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高天原・天神嶺コミュの【 番外編 - サイドストーリーズ 】

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 ここでは、高天原・天神嶺に参加中のPCのバックボーン・番外編・その他本編には登場しなかったエピソード等を紹介していています。


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【 1 】 . 『 無題 . 1 』 - 担当    :  たかひ狼
                   主要キャラ: 香月仁冴 
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=18010993&comm_id=1770842


【 2 】 . 『 無題 . 2 』 - 担当    :  たかひ狼
                   主要キャラ: 香月仁冴 ・ ヌコロフ
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=18011076&comm_id=1770842


【 3 】 . 『 守る為の力 』 - 担当   :  カム
                    主要キャラ: 神城渚 ・ 乃木崎重七 
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=18011154&comm_id=1770842


【 4 】 . 『 紅茶セット500円 』 - 担当    :  ただ★いぬ
                        主要キャラ: 境麒麟児
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=18025620&comm_id=1770842


【 5 】 . 『 無題 . 3 』 - 担当    :  たかひ狼
                   主要キャラ: 香月仁冴 ・ 境麒麟児
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=18384781&comment_count=0&comm_id=1770842


【 6 】 . 『 無題 . 4 』 - 担当    :  たかひ狼
                   主要キャラ: 香月仁冴
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=21040158&comm_id=1770842



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コメント(7)

─くっそぉ、逃げ足の速いガキだな。
─そうだな…あっという間に逃げちまった、全く。

少しずつ季節が春めいた、とTVが伝えているは言え、未だに街中を吹き抜ける風は冷たく、
歩く人たちの表情からは険しさが消えることは無かった。

そう、全てが変わってしまったあの日から。

─あのジジイに聞いてみっか、一応、な。
まだ陽も高い公園の中、仕立てたばかりの糊の抜けきらない制服に身を固めた若い犬の警察官が2人、大粒の汗を額に浮かべながら何かを執拗に追っていた。
その視線の先には。よれよれの小汚いコートに身を包んだ老人がポツンと。
おそらくここいら辺一帯を根城にしているのだろう、雨風にさらされて朽ちつつあるベンチに、小さなその身体を横たえていた。

あの日以来、住処を奪われ、拠り所すら無くした「準ホームレス」が急増した事は想像に難くない。
そのほとんどは力なき老人たち。
あるいは不法就労者、密入国者など様々。
戦争のおかげで彼らを護るべきであろう法律すらも、もろくも消え去っていった。
時代の隅に追いやられ、自然に消え、忘れ去られていくであろう彼ら。
「おい爺さん、起きてっか?」
ハンカチで鼻を押さえながら、まるで腫れ物に触れるかのような声で警察官は話しかけた。
「ん…ぁ?」
ベンチの周りには古新聞、そしてビールの空き缶がゴロゴロと転がっている。
それが自分のものなのか、はたまた収集してきたのかは分からないが…
程なくして、その老人は面倒くさそうにむっくりと起き上がった。
この時代の種族で言うならば日本猿であろうか、深い皺に包まれた赤ら顔が、いかにも日本画に出てきそうな「老猿」といった雰囲気をかもし出していた。
「悪いんだけどさ、この辺で爺さんみたいなホームレスの子供がいるって聞いたんだけど、知ってる?」
「さっきそこで靴磨きやってたんだけど、ウチら見たらいきなり逃げやがってさ」
2人の警官が矢継ぎ早に質問を投げかける。
「ん…? ガキがどうかしたって?」
皺の奥からギロリと光る眼光。
心地よい眠りを無理やり起こされた老人は、嫌そうに2人の警官を見回した。
「そう、爺さんみたいなのがね、いるんだよここら辺りに」
猿と言えば犬、つまり行き着くところは犬猿の仲か。
そして、立場的にも十分警官の方が勝っている。
いかにも見下すかのように話しかけている犬共相手に、老猿は言葉少なに語り始めた。
「さっきそのガキに起こされたわ…こっちゃ気持ちよく眠っているって言うのによ」
「ふん、で、そのガキはどっちの方向へ行った?」
だんだん横柄になる警官の問いかけに、老人は節くれだった親指をプイと、繁華街の方へと向けた。
「…あっちへ走って逃げてったぞ」
証拠と足取りさえ掴めば後はもう用はない。
その言葉を聞いた犬の警官たちは、老人に言葉を返すことも無く指した指先の向こうへと姿を消した。
さすがに手馴れているからか、ダッシュで繁華街の人ごみをくぐり抜ける速度は素早い。

