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さしゃの二次小説(ハリポタ)コミュの本編第十七章 朔風5

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ハリポタ二次小説 レナスの物語

第十七章 「朔風」5 心の扉




―――――……。



『アルティア、呼び出してすまんのう』

『いいえ、良いんです。お話って何でしょう?ダンブルドア校長。』



『他でもない、レナスの事じゃよ。』

『……レナスの…?』



『レナスは、そのうち回復するじゃろう…』

『え?!それは本当ですか?!!いつ…?!』


『落ち着きなされ。いつとはまだ解らんのじゃ。しかし、例え肉体が回復しても意識が戻らん可能性が大きいのじゃよ…』

『な…!…どうして…?』


『細かい説明は後じゃ。君に、君にしか出来ない事を頼みたいのじゃ。』


『私にしか…出来ない事…?』



*********



「あれから、10日ですわね…」

「しかし…どういうことだ…?」

「私にも、何が何だか…」



ある日の早朝、男女が忙しなく話している。
心なしか、声を荒げるかのような会話がレナスの眠る部屋のもうひとつの部屋から響くようだ。



―― コンコン ――


ガチャリ――



「あの…、失礼します。」


恐縮しながらも顔を覗かせた生徒は、グリフィンドール生の制服を纏っている。
その声に反応するかのように生徒に目を向ける男女。


「あぁ…貴女だったの?」

「来ていたのか、フルーウェーブ。」




「はい…。あの…もう入っても良いですか?」




少し顔を見合わせるようにしているのは、朝薬を届けに来たスネイプと、レナスの全身の包帯を取り替える事を終え、その薬を受け取ったマダム・ポンフリーだった。


「校長に頼まれたからと言って、毎日こんなに朝早くからだなんて、貴女が参ってしまいますよ?」

「大丈夫です。私、自分が出来る精一杯をしに来ただけですから。」


アルティアを心配するマダム・ポンフリーだったが、アルティアが笑顔を返すと、「だったら…何も言わないけれど…」と、困った様に笑い素直に引き下がる。


「ところで、ディバインとウィーズリーは一緒ではないのかね?」

「はい。2人は昨日夜遅くまで必要の部屋で頑張っていたので、今日は眠っててもらうことにしました。きっとその方が、レナスも納得するかなと思ったので…。」


3人でレナスを見舞う。そうしたかったのは山々だった。
しかし、それぞれの目的の為。今は真っ直ぐ前を見据える事を誓った3人。


ビルは落ちた成績を取り戻す事。
ギルガは一人でも自分のパトローナスを呼び出して、一刻も早く半人間の血をコントロール出来るようになる事。



全ては、レナスと肩を並べ、手を取り合い、支え合いながら歩く為。



「ギルガ君とビルには後で様子を伝える事にしてるので、大丈夫です。」



そう…。
真っ直ぐ前を見据える事を誓っても、やはりレナスの様子が気になることに変わりは無い。
そんな時は、夜な夜な他の生徒が寝静まった時間を見計らって、集まる事が日課になっている3人だった。


例の、本当に必要な時にしか現われない部屋で。



【今度は…弱音を言ったりするだけじゃなくて…ね。】



心の中で、そう呟くアルティアだった。
それは、決意の表れなのか…?



「ではフルーウェーブ、後を頼んだぞ。」

「ちょっとスネイプ先生、まだお話が済んでいませんわ…!」


突き動かされたように、スネイプをマダム・ポンフリーが引き止める。


「ならばポピー、話は外だ。フルーウエーブが集中できんだろう。」


アルティア頭の中で忙しないと思ったとき、スネイプとマダムが廊下に出て行った。
アルティアの手がレナスの眠る扉のノブに手を掛けようとしたとき、廊下から2人の会話が耳に入って来た。



