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さしゃの二次小説(ハリポタ)コミュの本編第十二章 特訓と成果12

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ハリポタ二次小説 レナスの物語

第十二章 「特訓と成果」12 お手本



「なんか…難しそう…。」

「言ったろ?高度な魔法。体得するのは難しいって。」


眉を寄せ、明らかに不安を漂わせる少年に、やっとの事でパトローナスについての説明を終えたレナスが、向き合う。


「兎に角、やってみよう。きっと出来るって!」

「うっす!やってみるっす!」


ホグワーツの制服を纏い、まだ生徒であるはずのワインレッドの髪の色をした講師。
その笑顔の励ましが、今の少年の小さな心を支えているのが解る。
彼は拳をギュッと握り、気合十分といった具合に、明るさを取り戻し、笑みをもらす。


この時、理解の悪い少年に対して、解り易く噛み砕く説明だけで、数時間を要してしまった。
必要の部屋には、一切窓が無い為、外がどれ程の闇に包まれているか解らない。
時間の感覚を唯一保つために出現した時計は、決して壊れないように完全に壁に埋まっている。
その針は、すで消灯時間をまわっていた。


ソレを横目で見チラリと見やったレナスは、寮に帰って休みたい気持ちと、思い切り吐き出したい溜息を強引に抑え、寒さ対策に羽織っていたローブを脱ぐ。
そして、袖元を直し、杖を握る腕に力を込める。


