25週
9/15〜9/21
やっと自分をとりもどす。
私の内部の光が今
空間と時間の闇を照らす。
森羅万象が眠りにつこうとするとき、
魂は深いところから目覚めはじめ
内部に引き受けた陽光の熱を
冬の寒気の中へそそぎ込む。
(Rudolf Steiner 高橋 巌訳）
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毎年、夏の終わりのこの季節、
陽が沈む頃になると
鈴虫やコオロギといった
秋の虫達の涼しげな音色が響き渡っている。
まるで、虫たちのシンフォニーである。
昨夜は、唱歌『虫のこえ』
を思い出した。
「あれ松虫が 鳴いている
ちんちろ ちんちろ ちんちろりん
あれ鈴虫も 鳴き出した
りんりんりんりん りいんりん
秋の夜長を 鳴き通す
ああおもしろい 虫のこえ」
ずーっと聴いていると
まさに、秋の夜長を 鳴き通す
ああおもしろい 虫のこえである。
さて、シュタイナーの人智学を学んで、
最初に驚いたことの一つは、
「子供は親を選んで生まれてくる」ということである。
自分自身にこのことを置き換えて考えると
自分は、この両親を選んで生まれてきたのかと
思うと「なるほど」と考えさせられる。
さらに、自分の子供も私たち両親をよくぞ
選んで生まれて来たのかと感慨深く思う。
このように、子供の魂は地上に生まれる前に、
自分の素質を生かすにふさわしい
身体を提供してくれる男女を両親として選ぶというのである。
このことについて、『人間理解からの教育』（Ｒ・シュタイナー 西川隆範訳）
の中で以下のように述べている。
「すでに生まれるまえから、
生まれようとする人間は霊界から働きかけている。
ですから、まったく自分に合わない身体を得るということはない。
しかし、たいてい、そのような身体に、
きちんと入れないのだとのことだ。
手袋が手にぴったり合わないように、
一般的な身体は心魂に合わないのだ。」（『人間理解からの教育』ｐ２６）
「霊界から下ってきた心魂は不器用です。
私達の心魂は不器用です。
私達の心魂は、地上に下ってから外的な自然に精通していかねばなりません。
子供の行儀の悪さは喜ばしいものなのです。
もちろん、私達はすこし俗物になって、
行儀の悪さをすべて見過ごすということのないようにしなくてはなりませんが、
いかに霊が地上の魔物によって苦しめられているかを、
たいていの子供に認めることができます。
子供は、しばしば自分にはまったく適さない世界に
入ってこなくてはならないのです。」（『人間理解からの教育』ｐ２９）
親が提供する身体は子供の魂に
完全にぴったりしたものではないので、
約７年間かけて自分に合ったものに作りかえるのである。
この大切な７年間は、
生命力（エーテル体）が身体形成のために使われる。
子供が全エネルギーを身体形成に注げるように
サポートするのが、周囲の役割であろう。
この時期にこの力を知育や他のことに用いると、
心身が虚弱な人間になってしまうというのである。
このことを念頭において、
さらに『治療教育講義』を読み進めてみたい。
この後シュタイナーは、
肝臓を例にして、
何かを行おうとする意図がありながら、
実際の行動にまで進むことができない
魂の異常さの原因を
何らかの異常な肝臓の中に求めている。
さて、肝臓は右の肋骨（ろっこつ）に守られるようにして存在している。
人間の体で最も大きい臓器で、
体重の約50分の1
即ち体重が６０キログラムの人なら約１．２キログラムになる。
肝臓がこんなに巨大なのは
�‖里防�要な蛋白の合成。
��栄養の貯蔵。
�Ｍ�害物質の解毒・分解。
の三つの働きがあるからである。
私たちが食べたものは胃や腸で吸収されやすい形に変えられた後、
肝臓へ送られる。
肝臓でいろいろな成分に加工されると、
動脈を通って必要な場所に配られていく。
利用されて不要になった老廃物は、
今度は静脈を通って肝臓へ戻され胆汁へ排泄される。
そして、その一部は小腸で再び吸収されて肝臓で再利用される。
このように肝臓は生産、リサイクル、
清掃を行うエコシステム完備の工場なのである。
人間の体の中の器官はどの器官もアクティブな働きをしているが、
肝臓は、このようにとりわけ２４時間
アクティブで複雑な働きをしている。
シュタイナーは、
肝臓は、さらに、人間の魂の働きの観点からみると、
「意志の働き」に深い影響を与えていると以下のように
述べている。
「皆さん、現在の病理学が診断するさまざまな病気は、
病気の粗雑な部分であって、
その微妙な部分は、組織学の手の届かぬところに、
たとえば肝臓という臓器の中を流れる液体成分の中に
存在しているのです。
もしくは肝臓の中を流れる気化された
部分の中に存在しているのです。
そのような場合、
臓器をよく温めることもまた、
魂のいとなみを助ける作用をします。
ですから子どもに意志の欠陥が見られる場合、
まず第一に次のように問わなければなりません。
『この意志の欠陥は、
どの器官のどのような病気と関連しているのか?』
これはとても大切な問いなのです。
魂の働きの中でも
思考の欠陥はそれほどにまで重要ではありません。