「回復に向かっているとはいえ、不思議で仕方ない事ばかりなんですよ?」

「やはり原因は不明か?」

「はい…。ヴァルキュリアはあの時、酷い出血だったのにも関わらず、翌朝には出血もすっかり止まって、むしろ顔に赤みがさしていたなんて…。」

「我輩の調合した薬は回復促進剤ではあるが、エネルギーそのものはレナス自身が生み出さねばならんものだ。生命力の弱ったレナスが急激に回復するなど有り得ん。」

「もしもヴァルキュリア自身が、その生命力を維持していたとしたら…?」

「ならばこの様に目覚めん事はないだろう。目覚めんからこそ、ダンブルドアはフルーウエーブに託した。」

「……せめて回復した理由が分れば良いのですが…。」

「その理由の如何んによっては…肉体は回復しても、このまま…、フルーウエーブの能力を持ってしても…、一生…意識が戻らない可能性も…」

「有り得ないことではない…ですわね…」


扉一枚隔てたのみの空間。
2人はアルティアに会話が筒抜けになっている事など知る由もない。



2人が出て行った扉を見つめながら、少しだけ困った様に笑うブロンドの少女。



そして、頭の中で想いが一巡りするのだった。



『確かに…あの時の翌日、レナスに会いに来たら、傷も完全に塞がっていたし…顔色もよかったっけ…。包帯が染まる事もなくって…真っ白だったのを覚えてる。』



アルティアは、レナスの眠る扉のノブを回し、ベッドで眠る親友の姿に目を向けた。



『そうそう…、今日と同じ様に、こんな風に眠ってた。その時はすごく嬉しくて…ギルガ君と一緒に…泣いちゃったっけ…』



傷は塞がった、回復した。しかし、10日前と変化なく眠り続けるレナスに複雑な思いを抱きはしたが、それでもレナスに歩み寄り、ベッド脇の椅子に腰掛けた。



『ダンブルドア校長がね、レナスの誕生日プレゼントに杖を贈りたいんだって。一緒にオリバンダーのお店に買いに行こうって言ってたよ。私やビルやギルガ君も一緒に来て欲しいって。』



【ダンブルドア校長は…。ううん。貴女のお父さんは、レナスが目を覚ますのを信じてるんだよ。】



それがダンブルドアの確信である事が、漠然と…しかしハッキリとアルティアには解った。



『でもね…。みんな…ビルも、ギルガ君も、スネイプ先生も、マダムも、マクゴナガル先生も…私も…みんな心配なの…』



レナスの額にそっと手を置くアルティア。
その正常な温もりを感じ、優しく瞳を閉じる。



『あれ…?誰か足りない…。あ、シオン君だ…。そういえば、あの日の夜中に、どこかに行ってしまったと聞いた。ダンブルドアのお使いか何か…なのかな…。あれから授業は他の先生が担当してる。ダンブルドア校長も何も言わないし…。』



