ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

さしゃの二次小説(ハリポタ)コミュの本編第十七章 朔風14

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ハリポタ二次小説 レナスの物語

第十七章 「朔風」14 回復



「レナスが立ったーーー!!」


何処かの漫画で聞いたことのある台詞だったが――


「え?!うそ?!」


レナスが自身の足元に目をやる。視線から、床が遠い。


「マジデスカ…。」

「良かった!レナス!立てた!立てたんだよ!!」


戸惑うレナスの胸に、アルティアが顔を埋め一瞬で泣きじゃくる。


「アル…、あたし…」言いかけるレナスに

「歩ける?!さっき跳ねてたけど、痛くない?大丈夫?!」


その涙でぐしゃぐしゃになった顔が目の前にグッと近づくと、レナスが左の指で拭ってやる。


「うん…。もう…平気。痛くないよアル。……でも…」

「良かった…!本当に…。」


心底嬉しいそうに笑いながら、それでも流れ出れしまう涙を懸命に拭うアルティア。
彼女の顔を見ていると言葉の続きを言い出すのは気が引ける。

腕の中にアルティアを抱きながらも、スネイプの方をチラリと見た。


すると、スネイプもレナスを見て驚いたように、少し険しい顔をしている。



それは、2人に共通する、頭の中の声。



【いくらヴァンパイアハーフと言えども…】



【こんなにも早く回復するものなのか…?】



********



レナスの足が回復した。
その言葉を聞きつけた者達がレナスのベッド周辺に集まる。人数にして7人。
内、一人がレナスに迫る。


「言いつけを守らず、ベッドから抜け出すなんて感心しませんわよ、ヴァルキュリア!」

「い、いや…あれは事故で…。」


鋭い剣幕をむき出しにするマダムにタジタジといった具合のレナスがチラリと見遣った先にいるスネイプ。。

当の本人は、いつもの青白い顔をさらに蒼白にし、レナスと決して目を合わさないように、引き攣った表情をしている。

彼からしてみると、レナスがベッドから落ちた経緯の前後を、決して口外したくは無かったのだろう。


「どうじゃね?」

「えぇ…、信じられませんが…。完全では無いにしても、回復しています…。」


自身の足で力強く立つレナスの右足を擦っては、マッサージし、感覚があるのを確かめるマダム。
そして、少し安心した表情を見せる老人、ダンブルドア校長。


「あのう…」レナスが抱える不安を口にしかけた時


「レナス、ちょー良かったジャン!」


立った状態のレナスの背中から、首につりさがるように勢い良く飛びついたのはギルガだった。


「ギル…!ぐるじぃ…!!」

「え?…あ、ごめん…。」


背の低いギルガに首を絞められる形になったから堪らない。しかし、レナスの右足は決して崩れる事は無い。


慌てて手を放したギルガの前で、ゲホゲホと咳き込むレナス。
その様子を見ていたマダムがレナスに向き直る。


「ヴァルキュリア、少し右足だけで跳ねてください。」

「ゲホッ…。え?それって、けんけんって事ですか?」


頷くマダムは、レナスが倒れこんでも良いように、レナスの手を取り、支える準備を始めた。


言われるままにすると、体に半歩遅れて赤い髪も跳ね上がる。


足には痛みも違和感もない。そう自覚する。
自身で足を曲げたり伸ばしたり、振り上げてみたりしてみるが、今までが嘘の様に体が軽く感じた。

握っていた手が、握手へと変わり、満面の笑顔を向けられる。


「おめでとう、ヴァルキュリア。」

「あ、ありがとう。マダム。でも…」


言葉が終わらないうちに、ハグをされた。それは、短い時間でも、正面から向き合っていた校医との絆の証。


「じゃあじゃあ、授業にも戻れる感じっ?!」


ギルガが期待いっぱいにマダムのエプロンをグイグイと引っ張り、言葉が遮られた。笑顔のマダムは困った様に首を横に振る。


「それは、もう少し様子をみましょう。まだ腕の方は回復していないのですから。」