「礼の一言も言えんのか…馬鹿共め」
去り行く背中に悪態を投げかけ、また老人はベンチへ横になった。
だがさっきと違うのは、彼の顔が少しだけ…子供っぽい笑みを浮かべていた事だった。

「ニコ、行ったぞ」
老人はコンコンと、寝ているベンチを叩いた。
口元から、してやったりと言った感じの言葉が漏れる。
明らかに警官相手の喋りとは違う、友人を相手にするような、老人の本来の無邪気な正体が。
「じゃ、もう大丈夫…?」
「あぁ、あいつ等向かいの商店街の方にダッシュで行ったさ、当分帰ってこんわ」
「…ほっ」
ガサゴソと、ベンチ下に詰まっていた古新聞が大きく動き出した。
そしてその中からいそいそと、少年が姿を現した。
「ふぅ、ありがと源じっちゃん」
身体に付いた落ち葉を叩き落としながら、その少年=ニコは、老人に礼を言った。

小さな垂れた耳に、手入れのあまりされていないパサ付き気味の髪。
重ね着した上着は、少し年季が入った感じの漂う風格が。
色あせた時代もののオーバーオールを穿き、足元は擦り切れたサンダル。
明らかにそこいら辺りにはいないであろう雰囲気が、服装から、髪から察せられた。
「災難だったな、仕事の途中だったか?」
「うん、アルミ缶取りやってたらさ、いきなりあいつ等に出くわすんだもん…全部捨てて逃げてきちゃった」
よほど悔しかったのか、ニコの口がツンと尖る。
「まぁ、この仕事やってりゃこういう事もあるさな、ガハハハ」
しわくちゃの老人の顔が、笑顔でさらに崩れる。
「もう、笑い事じゃないよ、こっちゃ生活かかってるんだから」
「悪い悪い、まぁ勉強だと思って今日は諦めるんだな」
「だよね…ここはもう当分ダメだわ」

ガックリとした表情でため息を一つつくと、ニコは手にしていたマフラーを軽く首に巻きつけた。
ボロボロに擦り切れ、やや短くなったそのマフラーを鼻先までうずめる。
「源じっちゃん、今度会った時にお礼させてもらうね…今日は稼ぎ無いからさ」
残念な面持ちで、ニコは老猿の肩をポンと叩いた。
「あぁ、期待して待ってるぞ、ニコ」
寂しげな笑みを浮かべ、ニコもまた老人に別れを告げる。

「んじゃ元気でね、寒さには気をつけるんだよ」
「ニコもな、病気すんじゃないぞ!」
振り返らず手を振り、少年は軽いダッシュで警官とは逆方向へ姿を消した。



「達者でな…わしらの大切なニコよ」

そしてまた老人も、うとうとと昼寝の再開を始めていた。
「はぁ、当分ブクロは張られるな…」
胸ポケットに常備している小さな手帳を取り出し、おもむろに今日の出来事を記し始めた。
今日の出来事、出遭った人、売り上げ、危険地域…
毎日毎日それを書き連ねていく事で、ニコの行動範囲はより深まっていく。
そして今日”池袋”のスペースに赤い線を一本。
「時間も中途半端だからな、今日のところは帰ろっか」
ニコは重い足取りで、JR池袋駅へと向かった。

─ピッ
財布に忍ばせているsuicaを自動改札に。
「…大丈夫かな」
恐る恐る、改札の液晶パネルに目をやる。
─※※※※※
普段使っているのなら絶対表示されない記号が、パネルに映し出された。
「…よし、成功!」
そのままダッシュで山手線ホームへ。

ニコの為に仲間が特別に作ってくれた、JRの改造カード。
使用回数は無限だが、日夜更新される鉄道会社のプロテクト網を先読みしての製作だ、過信は出来ない。
多用は禁物、それとラッシュ時の使用も厳禁。
表示部に気づかれ、誰かが駅員に通告したら一巻の終わりだから。
便利なツールといえど、時と場合をわきまえて使用すること、これがもらったときの約束。

外周りの電車に乗ること十数分、目的地の上野駅へと着いた。
我が家、そして仲間たちの待つ上野に。
「じっちゃんたち驚くだろうな、こんな早い時間に帰ってきたなんて」
上野の広大な公園、その一角にニコたちホームレスの住む場所がある。
一面に広がる、あまり手入れの行き届いていない芝生。
無論こういう場所は立ち入り禁止区域なのだが、皆お構いなしに仮の家を立て、思うままに生活していた。

