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さしゃの二次小説(ハリポタ)コミュの本編第十七章 朔風12

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ハリポタ二次小説 レナスの物語

第十七章 「朔風」12 羽根ペン



「どうじゃね?ポピー?」

「やはり…翼を失った事に寄って、右半身が麻痺している様ですね…。」

「そう…ですか…。」


ビル、ギルガ、アルティアの3人は、レナスの異様な様子に後ろ髪を引かれながらも、授業の為医務室を出た。



それから数時間後



レナスの動かなくなった手を、握ったり放したり、ひっくり返したり、少しマッサージしてみたりと、細かく診ているのは、マダム・ポンフリー。


目が覚め、食事もまともに出来るから。という理由で点滴を完全に外され、患者服から寝巻きに着替え終えたレナスは、ベッドの上で胡坐をかく。
右手には、点滴の針で抉れてしまった箇所に、ガーゼと包帯が巻かれていた。


やはりまだ、マグルの治療は必要らしい。としみじみ実感する。


そんなレナスの診察に立ち会うのは、長く白い髭を玩ぶダンブルドア校長。


「ポピー、腕の治療にはどれくらいの期間かかりそうかね?」


口調は穏やか。まるで電車での遠出による目的地までの期間を問うような…。
しかし、髭を玩んでいる処を見ると、内心落ち着かない様子なのだという事がレナスには分かる。


「恐らく一時的なものでしょうから…。少しリハビリをすれば良くなります…。」

「ならば…、安心じゃのう。」


マダム・ポンプリーは、ホグワーツという場所に勤めるほどの腕の良い校医。
そして、ダンブルドアとは魔法省や魔法世界という大きな世界に関わる大魔法使いの称号を持つホグワーツの校長である。

その2名が、レナスの後遺症は【軽症】だと言っている。
レナスはそう理解した。 
しかし、それはあくまで、【頭で】の話…。


彼女の鋭敏とも言える直感と
2人の不穏な表情が、それを全力で否定する…。


「辛いかもしれませんが、心配する事はありませんよ。しっかり治療していきましょうね?」

「……はい…。」


マダムの励ましも虚しく、レナスは視線を落としている。


「レナス、暫く休養すると良い。歩けるようになったら、杖を新調しに行くとしよう。」

「……ありがとう…。」


ダンブルドアの言葉で、精一杯笑顔で返した。
しかし、その場の空気は重く、誰もが体の中を捩られるような鈍痛を感じていた。


「さぁ!ヴァルキュリア。リハビリの為に、まずゴムボールを握る事から始めましょう。後で持ってきますからね?それまで少し休んでおいでなさい。」

「…解りました。」


レナスが素直に頷くと、マダムは少し安心したように口角を上げる。


「あともうひとつ!まだベッドから抜け出す事は禁止ですからね?大人しくしていてください。」

「……解っていますよ。マダム。」


レナスは苦々しく笑った。
それは口煩いマダムの言葉に対してか…?
或いは…体の変化の不安からなのか…?



2人を安心させる為、これ見よがしに首元まで毛布をかぶり仰向けに勢い良く寝転ぶ姿を見せると、どや顔と言わんばかりの顔をしてみせる。
自身の中に渦巻く思いを押し隠すように。


その姿を見た2人は、顔を見合わせる。
この2人もまた、レナスの不安を感じ取っての事だろう…。




「それではな。レナス。また今夜会いにくるでのう。」


ダンブルドアがマダムを連れ立って、部屋から出て行く。
更に向こうの部屋の扉を閉めた音がした。


遠ざかっていく足音。



レナスは仰向けに寝転んだ頭の下に左手を置き、動かない右手の方を目の前に持ってくると、まじまじと見つめた。



≪必ず治る。≫
マダムの言葉を頭で反芻する。



しかし、彼女の直感は強く主張する



【右手は元には戻らない】 と。






『参ったなぁ…。どうしよう…。』




目を閉じ、ガーゼの付いた右腕を額に置く。



煩い自分の頭の中の声以外に、音は無い。



その無音の空間に耳を澄ましているわけでもないのに、なにやら話し声が聞こえてきた。


鮮明に、耳元で囁かれでもしているかのように…。


「ポピー、レナスの腕の様子じゃが…」



『………?!』



聞こえてきたのは、しゃがれた老人の声、聞き間違えるはずも無い義父のもの。
先ほど遠ざかった足音からするに、部屋から相当放れた場所での会話のはず。

どうしてこんなにも鮮明に聞こえるのか、レナスには疑問だった。


しかし、そんな疑問より勝ったのは、その会話の内容。


「ヴァルキュリアの足は、そのうち回復して、近いうちにでも歩けるようになるでしょうが、右手の方は……。」


マダムの気を落としたような声が、レナスの胸の内を揺さぶった。



「只でさえ骨折し、壊死に近い状態にまでなっていたのです。腐りかけた腕の形状を修復できたとしても、相乗して翼を失っては…腕の機能の回復は見込めないかもしれません…」

「やはりのう……。」




『…………。』



2人の絶望的な会話。
聞いてはいけない内容だったからこそ、離れた場所で話していたのだろうが…




「聞こえちゃってるよ……お二人さん……」




毛布を剥ぎ取り、上体を起こすと膝を抱える。



「腕動かない代わりに、耳が良くなったみたいだ…。」



扉の向こうの更に向こうの向こう廊下。
起きてからと言うもの、気が高ぶったかの様によく聞こえてしまう。


「……嬉しくないし……。」



更にグッと膝を強く抱え、背中を丸める。




「……本当に…どうすっかなぁ…」



*******



「レナスゥーーー!!!」


部屋の扉がバタンッと勢い良く開いたが、レナスはその騒音にも動じない。
何故ならこの3人の足音が随分遠くから聞こえていたからだ。


当人は少し眉を上げて3人に目をやった。


「どうした?」


レナスがあっけらかんとしていると、ギルガがニヤニヤと笑う。
しかし、アルティアとビルは少し戸惑いの表情がある。


「ん?ほんとに…どうかしたの…?」


心配そうに3人を見るレナスの手には、マダムが持って来たゴムボールがある。
しかし、右手に持つ事が出来ない彼女は、ベッドテーブルの上にゴムボールを置き、その上に掌を乗せ、ゴロゴロと転がしている。