ギルガの頭に軽く手を置いたマダム。しかし、その言葉に再びギルガはその目に影を落とす。


「そっか…。まだ…だめなんだ…。」

「でも、あと数日の辛抱ですよ。」


マダムに笑顔を向けられ、落ちていたギルガの顔が再びパッと明るくなる。


「良かったな。レナス。」

「え?あ…、うん。ありがとう、ビル。」


「どうした?何か暗いぞ?」

「いや、そんな事ないよ…。」


取り繕うように否定したが、はやり違和感は拭えない。
スネイプに目をやったが、彼は何も言わないでいた。それが何処となくレナスを不安にさせる。


「レナスや。」


今度はダンブルドアがレナスの前に一歩出た。
視線を上げ、その半月メガネの向こうにある青い瞳を見る。


「よく、ここまで頑張ったのう。」


軽くレナスの頭に触れながら言葉を続けた。


「今日は木曜日じゃ。今度の土曜は休校。アルティアとビルそしてギルガの3人と共に、杖を新調しに行かんかね?」


その言葉に、レナスは驚いた。


「え…?でも…。」

「ポピーには、外出の許可をもらっている。オリバンダーの店なら、新しい杖も手に入る。わしからの誕生日祝いを送らせてくれんか?」


そして、老人は優しくウインクしながら続けた。


「アルティア達からは、素晴らしいプレゼントを受けとったのじゃ。わしからは受け取れんと言う事はないじゃろう?」


その優しい言葉に、レナスは静かに頷いた。「ありがとう」そう言葉を紡ぎながら。

再び笑顔を作って見せたダンブルドアは、今度はビルとアルティア、そしてギルガに向き直る。


「どうじゃね、君達?土曜に、お付き合いいただけんかね?」


ダンブルドアの誘いで、3人は顔を見合わせる。
そして嬉しそうに、こう返事した。


「「「もちろんです!ダンブルドア校長!!」」」



誰も彼もが笑顔でいた。


レナスと、スネイプの2人以外は…。



********



「それでは日曜、校長室まで来なされ。煙突ネットワークを使って、ダイアゴン横丁まで行くでのう。」


笑顔を向けると、部屋を後にした。
その背中に、マダムとスネイプの2人が続き、3人の仲間達も部屋を出て行く。


「レナス、今日もちゃんと眠ってね。」

「うん、ありがとう。おやすみ。」


そう手を振りながら見送る。

今まではベッドで見送る事しか許されなかった。しかし今となっては違う。
扉に手をかけ自身の力で扉を閉じる。
そんな当たり前の事が堪らなく嬉しいと感じるレナス。


しかし、モヤモヤとした不安が何処かに引っかかっているのも事実だった。
その不安を吐露することも出来なかったのだから。


歩けそうな気がしたのは事実。焦っていたのも事実。
しかし、いくら優秀な薬を必死に飲んでいたとは言え、レナスにヴァンパイアハーフの血が流れているとはい言え、こんなにもアッサリと体が回復していくものだろうか?


「何か【裏】が…無ければいいけどなぁ…。」


そんな考えでいっぱいだった。
しかし、頭を思い切り横に振る。


「考えても仕方ない!治らないより、治る方が良いに決まってるんだし!」


思い切り息を吐き出すと同時に不安を完全に追いやると、ベッドへと腰掛ける。


遠ざかっていく足音が、隣の部屋を出て、その先の廊下にさしかかり、さらに数十メートル歩いた時。



静かになった――
以前のレナスならそう思ったのだろうが、今はそうも行かなかった。
敏感になった聴覚は遠くの音を拾い上げてしまうのだ。




≪それじゃ、先生!おやすみなさい。≫

≪ビルや。ギルガ・ディバインを寮まで送ってやってやるのじゃぞ?≫

≪解っていますよ!おやすみなさい。≫


≪俺、そんな子供じゃないもんー!≫

≪お前は十分子供だよ。≫


その脇でアルティアが、クスクスと笑う声まで、鮮明に聞こえた。


≪さぁ!寄り道をしないように、私が送って差し上げます。キビキビお歩きなさい!≫

≪マダム、きびしー!!≫


軽く若い3つの足音と、キビキビと歩く女性の足音が1つ。それらが徐々に遠ざかっていく中、
クスッと笑い、「おやすみ。」そんな言葉をレナスは心の中で呟いたレナスは、自然と布団に身を包んだ。