日本が”今までありえなかった戦争”に直面した時以来、一帯に住む者たちは爆発的に増加。
立ち並ぶダンボールの粗末な家々、それに比例して増えていく、力なき老人たち。
政府ももはや見て見ぬふりをしている、切り離された、そして見放された一つの空間。

そう、それは名前だけの居住区。

「ただいま〜!」
誰もいない公園の入場門に向かって、少年は大きく声を上げた。
ニコたちホームレスが「玄関口」と呼ぶ公園入り口。
そこの端から続く芝生が、もう自分らの愛する家だから。

ニコは玄関口で履いていたサンダルを脱ぎ、裸足で芝生を歩いた。
「ふんふ〜ん♪」
思わず鼻から、調子っぱずれの歌が漏れてしまう。
芝生たちがニコの足の裏をくすぐる、とても心地いい。
そして少しずつ暖かくなってきた地面も、ようやく連れてきた春の訪れをニコに伝えようとしていた。
基本的に玄関からこの一帯は、ニコは裸足のままでいる。
”ここは自分の家の中なんだから”という意味もあるし、本人自身も靴嫌いという意味もある。
まぁ、他に色々な意味もあるのだが…

「よぅ、ニコお帰り〜!」
「お、ニコ帰ってきたのか」
「…おかえり」
「ニコ、ずいぶんと仕事早かったじゃねーか」
「ニコ、今度俺のとこへ来いよ、いいモン見つけたぜ」
「おいおい、夕食にはまだ早いぞ!」
「ドコ行ってたんだニコ〜!」

大小さまざまな老人たちの声が、ニコのお帰りをあたたかく包んでいった。
「ただいま! うん今度ね、ちょっと張られちゃってさ、あ、あとで行かせてもらうね」
それら一つ一つの言葉に全て笑顔で答えるニコ。
さながら、居住区はまるで縁日の目抜き通りと化している。
ニコという少年がこの地に来た事で、明日を見限っていたホームレスたちの心に、ひとつの光が灯しだされた。
そしてニコ自身も、みんなの心に応えようと、自ら汗を流し働く。

そう、ニコは居住区全員の子供であり、仲間であった。


「ん?」
ニコの足が、自宅の少し手前で止まった。
─グツグツ…グツグツ
ドラム缶並みに巨大なイベント用の大鍋の前で、これまた横方向に巨大な男が一人。
立ち上る湯気で判別しづらいが、この巨躯といえば…あの人だ。
「んあ、ニコ帰ってきたのねー、おかえり!」
「ただいま、ヌコロフさん」
ズングリボディにピチTシャツを着たそのカバ獣人は、ニコにゆったりとした微笑を投げかけた。
その手には巨大なお玉と、ボートのオールらしきものが握られていた。
そして大鍋の湯気から、芯まで暖まりそうな味噌の香り。
「今日はボキが食事当番任されたからね、おいしい煮込み作ってるから期待して待ってるのね」
「味噌…豚汁か何か?」
「うーん不正解! 答えはモツ煮込みなんだな」
「モツ…?」
それはニコが初めて聞く言葉だった。
「モツは豚とか牛さんの内臓、アメ横のおじさんが無料で分けてくれたのね」
その言葉を聞いて、ピクッとニコの垂れた耳が反応する。
「な…内蔵!?」
「そうなのね、胃とか腸とかアレやコレとかね」
ヌコロフはご丁寧にも、その短い指で自分の身体を逐一指差した。
その答えに、ニコの顔が不安に曇る
「え…っとそれ…って食える…の?」
まだニコは大人の味を知らない。ゆえにモツと言う存在も初耳であった。
「んーとね、そのままだとモチモチして硬いんだけど、お酒で十分煮込めば凄く美味しくなるのね」
「そ…そうなんだ」
ちょっとだけ安心はできたが、いかんせん未知の食の領域なだけに心許せない。
「大丈夫ねニコ、ボキの料理の腕は銀河系一なのよ〜」
「う…ん、お腹空かして待ってるから…がんばっ」
言い終えないうちに、ニコの言葉が止まった。
軽いステップを踏むヌコロフの足元に、日本酒の一升瓶が十数本転がっていたからだ。
そしてもうその瓶には、酒は一滴も残ってはいなかった。
「ヌコロフさん、その…、お酒って」
「あぁこれね、ちょうどそこのオジさんのテントに積んであったから、ちょびっと拝借したのね」
上機嫌のヌコロフと正反対に、またニコの顔が青ざめていった。

「じゃ…じゃあがんばってね…ヌコロフさん」
無理やり笑顔を取り繕い、ニコはその先の大きなテント─自宅─へと逃げるように走っていった。
「…ヤバいよあれ、ノリ爺さんの大事にしてた…!」

ニコが自宅という大きなテントのドアに入った直後、雷鳴の如き怒声が公園中に響き渡った。

「こンのカバ野郎! 大事にしていた俺の酒を全部使いやがって!!!」
「ちちちがうのね、そこに置いてあったからご自由にって思ったのね!」
「つべこべ言い訳すんなーーーーーーッ!!!」

…パリーン
「あんぎゃあぁぁあぁぁぁぁぁあぁあぁああああ!!!」

空の一升瓶がヌコロフの脳天に炸裂した。

「…知らないから、見てないから…!」
ドア越しに断末魔の悲鳴を聞き、ニコは呪文のように小さく言葉を繰り返した。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
すいません、ヌコロフさんをお借りしちゃいました〜!
事後承諾で申し訳ありません。
「キリンジのおっちゃん、なんか喫茶店の匂いするね」
「あ…ぁ、さっきちょっと、な」
「あ、けどおっちゃんって金持ってたっけ?」
「ギクリ」
「…無いんでしょ、少しくらいなら持ちあわせあるから貸そうか?」
「ん…ああ、じゃ500円ばかし…」
「はいよ500円。そうそう、金利はトイチだからね」
「え…!?」
「金の切れ目は縁の切れ目って言うじゃん、だからシビアにトイチってことで」
「いや……っていうかニコお前、トイチって言葉どこで覚えた?」
「んー、神田ガード下に住んでる人から。元は大阪住まいだったんだって」
「ぐ…けど俺とお前の仲だろ、金利云々抜きにしてくれてもいいと思わないか?」
「だーめ! 金は金、仲がどうのこうのの問題じゃないし!」
「な…なら今のこれは返す!」
「いいの? 誰かに会った時に金無いですじゃサマにならないよ?」
「うぐぐ…!」
「ね? おっちゃん」
「ニコ…お前この前、ヌコロフが作ったサラダに入ってたカリフラワーとブロッコリー、こっそり退けてクァンに食わせたろ…」
「ギクリ」
「いいのか? お前の秘密を静にバラして…」
「え? ひひ秘密って何?」
「ニコは緑黄色野菜が大嫌いで宿題忘れてばかり、オマケにアソコは皮かぶってて足が臭くて寝る時はマフラー抱かないと眠れない!」
「ああああぁ聞こえない聞こえない!」
「いいのかこれをバラしても!」
「っていうかおっちゃん逆ギレだよそれ!」
「うるさい! 逆ギレは大人の特権だ!」
「ンなワケないよ!」
「黙れ少年!」



「あー…周りに十分聞こえてるんだなキミたち…」






今即興でケータイから作ったです(笑)
なんかこういう情景が浮かんで来ちゃいまして…つい。
子供より金持ってないのかよ!
オッサンの大人気なさに全米が泣いた・・・

てな訳ですが、何かニコとキリンジは、ああ年の離れた兄弟みたいだなとか思ってしまう訳で。
 いやいや。ある種そのくらいの分け隔てのなさは、なんともキリンジというキャラの魅力を物語るようでありますよ。
 どんな相手だろうと同じ目線に降りてきてくれる、親しみがあります♪

 しっかり者の弟とマイペースの兄って言うのも萌えるじゃないですか☆
ニコたちの住む家は、テントと言うには相応しく無いくらい巨大なドーム上の「掘っ立て小屋」だった。
十メートル位の鉄筋をドーム上に張り、その上から丈夫なブルーシートを幾重にも張り巡らせて、雨漏り一つ起こさないようにする。
それはもはや、モンゴルの大平原でお馴染みのゲルに似た、しかしもっと巨大な家。
「…ただいま、大じい」
中へ入ると、中央に一本の細く長い廊下が。
そして左右に道は枝分かれして、それぞれ住む部屋へと繋がっている。
さながらそれは、昔懐かしい下宿のような感じに。

ここに住むのは、ニコを含め住人ほどの大事な人たち。
ここ一帯を仕切る「大じい」や、元医者だった人、それに何かしら使えるスキルを持った者。
力無き人たちが生きていくためには、それなりに団結していかないといけない。
そしてその中から長を推し、自活できるようにコツコツと力を蓄えていく。
その長たるものが、大じいと呼ぶ老人。