「……右手…診てもらったんでしょ…?どうだった…?」


アルティアの心配そうな顔が、レナスの心に刺さる。 しかし…


「ん?あぁ、こうしてリハビリすれば治るってさ。」


笑顔で応え、右手の下にあるボールを見せる。

歩み寄って来た3人は、椅子や、レナスのベッドなど、思い思いの場所に腰掛けた。

ギルガが、手に何かを持っている。
そしてアルティアも、レナスがいつも使っている授業の道具を入れるバッグを重たそうに提げていた。聞いてみようと口を開きかけた時、

ニカニカ笑ったギルガがくるりと振り返り、後ろに居た少し眉を落とすビルに胸を張り、顎を突き出すように話始めた。


「ほらみろー!!やっぱコレ必要ジャン!!ハグリッドだって、渡してくれ!って言ってたし!」

「けど…今は無理だろ。お前、空気読めよ…。」

「なんでよ!!?」」

「だから、手が治ってからにしようって言ってるんだよ。」

「何言ってんだよ!【今だから】ジャン!」


2人の口論にも似た討論にレナスは目を見開く。
そして、ボルテージの上がった2人に聞いても無駄だと諦め、その場にいたアルティアに耳打ちをした。


「どうしたの?なにごと?」

「………実は……」


レナスの真っ直ぐな瞳を見たアルティアが、重そうに口を開いた。


「レナスに…プレゼントと思って、ずっと前に買っておいたんだけど…」

「え?…そうなの?!」

「うん……それが……」


アルティアは中々言葉にしようとしなかった。
レナスは、少なくとも自分の事で口論になっている事実に責任を感じ、アルティアの手に、自身の動くほうの左手を添えた。


「話してよ。」

「………実は、そのプレゼントっていうのがね…」


アルティアが言いかけたとき。


「いいじゃん!羽根ペンくらい!!」

「だから!手が治らなきゃ扱えないだろ!」


ギルガと、ビルが口論の最中ネタばらし。
終いには、犬歯をむき出しにしにするギルガの首根っこを掴むビルが、互いに睨みあっている。


「ちょ!2人ともー!!」


アルティアが絶叫した時には遅かった…。


ヤバイ!そんな顔をしたビルとギルガが咄嗟に口に手を当ててみるのだが…レナスの記憶には2人の言葉が焼きついた。


「…えぇっと………あたし、コレ聞かなかった事にしたほうがいい…のか…?」


困ったような顔をして、ポリポリと頬をかく。コレも勿論左手で行った。
すると、ガックリ項垂れるアルティアとビルを他所にギルガがレナスに身を乗り出した。


「レナス誕生日だったから、ビルと俺とアルティア姉ちゃんとハグリッドの4人で新しい羽根ペン買ったんだよ!使ってくれるだろ?!」


あぁ…なるほど…。
そう言いかけてしまったレナスだったが、言葉を飲み込んだ。

利き手が使えないのに、羽根ペンを渡すのは気が引ける。
アルティアとビルの気持ちが良く分かった。

そして、ビルのギルガに対する「空気を読め」という発言にも頷ける。


しかし、レナスの反応は意外なものだった。



「ありがとう。大切に使うよ。」



そう笑って見せたのだ。



「え…?でも…」

「そうだよ…手が…」



「平気だよ。すぐに良くなるからさ!」



重い考えが襲ってこなかったと言ったら嘘になる。



「折角準備してくれたんでしょ?だったら、欲しいし…。」



ペンは愚か、スプーンを握れるかさえ保証が無い。



「誕生日プレゼントの催促って…変…?」



もう、この手が使い物にならなくなったのだと、3人が知ったらどう思うだろう?


言葉通り、レナスは優しく笑うと、
戸惑いながらも、アルティアとビルはギルガに目配せすると、ギルガが嬉しそうにレナスに細長い包みを渡す。


「ありがとう…みんな。歩けるようになったら、ハグリッドにもお礼言いに行かないとだね。」


そう笑うレナスは、左手で受け取ると、右手で包みを押さえつけるように、ぎこちないながらもゆっくりと、しかし着実に開いていく。
アルティアが手を貸そうとしたが、レナスはそれを拒み、数分間の時間をかけて中身に辿り着いた。


「うわぁ…!綺麗…!!」


予め箱の中身の正体を知っていながらも、つい声が漏れ出てしまった。
それは一般的な白いシンプルなモノとは違い、黒い羽根の筋に沿い、赤と銀のラインの装飾が一本ずつ通っている。
良くみると、それは装飾ではなく、羽根そのものの色合いなのだと気付く。


「コレって…」


レナスが言いかけると、3人は遠慮がちに解説を始めた。


「ソラバーユっていう鳥の羽根で、普段は真っ黒な鳥なんだけど、羽が抜け落ちると羽根の一部が銀色と赤のストライプになるんだって。」とアルティア

「色の付き方はまちまちで、同じものは2つとないんだってさ。インクの持ちも良いし、書きやすいし、一生使えるくらい丈夫なんだって。」とビル

「だから、レナスにピッタリだ!って思ったんだ!!!……ハグリッドが…。」


ハグリッドは通称動物博士。
大の動物好きで、色々な動物の特性や生態を熟知している。シオンの性格は兎も角、あのコウモリについても例外ではない。
たまに、飼うには違法なドラゴンや、危険すぎる巨大な大蜘蛛にまで興味を示すのが難点だが…。


なるほど。ハグリッドが…。
そう心の中で呟き、羽根ペンをまじまじと見る。
見れば見るほど、本当に美しい羽根と色合い、光に翳すと艶と光沢が輝いている。見るからに高価な代物。


