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memo メモ めもコミュのメモ 070108

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■日系ブラジル人について、卒業設計を振り返りつつ

1.もう一つの日本人
 地方都市において現在かなりの数のブラジル人移住者が工場で働いている。研修生制度で小さな工場で働く中国人とは違い、彼らは元々は日本に住んでいた日本人、もしくはその子や孫たちである日系人である。日系人は日本人の血が混じっているゆえに外見からは判断出来ないようなタイプの人もいれば、逆に外見からは判断出来ないようなまさに外国人というタイプの人もおり単純には見分けられない。日系人は他の外国人と異なり日本の国籍を取得する壁が低いという特徴があり、また日本への入国に関しても他の外国人に比べて自由度が高いという特徴がある。彼らの日本での分布を見るとそのほとんどが中部を中心にした地方都市に生活の拠点をおいていることがわかる(図1)。
 なぜ、東京や大阪のような大都市には行かずに中部を中心とした地域に集中しているのだろうか?その答えは彼らが日本へ来るきっかけにある。彼らは日本に「デカセギ」に来ているのである。それはホワイトカラー中心の大都市とは異なる外国人像であり、日本が好きで来ている西洋人たちとも異なる、またパブやキャバクラやソープなどの歓楽街へ働きに来る外国人に近く、と同時にそれとも異なる外国人像である。
2.入管法改正とブラジルのインフレ
 日系ブラジル人が日本にこんなにも多く来るようになったのは平成2年(1990)の入管法の改正以後である。そもそもこの法改正は日系ブラジル人のために行われたものではなかった。法改正の目的としては中国孤児のために、彼らが日本に帰ってきやすいようにと日系3世までは無制限に日本に来る事が可能なように法改正したものであった。ちょうど法改正を行った時に、ブラジルでは大きなインフレが起こり、経済が破綻しかけていた時期だった。現在ではBRICsと呼ばれ大きな成長を遂げているブラジルであるが、1990年代初期はそのような経済的危機状態にあった、それに対しての入管法の法改正はブラジル人を「デカセギ」へと駆り立てた。もともと、デカセギで日本からブラジルへと来るルートが開発されていたのも手伝い、さらに日本はバブル期に突入しており、自動車産業が世界的に大きな躍進を遂げて人手が必要な時期であったというのも重なり、ブラジルから日本へのデカセギのルートはすぐに整備が整った。この初期条件が現在までの日系ブラジル人と日本との関係に大きな影響を与えている。
3.デカセギと派遣・請負
 デカセギに来たブラジル人が働く場所は製造業、最初にも述べたが自動車産業が主な職場となる。日本の自動車産業は親会社と子会社、孫会社、曾孫会社といくつもの会社が連結して相互に関係し合う事で成立している。この特殊さはそれぞれの工場での出荷と入荷の関係に大きな影響を与える。部品製造工場と組み立て工場、そしてそれでの組み立てがまた次の組み立て部品となり出荷され、次の工場で組み立てと順々に部品は下から上へとサブシステムを通して最後に一つの自動車になるまで受け渡される。その時に工場で重要になるのは待ち時間がないジャストインタイムな部品の出し入れである、それは雇用状況が必要な時に人がいて、必要ない時に人がいない、という状況をつくり出す。そうするに不安定な派遣・請負で働く人間が必要になるという事である。その役割を日系ブラジル人が担っているという事である。
 デカセギに来る彼らは、本国ブラジルのいる時に会社の方と契約を交わし、職場を確保してから日本へ来る。住む場所も会社が用意した団地に住み、送迎バスで団地から工場への送り迎えをしてもらって働くのである。日本での生活はかなりの部分が斡旋業者たよりの生活となる。仕事を見つける部分はもちろんそうだし、周辺住民とのトラブルや行政側とのやり取りなど様々なことをサポートしてもらう事になる。斡旋業者はいくつかの工場と契約を結んでおり、日系ブラジル人たちはその時に繁忙な工場へとデカセギにいく、彼らはあくまで金を稼ぎに来ているのだからより仕事があり、金がえら得る場所を探して流動的に動き金が貯まれば帰ったりと移動性の高い人間たちである。
