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さしゃの二次小説(ハリポタ)コミュの本編第十七章 朔風6

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ハリポタ二次小説 レナスの物語

第十七章 「朔風」6 譲れない心



あれから更に数日。

私は毎日レナスの所に通って、あの扉の前で祈った。

いつか帰ってきてくれる。
ううん。帰ってきて。そう祈るけど…まだ目が覚める様子は無い…。


レナスの所から帰ってきて、大広間へ朝食に向かっていた。
周りのみんなは制服に着替えてはいたものの、まだ瞼が重そうな子もいる。



「アルティア!」


急な呼びかけにビックリして、振り返るとそこにはビルが笑顔で立ってた。


「あ、ごめん…驚かせた…?」


不安そうに覗き込んで来るビルだったけど、近づかれる度にドキドキするから…、慌てて返事をした。


「ううん!大丈夫!全然平気!それよりどうしたの?!」


慌てすぎてしまう私を、今度はビルが不思議そうにみてる…。
あからさまに…変…だよね…。


「まぁいいけど…。今朝もレナスのところ行ったんだよな?朝食は一緒に行こうよ。様子も聞きたいしさ。」

「うん…!勿論良いよ…!」


変わって欲しい現状を、変わらないままだと伝えなきゃいけない。
変わらない現状を、変わらないままだと聞かなきゃいけない。


きっと…今までの私だったら、辛いだけの事だったのかもしれない…。


でも今は……


私…ちょっと今までと違うかも…



*******



大広間に来ると、それぞれの寮ごとに長いテーブルが用意されている。
学年ごとに座るのは基本なんだけど、学年があまり放れてなければ特に問題もない。

気の遠くなるような高い天井と、色とりどりの装飾。、
大きな窓から朝の陽の光が差し込んでる。


朝食を待つ生徒はガヤガヤと煩くて、とても朝とは思えないくらい。


「で?レナスはどうだった?」


ビルが私を先に長椅子に座るようにエスコートしてくれる。
ちょっとだけ、ドキッとして座ると、ビルも着席した。まるで後ろから大きく跨ぐように…

今女の子をエスコートした仕草とのギャップに、ちょっとだけ笑った。


「……何?」


質問してるのに、何笑ってるんだ?そんなビルの顔があったから、本題に戻ることにした。


「レナスは、いつもと変わらなかったよ。ただ…」

「ん?ただ…?何かあった?」

「何かあった訳じゃないんだけど…。」


何処から話していいのか…。


「花が…増えてる気がするの…」

「……花…?」


思わず口から出たから、ビルが不思議そうな顔をした。


「ごめん、全然説明になってないね…。えっとね…」

「……うん…」


私は、一度深呼吸して、頭の中を整頓しながら話す事にした。


「心の扉は、人それぞれで、形も色も違うって説明はしたよね?」

「あぁ、うん。性格とか好きな物によっても違うし、変わるって言ってたな。」

「レナスの扉には、薔薇と、どこかで見たような、木に咲く花が描かれてるんだけど…。その花が日に日に増えてる気がするの。」


私は自分で言ってる言葉に違和感があった。
増えてるというより……


「多分…。増えてるんじゃなくて、どんどん咲いて行ってるのかも…。」

「それってどういう…。」


ビルの疑問は尤もだった。
扉は人の心を表す、模様が形を変えていくのは…


「その花がどんな花か、レナスにとって何を意味する物なのかは解らないけど…きっと…、レナスに、何かしら変化が起きてるのかもしれない…。」

「そっか…」


ビルは暫く天井を仰いで、何か考えてるようだった。
きっと、どんな変化が起こっているのか?そんな風に考えてるんだと思う。

考えても…解るわけじゃないんだけど…。それでも…やっぱり考えちゃうよね。

もし…、もし…、良くない変化だったら…

マイナスの…負の感情を纏った変化だったら…


ダンブルドア校長が言うように、目覚めない事を望んでいるとしたら…?


「おいッて!」


突然、ポコンと頭に触れたのは、ビルの軽く握った拳だった。


「大丈夫だって!レナスの事だから、良い変化に決まってる!」


だから、そんな顔するな。
最後に、そう続く言葉があったような気がする。



私の暗い考えを完全に読んだビルには…敵わないなぁって思った…。

不安な気持ちはあったけど、蝋燭みたいに、ぽっと優しく灯って暖かくなった気持ちがくすぐったくて…いつの間にか笑ってた。




「お前……今何て言った!!!」




突然の大声に大広間が静まり返る。声の主を皆の視線が追った。
もちろん、私もビルも例外じゃない。


それは、数人の…それも年上のスリザリン生を睨みつけた、緑の髪がツンツンと跳ねた、背の小さなハッフルパフの寮生の男の子。


ギルガ君だ……!



