つ二人に、オロチはすまなそうに目を伏せる。 
「すまんネコベ、ヴラド。私からも謝る。」
 「…不愉快だ、戻っている。」
ヴラドはそう言うとガチャボックスの方に行くと、光と共にガチャボックスの中に消えていく。
思ったより、ダメージが酷かったのか、少しふらついていた。

 サファイアナイトは、すぐにオロチに目を返した。
「ダークナイト様は?」
 そう言われた、オロチは顔を伏せた。
 まだずっと手にもってるガチャボックスをサファイアナイトの前に差し出す。

「…封されてしまったのですね。」

 オロチは無言でうなづく、またじわっと涙が出てきた。
「私は本当はオロチと言う名前では無いらしい。
私は自分が誰なのか、知りたかった。」

ぽたっと涙がじゅうたんに落ちる。

「ダークナイトはそんな私を最後まで助けてくれた。
そのせいであいつに封印されてしまった。
あいつ、デスブレン、許せない!!」
見えはしないけど、ぎりっという歯軋りの音が聞こえた。


「フハハハハハハハ、ずいぶんと嫌われたものだな。」
割れた窓の外から、声が聞こえる。
初めて聞く声だけど誰かは一発で解った。
いい悪役っぷりだぜ、まったく。
「デスブレン!!」
割れた窓の端から、黒いのが一つ、二つ
ポップスハニーもいる。
どうやらそこから声が聞こえて来るらしい、芸が細かいぜまったく。
俺は携帯に手を伸ばした、短縮の1を片手でコールする。
頼むぜキツネ、気がついてくれよ。

もう片方の手には俺のガチャボックス。
あー逃げてェ、こんなのやめて適当に遊びてェ。
まったくこんなの俺のキャラじゃないぜ。
「ウラド、準備は?」
「万端だ、なんだお前らしくもない。」
ボックスの中から声が返ってくる。
「なぁ、ウラド。今俺ってカッコイイ?」
「声が裏返りかけてて、足がガクガクで、泣きそうな顔をしててもか?」
 そうだよなぁ、ダメだよなぁ俺。
「そうだな、今までで一番いい格好だ。」
 どうせ笑ってるんだろうなぁ、ヴラド。
「今なら自信をもってお前のパートナーである事を自慢できる。
やれるではないか、お前も。」
「…ありがとよ、根性決まった。」

 遠くでキツネの声が聞こえてたけど、すぐにノイズに変わった。
妨害電波か?
さすが大ボス、何でもアリだな。

 俺は立ち上がろうとしたオロチを片手で止める。
「絶対に出るなよ。」
「でも。」
 サファイヤはすでに彼女の側で臨戦隊形、さすがナイト様は違う。
オロチはそれでも動こうとしないガチャボックスを見て、きつく握り締めた。
 出した声も、自分で震えてるのがわかる。
歯をガチガチさせながら、でも俺は言えた。

「まぁ ぅ 何とか さ なるよな。」


 俺はゆっくりと立ち上がると、外に出るべくドアを開けた。

「うひゃあ、なんだよこれぇー。」
 外は、一変していた。

 俺の家の庭だった場所はよく解らない戦闘フィールドに早変わりしていた。

 ごつごつした岩のような地面。
あからさまに怪しげな、紫色の空。
謎の障害物、どれをとってもさっきまでの庭とは違う怪しさを漂わせていた。
「マクー空間かよ、まったく。」

 相手はすでにセットアップは完了している。
ボーグ達を出さないと負ける。

「逃げたくなってきたけど」
周りを見ても非常口や、大道具さんたちは居ない。
「ダメなんだろうなぁ。」
目の前に居るのはたくさんの黒い人形達、もう逃げられない。

 俺はガチャボックスを振りかざした。
「オレ様に逆らおうなんざ 100年早ぇ!」
言えた、もう逃げない。

戦闘が始まった。

 はっきりいって、俺にしては頑張ったほうだと思う。
 初めの乱戦をバンパイヤナイトで蹴散らし、前半の雑魚どもはハンマーで何とかできた。
しかし、なんかメカメカしいドラゴンが出てきたら、情況は一変した。
 一匹目はなんとか凌いだものの、ほっとした瞬間にブレスの十字砲火でハンマーが光の中に消えた。
ちくしょう!さっきのよりデカイ。
「一機や二機やっつけたぐらいではしゃいでんじゃねえよ。
行くぞ、ヴラド!!」
「いいだろう、スクラップにしてやる。」