 派遣という職業は日系ブラジル人でないにしても、常に解雇と隣り合わせの生活を続けている人が多い。会社との契約というよりも、その人の技術力で生活を支えているゆえに技術力次第では豊かな生活を得ている人もいる。しかし、日系ブラジル人は技術力ゆえに雇われている派遣ではない。彼らは日本語すらまともに話す語学力もなく、当然本国では自動車をつくることもしていない。彼らの企業にとっての価値は安く、人が嫌う仕事をしてくれる労働力としてである。バブルが崩壊後は当然自動車産業の仕事も減り、まず解雇を言い渡されたのは日系ブラジル人労働者たちである。そして現在では、障害者や高齢者たちにその仕事は奪われている。企業としてはそのような人々を雇った方が企業イメージとしても当然良い事を心得ている。そしてさらなる不況の波によって彼らの生活は圧迫されている。
4.必要とされた労働力と予定外だった「生活者」としての日系ブラジル人
 1990年代、日本の有効求人倍率が5を超えているような状態で人手がなくて困るという状態で、中小企業、あるいは、経済団体のリーダーたちの思索により3年間、期限を区切って日本に外国の方を受け入れて、日本で技能や技術を学んで国に帰ってもらって、そちらで技術移転をしてもらうという前提で日系人の受け入れを始める。
 ここ五年間で海外移住者数は三三%増加、現在、二百万人以上のブラジル人が海外で暮らしていると、ブラジル外務省は発表している。 「ブラジル人の海外流出は世界情勢のプロセスの一つであり、経済上の理由のほかに政治面からも刺激を受けている」。同教授によると、世界の移住動向は、現在、南半球から北半球への人口移動で成り立っており、ラテン・アメリカ人は通常、北アメリカ、カナダへ、アフリカ人はヨーロッパへと流出。これらの進路は、二つの半球間の生活格差から引き起こされているとし、南北間の不平等は、グローバリゼーションを推し進める各国政府が、赤道から南に位置する国々の経済マヒを促した九〇年代に始まったという。
 海外に住む人もブラジル経済を助けている。二〇〇二年、海外在住のブラジル人は昨年比一〇%増の四十六億に及ぶ米ドルを母国に送った。アメリカ相互開発銀行機関(BID)によると、同額はブラジル国民総生産の一%に値するという。この総額で、十四億米ドルが海外のブラジル銀行二十七支所から送金され、前年比五七%も増えている。その多くは日本からのものだ。 もう1つ、グローバリゼーションの中で、労働力が日本側に入ってくるというのは、日本が労働力不足だから日本が受け入れるという理由だけではなくて、やはり、今のところ、日本の所得レベル、もしくは雇用の賃金が諸外国よりも高いというところから労働力が流入してくる。したがって、諸外国との所得格差がある限り、何もしなくても労働力が、ある意味で、入ってくるかもしれない。それは、EUの各国において、アフリカの各国から労働力が流入してくることと全く同じ現象だろうと思われる。
 現在の日系人の受け入れに対して専門家は次のように語っている。「日本の外国人の労働力の受け入れについては、高度人材しか基本的には認めていないということだと思います。ただ、日系人であれば、定住者であるとか、日本人の配偶者というような在留資格で国内の活動に制限がない、どこでも働けるという形で入れているのだと思いますが、そうした外国人の方が労働者として地域に定着するという考え方がなかった制度なのかなと思います。の公立の小中学校に入るといったときに、入るのは簡単なのですが、実は、学校に行ってからのサポートが十分ではない。学校ではきちんとサポートするようにしていますが、国の方針として、そういった外国人の子供たちに日本語をどのように教えるのかとか、今の教育制度の中で、日本人の子どもと同じような教育をするためにどのようにするのかという基本的な方針が何もないように思います。」
 現在、日本で一番の日系ブラジル人を抱える浜松市の国際課の職員は次のようにこの状況を考えている。「我々地域自治体は外国人を入れたがっているわけではないです、企業が入れているのです。企業が入れているのだけれども、企業はそれを何もケアしないということです。ただ、じゃあ、どこに住んでいるのかというと、住んでいるところが必ずあるわけです。例えば、浜松市でしたら浜松市の中に住んでいる。だから、浜松市が外国人のことをいろいろやっていかなければいけないという状況になっているのです。
私どもが団地へ出かけて行って、住民の方々と意見交換をするときに、住民の方から出るのは、「あんたたち、1カ月か2カ月、あるいは半年ぐらいここに住んでみなさいよ。昼間に来て見ていても、本当の実態はわからないよ。何カ月もここで実際に生活してみると我々の苦労がよくわかる」ということを最後に言われるのです。住民の方々の本音としては、やはり、いてほしくないという気持ちがあります。ただ、現実を見て、豊田市や周辺の経済状況を見ますと、外国人がいなくなると産業が成り立っていかないという状況がございますので、現状を是認し、何とか共生の道を探っていこうと、多数の方が努力していらっしゃいます。
 外国人と日本人の間に起こるであろう、様々なトラブルの問題があります。1つ目として、不法労働者と呼ばれる人達の犯罪の増加が考えられます。外国人労働者の犯罪事件は、同国人同士のものが多いのですが、日本人が被害者になるケースも出てきています。こういった事件の後の処理もまた、言葉、文化、習慣などの違いが大きな壁となり、犯罪捜査と公正な裁判維持の困難さ、被疑者とされた外国人不法労働者の人権擁護の難しさなどといった、様々な問題が生まれています。その他にも、言葉、文化、習慣の違いは、様々なトラブルの要因となっています。例えば住民との摩擦で、ゴミの出し方や深夜の騒音などについて周辺住民の苦情があったり、労働時において、雇用主の指示が十分理解できないために、誤って使用中の石油ストーブにガソリンを給油して失火事件が起きた例もあります。
5.必要性が高まる日本語教育
5-1ドイツに見る外国人問題の原因
 外国人の受け入れが以前から行われている欧米では外国人労働者の受け入れが大きな社会問題にも発展した。例えばトルコ人の受け入れをしていたドイツの場合社会問題を抱えるに至った最大の原因は受け入れ当初における教育不足であったと言われている。ドイツ語の全くできないトルコ人を直ちに生産ラインに入れて働かせたために、彼らの地域社会との融合も良い形では進まず、結果的に労働市場の二層構造や、差別が起こってしまった。
5-2日系ブラジル人が抱える問題意識
 そのような状況に近いことが現在の日本でも起こりつつある。日本語教育の専門家は自分の仕事の経験から次のように語っている。「先日のコミュニティリーダーの会でもちょっと話が出たのですが、日本語がわからないということは自立ができないということにつながって、自立ができないということは、いつまでたっても、だれかに頼っている。結局は行政に頼るということで、日本で生活をするからには自立ができるように、イコール、日本語が理解できるようにという話が出ました。」デカセギから定住へと意識を変えつつある日系ブラジル人の方々は自己の自立のために日本語の学習の必要性に気がつく、しかしデカセギに来ている人間はすぐに帰るという意識のもと両者の間に熱の差が生まれる。そのような現状を市の職員は次のように話す
「地域の現状でございますが、特に豊田市は日本語のできない人がとてもたくさんみえます。特に日系人の方は定住ビザで日本に入ってみえる。つまり出稼ぎ意識というのもございまして、いつかは国へ帰るというような意識があり、日本語を覚えようという意欲がどうしても低いものが感じられます。また、雇用する企業も、最低限の日本語能力しか求めていないのが現状でございます。特に現場で働いている方に対しまして、これも企業の方にどのぐらいの日本語能力を求められますかというお話をしたこともあるんですけれども、特に日本語はあまり求めてないという、かなり大手の製造業の方からそんな発言がございました。ほとんどの人が間接雇用でございまして、現場の作業に支障がなければ、危険回避ができて、上司の簡単な指示が聞ければ、それで十分だというような考え方もあるようです。これもかなり日本語の習得に影響していると思います。ただ、そのために、地域では意思の疎通ができずに困っているのが現状でございます。」
5-3国の制度整備不足
 日系ブラジル人の日本語教育において問題になるのは彼らの態度だけではない、受け入れをしている国の態度の問題も大きい。日本の外国人の労働力の受け入れについては、高度人材しか基本的には認めていないがある。しかし、日系人であれば定住者であるとか、日本人の配偶者というような在留資格で国内の活動に制限がない、どこでも働けるという形で入れている、そうした外国人の方が労働者として地域に定着するという考え方がなかった制度だと言える。日系ブラジル人の子供が公立の小中学校に入るといったときに、入るのは簡単であるが、しかし学校に行ってからのサポートが十分ではない。市内の学校側ではきちんとサポートするようにしているが、国の方針として、そういった外国人の子供たちに日本語をどのように教えるのかとか、今の教育制度の中で、日本人の子どもと同じような教育をするためにどのようにするのかという基本的な方針が何もないように思える。
5-4企業に求められる外国人労働者受入れに対する責任
 市場のメカニズムというのは、不当に安い労働力を入れない。従って、本当にコストがかかっている部分については、企業も負担しなければならない。そのような意見がブラジル人と市民との間に問題が起き始めてから言われ続けている。2000年に行われた日系ブラジル人のよる豊田会議では豊田市職員、経団連の人間は次のように意見している
「今、安い労働力が入ってきて、それを使って存命している企業があるから産業構造が変わらない。経済学では、よく「ゾンビ企業」と言われるのですが、「ゾンビ」だと言われると企業の方は怒るかもしれませんが、そういうことによって市場メカニズムを侵してしまっている。そうすると、ぎりぎりまでこられえていて、その労働力に頼らなくなった途端にその企業は倒産するわけですから、もう、ドッと外国人労働力の失業が出てきてしまう。それはまた大きな社会問題になってしまうということの繰り返しです。したがって、市場メカニズムというのは、不当に安い労働力を入れない。したがって、本当にコストがかかっている部分については、企業も負担しなければいけないし、それから、入ってくる外国人労働者にとっても、年金の一部は自分が負担しなければいけないとか、失業保険の一部は負担しなければいけないとか、それから、市民も、ある種の、共生とおっしゃるなら、共生をするための負担を背負わなければいけないとか、そういう負担を全部背負えば、もっと賃金というか、コストは上がるはずです。コストが上がることによって、なおかつ存命できるくらいの生産性向上努力を企業がやることによって生き延びる、そういう形のパスを描かないと発展はできないだろうと思います。」
「私ども(経団連)の希望は、研修・技能実習制度で入ってくる外国人が、先生のご指摘のようにこのところ非常に増えているものですから、制度上のガバナンスと企業のコンプライアンスをしっかりさせた形で運用させていきたいということに尽きると思います。当然、研修を受け、技能実習を受ける方が増えれば増えるほど、ある一定のパーセンテージの事故、事案は起きてくるわけであり、それらは日本の社会にそれなりの影響を与えてまいります。 わが国の場合に、外国人を量的にコントロールする制度がございませんので、企業のニーズが高まれば研修生、技能実習生は増加していきます。したがって、団体管理型にしても企業単独型にしても、ともかく事故が起きないよう指導を徹底していただく。」
