私のカプースチンとの出逢いは今から20年くらい前に遡ります。Voice of America(アメリカの国際放送)のジャズ番組で Vagif Mustafa-zede(1940-1979、アゼルバイジャン人でソ連最高のジャズピアニストと讃えられている)の音楽を聴いたことがきっかけです。ソ連にも実は素晴らしいジャズがあったことを知って衝撃を受け、メロディアレーベルを取り扱っている新世界レコード社に足を運んでは「ジャズ」にカテゴライズされたLPを買い集めていました。その中の1枚が1986年にリリースされたカプースチンのソロアルバム(写真)だったというわけです。
当時、Voice of America のジャズ番組(Jazz Hours)で案内役を務めていたのはウィリス・カノーヴァーでした。東西冷戦時代にあって鉄のカーテンの向こう側に電波でアメリカのジャズを送り続けたいわば「ジャズ伝道師」の役割を果たした人で、ソ連、東欧圏におけるジャズの歴史を語る上で絶対に外せないキーパースンです。カプースチンがもしVOAの番組でジャズの魅力に触れることがなかったら、と思うと興味深いものがあります。