嫌な予感が体の中を這う。

慌てて駆け寄ろうとした時には、異変に気付いた生徒達がギルガ君と、数人のスリザリン生を覆い隠してしまっていた。


「ちょっと…通して!」


人込みを掻き分けようとした時、視線の端で、私と同じように人ごみを掻き分けるビルの姿があったような気がする。


「お前!もう一回言ってみろ!」

「何怒ってんだお前。俺はただ、ヴァルキュリアみたいな危険な奴が戻ってこなきゃいいって言っただけだろ。」

「そうだよ。お前噂知らないのか?アズカバン行きが決定して、地下に閉じ込められたヴァルキュリアは逆恨みして魔物呼び出した。その魔物が暴れて自滅。ってな。アイツはホグワーツの敵なんだぞ。」


ギルガ君の姿が見えるか見えないかの最中、そんな会話が聞こえた。


ドクンッと心臓が跳ね上がる。
締め付けられて、苦しい…。



「ギルガ君!!」


「おい!チビ!」



同時だった。
私とビルが、ギルガ君に辿りつく。



ギリギリと唇を噛むギルガ君が今にも飛び掛りそうな勢いだった。


レナスが半人間…、ヴァンパイアだとホグワーツの生徒は皆知ってしまった。ギルガ君を守る為に、敢えてアズカバン行きを決意して、このホグワーツまでもを守ろうとした。

だからダンブルドア校長は、魔法省にレナス逮捕を猛講義して、証拠を突きつけて、なんとか逮捕は免れた。

それは、他の生徒達も知ってる事。でも、それを信じる生徒は少ない。
それ程レナスは、自分がおぞましい生き物だと、見せ付けたのだから…。


目の当たりにした生徒は信じる事なんか出来るはず…ない…。


そして、その矢先にヴァンパイアに襲われてしまった。
けれど…、レナスをヴァンパイア達が狙っている事を、正直になんて他の生徒達に話せる訳もなくて…


現に、ダンブルドアは沈黙を守ったまま…



だから…他の生徒達に広がってしまっている噂が一人歩きして…


この通り……



「悪いのはヴァルキュリアだろ。」

「違う!レナスはそんな奴じゃない!」


嫌な予感がした。
他の生徒が、顔を見合わせながらヒソヒソ話してる。


その答えは簡単だった…。



「お前…、なんでヴァルキュリアなんか庇うんだ…?」



スリザリン生の目が鋭くなった。
きっと、他の生徒達も、ギルガ君に対してい同じ疑問を持っているんだと思う…。


ダメ…このままじゃ…。



「ねぇ、ギルガ君、放っておこうよ!」


思わず声を荒げ、ギルガ君の腕を掴んだ。けれど、思い切り腕を振り払ったギルガ君が私を睨んだ。


「嫌だ!」

「ギルガくん!!」

「俺!自分にできる事なんか少ないけど、レナスを悪く言うやつだけは許さない!」

「レナスはこんな事、絶対望まないよ!」


「コレばっかりは…例えレナス本人が、俺に怒り狂ったとしても…――」





【  絶対 譲れないんだよっっ!!  】





……………―――!!?





止めなきゃと思った




止めなきゃいけないんだと思っていた




でも…そんな正義だと思っていた私の感情が一掃された




≪譲れない≫





ギルガ君の絶対譲れないものを目の当たりにしたから…?