優しい想いから一変し、再び瞳を開き眉間にシワを寄せる。



『まったく…!レナスがこんな状態なのに、レナスの使い魔であるシオン君が何処に何しにいってるの?!ビルもギルガ君も、誰よりもスネイプ先生がカンカンなんだから!』


そう強く思った瞬間に、アルティアの膨らんだ怒りの想いが急に萎んで消えた。


『でも…、多分、シオン君は知ってるんだよね…。レナスはちゃんと回復して、目を覚ます事を。…もしかしたら、シオン君が一番良く分かってるのかも…。』


【そうだよね…だって、≪シオン君≫なんだもの…。】


レナスの使い魔に半分呆れながらも、シオンと言う存在の大きさをアルティアなりに受け止める。


『そのうち…ひょっこり戻ってくるよね。』



軽く溜息を吐き



そして、掌に全神経を集中する。



校長からの頼みごと…。



それは…



【レナスの潜在意識に触れる事】




――――……。



『いつか、レナスの潜在意識に触れた事があるじゃろう?あの時は、レナスを連れ戻し、目覚めさせる事に成功したのう。』


『…潜在意識に触れて、レナスを連れ戻せれば…今回もきっと!!』


『いや…、決して無理に心の扉を抉じ開けてはならんよ。』


『え…?でも…それじゃあ…』


『分っておる。レナスを目覚めさせるに至らないのじゃろう?』


『はい……。』


『アルティア。君は、レナスの精神世界の扉を抉じ開けてはならん。触れてもならん。声を掛けてもならんよ。』


『じゃあ……一体、何をすれば…?』


『…ほんの数分間…毎日…ただ心の扉の前に居てほしいのじゃ…』


『ただ…扉の前に…?』


『そうじゃ…コレばっかりは…、その扉の向こうにおるレナス自身が気付かねば、意味が無いのじゃよ。」


『でも…』


『レナスは、自身を犠牲にする事ばかり考えておる。ギルガ・ディバインの一件が片付いた矢先に、地下での騒動とあっては、魔法省も黙ってはおるまい。』


『……………』


『アズカバンに行くよりも、このまま目覚めない方が皆の為。そう思うかも知れんのう。』


『そんな…!そんなの嫌です!!』


『じゃから、君に頼んでおるのじゃよ。』


『……………』


『レナス自身が気付き、それを乗り越え…そして…』


【ここに戻る為に】




――――……。



気を失ったままのレナスの潜在意識に働きかけられるのは…セイレーンの血が流れてるアルティアにしか出来ない。


体力も精神力も著しく消費する。


『私…何か出来るなら…どんな事でもしたい!』



全神経を集中させた掌に光が集中する



【お願いレナス…戻ってきて…】



そう祈るような気持ち。





ふわりと宙に浮いたような感覚がアルティアを包む




光一つ無い空間



この空間こそが、レナスの心の闇

そして、心の扉の存在する場所



最初こそ、この暗闇に驚いたアルティアだったが、今はソレにも慣れたようだ。
まるで浮遊するかのように少しずつ前に進んでいく。


常人ならば、何も無い暗闇ではなく、陽の光が灯ったように明るく快活な空間である事を知っていたからだ。

この暗闇こそが、ヴァンパイアとして、半人間として生まれてしまったレナスの闇なのだ。

恐らく、半人間として生まれた者達は皆この様な空間なのだろうと、アルティアの頭の中に刻み込まれたのだった。



ふと気付いた時には子守唄の様な音楽が聞こえてきた……




『オルゴール……かな…?曲が何かはわからないけど…』





アルティアが暗闇の中、左右を見渡す。
何も見えるはずの無い空間に、一筋の光が走った




『流れ星……』






目で流れ星を追いかけた先、流れ星が弾けて、散った




その直ぐ先で、再び流れ星が弧を描いた




そしてまた散った




また…また…  また…




複数の流れ星が同時に流れ、




同時に散った





散った光で少しだけ空間が明るくなる




そこに見えた一つの扉




『今日は…ここにあったんだね…』



心の扉は、空間の一所に留まる事はなく、毎回出現場所が違う。


扉の前に居る事なら難しい事ではない。
しかし、この扉を見つける事こそが、毎回至難なのだった。


『すぐに見付かってよかった…』


胸に手を当てホッと息を履き、地面も何もない空間に足を着ける。


レナスの心の扉から光が漏れる。
しかし扉の向こうに何があるのか…アルティアにも解らないでいた。


心の扉は人それぞれ形も色も異なる。
その者の心を映し出す鏡の役割もする。



血気盛んな者は赤く、物静かな者は白や青。
艶やかな人間は装飾も多いが、優しさに溢れた人間は丸みを帯びるなど、様々だ。


レナスの場合、
一般的に四角いものとは違い、上の箇所だけが弧を描いた形になっている。
漆黒の…まるで黒光りしているような美しい扉だった。


模様などは一切無い様にも見えるが、目を凝らすと、漆黒の中に更に黒く描かれた大輪の薔薇が右下に姿を現す。そしてもうひとつ花が…

左上に描かれているのは、木にそのまま成る花が満開に描かれている。せめて鮮やかに描かれた花ならいざ知らず、
黒で描かれた花の正体を、アルティアが解る筈もない。



その凛とした扉には一切のガラスなどはなく、銀色のドアノブだけが光って見える。


新しいのに、どこか古風で…黒い漆でも塗られたような造り。



『この模様…この花…どこかの…何かの本で見たことがあるかも…。もしかして…日本…とか…?…そんなはず、ないかな…。』



毎回、思わず扉に触れそうになる自分をぐっと抑える。




扉を叩く事は許されない

話しかけることも許されない

無理に目覚めさせる事も…



扉の向こうは
誰かがいる気配も、何かがうごめく気配も無い


ただ光が強く強く漏れ出している



『ここに来るようになって…、もう数日たっちゃったね…』


アルティアは、ただただ扉を見つめた。


『最初は、待ってただけかもしれない。レナスの事…。』


すると両の膝をつき、少し顎を引くと口元で両手を組み合わせ、静かに瞳を閉じた。





まるで、協会にある十字架を祈るように…






『レナスが…戻って来られますように…』




それは祈りの言葉




そして…


『私達……レナスの事…』






【  待ってるから…   】







大切な親友への  メッセージだった




****続く****

コメント(4)

早速拝見しました(^^)
アルティアちゃんの気持ちが痛いくらいに伝わって来て…切ないですね。
レナスが早く目覚めますように!
(今、最初から読み直してます♪)
心の扉がふすまタイプだった私が来ましたよ(笑)
はい、ガラガラって開けるタイプです(爆)


それは置いといて(笑)、アルティアの、そしてみんなの願い、レナスに届いて欲しい。
レナスは心の扉の中で、きっと戦っているのだと思うけれど、きっと届くよね…?

私もそれを信じて待ちます(*^-^*)
> めいさん

ありがとうございますわーい(嬉しい顔)
アルティアちゃんの気持ち…レナスに届けられるように、私も頑張って説得しますあせあせ(飛び散る汗)あせあせ(飛び散る汗)←あのレナス相手だとだいぶ時間がかかりそうですが(笑)
> みけスライムさん

確かに…みけちゃんはふすまタイプっぽい(笑)


レナスの心の扉の中では…きっと…

こたつでお煎餅バリバリ…なんて…
ことは無いとは思うけども…そうでないことを祈る(笑)

レナスがもう少し素直になればいいのになぁ〜あせあせ(飛び散る汗)あせあせ(飛び散る汗)

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