もう眠ってしまおう。考えても仕方ない。
そう思ったとき、今度は男達の静かな会議が始まる。



≪校長…。レナスの事ですが…≫

≪解っておるよセブルス。レナスの体の回復が予想以上に早すぎるのじゃろう?≫


神妙な物言い。
レナスは既に閉じた瞳を見開いた。

考えまいと決めた矢先に聞こえてしまう会話に焦りを感じる。
その上盗み聞きに近い状況で慌てて耳を塞ぎきつく目を閉じ、布団に顔を埋める。


≪お気づきでしたか…≫


しかし、まるで耳元で囁かれるように鮮明に聞こえるそれを拒むことは不可能だった。大声を出して、聞かないようにするにしても、それではマダムが来てしまう。
その為、これはもう事故だ…。と諦めざるを得なかった。


そして漠然とした不安が、徐々に顔を出す。



≪回復が望めない程の重症を負った。奇跡的に目覚めたは良いが、今では歩けるまでに回復した。いくら何でも早すぎる。≫

≪そうじゃな。確かに常人より…いや、ヴァンパイアハーフだとしても、早すぎるかもしれんのう。≫

≪まさかとは思いますが…。レナスの肉体の回復はヴァンパイアとしての覚醒が原因では…?≫



『…なッ………?!!』
レナスは想像だにしていなかった言葉に、布団から飛び起きる。それは鼓動の反応でもあった。


≪レナスは暫く魔力が封印されていた。地下でヴァンパイアに襲われ、そして我々を守る為に、不本意ながら覚醒したと見える…。≫




『確かに…、あの時魔力が溢れ出て来るのを感じたけど…、アレが覚醒?!』




暖炉に炎が灯っているとはいえ、真冬の夜。しかし、額にはうっすら汗が滲み、赤い髪が肌に張り付く。
体が一気に緊張し、左手は無意識に布団を握る。



≪もしも…その覚醒が原因だとすれば…≫

≪【危険だ】と…。言いたいのじゃな、セブルス?≫



ドクンッッッ――………!!


急激にレナスの鼓動が暴れ始める。
それに堪えきれず、レナスは自身の胸元をギュッと握る。


≪レナスは成人し、ヴァンパイアを退けられるだけの力を得た。もしもその覚醒が、完全なヴァンパイアへの変化の一歩だとすると…。恐らく怪我の回復も…≫


≪ふむ…。つまりは、レナスの意思とは無関係に、ヴァンパイア化が始まり、急激な肉体の回復はその序章なのでは?と考えておるわけじゃな?≫


≪………考えたくもないが…≫


落ち着き払ったダンブルドアと、焦りを隠せないスネイプ。


2人の会話を冷静に聞く事などできるはずもない。今すぐ走り出して、2人の間に割って入りたい衝動に駆られ、ベッドを抜け出し部屋のドアノブを掴んだ。




≪わしの憶測じゃが…≫



ピタッ――


ドアを開ける事無く、レナスの動きが静止した。
焦る気持ちは変わらない。しかし、今耳を傾けなければいけない気がした。


≪………いや、あくまで憶測なのじゃが…≫

≪何だと言うのです?≫


イラだったスネイプの声。それはレナスの気持ちを見事に代弁したものだった。




≪……今は、やめて置こうかのう…。≫




≪『…な……??!!』≫




スネイプの声と、レナスの心の声が見事に重なった。


≪ダンブルドア!コレは事によっては一大事なのですぞ!≫

≪【事によっては】じゃろう?わしの予測では恐らく…≫

≪もったいぶるとは悪趣味な!≫


ついにスネイプが怒りに任せだした。

レナスは、自身の不安もあったが、さらにスネイプがダンブルドアに掴みかかるのではないかという不安まで圧し掛かる。


しかし、今飛び出してはならないと心の声が叫ぶ。グッと唇を噛み、自分自身を制御する。


≪あくまで予測じゃが、それが正しければ、君が思い描いた不安材料は何一つ関わりの無い物じゃ。杞憂に過ぎん。今度のレナスの変化は、決して悪に満ちたものでは無いと思っておるよ。≫


≪なにを根拠に…!≫


≪根拠ならあるのじゃよ、列記とした根拠じゃ。≫



レナスには訳が解らなかった。
レナス自身も不安に感じていなかったと言ったら嘘になる。しかし、このダンブルドアの落ち着き払った声色は一体何だ?