「ん、ニコか…」
「……」
正面の廊下の少し外れに、長いベンチを挟んでにらみ合う男が2人。
その男たちの真ん中には、おおよそ似つかわしくないチェスのボードが。
「…伴さん、今日で何回目?」
ニコは2人が静かに戦っているベンチへ赴き、向かいで苦渋の表情を浮かべる老人にそっと声をかけた。
「……」どうやら劣勢らしい。
盤上の駒を見比べる。
ニコはチェスのルールは知らないが、明らかに数においても大じいの駒の方が多かった。
「あー、なるほどね」
それに被さるように、伴と名乗る老人が重々しく口を開いた。
「ニコ…おめーはちょっと下がっててくれ、気が…その、散る」
盤上からは一切目を離してない、これはかなり必死だ
「ん、ごめんね」
ニコは軽い笑みで返し、くるりとそのまま自分の家へと足を進めた。
「…ニコ」
ふと、背中で大じいの声が聞こえた。
低いトーンのその声はかすかに重い、説教か何かを心の奥底に感じつつ、ニコは振り返った。
「今日はずいぶん早いな、何かあったのか?」
「うん、池袋行ったんだけどね、巡回してる警官に職質されそうになったから全部捨てて逃げた」
「…で、うまく逃げおおせたのか」
「ちょうど大通公園でさ、源さんがかくまってくれた、助かったよ」
「そうか…ならほとぼりが冷めた頃、なんか持って行ってやらにゃいかんぞ」
大じいが軽く鼻で笑う、機嫌は悪くなかったようだ。
「そうだね、焼酎でも買っていくよ今度」
ニコもそれにつられて、軽く微笑み返した。
「あ、いや…焼酎はダメだ」
「え?」
「あいつは酒乱の癖があるからな、確かてめぇ自身で断酒するとか抜かしてた…他のにしろ」
「あ、うん…分かった」
ニコは胸ポケットからさっきの手帳を取り出し、先ほど赤線を引いた池袋の欄に注釈を一個、書き入れた。
「池袋の源さんにお酒は厳禁…と」

「ムッ! ガァーッ!!!」
突然、沈黙を通していた伴じいがチェス盤をひっくり返し、大声で叫んだ。
「だめだだめだだめだ! ンなもん絶対に勝てるわけない! 畜生!!!」
あっけに取られるニコ。
しかし大じいはそのサプライズに驚くわけでもなく、サラリと返した。

「伴…確かにおめーは強ぇ、外へ出りゃ間違ぇ無く天下取れっぞ」
伴じいの身体は、ワナワナと怒りに小刻みに震えていた。
だがその怒りに臆することも無く、大じいは最後のとどめを刺した。
「ま、このワシに勝てれば、の話だけどな。ガハハハハ!」
高らかな笑い声がテント中に響き渡る。
「大じい…もうそのぐらいにしておこうよ」
「んにゃ、まだまだだ、このくらいの屈辱を与えん事には、本気の勝負は務まらん」

「ウガアアアアアッ! 覚えてろ! 今度はきっと! きっと!!!」
「おうよ、死なない程度に頑張れ!」

まるで尻尾を丸めた負け犬のように、伴じいはダッシュでテントから駆けて逃げていった。

「まだまだ若ぇんだ、あいつはな…」
大じいは鼻でせせら笑うと、今度はニコのほうへと向き直った。
「ニコよ…お前」
悪戯っぽい瞳で覗くかのように、今度は小声で話かける。
「な、なに、今度は?」
「聞いたぞお前、か・の・じょが出来たらしいじゃねぇか」
ニコの背中が一瞬にして冷たくなった。
「ち! ちがうちがう! 彼女じゃないってば! ただの仲間だよ!」
「そうか? この前猫っぽいねーちゃんと仲良く話してるの見・た・ぞ」
大じいのその顔は、もはやスケベな爺そのものと化していた。
、その攻撃に、ニコの顔はすっかり紅潮していた。
「いっぺんお前の部屋に誘ってみろ、大丈夫、手出しはしねぇさ」
「さ…誘って一体なにしろって言うんだよ!」
「こう…押し倒してだな、チューを…」
「しないしないしない! そんなこと絶対絶対絶対!!!」
「平気だ、ワシのテクニックを信じろニコ!」
「だからだから、彼女でもなんでもないんだから!」
「特別にお茶でも何でもサービスしてやるわな、家に入れちまえ、な?」
「だから、家に入れたくないってば!」
「なんだ、足が臭いこと気にしてるのか?」
「ちょ…それ、禁句…」
弱点を突かれ、ニコは頭を抱えた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
文字規制uzeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!
これから短めにポツポツと行くしかなさそうですね…

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