 上記のように市と企業とでは、やや問題の捉え方が未だに乖離している部分が大きいように思われる。企業はあくまでも研修・技能実習制度を前提とした短期間の受け入れとそれからの自国での活動による技術の活用を中心に考えており、技能訓練や日本語への支援もそのよう状況を前提として動いている。しかし、確実に定住化という状況は進行しており、それに対しての責任をとる必要性は高まっている。
 就労目的で来日した日系南米人らが多く住む全国の15都市が、外国人を取り巻く就労や教育などの諸課題を話し合う「外国人集住都市会議」が10月29日、愛知県豊田市で開かれた。は多様性立国にまた、会議では日本経団連の奥田碩会長が「多様性人材立国への道」をテーマに記念講演した際に次のように語った。「労働力の均一性では日本は中国にかなわなくなっている」。外国人労働者の受け入れの基本原則として(1)量、質ともに十分コントロールする(2)人権を尊重する(3)企業、本人、日本、出身国にとって有益であること−−の3点を挙げた上で、「社会施策、日本人の意識において外国人が尊重されておらず、非常に不満足で残念」と話した。また「異質なものの排除ではなく、異なる価値観を認めることが大切。各都市の取り組みは『人材立国』に向けた先進例になる」と会議に期待を寄せた。
 企業の社会的責任(CSR) 持続可能な社会実現のため、企業も社会や環境に対して責任を持つべきだという考え方。日本経済団体連合会は今年3月に出した「外国人材受け入れ問題に関する第2次提言」で、「企業は法令を順守するとともに、外国人の日本語教育など生活支援の面でも対応を強化する必要がある」としている。このように新しい社会環境の創生の必要性が現在の中部を中心とした外国人労働者の定住地域には生まれている。


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7.日本語教育の現状
7-1. 子どもたちの教育を考えずにきた日本の外国人児童教育
  日系ブラジル人の増加に伴い、日本の公立小中学校に在籍する外国人児童も急増。ブラジル人の人口が約2万人で日本一多い浜松市では、2006年度の統計で就学年齢の子どもが約2600人いる。うち公立小中学校には1400人、ブラジル人学校に700人程度が通う。一方、親の仕事の都合や学校になじめないなどの理由で不就学になる児童も大勢いるとみられ、浜松市の推計では、市内の小中学生世代の外国人の23%(約600人)が不就学だ。日本人と違い、親に教育を受けさせるよう義務づける日本国憲法の枠の外。小中学校を「義務教育」と位置付けられていない。“見放された”状況が拍車を掛けている。年少者のアルバイトなど違法労働の温床になっている面もあるが、文部科学省は「厚生労働省に協力してもらうしかない」と話すにとどまる。今年2月、友だちに誘われてのぞいた浜松市内の道場。最初は「かっこいい」で始めたが、性に合っていたのかすぐに強くなり、「自分にも何かができる」。初めて「自信」とは何かを知った。道場主で、サンパウロ生まれの同じ日系人、児玉哲義(42)に「人間として強くなれ」と教えられて、目が覚めた。仕事も練習も、遅刻なんてまずしなくなった。
7-2. 日系ブラジル人向けの私塾
 先生の話が分からない。理解したい。そう思うから、分からないことが苦しい。疲れて机に突っ伏していると、やる気がないと見られた。いつしかノートの落書きが増えた。「学校をやめる」。そう決めたのは、医師に勧められたから。ストレスで食欲がなくなった。大好きなはずの学校に行こうとすると、吐き気がする。寒い季節だった。「カナリーニョ教室」の存在を知った。不就学や勉強が遅れている外国人向けに、市が設置した教室。ポルトガル語で理科や数学を学びながら日本語に取り組んだ。ずっと探していた勉強の場を見つけた。「学校に行っている」という充実感。しばらくしてブラジルの中学卒業資格を得た。16歳からは仕事を始めた。日中に工場で働きながら、夜や休日に勉強も続けている。19歳になり、秋には高校卒業資格を得るための試験を受ける。ブラジルの通信制大学で、日本語をもう一度学ぶつもりだ。浜松市内の団地にあるビアンカの部屋。ポルトガル語の教科書が並ぶ本棚に、今も小学生向けの国語辞典がある。もう泣かない。あきらめてもいない。