 さーて、背水の陣だ。
 左のヤツのほうが何気にトロイ、先に殺るか。
 一発二発は食らっても、すぐにおつりが出るくらい相手を削る。
思った通りに反応の悪いヤツはガンガン削れて行く、いい感じだ。
たまに吹っ飛ばされた時にもう一匹のほうもついでに削っておく。
ブレスは確実に避けていれば、でかぶつは怖くない。
 勝った、と思った
 そして、それが一瞬の隙を作った。

 サファイヤにやられた肩のせいだったろうか、ブラッドダンスのバランスが崩れた。

 それを見た一匹が、もう一匹ごとブレスを放った。
 ヴラドは、その一匹とともに消えた。

 ちっ
 やっぱりあとちょっとで全滅か、しまらねぇ。

やっぱり殺されるのかなーとか、できれば洗脳してほしいなぁとか
そうすれば学校行かなくてもいいよなぁとか考えてる時
そんな時、やっぱり現れる助けってのはのはかっこいいと思った。

「貴君、ネコベとか言ったな。」
「…ああ。」
「手を貸してやる、契約しろ。」
言われるままに出したガチャボックスから光が出てくる。
その光を浴びて輝いているのは、やはりさっきの青い騎士だった。
「おいおい、お姫さんは良いのかよ。」
「先ほど、ボックスが復活した。今はエレメンタルが見ている。」
「すげーご都合だな。」
「今はそれ所じゃ無かろう。」

飛び出した勢いのまま、ヤツはブレスの終わらないドラゴンの上に行くと、
ビームランスを下に構え、そのままヤツを貫く。
 絶叫と共にヤツは火球になって消え、その閃光はいつの間にかいつもの夕日の光に代わっていた。

 見回すとここはやっぱり俺の家の庭、
門の方からキツネやコウ達の声が聞こえてきた。





 「コウ起きろ、朝だぞ。」
「ふぁーいぇぁふぅ、ムニャムニャ…」
 ここはコウの家
パジャマ姿のままのオロチの目の前には布団とごちゃごちゃに絡まっているコウ。
とても気持ちよさそうに寝ている。

zzzzzzzzzz……

 答えた癖に体はびくりともしない。
いつもの事だ。
「…ドラゴン、やれ。」
コズミックドラゴンの方も慣れたもので、片手をあげながらギャゥッと鳴くと
布団からはみ出しているコウの尻に噛み付いた。
「っgsrすか杵゙ラセキいせき無為須野も着理といろ゛むhんか!! 」

 布団と絡まったまま3センチは飛び上がったコウに、眠そうな声のままオロチは挨拶した。
「おはよう、コウ。」
「っだから、その起こし方やめろよなー!!」
「より、効率的な起こし方が結局これしか無いのだ。
 叔母様が呼んでいる、早く起きたほうが身のためだぞ。」
横でアギャッとドラゴンも同意している。
「ちぇっ、わかったよ。」
 むーっと膨れながらも布団から離れるコウを横目に、すたすたとオロチは部屋を出て行く。
「ドラベーのボケー!!」
出る直前に後ろを見たら、コウはドラゴンに向っていーっと舌を出していた。


 あの後いろいろとあって、今はコウの所にお邪魔している。
 あの時にネコベが出したDCは、今は私のものになって横で私の後をついて来ている。
「もう二度とドラゴンなんて見たくねー。」
 そういった涙でべとべとの彼の顔と、逃げてぐしゃぐしゃになってた私の顔とどちらが変だったのだろうか。
 あの時のハンカチはパリッと綺麗になってて、でもまだ私の手の中にある。
ドラベーと名づけたこのドラゴンとこのハンカチは、記憶が戻るまでの間の数少ない大切な私の思い出なのだ。


--------------------------e n d--------------------------------
 たとえばこんなシリーズpart2「オロチ?いいえ、ネコベー」です。
良いキャラです。小学生の中でただ一人の中学生、それでおやまの大将を気取っている割にはやっぱりただのヘタレ。
 そんな彼の等身大の頑張りってのが良いですよね。

前述のユージと一緒にお気に入りのSSです。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

仁露館 更新情報

仁露館のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング