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最強(をめざす)ゼミ@WLSコミュの第4回目 一問目

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【演習問題3】
A市の街並み条例によれば、一定の区域内でマンション等の高層建築物を建築する場合には、市の建築主事に対し建築確認の申請をするに先立ち、市長の同意を得なければならないと定められている。Xは、右の区域内にマンションの建築を計画し、市長に同意を求めたところ、近隣住民の反対があるとの理由により同意が得られなかった。そこで、Xは、そのまま市の建築主事に対して建築確認申請をしたところ、建築主事は、Xに対し、市長の同意書の提出を求め、当面建築確認を留保する意向を示した。A市は、Xに対し、どのような場合に国家賠償法上の責任を負うか。(司法試験1996年?)
 
【論点】
1 行政指導としての建築確認の留保
2 国家賠償法1条の要件

【出題の意図】
 本問もベースになっているのは、最判昭和60・7・16の「品川区マンション建築確認留保事件」のようである。ただ、判例では建築指導要綱に基づく行政指導であったが、本問では条例を根拠にしている。こうした点を踏まえて、国家賠償法上の違法性をどのように考えるかが問われているものといえよう。

【解説】
1 街並み条例の定める「同意」の性質
 A市の条例は、「一定の区域内でマンション等の高層建築物を建築するには、市の建築主事に対し建築確認の申請をするに先立ち市長の同意を得なければならない」と定めている。建築基準法6条は、本問の出題された平成8年(1996年)と現行法とでは、少し条文が変わっている 。具体的に示すと、建築基準法の規定、その他政省令や告示、及びこれらのに基づく条例、これらを「建築基準法令の規定」といい、この建築基準法令の規定に「その他の他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるもの」を加えたものを「建築基準関係規定」といい、これらが建築確認や検査の際に審査対象となる規定である。この改正は、従来の確認対象法令をより明確にするために政令で位置づけたものであり、内容上大きな変化がある訳ではない。(その意味で、本問の解答をするに当たって、支障のある改正とはいえないので、現行法を想定して解説を加えておく。)
 ここで想定されている条例は、建築物の敷地、構造又は建築設備に関するものについてであって、本問の条例のように「市長の同意」を想定していない。したがって、この条例は建築確認の際の「確認対象法令」には属さないものといえよう。換言すれば、建築主事は、同意書の提出がなければ建築確認ができないというものではない。
 それでは、市長の同意書を求める本問の条例のこの部分は効力を有せず、私人Xを拘束しないのであろうか。思うに、条例のこの部分は全くの無効というのではなく、市長の行政指導に根拠を与えるものと解することはできよう。つまり、同意書の要求は行政指導に当たると解すべきであろう。

2 建築確認の留保
 建築確認は法令に基づく申請の行われるものであるから、行政手続法上、事前に審査基準を作成し、標準処理期間を設定し、それを公にする必要がある(5,6条)。建築基準法6条4項は21日以内と規定している。この期間を徒過すれば違法となる。問題は、Xの同意なき申請をどう考えるかである。つまり、建築主事の行政指導が21日を徒過した場合、直ちに違法となるのかどうかである。
 この点で注目されるのが最判昭和60年7月16日(民集39巻5号989頁、行政判例百選110事件)である。最高裁判所は、Ⓐ建築主が行政指導に応じない旨を明確に表明しており、ⒷXの不利益と行政指導の目的とする公益上の必要性とを比較衡量して、Yの不協力が社会通念上正義の観念に反するような特段の事情がない場合には、建築確認の留保=行政指導は違法であると判示した。この判例は、その後、行政手続法33条に明文化された。(もっとも、行政手続法3条2項により、自治体の処分・行政指導については行政手続法の適用が無い点に注意せよ。cf.38条)多くの学説も、この立場に賛成しているので、上記ⒶⒷの要件がない場合には、本問の建築確認の留保は違法性を帯びるものと解される。しかし、この違法性が国家賠償法上の違法性と直結するわけではない。

3 国家賠償法上の違法性
本問のXの国家賠償請求が成立するためには、建築主事の行為(建築確認の留保)が違法と評価されることがひとつのポイントである。もっとも、国家賠償法上、違法といえるためには、それによって失われた利益や行政指導の必要性、当該条例の実施状況などの相関関係の中で違法性が評価されるべきであるが、その際、建築確認の留保がそれ自体として違法性を帯びるかどうかは大きな意味をもつ。
 建築基準法の定める21日以内の法定期間は、必ずしも絶対的なものではないとみるべきであろう。また、行政手続法33条は直接適用されないが、最高裁判例及び行政手続法33条の内包する趣旨(Xの不服従の意思の尊重)は尊重されるべきであろう。本問の行政指導は、いわゆる調整型の行政指導(大浜啓吉・行政法総論249頁)で、且つ条例に根拠をもつ行政指導であるから、付近住民との利害調整に必要な期間は行政指導の実効性を担保する意味でも正当なものと評価すべきであろう。しかし、調整が不可能であることがはっきりした場合、あるいは、Xが行政指導に応ずる意思のないことを明確に表示したような場合には、その時点から行政指導は違法性を帯びると考えるべきであろう。

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