≪譲れない≫




その言葉が私の中に大きく広がって行く



「お前…確かヴァルキュリアに殺されかけた奴だよな…!殺されかけたくせに庇うのか?!」


「それ以上言ったら…マジ許さねぇ…」



ギルガ君の見据える先
その目付きが言っている



目の前に居るのは   敵   なのだと





【そうか…、お前もアイツと同じ、化け物だったっけな!】





咄嗟に体が動いた


≪許せない≫



訓練を行っていなかったら




背中から翼が顔を出して


≪赦さない≫



相手がホグワーツの生徒じゃなければ



≪ ユルセナイ ≫



命を――……





「ゲホッ…!てめぇッ…ッ…!!」






突然襲ってきた、悪魔の様な衝動から開放された



目の前に居た相手が消えたと思ったら、倒れて出血した鼻と口を押さえてる



「お前…いい加減にしろよ…」



低く唸ったのはビルだった。


拳を硬く硬く握ったソレを、相手めがけて振りぬいていたのだとその時初めて気付いた。



「レナスが地下で魔物を召喚しただと…?!ふざけんなっ!!」


「ちょっ…!ビル――!!」


今度はビルの腕を掴んで止めていた。
でも…きっと、ビルじゃなければ、私がしてたんだと思うのも本音だった。



「レナスは、ホグワーツを守る為に地下で戦ったんだぞ!それなのに!!」

「ビル…!!」

「レナスを心配するどころか、敵だとか言いやがって!」


「ビルってば…!お願いやめて!!」


背中にしがみ付いて止める私を、必死に振りほどこうとするビルが…暴れる力を徐々に抜いていくのがわかった。


「あんまりだろ…!」


振り上げていた拳をゆっくり降ろしはじめる。



「必死で守ったのに…!その守った奴等に…こんな風に蔑まされるなんて…」



【 あんまりだろ 】



視線を落とすと同時に、拳を下ろす



ビルの剣幕に誰もが固唾を呑んでるのが解る




殴られた当人でさえ、目を開いてビルを見てる



「あんまりだろ……」



胸が…痛い


締め付けられて   苦しい



レナスは…皆を守ったのに



守る為に あんなに頑張ったのに



伝わらない



きっと 伝えられない




「……そんなに、化け物って、ダメな生き物かな…。」



囁くような声が沈黙を破った。


「ギルガ…くん…?」


「俺も、レナスも…。ううん。半人間って呼ばれる人、全員。化け物かもしれない…。けどさ……!」


小さくて、幼い声だったけれど、
大広間にいる全員がギルガ君の言葉に聞き入ってるのが解った。


そして、ギルガ君のもうひとつの声が木霊した
きっと、それは、私にしか聞こえていない声…



≪化け物なのは…認めるよ…≫


「確かに、見た目は変わっちゃうし、頭の中に変な声聞こえたりすのは事実だよ…。だって…化け物だもん!」


≪俺も、レナスも…化け物…≫


「でもさ!半人間だって、感情はあるんだよ!悪口言われりゃ痛いし苦しい、楽しきゃ大口あけて笑うんだよ!」


≪俺等、ちゃんと生きてるんだよ≫


「笑うためにはさ…。人の何倍も努力しなきゃなんなくて、頭ん中の変な声に自分を奪われないようにしなきゃいけないんだ。」


≪毎日毎日、杖振って、同じ呪文を唱えて、やっと出来るようになって…。≫



「それでも、魔法省からなんて言われてるか知ってる…?」



≪努力して進歩したものを見もしない≫



【生きる意味も、存在する資格もない】



「必死で生きてる半人間になった事もないくせに…、どれだけの努力を重ねてるかも知らないくせに…」


≪頑張ってるのに…≫



悲痛な…訴えだと思った




「少なくとも…レナスは…してたよ…」



≪レナスは、いつだって頑張ってた≫



「俺は兎も角さ…、レナスが…皆に何したんだよ…」



「みんな、レナスが化け物だって知る前は、仲良かったじゃん!慕ってたじゃん!……友達だって…言ってたじゃん…」


≪俺は…≫





俯いたギルガ君の頬を伝って、キラリと光るものが流れた




それは、小さくて幼いギルガ君の






≪俺はレナスの友達だ!……だから……!≫





心の叫びと





「レナスが傷つく事…、もう…言わないでくれよ…」






絶対に譲れない 気持ち






****続く****

コメント(5)

更新、楽しみにしてました♪
ギルガくんの精一杯の真っすぐな気持ち…が心を揺さ振りますね。わかってくれる人が増えますようにと願いたくなりますね。
ギルガくん、ビルくん、カッコいいぞ!
大切な事、譲れない事ってあるもの。
揺るがない意思を持つって大変な事だけど、カッコいいと思います!
めいさん

ありがとうございます(*´∇`*)
こんなに長くなるとは思っていませんでした(T▽T)

わかってくれる人。人間が生きるうえで信頼というのが一番大切なんだと思います。

にしても…人の心を描くって難しいですね…(T▽T)
みけちゃん

レナスってある意味、すっごく世の中の嫌な部分だけ見てきちゃったと思うのよね。
だから、なんていうのかな、悪い意味でも良い意味でも、自分でやらなきゃ!みたいな性格というか…。

でも、そんな彼女を慕ってくれる友人が、ちゃんと居てくれたらって思ってたの。

その期待に彼等は応えてくれたんだと思う。
……というのを、レナスが気付かなきゃいけないとは思うんだけどね( ̄▽ ̄;)

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