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こだわり酒屋のひとり言コミュのこだわり酒屋の独り言 178 村田忠良先生の思い出

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  村田忠良先生がお亡くなりになってもうそろそろ一年になる。北海道新聞の記事を見て逝去されたのを知った。先生は精神科医やカウンセラーとして御高名なことは衆知のことである。私の知る限りお酒を最もよく知っておられる方であった。知っているというのは銘柄をよく知っているとか、良い酒を何種類も飲んでいるとかではない。それはそれですごいことなのだが、先生は酒の功罪を含めてその何たるかをわかっていらっしゃった。というのも先生はアルコール中毒治療の専門家であったから、酒に対するアプローチが一般の人とは違っていたのだと思う。
 私が先生をはじめて知ったのは今から17年前の1993年に北海道新聞のコラムを見たからである。酒徒然草と題されたそのコラムの副題は『時熟』とあり、酒の熟成を縦軸とし、それに翻訳のあやで意味が変わってしまうことや、沖縄旅行の際の体験を絡めた文章だった。『時熟』とはハイデッガーの『存在と時間』に出てくる言葉である。ドイツ語のzeitungを訳したものだそうだ。英語ではagingだが、先生はいたずらに馬齢を重ねると言うイメージがあって好きになれないそうである。そして坂口謹一郎先生の言葉を引用して良酒の美徳は香味の調和と円熟であって、芭蕉の言うところの不易だと言っている。筆者は精神科医との紹介があった。酒好きの人が書いた文章はいろいろ読んでいるが、その文章はそれまでのどれとも内容が違った。
  その文章に感激した私は家内に向かって「見てみろ、すごい人がいるもんだ」と見せたところ、「あれ?この人の講演を来週聴くことになっているよ」と言う。えぇっと驚いたら、当時家内が参加していた婦人講座に先生がいらっしゃるというではないか。そのころ、先生は函館に来たときにはトラピスチヌ修道院に行ってシスターの病気の診察もしていた。婦人講座の運営をしている方から先生が当日の移動手段がなくて困っているという話を聞いて、先生とお会いできるならと喜んで運転手を引き受けた。
  当日になり、初めてお会いしたにもかかわらず、先生のコラムに感激しましたと勝手にしゃべっている私を見て、先生は最初、地酒を売っている酒屋としか思っていなかったようだった。先生は坂口謹一郎先生の話をよく引用されている。私も坂口先生の著書『日本の酒』はバイブルのように思っているとお話したことから一気に距離が縮まったのであった。別れ際に熟成酒として当時最高だと思っていた鳴門鯛の1977年醸造大古酒を手土産としてお渡しした。
 程なくして、先生からのはがきが届いた。運転手を務めたことに対する礼状であった。さらに古酒に対する感想が書かれていた。『古酒、賞味させていただきました。盃ひとつ。あとは大事にして悲しい時の慰め薬にいたします。うれしい時は凡酒で良いので清酒の古酒が上品な老酒の味とは驚きました。心にしみます。大兄との出会いは私の宝のひとつとなりました。』なんと恐れ多い言葉をいただいたものだ。すっかり恐縮してしまったことを思い出す。しかし、「慰め薬」とはなんと不思議な言葉だろう。改めて村田先生は酒の達人だと思うのである。
 その後「酒徒然草」は一冊の本として北海道新聞社から刊行された。内容について感想を送ったりもして先生とはその後もお付き合いをさせていただいた。私の酒のスペックについて必要以上にこだわらないと言うスタンスは先生から影響を受けたものである。この数年はすっかり疎遠になっていたのだが、今になってもっといろいろ教えていただけばよかったと思っている。

コメント(11)

とと、これは実にいい話だ。

Zeitungの意味は「新聞」だが、なるほど、ハイデガーにかかるとこんな洒落た言葉に化けるんだね。勉強になりました。

さすがは糸引きのプロの奥様が結んでくれたご縁だね。戴いたお土産をジャクリーヌが
とても喜んでました。改めて深謝致します。
orz,、
たき
本当に不思議な御縁だった。
「良い酒は良い縁を結びます。」というキャッチフレーズそのものだ。
縁はあってもそれを生かせるかどうかはその人の中身次第、
互いに興味を持てる相手じゃないといずれ疎遠になってしまう。
mixiがこれだけ続いているというのも不思議な縁だ。
小才は、縁に出会って縁に気づかず。中才は、縁に気づいて縁を活かさず。大才は、袖触れ合う他生の縁もこれを活かす。
うーん、小才としては身につまされる^^;

しかしZeitungの意味は「新聞」とは・・・・ねぇ
すっかりagingと対比する言葉だと思ってましたぜ。

浅学にして小才なる自分を改めて感じ入るわw
ううむ。馬齢かぁ。


馬齢というあまりにも馬を馬鹿にした言葉の意味を実感する秋   休呆
                                      (『塔』2004.1)
>6
Zeit(=時間)+-ung(=〜すること。英語の-ingに相当)だから、
英語に当たるのは、Age-ingのAging、でもTime-ingのTimingでもいいわけさ。

ハイデッガーはむしろ語源に沿った形で正しく解釈したわけで、
逆に「タイミングよく人に知らせるもの」を「新聞」と呼んだ方が
奇抜だったとも言えるよ。
エイジングとタイミングは同じことだったんだ。

勉強になるなあ。

酒を飲むタイミングというのがあるよなあ。
ある酒蔵の社長さんから30年古酒という代物をいただいたことがある。
どんな味がするか興味は尽きないが、手をつけられない。
どういうときに誰と飲もうかと思っている内にもう20年ぐらい経っちまった。

希望者はいないかw

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