たいていの欠陥は分析過程でいとなまれる意志の欠陥です。
ですから思考の中に欠陥があったとしても、
その思考の欠陥がどれほど意志の欠陥に依存しているか、
注意深く観察できなければなりません。
たとえばあまりにもすばやく、
またはあまりにもゆっくりと考える人の場合、
思考内容そのものはまったく正しいのに、
組み合わせる働きをする意志の方に
欠陥があるだけなのかもしれません。
どの程度にまでそこに意志が働いているかを
よく観察してみてください。
思考に欠陥があるというのは、
意志から独立した思考内容そのものに歪みが現われたり、
錯覚が生じたりする場合だけです。
外界に対する態度が問題になる場合、
そのような歪みや錯覚が無意識の中に現われ、
それが表象活動に影響することがあります。
それは強迫観念のようなものにもなりますが、
強迫観念は意志から生じるのです。
いずれにせよ意志の欠陥か思考の欠陥かを区別するには、
とりわけ注意深い態度が必要です。
思考の欠陥は、たいていの場合、
個別治療を必要とすることになりますが、
障害のある子どもたちを教育する場合に問題になるのは、
主に意志なのです。
ここで人間の存在全体がどのような仕方で
発達に作用をしているのか考えてみましょう。
人間の発達にとって何が障害になるのかを考えますと、
最初の七年間では、遺伝上の欠陥が問題になります。
本質的には遺伝上の欠陥だけが考察の対象になるのです。
けれどもこの欠陥を、
今日の科学のような恐ろしい仕方で考察することは許されません。
遺伝上の欠陥は偶然の結果なのではなく、
カルマによる必然なのです。
私たちが代々身体上の欠陥を持っている
家系に生まれることを選ぶのは、
私たちの霊界における知識不足によるのです。
したがって、欠陥のある遺伝体が存在するところには、
すでに受胎以前に、人体組織に対する認識不足があったのです。
私たちは地上に受肉する以前に、
人体組織をまったく正確に知っていなければならないのです。
そうでないと、霊界から正しい仕方で降りてくることができず、
最初の七年間に生体を正しい仕方で発達させることもできないのですから。」 (p18〜20)
以上のことについては、シュタイナーは別のところで
詳しく述べているので、
その箇所で、さらに理解を深めたい。
さらに読み進めてみよう。
「死から新しい誕生までのあいだに獲得される
内なる組織についての知識は、
今日の生理学や組織学を通して獲得される
物質体についての知識に比べれば、
まったく計り難いほどに大きいのです。
それに比べれば、生理学や組織学の知識は
取るに足りないとさえ言えます。
けれども霊界で獲得する私たちの知識は、
受肉の過程の中で忘れられてしまいます。
なぜならそれは体内に埋没してしまい、
感覚を通して外界の認識に役立たせられることがないからです。
この知識は実際計り難いほどまでに大きいのですが、
もし私たちが地上生活の中で、
周囲の環境に対して何も興味を持てなかったり、
興味があってもそれが妨げられてしまったりした場合、
死後の生活の中でその知識が損われます。
考えてみてください。
或る文明社会が人びとを特定の空間内に閉じ込め、
朝から晩までその中にいて、
外の世界に対する興味を持てなくさせているとします。
そのような文明は、
その結果どんな影響を人びとに及ぽすでしょうか。
外界の認識が閉ざされてしまうので、
誰かがもしもこのような状態のまま死を迎え、
あまりにも不用意に霊界の中に入っていきますと、
人体の生命組織を学ぶために必要なすべてが、
霊界に用意されているにもかかわらず、
受容できなくなるのです。
その結果、ふたたび地上に降りてくるとき、
周囲の環境との関係をあらかじめ深めることができた人よりも、
人体についてのはるかに乏しい知識を持って生まれてくるのです。
しかしこのことは別の面から見ることもできます。
皆さんがこの人生を生きるに際して、
たとえば一日を過ごした後で、
その日が大した日ではなかったと考えるとします。
確かに通常の意識にとっては、
大したことがなかったかもしれません。
しかし通常の背後に働く潜在意識から見れば、
それは決して大したものでなくはないのです。
なぜならもし皆さんが一日だけでも、
この世をいつもよりも正確に観察できたならば、
それだけですでに生体を霊界で認識するための
条件ができたことになるからです。
この世における外界は、
あの世における霊的な内界なのです。
さて、この世で外界から閉ざされた生き方をしている人はすべて、
いつかは人体組織について知識不足なままに、
この世に降りてくるでしょう。
その人びとはそうでなければ選ぶはずのなかった親を選ぶでしょう。
悪い身体しか提供できない人が親として選ばれ、
その一方では良い身体を提供するはずの人が不妊の状態を続けます。
実際、霊界からの下降に際して、
どのような人間がふたたび生み出されるかは、
時代の発展全体にかかっているのです。
私たちは子どもを見るとき、
その子の中にどんな前世の影響が現われているかを
見なければなりません。
遺伝的に病んでいる諸器官をなぜその子が選んだのか、
発達が不完全な個性を持ったその子がなぜそのような
身体に働きかけるのかを理解しなければなりません。
歯の生え変わるまでの子どもが
どのような発達を遂げていくのかを考えてみてください。
実際、霊界から降りてくる霊魂は、
それを受けようとしている身体にいつも完全に適応し
ているとは言えないのです。
たとえばある子にすぐれた肝臓のモデルが存在していたとしても、
そのことをその子の個性が理解できなければ、
第二の七年期にその肝臓モデルは不完全な仕方でしか活用されず、
その結果本質的な意志の欠陥が現われてきます。」（p18〜22）
通常一日を過ごした後で、
その日が大した日ではなかったと考えてしまう。
確かに通常の意識にとっては、
大したことがなかったかもしれない。
しかし、今日の出来事の現象の背後には、
とても、奥深い意味が潜んでいるのである。
そこから、私たちは、
霊界の現象の多くのことを学ぶことが
できるのである。
決して今日の一日は「大したものでなくはない」のだ。
このような姿勢で一日だけでも、
この世に起きている現象の背後に隠れているものを
いつもよりも正確に観察できたならば、
それだけですでに生体を霊界で認識するための
条件ができたことになるというのだ。
この世で生じている外界の様々な現象は、
あの世における霊的な内界が外に現れたものなのだ。
地上生活において、超感覚的認識能力をいかに高めるか
が大切となるゆえんである。
このあと、以上のことをわかりやすく説明するために
哲学者であるフランツ・プレンタ−ノの
息子のことを例にして具体的に語っている。
ブレンターノは非常に独特な仕方で、
魂の能力を表象と判断および共感、反感の働きに分けた。
そして意志を魂の働きの中に数え入れなかった哲学者であった。
その息子のことについて、以下のように語っている。
「今例に挙げましたように、
肝臓を自分の優れた肝臓モデルに従って
形成することができない場合には、
意志の欠陥が生じ、
そのため意志するにもかかわらず、
その意志を実現できないような子どもになります。
意志が思考内容の中に埋没し続けるのです。
その子は、何かをやり始めますと、
ただちにそれとは別の何かを意志し始めるのです。
意志は停滞したり、
通り抜けでしまったりするのです。
そもそも肝臓は今日の生理学が記述しているような臓器で
あるばかりでなく、
考えた事柄を実際の行為に移し替える勇気を与える器官でもあるのです。
たとえば電車をやり過ごしてしまうような人が実際にいます。
バ−ゼルまで電車で行かなければならないと知っていて、
電車が眼の前に止まっても、
最後までそれに乗ることができないのです。
何かがその人を引きとめて、
電車に乗せまいとするのです。
この非常に特徴的な意志の停滞を通して明らかになるのは、
微妙な肝臓の欠陥があるということです。
肝臓はいつでも、心に抱いている観念を、
手足で行なう行為に置き換えるための仲介をします。
この意味では、人間のどの器官も
何らかの事柄の仲介役をしているのです。
前に聞いたことがあるのですが、
ある若者が次のような病気を本当に持っていました。
彼は電車のすぐかたわらに立っていたのに、
突然立ち止まってしまい、
乗り込むことができませんでした。
なぜ彼が乗らなかったのかは誰にも分かりませんでした。
当人もどうしてだか分からなかったのです。
彼は立ち止まったままでした。
意志が停滞していたのです。
それではいったい、
その場合何が原因だったのでしょうか。
これは非常に複雑な問題です。
この若者の父親(フランツ・プレンタ−ノのこと)は哲学者でした。
その哲学者は非常に独特な仕方で、
魂の能力を表象と判断および共感、反感の働きに分けました。
そして意志を魂の働きの中に数え入れなかったのです。
意志は魂の働きから脱け落ちていました。
魂の働きを数え上げるとき、
彼は決して意志をそこに加えなかったのです。
なぜなら彼は正直であろうと望んでいましたので、
意識の表面に現われるものだけを
魂の働きとして数え上げようとしたのです。
このようにして彼はとうとう、
意志について何も考えないことがまったく当然だと思うようになりました。
さて、この哲学者は比較的晩年になって息子を得たのです。
父親となった彼は、
意志のことを永遠に考えようとしないままに、
自分の意図を行為にもたらそうとしない素質を
肝臓に植え込んでいたのです。
このことが息子の場合には病気となって現われました。
そこで皆さんはこの息子の個性がなぜ、
まさにこの父親を父親として選んだのか理解することができるでしょう。
それはこの息子の個性が肝臓の内
部構造とまったく関わることができなかったからなのです。
つまりこの個性は肝臓の内部組織について、
あれこれ努力する必要のないような体質を自分のために選んだのです。
肝臓のそのような機能を知らずに生まれてきたので、
その肝臓もそのような機能を備えていなかったのです。
このように子どもを理解しようとするときには、
まったく奇妙な仕方で
カルマへの洞察を深めていかざるをえなくなるのです。」(p22〜24)
つづく
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