 中学入学と同時に、先生に頼んで、名簿を「林ケンジ」にしてもらった。高校でも友達はすべて日本人。センター試験を受け、ストレートで大学に入ったのも、「普通の子と一緒でありたい」と願う努力のたまものだったのかもしれない。自宅でも変わった。日本語が少し不自由なためポルトガル語で話しかける両親に、常に日本語で返していたが、ポルトガル語も使い始めた。耳では理解できても話せなかった言葉が、大学の外国語の授業で、ぐっと身近になった。「日本人が、ポルトガル語で話してるみたい」。こう笑う母セリア・チヨコ(45)の目は優しい。ケンジ・クラウジオのように「自分は『何者』なのか」に思い悩む日系人の子どもは多い。外国人生徒の進学浜松市の調査によると、市内の高校進学率は70%前後。昨年3月の公立中学の卒業生91人のうち、全日制県立高校へ22人、定時制高校へ22人。就職は2人。残りは「帰国・家事手伝いなど」。高卒者の調査データはない。静岡文化芸術大のイシカワ・エウニセ・アケミ准教授は「大学進学は非常にまれ」と指摘する。

※カナリーニョ教室:SUZUKIの支援 http://www.suzuki.co.jp/release/d/d050323.htm 支援を表明したのはエフ・シー・シー、金田工業、東洋機製造、八鈴興業、ベルソニカ、スズキビジネスなど53社で、スズキを含む各社合計で2千万円の寄附を見込んでいる。

7-3.就学、就職し始める子ども世代
街を楽しげに歩く同年代の高校生たちは、遠い存在だ。自分の青春は、午前8時から午後5時まで、部品の検査をする日々に埋もれている。小学生の妹には「自分みたいになってほしくない」と願う。日本の小中学校は多くの場合、語学能力や学習能力を問わず、年齢だけで学年を決めてきた。全国どこでも一定水準の学習環境を保証される日本人なら当然だ。だが中島は、外国人の子どもに対する“無神経さ”を感じずにはいられない「その子に見合ったレベルでチャレンジさせるべきだ」海外のダブルリミテッド事情「人種のるつぼ」と言われる米国では1970年代ごろから問題化し、日本には先例として学ぶ時間が十分あった。専門家の研究によると、米国の場合、移民の子の約3割がダブルリミテッドの地域もある。移民が多く、語学対策が進んでいるカナダでは、外国人の親子を対象にした幼児期教育のためのプログラムを用意したり、集中的に学習する場を設けたりしている地域もある。
 大学の場合、高校課程を修了していれば原則として受験可能だが、残念ながら、一般に外国人学校に対しては「教育レベルが低すぎる」といった厳しい声がある。「あんな授業では、ブラジルに戻ったって通用しない」。かなり大きな規模のブラジル人学校で高校生活を送った工場勤務の男性(22)の話は、日本人には想像しがたい。「小学校の教員資格しかない人が高校の授業をして、質問しても『分からない』という答えが返ってきた」「1年に4回も数学の先生が交代した」「出稼ぎの元教員が工場派遣と両天秤(てんびん)をかけていて、金の良い仕事が見つかるとさっさとやめてしまう」全国各地の外国人学校を訪問調査している浜松学院大准教授の津村公博(45)は「外国人学校の教育内容をチェックする制度が、日本にない点が問題」と指摘する。そもそも大半が私塾だ。行政の“お墨付き”を得て公的補助の対象となっている「法人化校」は、ムンドを入れても全国でまだ4校にすぎない。「運営の透明性確保や手続きの煩雑さを考えると、法人化できる学校は少ない」と津村。

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