とても嘘を言っているようには思えない。そして「ただの憶測」とも思えない。
それはまるで…



≪その憶測は、正しいと。確信しておる。≫



『根拠?確信…?』
ダンブルドアの言葉は謎めいたものばかりだった。


しかし、不思議な事に、
レナスの中の不安は全て 一蹴されてしまったのだ


『……あたし…、本物のヴァンパイアになっちゃうわけじゃ…なさそう…。……だけど…』


握っていたドアノブを放し、その扉に背中を預け、天井を仰ぐ。
何か解ってるなら、教えてくれてもいいのに…。レナスがそう思ったときだった。


≪確信しているなら、教えても良いのではありませんか?≫


レナスの残念そうな想いとは違ったが、恨みがましく唸るスネイプは、またもやレナスの代弁を果たした。



≪いずれ、君も知る事になるじゃろう。そしてレナス自身もじゃ。≫



【時には、真実を…、自分自身で手繰り寄せる事も必要じゃよ。】



≪レナスがアズカバン行きを決めた日。セブルス、君はレナスの真実を見事手繰り寄せたじゃろう?今回も同様にじゃ。≫



いつもの優しい口調。
しかし、少しの沈黙が訪れる。そして―――



【尤も、体の回復の真実を知ったレナスが、どのような【選択】をするかは、【レナス次第】じゃがのう…?】



顔も動きも見えない。
しかしレナスには、解った。…解ってしまった。
今まで話していた優しい口調が、突然悲しみに満ちた口調になった事を。そして、その時の悲痛な表情までも。





しかし、次には、またいつもの口調に戻る。


≪そうじゃのう…。ヒントになるとすれば…。レナス、セブルス。君達の行動をよく思い返すことじゃな。≫


≪…?何を言っているのだ?!≫


相変らず噛み付いているスネイプだったが、ダンブルドアはその場を後にしたようだ。



いずれ2人の声が聞こえなくなった。




本当に静かな空間が訪れる。



「……自分自身で…手繰り寄せる…か…。」



意味は解らなかったが、その言葉が何か重要な鍵であるような気がして成らなかった。


「聞かなかった事になんて…出来ないもんなぁ…。」


レナスは扉に背中を預けたまま、床へと腰を下ろし片膝を立てた。
ふと視線を走らせると、暖炉の中で炎が踊っている。



「ダンブルドア達の前でだけ、聞かなかったフリしよう…。」



その暖かな炎の光は、レナスの胸に内に広がっていく。



「あたしと、セブルスの行動を…よく思い返す、かぁ…。」


何か特別な事…したっけ…?
レナスは暖かな炎を見つめながら、膝を抱え、何時間も何時間も頭を巡らせた。


「あたしが選ぶ選択って…、何なんだろう…?」



そしてついに、うとうとと瞼が重くなる。



『あれ…?そういえば…、あたし、何か忘れてる気がする。そう…何かが繋がりかけてた気がする…』



『…………なん…だっ……け…?』



やがて、すやすやと寝息を立てた。
炎がゆらゆら揺れる部屋での、真冬の夜の事。





後に真実を知ったレナスは 自ら



右手という機能を



放棄する選択を選ぶ




****続く****

コメント(4)

マイナスの変化ではない…(゚_゚;)ウーン
何だろう…?
予想が出来ませんね冷や汗

でも…右手の機能を捨てるっていう厳しい選択をする以上、レナスにとってはあまりプラスでは無い事なのかな…冷や汗

右手以上に無くしてはいけない何か…って事かな…?

うーん、続きが気になります冷や汗ドキドキあせあせ(飛び散る汗)
シオンの事かな…レナスが重大な決断をする時はレナス以外の誰かを守る時だったり…。
シオン〜そろそろ出ておいで〜。
みけちゃん

ダンブルドア校長も回りくどいからね(ノд-。)
ってか、ダンブルドアからしてみると、セブちんもまだまだ子供なわけでね。だからあんな回りくどい言い方したんだろうね(T▽T)

おっと?!続きが気になるっすかヾ(☆▽☆)
というか、私も続きが気になる!!←まさか、ノープラン?!いやいや冗談です( ̄▽ ̄;)
めいさん

ねー。早く出て来ないと、シオン君早く出てきてくれないと、セブちんとの、おいしい絡みが書けない(T▽T)←重要なのはそこ?!

はぁ〜、早く戻ってこないかなぁ〜〜(ノд-。)


ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

さしゃの二次小説(ハリポタ) 更新情報

さしゃの二次小説(ハリポタ)のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング