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おもしろ歴史館-新裏太郎山通信コミュのマガジン第十七号1882(明治15)年、1月20日わが国最初の生命保険金受取

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1月に起こった歴史上のできごとを探していたところ、上記の様な項目が目にとまりました。この日はまた、「保険の日」でもあるそうです。今年最初の1号に相応しい内容どうかはわかりませんし、私事ですので若干気が引けますが、数年前にいくつかの保険を整理した身にとっては、興味を引く内容でしたので、今号のテーマとします。
それまでは、就職した直後、勧められるままに、あまり意識もせずに保険(1)に加入していました。このところの一連の保険金不払いとそれへの監督庁の甘い対応を見るにつけ、もっと早く(自分が、ということです)対応していれば、と少し悔しい気がしています。因みに、私が解約した保険会社も、金融庁のリストアップした「不適切な」処理をした会社に含まれていました。
さて明治の様々な近代化策は、政府主導の他、いち早く欧米の資本主義を学んできた民間人からももたらされました。今日の様な仕組みの保険会社も、前年明治初期1881(明治14)年、福沢諭吉の門下生によって産声を上げます。その時から今日まで、ざっと概観することによっても、日本の近現代史の姿が浮かび上がってきます。さて本題に入る前に、まずは枕から。

はじめに
先日の成人式の様子を、ローカルTVニュースで見ました。ど派手な服装やいかにもウケを狙ったのが見え見えのパフォーマンスにはいささか辟易とはしたものの、見た目と違って、今の社会情勢に対して意外にもまじめにコメントしていました。
まあ、それはそうでしょう。ここまで雇用状況が悪化し、自分たちの未来に暗雲が立ちこめているのですから。アメリカ発のサブプライムローンの破綻とそれに続く金融恐慌が直接的なきっかけでしょうが、もう少し見ていくと、真の「戦犯」は、小泉元総理以来の「規制緩和」も挙げなければならない事は、多くの識者の指摘する通りです。しかしわたしの知る限り、一般のマスコミは、小泉以降の安倍や福田、麻生と続いた各総理のお粗末さは批判しても、小泉の「民間にできることは民間に」という威勢のよいキャッチフレーズがもたらした弊害に言及する論調はあまり報道していないようです。多少の例外として、旗振り役を務めていた中谷巌が自己批判(2)したことなどは伝えられていますが、なかなか踏み込んだ報道には出会えません。なおここで敢えて規制緩和を「」付で使うのは、あくまでも大企業にとっての「規制」の「緩和」でしかないからです。学校現場などではむしろ、上意下達の締め付けはむしろ強化されています。
その「規制緩和」の最たるものの一つが派遣業です。派遣業といえば聞こえはいいかもしれませんが、体のいい労働者給与のピンハネ業を法的に認証したに過ぎません。ひどい場合は、昨年来売れている小林多喜二の『蟹工船』の現代版や消滅したはずのタコ部屋の再来とおぼしきひどいものもあるようです。
民主的な社会では、少なくともチャンスは平等であり、競い合ったとしても人は助け合うべきであるべきという前提があるはずですが、それを崩し、弱肉強食の、ルール軽視の際限ない競争に追い立ててきたのが「規制緩和」と定義しても良さそうです。
それは、人材派遣業にとどまりません。弊害はあちこちで露呈していますが、最初に述べた保険会社の一連の不払い問題も、「規制緩和」といった側面からも読み解くことができます。アメリカの圧力を受けて、外資系の保険会社が一気に参入してきたことは、10年ほど前からTVCMでもよく目にする様になってきました(3)ので、ご案内の通りです。保険業界でも競争の激化がもたらされました。加えて、バブル崩壊とそれに続くゼロ金利政策で、保険会社の利益率は一気に低下していきました。
保険会社はそれにどう対処しようとしたか。あろう事か本来支払うべき保険金をごまかして支払わずに済ませようとしたのです。中でも明治安田生命のそれはひどく、金融庁からも名指しで批判(4)されています。何せ、長年掛け続けてきた契約者に、保険金を支払わないという、いわば詐欺行為を働いたわけですから。これはもう不祥事というより、保険会社の根幹に関わる犯罪です。こうした重大な法令違反について、金融庁は「業務改善命令」という行政指導で対処しました。国会でも国政調査権を用いての証人喚問は行われましたが、詐欺行為としての告発はされませんでした。
余談です。それにしても同社のTVCMは、うまいですね。家族の絆を真正面からとらえた映像と、小田和正の『時を超えて…』『あなたにあえてよかった…』などの透き通った声がうまく被さり、何かとても暖かな雰囲気にさせられてしまうのです。とても、犯罪的行為をしてきた会社とは思えません。イメージ戦略のすごさと怖さを改めて感じます。お前の感覚が甘いといわれればそれまでですが。