「ねぇ、レナス?シオン君…、じゃなくて、ウォルハさんが居ないのに、進めちゃって大丈夫…なの?」

「ウォルハさんなら、後で来るってさ。呪文と集中。それくらいだったら私達がやっても大丈夫。ちゃんと了承済み。」

「あぁ…そうだったんだ?私…余計な事言っちゃったね…。ごめん。」

「そんな事ないよ、ありがとう。」


もしもの事を考えての事だったのだろう、申し訳無さそうに肩をすくめるアルティア。
しかし、そんな親友に対して、笑顔と言う形で返すレナスだった。





「さぁて、始めますか。」

「おっし!KY!!」


本人は真面目なキリリとした顔で、到底そうは見えない、【気合の言葉】らしきものを発してくる。
レナスは疲労もあり、ヘナヘナと力が抜け、がっくりと項垂れる。


「……こ、今回は、何の【KY】?」

「え゛?!【訓練よろしく!】だろ〜?!」


手足をジタバタさせて訴える少年に、エネルギーを全て吸い尽くされていく心境の講師。

本当に、真面目にやる気があるのか…?
などと、内心呆れるが……何処か憎めないでいるレナスだった。


*******


「パトローナスは基本的に従順。けど、もしもの事もあるから、ちょっと気を引き締めていこうか。」

「わ、…わかった。」

「ギルガ君、心配しないで?それを止める為に、私達が居るの。だから、やる時には思いっきりやっていいんだからね?」


安心させるために小さな少年に、笑いながら話す2人の講師。




しかし、その笑顔は瞬時に消える。




赤い髪の合間から覗く視界を徐々に遮る様に、レナスはゆっくりと瞳を閉じた。


肺の奥底を冷やし、落ちつかせる様にゆっくりと呼吸を繰り返す。その息遣いと、時計が時を刻む音、これだけが広い部屋に木霊する。


そして、遮った視界に、流れ込んで来る。暗く何も無い、何も見えない空間を漂う意識。


そうして、彼女の集中力が増していく度に、部屋の空気がピリピリと張り裂けんばかりに緊張が走る。
まるで、イナズマでも落ちてきそうな…そんな、雰囲気だった。


もうハロウィンを過ぎ、あと一ヶ月もすれば、クリスマスという寒さを増してくる時期。

それにも関わらず、緊張のあまり力を込めて握った手の中は、じんわりと湿り、頬を汗が伝ってポタリと落ちる。

しかし、それ程の緊張は走りながらも、不思議と不快に感じない、アルティアとギルガ。両名は、彼女から目を放さずに居る。






―― カチ カチ ――



―― カチ カチ カチ ――






時を刻む時計の淡々としたリズムが響く。



静けさが覆い、いったいどれ程の時間がたっただろうか…。
恐ろしく長く、重たい時間が彼等に纏わり付く。






アルティアが時刻を確認しようと、時計に目をやる。
しかし、レナスが呼吸を整え始めてから、ほんの数分たらずしか経っていない事に初めて気付く。






「パトローナス召喚は、高度な魔法。それを扱うには魔力もそうだけど、【思い出】が必要になる。」


突然響く、聡明さと気高さを帯びた声。


体がびくりと跳ね上がる少年。
脅えている訳でもないのに、何故かその鋭い目付きと覇気に、圧倒され、体が強張る。


「思い出…?」

「そう【思い出】。人生で一番幸福だと思った事を思い浮かべる。」

「一番幸福な思い出、かぁ……。」


恐る恐る言葉を放つギルガ。今度は目を閉じ緊張して、ガチガチに固まった体に更に力を入れる。


そして、頭の中の引き出しを、片っ端からあさりだし、探す。


「そして唱える。【エクスペクト・パトローナム】。」

「エクスペク………ん…?」


呪文を唱え終わる前に瞳を開いたギルガ。
覚えられなかったのか、眉間に皺を寄せたまま固まってしまっている。



それを目の当たりにしたレナスは、心の底から反省する。




「ごめん。あたしが悪かった。そうだよね…。ギルが長い呪文覚えられないよね…うん。ごめん。」




「あ、ははははは……。」




張り詰めていた緊張の糸が音を立てて、ブツリと切れてしまった。



苦笑いをするレナスと、乾いた笑いと共に、気恥ずかしそうに頭を掻いてみせるギルガ。


「紙に書いて覚えてみる?」

「あ!それより、お手本を見せてあげた方が良いかも!」


アルティアがレナスの言葉を遮った。


「お手本って…私がやる……の?やらなきゃ駄目…なの…?」

「だって、レナスだったら出来るでしょ?」

「私のは……。」

「……?何か問題があるの?」


何故か視線を逸らし、杖を握っている割には、それを振り呪文を唱えようとはしないレナス。


「あ、アルが見本見せたほうが、良いかもよ?!」

「え?どうして?」

「い、いいから!!ほらほら、ギルが待ってるよ!!さ、さぁ!ど〜〜んと行ってみよう!!」


レナスは強引に、アルティアの背中を押す。
明らかに焦りだすレナスを不思議に思いながらも、アルティアは薦められるがまま、ギルガの前に立つ。


「なんか、緊張しちゃうな…。」

「アルティア姉ちゃん、よろしくね!」

「もう…。仕方ないなぁ…。」


あれよあれよと言う間に、アルティアはローブから杖を引き抜く。
ギルガとレナスに背を向け、構える。


胸の中のものを全てを払いのけるかのように呼吸を整える。
深く吸い込み、深く吐き出す。


瞳を数秒かけて閉じ。


内部世界に入り込む。


海よりも深く、空よりも高い空間。


彼女の意識が一筋の光をみつける。


手を伸ばし、掴む。



温かい




思い出






「【エクスペクト・パトローナム】!!」







言葉と共に杖先から放たれる光。




まるで杖から光の霧が溢れ、噴き出し





形を……現す……








「こんな感じ…かな?」






照れくさそうに、杖を下ろし、振り返る。





「す、すげーーー!!!」




目をキラキラさせながら、ギルガが、アルティアに駆け寄り、ソレを見上げる。


その瞳には、アルティアのパトローナスであるソレが、しっかりと映し出されている。



「なんか、煙が集まったみたいな感じなんだな。」


ギルガが、パトローナスに近寄り、人差し指で、ちょこんと付いてみる。
しかし、触れた指には何も感じる事は無く、煙にゆらりと波紋だけが広がり、一瞬パトローナスの形の煙を変える。
しかし、またふわりと元の形に留まろうと、霧はゆらゆらと揺れる。



「パトローナスは、形を具現化させるだけでも大変なの。もっと高度な魔法使いだったら、具現化させるだけでは無くて、実際にその場に居るように扱えるの。まるでペットや使い魔みたいにね。でも…今の私には、これが限界。」


少し困った様に笑うアルティアだった。


しかし、その後ろで、目を見開いたまま静止している。
指一つ動かせず、瞬き一つ出来ない、赤い髪を携えた生徒。




「アル……この、パトローナスって……。」

「え?なあに?」


「なんで……」




息を呑む。執拗に喉を濡らし、緊張を抑えようとする、生唾が止まらない。





「なんで………?」





そこに佇む、霧の集合体。




パトローナスは獣の形。



犬や、猫を持つものもあれば、ユニコーン、ペガサスといった幻獣を持つ者も少なくは無い。

実際に存在する事の無い神獣、妖獣などを持つ者もいる。




しかし………




「これって……人型…だよな…?」




「え?うん……そうだけど。」




最初から目にしていたもの。



その煙の集合体に映し出された、アルティアのパトローナス。
ふわふわとした青く長い髪。
透き通るような白い肌。
鋭くキリリとしたうっすら青みがかった瞳がレナスを捉え、フルンとした唇があがり、微笑む。
鳥肌が立つ程の美しい女性の姿。



しかし、変わった点がいくつかある。



そのフワフワとした長い髪からは水が滴り、頬を伝っては数滴、ぽたぽたと滴る。
しかし、滴ったはずの水滴は、床にたどり着く前に、まるで蒸発してにしまうかの様に、消滅していた。

衣服は、白い服を纏っただけの格好。しかし、衣服は濡れる事はなく、水滴をはじく。素肌は濡れているにも関わらず、衣服を濡らさない。

巻きつけただけのスカート状になた足元からは、ほっそりとした太ももがチラリと覗き、胸元も肌蹴ている。
なんとも、魅惑的なスタイル。そして、身長はレナスよりも高い。





「もしかして…これって…【ウンディーネ】…?」




****続く****

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