『手に入れるのだって…大変だったろうに…』


レナスは、優しくそっと、しかしギュッと羽根ペンを胸の中に抱き込んだ。


ベッドで背中を丸めてしまったレナスを見て、3人は少しだけ心配になる。


やはりレナスを傷つけてしまったのだろうか…?と。


しかし、顔を上げたレナスは瞳を潤ませながらも笑顔を向けた。


「ありがとう…!本当にありがとう…!!大切にする!!早く治して、コレ、使える様になるからっ!!」



もうこの手は使い物にならない。レナスはそれを知っている。


『だからって…諦めるのか…?』




そして、懸命に考えた。


『このまま、何も出来ないままでいるのか?』

≪いや、使えないのだから、諦めるしかない。≫


頭の声と、心の声に耳を傾ける。


≪折角もらっても…、羽根ペンはおろか…、手は元には戻らない。≫


『それは解ってる。でも…、それでも…!』



そして、心の声が勝る



『あたしは…みんなの気持ち無駄にしたくない…。…何でもいい…、コレ使える様になりたい…!』



人間は今度の事の様な事があると、落ち込み、酷ければ相手を罵る事もあるだろう。そう…「空気の読めないやつ」と。

しかしそれは、当人が前に進む気持ちを諦めた時。



「ありがとうギル。アルも、ビルも、本当にありがとう。あたし…リハビリ頑張るから!!」



涙が出そうなほどの  心の底から溢れてくる想い

温かな、優しい気持ち



そんなレナスを見て、ギルガの顔がパッと明るくなった。


「おお!!やっぱレナスならそう言うと思った!!」


すると、いわゆる、「どや顔」をビルとアルティアに向ける。


「ほーら!!やっぱレナス喜んでくれたじゃん!」


そしてこう続けた。



【今は使えないから!って言っちゃうより、使えない時に渡す方が、励みになるんだよーだ!!】


【だって、レナスだもん!】



レナスは驚いてギルガの方を向いた。

まるで、心を読まれたかのような…
いや、考えている事が重なったかのような言葉を聞いたからだ。


雰囲気も話し方もなんら変わらない仲間。
しかし、何処かが違う。


こんなにも重なるものだったろうか?

こんなにも頼もしく思えるものだったろうか?

彼等の内面的な変化に、自身が【きっかけ】を齎したのだという事を、レナスは知らない。


レナスは、羽根ペンを持ったまま、ギルガの頭に手を置き、指に絡みつく髪を少しだけ玩ぶ。


『なんか…、急に大人になっちゃった感じ…?』


優しい笑みを向けながら、髪をいじり続けるレナスをギルガが上目遣いで見上げる。


「ん?なに??」


しかし、レナスは答えないまま、今度はぐしゃぐしゃとギルガの頭をこねくり回した。


「うわっ!なんだよー!!」


少し目くじらを立てるギルガに、レナスは笑ったまま、胸の内で思うのだった




『あたし…、頑張るね!』




人間は今度の事の様な事があると、励まされ、背中を力強く押される事で歩み出そうとするだろう。

それは、当人が前へ進もうとしている時。


もう後ろを向くことが無い、今のレナスの想いそのもの。





高価、希少 羽根ペンの重要性はそこじゃない




大切な 大切な 贈り物




皆の想いが沢山詰まっている物







今のレナスにとって、




最高のプレゼントになった。




****続く****

コメント(4)

レナスの耳は地獄耳!(苦笑)
右手は利手…これは苦悩ですね。でも、きっと羽根ペンに込められた気持ちとエネルギーで、左手が発達するかも!レナスだし(*^-')b
レナスにとっては辛いよね…(;_;)
それを見守るみんなもきっと辛いね…。

でも、きっと、レナスでなければ出来ない事、レナスがみんなに与えられる何かが絶対にあると思う。
それが早く見つかると良いね(*^-^*)
めいさん

レナス地獄耳になっちゃったみたいですね( ̄▽ ̄;)
動物的な部分が開花したんでしょうか…。

右手が使えないってすごく不便だと思います…(;>_<;)
レナスのことだから、きっと…!!←親心(笑)
みけちゃん

そうだね…レナスにとっては、凄く凄く辛いことだと思う。
けど辛いのは、本人だけじゃなくて、みんなも同じ様に辛いんだと、私も思う。

彼女が何を考えて、どうしていくのか、
私もレナスを見守っていく義務があるから、頑張るよ!

彼女にしか出来ない事…。その手に掴んで欲しいな(*^▽^*)

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