保険会社の嚆矢
明治安田生命は、2004年に合併してできましたが、前身はその名でわかる通り明治生命と安田生命です。それぞれ三菱、安田といった旧財閥の核をになった金融機関の一つでもあります。合併するまでは、それぞれ、どちらが日本最古かの本家争いをしていました。(もっとも双方とも、明治生命を日本に於ける近代的生命保険会社の嚆矢としていました。合併で本家争いは自然消滅します。
日本の保険は、当初東京海上の船舶損害保険としてスタートします。殖産興業の担い手である海運業振興という目的でしたので、深く国家が関与しました。しかし、生命保険はそうではありませんでした。したがって、なかなか浸透しなかったようです。福沢諭吉は、その著書『西洋旅案内』で
「災難請合とは商人の組合ありて平生無事の時に人より割合の金を取り万一其人へ災難あれば組合より大金を出して其損亡を救う仕法なり其大趣意は一人の災難を大勢に分ち僅の金を棄て大難を遁るる訳…」として、原理を明快に説明しています。福沢門下の阿部泰蔵らが、これを実践すべく設立したのが明治生命というわけです。
因みに、先に紹介した受取人の第一号となった川井という警察幹部だそうです。
「右川井氏より同社へ払い込みし保険料は僅か三十円ほどなれば、差引九百七十円は同社の損亡なれど、畢竟生命保険は不幸短命の人のために設けられたるものなれば、その効用始めてあらわれたりといふべし」
(5)と、その利点を解説しています。
徴兵保険
この二社に続いて、その後相次いで生命保険会社は設立されます。今日でも大手として有名な日本生命も明治期設立です。その後、生命保険会社は徐々に日本社会に浸透していきました。そこで大きな役割を果たしたと思えるのが、各地の代理店です。
上田小県地区では、明治以降蚕種業者が銀行を中心とした金融業に深く関わっていたことは知られていますが、保険業の代理店としての業務も展開しています。蚕種業を生業としていた旧家に残る領収書類や会計簿で目を引く物の一つに、保険業に関わるものが多数ありました。ただ銀行設立などに比べて研究がほとんど進んでいないのが実情ですので、今後の大きな研究課題の一つといえるでしょう。
ところで近年外資系の保険会社が林立したこともあったりして、聞き覚えのない会社名が次々に誕生しています。そこで、生命保険協会による「生命保険会社変遷図」に目を通してみました。見ていて発見したことですが(今更ながら、恥ずかしい)、徴兵保険という会社の存在です。ざっと四つほどもありました。
1998(明治31)年 徴兵保険→東邦生命→AIGエジソン生命
1911(明治44)年 日本徴兵保険→大和生命保険
1922(大正11)年 国華徴兵保険→第百生命→マニュライフ生命
1923(大正12)年 富国徴兵保険→フコク生命
この他にも「徴兵」の名を冠して無くても、多くの生命保険会社が徴兵保険を扱っていましたので、当時としては一般的な保険だったようです。徴兵保険とは文字通り、
「被保険者が兵役に徴せられたときに保険金を給付する」もので、「15歳6ヶ月以下」(6)の男子に掛ける保険金でした。これらの保険会社の設立は、日清戦争、日露戦争、さらには第一次世界大戦後です。日本の近代のあゆみは、体外戦争の歴史でもありましたので、戦争の度毎に徴兵保険のニーズが高まったのでしょうか。いうまでもなく徴兵とは死に直結するもの、仮に運よく生き残ったとしても兵役の期間は一家の大切な労働力が奪われます。大変な痛手です。語弊があるかも知れませんが、そこに漬け込んで業績を伸ばしていたのですね。しかも、これらの会社は全て戦後そのまま残りました。ただ、徴兵保険が如何なるものかや、その評価については、『国史大辞典』(吉川弘文館)にも『日本歴史大事典』(小学館)にも、項目が見つかりませんでした。社史などに当たればいいのでしょうが。
さて靖国神社の境内案内図を見ますと、大灯籠の説明が出ています。それによりますと、富国徴兵保険相互会社(現フコク生命)が、寄贈したものとのことです。また、第二鳥居奥ある門は、第一徴兵保険会社(徴兵保険会社改称、現AIGエジソン生命)が寄贈したとのこと、加入者が相次いであげた利益の「社会還元」だったのですね。なお、フコク生命は、靖国神社境内に本社社屋をもっていました。また立ち退きに際しても、同社が多額の金銭的な援助をしたことも忘れるべきではないでしょう。
これら生命保険会社が、徴兵保険を現在どう扱っているか調べたのですが、全くといっていいほど、見当たりませんでした。富国生命に至っては、公式ホームページにも、簡単な沿革すら載せていませんでした。
入営者と戦死者の激増してきた1940年代以降、支払いはどうなっていったのか、また敗戦によって存在自体が無意味となった徴兵保険ですが、それまで積み立てていた被保険者にどのように説明したのか、大いに気になるところです。

さて生命保険といえば、私たちの子どもの頃のCMは、「ニッセイのおばちゃん」(お姉さんではなく、おばちゃんにした演出が、「庶民」向けだったのか)シリーズでした。人と人との暖かい結びつきをというコンセプトで、商売臭を感じさせない作りだったと覚えていますが、当時すでに、地域の結びつきが弱体化しつつあり、なおかつそうしたふれ合いを懐かしむ人々がいたからこそ受け入れられたCMだったのでしょう。ますます「合理化」の進む現在、果たして「おばちゃん」は生きながらえているのでしょうか。
今日も保険会社のCMが繰り返し、流されています。一見ユーモア溢れる明るいイメージ先行です。しかしその反面、保険金をめぐる殺人事件も起きています。その多くが、従業員や何らの血縁関係もない他人に保険金を掛けて、その「投資」した分を取り戻すための殺人です。こうした事件を耳にする度に、保険会社の経営姿勢に大いに疑問を感じます。そこに犯罪の可能性があったとしても、利潤拡大のためには、一切を問わないという不文律でもあるのではとまで、感じてしまうのです。
ドイツのワイマール憲法以来、社会的弱者の生存権は、本来社会全体で責任を持つというのが近代市民社会の到達点だったと思うのです。そうした成果を蔑ろにしてしまっているという点もまた、「規制緩和」の大きな綻びの一つとして糺されるべきでしょう。
(1) 保険は、通常生命保険と損害保険とに分けられるもののようですが、一つの保険会社がそれにとらわれないいくつもの商品を扱い、また特約などの商品の複雑化もあって、厳密には分けられないと思い、ここでは敢えて曖昧にしたままにしました。
(2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング「中谷巌のコラム」より
私が昔、「改革」の積極的な推進者であったことを自戒する内容であったことから、思いのほか、世の中から大きな反響をいただいた。「何をいまさら」という批判、「中谷は守旧派になったのか」という批判など、反響の中身はきわめて多様であった。改めて世の中に「発信」することの責任の重さを感じさせられた次第である。(中略)
 繰り返しになるが、「なんでも市場に任せるべき」「国がどうなるかは市場に聞いてくれ」という新自由主義的な発想に基づく「改革」は、無責任だし、危ないのではないかということを強調したかったのである。実際、グローバル資本主義は巨大なバブル崩壊を招来し、世界経済に多大の損害を与えたし、平等社会を誇っていた日本もいつの間にかアメリカに次ぐ世界第2位の「貧困大国」になってしまった。そのほかにも、医療難民の発生、異常犯罪の頻発、食品偽装など、日本の「安心・安全」が損なわれ、人の心も荒んできたように見える。これを放っておいてよいのかという問題意識である
(3) 特に目立つのが、アフラックなどの外資系保険会社です。また、医療保険や医療特約などのCMの多さも気になります。日本の健康保険は、国民皆保険で社会保障の一環として整備してきたはずなのですが、数年前から本人負担を3割に増やしたり、「後期高齢者」なる陳腐な造語を用いて負担を一気に重いものにして国民からの批判を受けていますが、これらの施策と保険の規制緩和によるCMとが軌を一にしている気がしています。テレビ番組を制作している会社の友人から教えてもらったことですが、TVCMほど、社会の動きを伝えているものはないそうです。
(4) 金融庁のホームページ
(5) 萩谷朴『歴史366日』新潮選書
(6) 『富国徴兵保険相互会社定款』
今号のお薦め本
『羊の歌』岩波新書(1968初版) 2008年で47刷 
先頃無くなった加藤周一の、幼少から信州上田の結核療養所で勤務医として敗戦を迎える頃までの回想録です。より正確な表業現を心掛けようとしているためか、若干もってまわった様な表現が独特の文体を形成し、魅力的です。その優れた慧眼ぶりにも惹かれます。2,26事件、太平洋戦争開戦、8月15日などの歴史的大事件の日に、筆者や周囲の人々が何を考え、どう行動していたかも興味深く読むことができます。
『「君が代」の履歴書』川口和也 批評社 
お薦めしておきながら、実は未だ読んではいないのでなんですが。私も会員となっている『歴史地理教育』2009,2月号に、筆者自身が「歴史研究最前線」という記事で、驚くべき事実を検証しています。「君が代」は、江戸時代大阪堺の遊里で、男女和合の歌として歌われ、大奥でも正月儀式で歌われていたというのです。目から鱗でした。記事最後で、「拙著も参考にして頂ければ」と、控えめに紹介していました。

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