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千夜一夜の物語コミュのおもちゃの国の王様

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ウガジンさんの作品です。
(眠れぬ夜の物語コミュ殿堂入り作品)


【おもちゃの国の王様】

むかしあるところにおもちゃの国とよばれる国がありました。

国じゅうのひとびとはまいにちおもちゃづくりをしています。
おもちゃをつくるには、たくさんのぶひんがいるので、
おおぜいの人が手わけしてなん日もかけてつくるのです。

この国の王様はおもちゃが大すきで、おきているあいだはずっと
おもちゃで遊んでいました。
まいにち新しいおもちゃをほしがるので、国のひとびとは
いつも大いそがしです。

きのうはリンゴをムシャムシャ食べる人形を...
きょうは1じかんごとにおかしのたまごを産むにわとりを...

よていの日までにつくりあげるため、人々は休みなく
はたらかなければいけません。
おうさまは、どんなおもちゃも1日あそぶとあきてしまうからです。

でも、王様には大のおきにいりのおもちゃがあるんです。
あたらしいおもちゃがまにあわないとき、いつもあそんでいるのは、
となりの国の王様にもらった『きかいでできているカナリヤ』。

カナリヤは、ぜんまいというしくみでそれはそれはうつくしい声で
歌をうたってくれるので、おうさまはつぎのおもちゃができるまで
その声にききほれていたのでした。

ところが、ある日のこと、
けらいがいつものようにカナリヤのぜんまいをまいてボタンを押すと
「ガリガリ」という音がしてうごきません。
いつまでたってもうつくしい声がきこえてこないので、
王様はプンスカおこりだしてしまいました。

「わしのカナリヤはなぜ歌ってくれんのじゃ?
 だれか直せる者はおらんのか?」

カナリヤを直すために、国じゅうのしゅうりしょくにんがよばれ、
なん日もかけてしゅうりのしごとがおこなわれました。
でも、どんなにうでのいいしょくにんたちにみせても、
だれもなおすことができません。

こまった王様はとなりの国の王様に手紙をかきました。
となりの国の王様はすべてのたからものをひとにあげてしまうような
やさしい人ですからきっと力になってくれると思ったのです。

「あなたにもらったカナリヤが動かなくなってしまいました。
 どうしたらまた歌うようになるでしょうか?」

なん日かたったある日、となりの国からウィークという名の男が
やってきました。
手紙をよんだとなりの国の王様がつかいによこしたしゅうり
しょくにんです。
まちかねていた王様はしらせをきくやいなや、すぐにむかえにでて
いきました。

ところが、王様の前にはまっ白なかみの毛とひげをたくわえた
おじいさんしかいません。

「やあ、よくきてくれた! ところでウィークとやらはどこじゃ?」

すると、ゆっくりとこしを上げたおじいさんがこたえました。

「ウィークはわたしですじゃ、王様...」


王様は、となりの国の王様がいじわるをしてとしよりのしょくにんを
つかいにだしたのだと思い、たいそうふきげんになりました。
そしてウィークに休むじかんをあたえず、
さっそくしゅうりをはじめるようにめいじたのでした。

それから3日かんのあいだ、ウィークはねることもゆるされず、
わずかなしょくじのあいだだけのきゅうけいでしゅうりのしごとを
つづけました。

4日めの朝のことです。
ウィークはさぎょうべやからでてくると、王様をよんでくださいと
かすれたこえでつたえました。

おうさまがねぼけまなこででてくると、ウィークはふるえる手で
カナリヤをわたしました。
王様は、どうせだめだろうと思いながらもぜんまいをまき、
ボタンをおしてみました。


するとどうでしょう、あれほど動かなかったカナリヤがゆっくり
動き出し、またうつくしい声で歌をかなでるようになったでは
ありませんか!

しかも、まえよりずっとかろやかに... おおきな音で...
すんだひびきはまるで月のひかりのようです。
そのねいろは王様のこころにゆっくりとしみこんでいくのでした。

「ウィークよ、でかしたぞ! なんでもほうびをやろう。
 えんりょなくもうせ! なにがほしいのじゃ?」

ところが、ウィークはまんぞくげな顔で首をふりました。

「おそれながら、王様... 
 わたくしはほしいものは何でもわたくしの国の王様から
 いただいております。

 何もいりませんが、このカナリヤを長くたのしむために
 3つだけやくそくしていただけますか?」

ウィークは、やくそくを紙に書いて王様にわたすと、
そのままふらっと石のゆかにたおれこんでしまいました。

けらいたちがあわてて起こそうとしましたが、
かなしいことに男は、もういきをひきとっていました。
あまりにつらいしごとだったために、としとったしょくにんの
からだはたえることができなかったのです。


紙をひらくと、そこにはこう書いてありました。

 1. 3じかん歌わせたら1じかん休ませてください。
 2. 6にちつかったら1にちやすませてください。
 3. 歌わせたあとにはかならずあぶらをさしてください。




王様は、となりの国の王様におわびの手紙をかきました。
そしてウィークのはいったひつぎといっしょにとなりの国へ
おくりかえしたのでした。

となりの国の王様からは、つぎのようなへんじがかえってきました。

「ウィークは国いちばんのしゅうりしょくにんでした。
 さいごにせかいのたから『きかいでできているカナリヤ』に
 いのちをうつすことができて、さぞまんぞくしたことでしょう。
 そして、カナリヤをなおせるしょくにんはせかいじゅうに
 もうだれもいなくなりました...」

それを読んだ王様の目からは、なみだがポロポロとこぼれて
とまりませんでした。
じぶんのこころのせまさをはずかしく思い、となりの国の王様の
ひろいこころにかんどうしたのです。



それから王様はやくそくをまもり、きちんとカナリヤを休ませ
あぶらをさすようになりました。
するとカナリヤは2どとこしょうすることもなくなり、
いつでも国じゅうにきこえるほどすてきなひびく声で歌うように
なったのでした。

ウィークのりっぱなしごとに、いたくかんしんした王様は、
いつしかカナリヤとおなじように国のひとびとを休ませるように
なりました。

3じかんはたらいたら1じかん。
6にちはたらいたら1にち。

そうすると、みんな元気にはたらけて、いままでよりもたくさん
こしょうしないおもちゃをつくれることがわかりました。

まいにちあたらしいおもちゃをもってこさせることもやめて、
すごいおもちゃができたときだけ見せてくれるようにいいました。
そして、すばらしいおもちゃを作ったものにはあぶらのかわりに
ほうびをとらせることにしました。

そうすると、なん日あそんでもあきない、たのしいおもちゃが
つくられることもわかってきました。

おもちゃの国はたくさんのおもちゃをとなりの国へプレゼントできる
ようになり、かわりにとなりの国からいろんなものがおくられてきました。
そのおかげで、王様も国のひとびともゆうふくにくらせるように
なりました。



それからなん年かたって、ほかの国もおもちゃの国のやりかたを
まねするようになったんですよ。

6にちはたらいたら1にちやすむ...

いっしゅうかんのことをえいごでウィークと言うのをしってますか?
もしかしたらあのしゅうりしょくにんの名前からつけられたのかも
しれませんね。


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『風船になった王様』の続編です。

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